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■「議案反対討論」 みわ智恵美議員(2015.5.29)

私は、日本共産党を代表して、5件の市長提出議案と2件の請願不採択に反対する討論を行います。

医療専門職を保育士として数えるのは保育環境の低下をまねく

まず、市第7号議案「横浜市児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例の一部改正」は、乳児4人以上を入所させる保育所の職員配置基準に、当分の間、保健師、看護師または准看護師を、1人に限って保育士とみなすことができる規定を追加するもの、市第8号議案「横浜市家庭的保育事業の設備、運営等の基準に関する条例の一部改正」は、小規模保育事業所A型及びB型並びに事業所内保育事業所の職員配置基準に、保健師、看護師に加えて准看護師を、1人に限って保育士とみなすことができる規定を追加するものについてです。
横浜市では、乳幼児4人以上の保育所が保健師や看護師、准看護師などを配置している場合、賃金の助成をしています。各保育所ではこの横浜市の施策のもとで、保育士はもとより看護師等の確保そのものが厳しい中で、子どもたちのためにと医療職の確保に努め、2013年度時点では、民間認可保育所492園のうち265園で配置されています。
子どもたちと保護者にとっては、疾病等や感染症、その他疾病の発生予防などの対応が専門性を生かして実施されるということで大きな安心です。
ところが、国の基準改正に従って、保育所等の職員配置基準に保健師、看護師、准看護師を保育士とみなすことができるとするのは、実質的には保育士配置基準の引き下げで、保育環境の低下につながりかねません。
子どもの成長と発達を保証するためには、充実した保育士配置が重要です。保育士の人材確保には保育士のさらなる待遇改善を行うことが必要です。そして、医療職の人材確保には、市としてこれまで通りの人材確保の助成を行うことを求めます。

カジノ設置を前提とした都心臨海再生プランは無効

次は、市第13号議案「横浜市都心臨海部再生マスタープラン審議会条例の廃止」についてです。臨海部再生マスタープランを策定したことで、所期の目的が達成されたため、審議会を廃止するというものです。
今回策定されたプランには、「横浜でしか得られない感動体験を演出するとともに、官民パートナーシップの活用やIR(統合型リゾート)の導入などについて検討」すると明記しています。
そして、「IRとは、カジノ施設及び会議場施設、宿泊施設、大規模集客施設その他の観光の振興に寄与すると認められた施設が一体となっている施設」と説明しています。
臨海部再生マスタープランは、2025年までを目標としたプロジェクトを5地区で14事業掲げています。IRの中心的構成施設である大規模集客施設を立地させるプロジェクトを、みなとみらい21地区の60・61街区、山下ふ頭地区で実施するとしています。この目標年度と場所を定めたことは、カジノに関し、国の動向を見て導入を検討するとしていた中期4か年計画を踏み外しています。
今回のマスタープランの「所期の目的」とは、カジノ設置の既成事実を積み上げていることと言わざるを得ません。
カジノは賭博です。最高裁の判例では、賭博は国民の射幸心を助長し、勤労の美風を害し、副次的な犯罪を誘発する恐れがあることなどから、社会の風俗を害する行為として、刑法の規程により禁止されているとしています。
報道によりますと、東京都知事は、「カジノは賭博。青少年への悪影響とか色々ある」「カジノがないと日本経済はよみがえれないと言う人がいるが、そんなものなくてもよみがえる」と、カジノ誘致の方針を転換させました。
市長は、「カジノを含む統合型リゾートは、都心臨海部の魅力向上や観光MICEの充実を図るための有力な手法と考えており、国会に提出されたIR推進法案の今後の状況を注視する」と、言われました。
しかし、カジノはギャンブルです。横浜市が市民の生活と健康を守るのではなく、市民をギャンブル依存症にして、その生活を破壊する推進する側になるという話ではないでしょうか。
日本共産党横浜市議団は昨年、「カジノ解禁と横浜誘致について考えるシンポジウム」を開催しました。そこで、研究者の立場から鳥畑与一静岡大学教授は、「IRというのは、固定経費、経費がかかる。それを賄おうと思ったら、本当にたくさんのギャンブラーが右上がりで殺到してくれないと続かないビジネスモデル。これが今、アメリカで破綻をしている。カジノというのは、ほとんどのお客さんを負けさせて貧乏にさせて成り立っている産業。けっして地域社会を豊かにする産業ではない。」また、「カジノができると、犯罪が増えます。問題は、この横浜市の、たとえば山下ふ頭のエリアで犯罪がどれくらい増えたかということになり、このエリアで犯罪が増えたら、ここは犯罪が多い地域ということで、観光都市のブランド力が落ちてしまう」と述べ、IR型カジノは経済成長と観光の決め手とはならないこと、不幸をまき散らすビジネスであることを明らかにしました。
国会に提出されたとはいえ、IR推進法案は今後の動向は不確実という状況の下にあり、カジノ設置を前提とした今回のマスタープランは無効と言わざるを得ません。審議会はメンバーを入れ替え、やり直すべきです。

南本牧ふ頭の岸壁延長工事は過大投資

市第20号議案「公有水面埋立てに関する意見提出」についてです。これは、南本牧ふ頭の岸壁を延長するために、国が行う公有水面埋め立てに関して、市長が必要な事業という意見を提出するものです。 意見を提出する埋め立て事業は、大型コンテナ船2隻が同時に接岸できるよう、南本牧における水深18メートル級の岸壁MC―4を100メートル延長するためのものです。
横浜港の取扱コンテナ量は、リーマンショックの2008年の348万TEUを大きく下回ったままです。ここ数年が305万、289万、288万TEUの取扱量では、既存の岸壁で十分足りるはずです。最高時の2008年時にはMC―3はありませんでした。
コンテナが増えないのは、横浜港の輸出が伸びないからです。横浜港の輸出を支えていた自動車、電機、化学、機械など主要産業が、生産拠点を海外に移転し、国内生産を縮小しています。家電などに見られるように、一部の産業分野では国際競争力が著しく低下し、国際市場から撤退しています。こうした横浜港を取り巻く経済状況からいって、今後輸出が大幅に伸びることは期待できません。
市長は、コンテナ集荷について、伸びゆくアジア貨物やトランシップ貨物を獲得していくと、アジア市場をターゲットにされていますが、地理的に不利な立地の横浜港が韓国や中国の主要港と荷主の奪い合いで競争に勝てる保証は、いくら金銭的インセンティブを付加しても皆無に近いのではないでしょうか。
大型コンテナ船2隻を同時に着岸させる今回の計画は過大投資であり、税金のムダ遣いです。国費・市費のムダ遣いノーの意見を提出すべきもので、賛成できません。

事業費2割増の新市庁舎建設計画は市民負担を増大

次に、市第41号議案「平成27年度横浜市一般会計補正予算(第1号)」のうち、「新市庁舎移転新築工事に関わる債務負担行為補正」についてです。
新市庁舎整備事業費として総額749億円が確定されました。市庁舎の整備計画基本理念には「財政負担の軽減」を挙げています。にもかかわらず、事業費が2013年秋の基本計画の約616億円に比べて21.6%も増えました。
「これだけ事業費が膨らみ、市民の負担が増えることについて、市長は責任をどのように感じておられるのか」とのわが党の質問に、市長は「しっかりとさまざまな課題を克服しながら取り組んでいることが、私の責任であると考えております」と答弁されました。
市民負担が増えることについては一言も言及されず、負担増による市民の痛みを感じられているとは思えません。また、巨額の増額となったにもかかわらず、市民の意見を聞くこともしないとの判断です。
日本共産党は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせる計画は事業費の膨張をもたらすだけだと指摘してきましたが、その通りとなってしまいました。オリンピックに間に合わせる、隣に建っているアイランドタワーより高層にしなければならないというこれらの条件に縛られ、今後の建設費のさらなる高騰で、市民負担がさらに増えることが予想されます。
今、東日本大震災被災地域の復興も、オリンピックさえも順調には進められないほどの建設資材の高騰や人材不足があります。本計画の新市庁舎建設は、市民負担をさらに増大させるものであり、認められません。

労働法制を改悪しないよう国に求める意見書は採択を

最後は、請願第1号「雇用の安定を求める意見書の提出に関する請願」と、請願第3号「労働法制の改悪に反対し、労働時間法制の規制強化と安定雇用の確立意見書を求める請願書」についてです。
労働者派遣制度の大原則は、「常用雇用代替の禁止」、すなわち正社員を派遣社員に置き換えてはいけないということです。しかし、今回の労働者派遣法改訂の最大の問題は、同一業務で原則1年、最長3年というこの期間制限をやめてしまうことです。人を代えれば、同じ部署でずっと派遣労働者を使える。結局、正社員がどんどん減ってしまう仕組みになってしまいます。
この法案が通ると、派遣社員が正社員になれるかのようにいわれますが、雇用安定措置となっているのは、派遣先企業が正社員募集についての情報提供を行うくらいのもので、義務化されていません。「派遣切り」を行う派遣先企業に対して雇用を守る義務が全く課されていません。
ホワイトカラーエグゼンプションを導入する労働基準法の改訂案では、政府は「対象者は成果を定量的に測れる人だ。健康確保措置を義務付ける」と説明しています。しかし、健康確保措置があるといっても、年間104日以上の休日をとればいいということで、これは土日だけです。祝日も正月も盆も全部働き、24時間働いてもいいとなっています。
最大の問題は、成果ではなく、時間規制をなくすということです。成果で賃金を払う働かせ方ほど、時間規制が大事です。成果を求める一方で時間制限がなくなったら、成果が出るまで働かせるということになります。健康管理時間は、一月当たり100時間をこえた労働者が指導の対象になるというものですが、100時間というのは「過労死ライン」を超えています。
国会は、過労死をなくそうと全会一致で「過労死等防止対策推進法」をつくったのです。ところが政府は、長時間労働を広げるものをつくるのです。
今、この動きに対して、労働団体は立場を超えて反対と言っています。政党の違いを超えて、提出団体にこだわることなく、主旨に賛成であれば、どなたも賛成されていいのではないでしょうか。
担当委員会で、不採択を主張した会派は、その理由を明らかにされていません。不採択にするのであれば、その理由を述べるのが請願者に対する、そして市民に対する礼儀ではないでしょうか。
私は、請願第1号と請願第3号が常任委員会で不採択されたことに反対し、国に対して、労働者派遣法について「正社員ゼロ」「生涯派遣労働者」につながる規制緩和を行わないこと、「正規社員との均等待遇」と「臨時的・一時的な業務への限定」を明記することを求め、残業代ゼロ法案と呼ばれる「労働時間規制の適用を除外する新制度の導入」や「裁量労働制の対象拡大と手続きの緩和」を行わないことを求める意見書を提出することに皆様のご賛同をいただくことを求め、改めて請願第1号、請願第3号の採択を主張して、私の討論を終わります。