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■「請願に対する討論」 古谷やすひこ議員(2014.3.20)

日本共産党、古谷やすひこです。党を代表して、請願第21号「介護保険料の引き上げ中止について」、請願第22号「生活扶助費等の引き下げ中止を求める意見書の提出方について」、この2件について、委員会の不採択について反対の立場で討論をいたします。

介護保険料払って給付受けられないのは国家的詐欺

まず、請願第21号「介護保険料の引き上げ中止について」。介護保険制度ができて以来、今、ずっと上がり続けている介護保険料です。今回も大幅に引き上がりました。その上、給付が引き下げられ、特別養護老人ホームに入るために今まで正規の手続きをして何年も待ち続けていた要介護1・2の方が、この4月からは特養を申し込む権利すらなくなってしまうこととなりました。お金だけを払い続けて給付は得られない、これは国家的詐欺にも等しいことです。
今後はさらに保険料が際限なく上がり続けます。これでは、制度そのものが破たんしていると言わざるを得ません。従って、本請願を改めての採択を訴えます。

生活保護受給者が増えるのは社会保障制度の貧困が原因

続いて、請願第22号「生活扶助費等の引き下げ中止を求める意見書の提出方について」です。本請願は、国によるこの4月からの生活扶助費の引き下げについて中止、住宅扶助費・冬季加算の引き下げの中止、国への意見書を求めているものです。
そもそも生活保護受給者が毎年毎年増え続けて、地方自治体の財政も大きく圧迫している原因は、生活保護制度に問題があるわけではありません。わが国の社会保障制度の貧困がその根本原因であります。

長年払い続けても老後を支えられない国民年金

最近、私のところに相談に来られた方で、長年お花屋さんを駅前で営んでおられた方が、高齢のために商売が続けられなくなって、廃業しようという相談がきました。その後の生活について、国民年金しか収入源がなくなってしまい、アパート代も払えないような事態となってしまう。長年コツコツと何があっても国民の義務だと思って払い続けてきた国民年金が、いざもらう段になっても、とても自分の老後を支えてもらうものではなかったということを改めて実感したそうです。国民年金と名乗りながら、国民の老後の生活を支えてくれない低い支給額しかもらえない今の制度。この方の場合は、他に救われる制度はありません。すぐに生活保護の受給となりました。

障害者年金だけでは暮らせない

また、障害者のケースでも同じです。これまた私に最近相談に来られた方で、障害者で高齢の両親と同居しながら作業所に通われている、そのご両親から相談がありました。「いずれ私たちは先に亡くなってしまう。その時に、この子だけの今の収入ではとても生活が成り立たない。どうしたらいいのか」と。結局、このケースでも、障害を持っている息子さんが受け取っている障害年金が低すぎるために、あとは生活保護を受給するしか方法がありません。

ひとり親世帯への貧弱な支援

また、ひとり親のケースでも同じです。今年の年初めに相談に来られたシングルマザーの方の場合、生活の実態は非常に深刻です。中学1年生と小学4年生の2人の男の子をひとりで育てています。派遣社員とコンビニのアルバイトをかけもちをして、手当などで毎月ぎりぎり、綱渡りのような生活を続けていました。しかし、とうとうメンタルの病気になってしまい、仕事ができなくなり、クリニックからの紹介で私のところに相談に来ました。そのまま生活保護の受給となりました。今までの家庭生活での様子を聞くと、仕事に追われて中学1年生のお兄ちゃんにはお昼をまともに持たせられなかったとも聞きました。先生が自分の分を分けてくれたのか、昼食時間に教室を出て全く食べずに過ごしたのでしょうか。幸い、弟さんの方は小学生ですから給食があって本当によかったと思いますが、これまた中学生に上がればどういう状況になるのか、本当に心配です。結局、シングルマザーへの支援が貧弱なために、これまた生活保護を受給するしか、今、すべがありません。

困窮家庭の子どもは進学しづらい現実

また、生活保護を受給している家庭の高校生のお子さんが自分の努力で得た給付制の奨学金も、今の仕組みでは全額収入認定されて、その分保護費は減額され、奨学金を生活費にあてるように、今は求められます。先日の国会質疑の中でも、同様のケースについて日本共産党の田村智子参議院議員が質問をし、これでは何のための奨学金なのかと問うています。必要最低限度の就学のための費用以外は収入認定をするという国の基準があるために起きた問題です。最低限度の必要額には、大学進学のための貯金は認められません。進学のために塾に通う費用も認められていません。何にいくら使うのか、使ったのか、細かく証明することが求められます。これでは、行政が高校生の進学の希望を奪うのと同じです。
シングル世帯に支給される児童扶養手当は、子ども18歳で迎えた3月までで打ち切られます。経済的に苦しい家庭、様々な困難を抱えた家庭では、子どもが高校から上の学校をめざそうとしても、生活の支援がないのが現実です。進学したければ、自ら働くこと、借金することを求められる。これが困窮家庭の10代後半の子どもたちが直面している現実です。これでも「誰にでもチャンスはある」という社会と本当に言えるのでしょうか。「希望する誰もが、高校、大学、専修学校に進学できる」と、本当に言えるでしょうか。
議員のみなさん、今あったケースはみんな横浜市民です。今回の引き下げで、さらにこれらの家庭は生活が圧迫されてしまいます。もともと社会的弱者となってしまい、なかなか声が出しにくい方の生活が、国の悪政によってどうなってしまうのか、ぜひ想像してみていただきたいと思います。それでも、この切実な請願の採択に反対できるでしょうか。

生活保護基準より国民年金が低いのが問題

2010年の厚生労働省の調査によれば、現在、生活保護を受給するようになったきっかけ、これは、「高齢のため」が44.6%の第一位。その次が「傷病・障害世帯」で32.7%、続いて「母子世帯」で7.5%と、この3つで84.8%を占め、残りのケースはほとんど失業のケースだといわれています。
先ほどのケースでいえば、低すぎる国民年金が問題です。生活保護基準は憲法25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」ですので、それよりも国民年金が大幅に低いことの方がおかしいのではないでしょうか。イギリスやドイツやフランスなどでは、生活保護よりも低い年金はあり得ません。日本はイギリスやフランス・ドイツよりもずっとGDPが上です。なぜ、税金の使い方を年金や社会保障に振り向けようとはしないのでしょうか。障害者やシングルマザーのケースでも同じです。本来、生活保護を受給しなくてもいいようにするべきだと思いますが、あまりにもそれぞれの制度が貧弱だからこそ、今の日本では最後のセーフティーネットである生活保護を活用するしか、すべがありません。
その上、今回のように、生活保護費を減額するような、無理やり蛇口を締めてしまうようなやり方では、全く解決にはなりません。根本問題、つまり社会保障制度をもっと充実させるような方向にしていかなければ、この問題は解決できません。

最低賃金や社会保障制度の適用上限も引き下げ

生活保護制度は、憲法25条にも定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化したものです。現時点での「人間らしく生きることができる」生活費の水準を表しているものです。このことによって、例えば最低賃金法第9条では「労働者の生計費を考慮するにあたっては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に関わる施策との整合性に配慮するものとする」とあります。つまり、生活保護基準が引き下げられることによって、最低賃金も連動して引き下げられかねません。賃金が下がれば、また生活保護受給者が増える可能性も出てきます。全くの悪循環です。
また、生活保護基準が引き下がることで、社会保障制度の適用上限が切り下げられ、制度が縮小してしまいます。例えば、就学援助制度や国民健康保険料の減免制度、国民健康保険窓口負担金の減免制度、上下水道料金の免除制度、公営住宅家賃減免制度などは、全て生活保護基準が基礎となっています。その基準が引き下げられれば、それらの水準も全て引き下げられてしまいます。このように、生活保護基準の引き下げは国による低所得者対策全体を地盤沈下させてしまいかねません。
したがって、請願第22号「生活扶助費等の引き下げ中止を求める意見書の提出方について」の不採択に反対して、改めて採択を訴えて、討論を終えたいと思います。