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第4期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画「素案」に対する見解と提案

2008年11月21日
日本共産党横浜市会議員団
団長    大貫  憲夫

 「横浜市第3期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」は08年度で終了するため、横浜市は、3年間の事業を振り返り、第4期計画の策定作業を行っており、11月7日に「第4期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」(素案)(以下「素案」)を議会に報告し、パブリックコメント・区民説明会等で市民・関係者の意見・提案を求めるとしています。
 今回の見直しは、過去2回の介護報酬の引き下げ(03年度、2.3%、06年度、2.4%)による深刻な介護人材不足や低い介護報酬での事業所の経営難をどうするのか、また、来年度介護報酬引き上げによる保険料の負担増をどうするのかなど、緊急かつ抜本的な対策が求められる大きな課題をかかえています。

 第一に、介護人材確保の問題です。
 「素案」で「安心の介護を提供するために介護人材の確保」を初めて取り上げ、基本施策の推進として明記したことは大いに注目したいところです。
 国の調査でも、介護の現場では、年間22%、5人に1人が仕事をやめる等、定着率が低く、深刻な人手不足が続いていることが指摘され、10月30日、厚生労働省も、介護従事者の処遇改善と人材確保等として10万人程度の介護人材等の増強を打ち出しました。
 横浜市の調査でも介護職員の採用が困難と認識している施設が、特養で97.4%、介護老人保健施設で95%と人手不足は深刻です。
そこで、市は、今年度「福祉人材緊急確保事業」で、約半数の特別養護老人ホームを対象に、介護職員1人当たり月1万円程度の処遇改善等のために1施設当たり400万円を支給したり、介護福祉士の長期の研修に代替職員を配置する等キャリアアップ支援を行っており、これらについては評価できるもので、一層の充実を望むものです。
 東京都は、介護現場の深刻な人手不足解消のため、低所得の人がホームヘルパーの資格を得る講習を受ける際、受講料全額に加え、一時金として10万円の生活費を支給する全国でも初めての制度を導入しました。厚生労働省も、介護人材の緊急確保対策として介護福祉士等修学資金貸し付け事業の拡大や、母子家庭の母親の介護福祉士・看護師等の資格取得支援等を打ち出したばかりですが、本市でも東京都のような支援制度をぜひ検討すべきと考えます。

 第二は、介護保険料と介護報酬の問題です。
 「素案」で示された第4期の本市の保険料は、基準月額(見込み)4900円で、第3期の基準月額4150円より750円も高い大幅な値上げです。
 「素案」の説明で、介護保険給付費準備基金65億円の2分の1を取り崩したとして110円の引き下げが可能になること、一方で09年度介護報酬改定「3%引き上げ」の影響で試算では70円の引き上げで、差し引き4860円となり、710円の値上げとなります。
 この間の高齢者に対する税や医療費等の負担増に加え、新たな負担は、第4期計画がめざす「介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して暮らせるために」とのうたい文句とは裏腹の耐え難いものとなることは明らかです。
 政府が、10月30日、追加経済対策でまとめた3%の介護報酬の引き上げは、「処遇改善には5%必要だ」「過去2回のマイナス改定や、06年介護保険制度改正での軽度者への介護給付制限を勘案すると、これまでの介護報酬のマイナス幅は10%以上になる」など関係者から不満の声があがるほど、不十分なものです。
 ところが、現状の仕組みでは、介護報酬を引き上げた分介護保険料が高くなります。そこで、国も1200億円を出し、3年間を通し半分を国庫負担とすることにしましたが、横浜市の試算ではわずか70円にしかなりません。これでは負担軽減にはならず、市として国庫負担の増額を国に求めるべきです。さらには、国が介護保険給付費の25%(在宅)しか負担しない介護保険の仕組みを見直し、制度発足前の50%に計画的に戻して保険料の負担割合を縮小することや、介護報酬引き上げ分の財源は国の社会保障費で負担するよう、国に求めていくべきです。
 市としても、準備基金の取り崩し、市費の繰入金の余剰金10億円の活用、一般会計からの繰り入れ等あらゆる可能性を検討し、大幅引き下げを行うべきです。なお、介護保険は自治事務であることから、一般会計からの繰り入れを可能にするよう項目を起こせば、一般会計から介護保険会計への繰り入れはなんら法的・制度的に支障はなく、実際に浦安市などで行われています。
 保険料や利用料の自治体独自の減免制度を充実させ、低所得者への負担軽減を図ることも重要です。

 第三は、施設整備の問題です。
 「素案」では、特別養護老人ホームの待機者が概ね1年以内に入所できる水準を維持するとしています。そのため、年間計画900床と遣り残した分を積み増し、06年度から4500床を加えて、2010年度までに全体で13300床にする計画になっており、5年間で1.5倍の整備率は評価するところです。しかし、これで十分とし、2011年度以降年間300床の計画で足りるのでしょうか。「素案」は待機者の70%を対象とし、年間20%の入所者の入替を前提に推計していますが、経管栄養や酸素療法など医療的ケアが必要な待機者の増加が見込まれており、家事援助が減らされているもとで、在宅での介護は非常に困難となっています。介護認定者も増加する、当然待機者数も増加すると思われますが、「素案」では待機者数は明記されておらず、300床の整備の根拠は曖昧です。
 また、「素案」では介護老人保健施設の新たな整備は中止、介護療養型医療施設は2011年度末で廃止としていますが、これで「地域偏在への対応や医療的ケア対応の推進を図る」ことができるのか疑問です。鶴見区では介護老人保健施設は1館しかなく、病院を出された場合の在宅での介護の困難さはこれまでも指摘されてきたことです。「素案」では、「必要になった場合、生活できるように要介護高齢者や家族を支援する」としていますが、具体策は示されていません。
 特定施設(有料老人ホーム等)は、有料老人ホームの1階に介護の事業所をおけば、施設入所が必要になってもそこに通いながら在宅で生活するというものです。個室であることや職員の配置基準を満たせばよく、利用料の規程はありません。株式会社の参入が自由で、すでに第3期計画をかなり上回って整備されてきており、4期では毎年200床ずつ整備しようというものですが、一部の高額所得者しか利用できないものです。
 特別養護老人ホームについても、個室のユニット式に限った整備を行っていますが、生活保護者はユニット式個室には入れません。「多床室」の整備は国も認めており、第4期計画に多床室の整備も取り入れるよう、強く求めるところです。
 「素案」全体が、施設サービスよりも在宅サービスにますますシフトしたものになっていますが、市有地も活用するなど工夫しながら施設を増やし、待機者の解消に力をいれるべきです。

 第四は、在宅サービス・介護予防事業の問題です。
 第3期計画は、軽度者へのホームヘルパーの家事援助の削減、介護ベット等福祉用具や訪問介護の利用制限が行われ、ショ-トスティ利用者の居住、食事にかかる費用が保険から外されました。「素案」では、「新予防給付」の数値の記載すらありませんが、目標値を明確に掲げ、外されたサービスは市費を投入して計画的に元にもどすべきです。
 第3期計画では実際の介護予防事業の利用者は少なく、初期の計画目標から遠く離れた実態にあります。にもかかわらず「素案」では、介護予防を幅広い高齢者に広げられ、転倒骨折予防、口腔ケア、栄養改善の文言も掲げられていません。介護予防事業を計画的に推進すべきです。そのために、地域包括支援センターの専門スタッフの確保や、中学校区に1つと限ることなく、きめ細かくセンターを配置することを検討すべきです。
 小規模多機能型居宅介護サービスでは、事業者への施設・運営費補助を引き続き行い、150ヶ所の整備計画を前倒しで行うべきです。

 第五は、介護認定者率の問題です。
 認定率は、第3期計画では2008年度が18%、2014年度が20.4%であったものが、「素案」ではそれぞれ15.7%、17.1%としており、第3期計画より認定者率を下げています。「素案」では、認定率が低くなった理由の説明はありません。
 第4期で実施する新しい要介護認定モデル事業(第二次)が、国の指示で市町村で実施されました。従前の82の調査項目から肘関節の拘縮等を含む14項目を削除したもので、本市では全区で300件実施され、約40%の人が現在の認定度と認定が違ったようですが、これは重大なことです。第4期事業での新しい一次判定ソフトが決まり、介護認定が軽くなって、現在受けているサービスが切り捨てられることが予想されます。「素案」の認定率の低下がそれを見込んでいないとはいえません。調査項目の削減でますます高齢者の実態からかけ離れた認定となり、「介護とりあげ」につながらないよう、必要な対策を「計画」に盛り込むべきと考えます。

以上