議会での質問・討論(詳細)
2015年6月30日

■「安全保障関連法案の審議に当たり慎重な取り扱いを求める意見書の提出」に対する賛成討論 古谷やすひこ議員(2015.6.30)

古谷やすひこです。日本共産党を代表して、本臨時議会に上程されています「安全保障関連法案の審議に当たり慎重な取り扱いを求める意見書の提出」について、賛成の立場で討論します。本議案は、現在国会で上程されている「平和安全法制整備法案」「国際平和支援法案」など安全保障関連法案について、「国会において慎重かつ十分な審議を尽くすことを求める」ものです。

「二度と戦争をしない」ことこそ日本国民の誇り

今年は戦後70年の節目の年です。日本は、戦前、アジア・太平洋戦争を起こし、2000万人のアジアの諸国民の命を奪うとともに、日本国民310万人もの命を奪いました。この戦争の結果、横浜を含めて日本の主要都市は空襲によって焼け野原となり、1945年8月6日、8月9日には原子爆弾が投下され、多くの人々の命が一瞬にして奪われました。日本は、アメリカ、中華民国、イギリスが作成したポツダム宣言を受け入れ、戦争遂行勢力の除去、戦争犯罪人の処罰、日本の民主主義の復活と言論、宗教及び思想の自由、並びに基本的人権の尊重、確立、日本の経済復興等を内容とする改革を受け入れました。
日本国憲法はこのもとで制定され、国民主権、恒久平和、基本的人権という憲法3原則が確立しました。恒久平和は「もう二度と戦争を繰り返してはならない」という国民の強い意志が込められています。憲法第9条と「広島・長崎を繰り返すな」という願いは密接不可分なものであり、核兵器廃絶と戦争放棄は一体のものです。同時に日本の戦争放棄は、アジアに対する大規模な侵略戦争への反省と不可分のものであり、もう二度と戦争をしないというのは、国際公約でもありました。
恒久平和主義と憲法第9条に基づく国づくりは、戦争に明け暮れていた国から平和な国への大転換を意味しました。戦争終結から70年、日本は、戦争を行わない国として今日に至っています。この70年の歴史は、国民の中に憲法9条を守る強い意志として息づいています。「戦争をしない」という歴史にこそ、日本国民の誇りがあるのではないでしょうか。

憲法違反の法案の国会提出は許されない

現在、国会で審議をされています10本の「平和安全法制整備法」と新法の「国際平和支援法」は、日本の国の「平和」とも国民の「安全」とも全く無縁のものです。その内実は、自衛隊を海外の戦場に派遣し、アメリカ軍と一体となった後方支援、兵站を担うこと、さらには同盟国であるアメリカが戦争の当事者になった場合には、日本が攻撃されていなくても集団的自衛権を発動させることなど、日本の憲法に定められた「平和主義」に逸脱する、重大な安全保障政策の転換をはかるものであります。後方支援についていえば、米国が世界のどこであれ、アフガニスタン戦争、イラク戦争のような戦争に乗り出した際に、自衛隊がこれまで「戦闘地域」とされていた地域まで行って、弾薬の補給、武器の輸送、燃料の補給などの「後方支援」、兵站を行うことです。兵站は戦争行為の不可欠の一部であり、武力行使と一体不可分のものであるから、軍事攻撃の目標とされる。これは戦時国際法の常識であり、軍事の常識です。政府の言う「武力行使と一体でない後方支援」など、世界では通用しません。つまり、戦闘地域に行って軍事攻撃の一部である兵站活動を担えば確実に戦闘行為に巻き込まれる確率は高くなり、武器を持って応戦すれば戦争状態になります。日本の自衛隊が戦争状態に置かれてしまうことになり、明確な憲法違反です。
集団的自衛権についていえば、現憲法下では、明確に集団的自衛権は認められていません。しかし、政府はしきりに砂川裁判を持ち出して、「否定をしていないから」という理由で集団的自衛権が合憲であるかのように言っていますが、砂川裁判はもちろん集団的自衛権について争われたものではありません。だから、今国会の議論の中で、わが党の宮本徹衆院議員の質問に対して、横畑内閣法制局長官は「砂川判決は集団的自衛権について触れているわけではございません。」と、6月10日の 衆議院安保法制委員会で答弁されています。また、この砂川判決以降も、政府は、集団的自衛権は憲法9条の下では集団的自衛権の行使は認められないという答弁を繰り返してきているわけありますから、経過からいってもこの砂川判決を集団的自衛権行使の根拠付けに使うのは、全く無理があると思います。今回の法案は、これまでの政府の憲法解釈を根底から覆し、日本がどこからも攻撃されていないのに集団的自衛権を発動して米国の戦争に自衛隊が参戦し、海外で武力行使に乗り出すこととなります。
北東アジアをめぐる情勢、確かに緊迫したものがあります。しかし、これらの事柄は、そもそも平和的に解決する努力を図るべきでありますし、もし万が一のこととなれば集団的自衛権ではなく個別的自衛権で対応することであり、このような法整備は全く必要ありません。政府が、戦後半世紀にわたる憲法解釈を180度変更して集団的自衛権行使を容認した唯一の「理由」としてあげているのが、「安全保障環境が根本的に変容した」ということです。しかし、この間の国会の論戦の中で明らかになったのは、「『国際情勢が根本的に変容した』というが、他国に対する武力攻撃によって、政府の安保法案がいうような『存立危機事態』に陥った国が世界で一つでもあるか」という質問に対して、政府が「実例をあげるのは困難だ」と、岸田外務大臣が一つも具体例を示せませんでした。そうであるならば、立法事実そのものがなくなってしまいます。解釈を変更した理由が成り立たなくなります。
憲法98条には、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」とあります。したがって、憲法違反の法案が国会に提出されることは許されません。
今述べた観点から、私は今法案については廃案にすべきだと思っています。しかし、今の意見書に示されているとおり、「慎重審議をすべき」というのは、今の戦争立法の審議状況からみて、議会人であれば誰もが反対するものではないと思います。

学者、研究者、若者が厳しい批判の声

5月の戦争法案の国会提出後に、「反対」や「慎重審議」などを求める意見書を可決した地方議会は、6月28日までに34都道府県の195議会に達しています。
各種の世論調査でも、例えば昨日の日経新聞では、安保法案に関する政府の説明が「不十分だ」と答えられている方が81%、「十分だ」と答えられている方が8%です。安保法案の今国会の成立に「賛成」は25%、「反対」は57%と、はっきりと民意は示されています。審議をすればするほど反対の声が広がり続けています。
衆議院憲法審査会で、3人の憲法学者が集団的自衛権の行使と後方支援のいずれも違憲だと発言しました。その後の特別委員会の中でも、歴代の内閣のもとで法制局長官を務めてきた2氏はいずれも、「違憲である」「従来の憲法解釈から逸脱している」、厳しい批判の声、あげられています。
安保法案に反対を表明する学者の声は日増しに広がり続け、「安保関連法案に反対し、その速やかな廃案を求める憲法研究者の声明」には200人以上もの憲法学者が名を連ねています。また、「安全保障関連法案に反対する学者の会」には、専門領域を超えて6月29日時点で7300人を超えた学者・研究者が賛同しています。これらの先生方は、学者の良心にかけて反対をしています。権力者が憲法破壊の暴政を振るう時に、これとたたかって自由と平和を守るのは主権者・国民の義務です。憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と、国民の抵抗権を規定しています。憲法学者はその一翼を担う重要な存在です。
自民党の現職、元行革担当大臣の村上誠一郎さんは、「安倍政権を取り巻く人たちは神をも恐れぬ態度で安保法制を進めている」「こういった解釈の変更で憲法の基本原則が変えられる前例を作れば、時の政権による恣意的な憲法解釈によって憲法自体が捻じ曲げられてしまう。民主主義の原則さえも恣意的に変更できるようになる」と、懸念と法案に対して明確な反対を表明しています。
若者も立ちあがっています。渋谷で数千人規模の街頭宣伝が行われたり、国会前の集会でも2500人が集まり、「犠牲者が出てからでは遅い。声を上げるのは今だ」と、「私たちがとめる」と、自分の思いを声に出しています。

強行的な会期延長は数におごった強権政治

結局、政府は従来の会期末までに強行的な採決には持ち込めませんでしたが、野党がそろって反対した自公与党による戦後最長の会期の延長が強行的に決められてしまいました。自公の与党によって強行的にルールが変更してくるようなやり方は、あまりにも数に奢った強権政治といわざるをえません。さらに言えば、国会を1日延長すれば1日2億円もの経費がかかるといわれていますから、戦後最大の延長幅の今回はそれだけの無駄遣いとなりかねません。というのも、いくら国会を延長しても、今法案の憲法違反の本質、変えることはできないからであります。

すべての自治体が戦争反対を貫けば、政権の暴走とめられる

地方自治体は、「住民の福祉の増進のために」仕事をするのが地方自治法に書かれてある本分です。首長も議員も直接住民から選ばれた住民の代表です。憲法は、戦争をする権利を政府に与えていません。国民を欺いて詭弁を弄して戦争に巻き込もうとしている時に、私たちは国民主権と地方自治体の使命を自覚して、あらゆる方法で戦争を食い止める責務があります。すべての自治体が戦争反対を貫けば、政権の暴走、止めることもできるはずです。
現憲法での積極的な平和の国際貢献を今までもやってきましたし、さらに発展させるべきだと考えます。東京外国語大学教授で現在、紛争予防・平和構築講座を担当している伊勢崎賢治教授はこう言っています。「非武装であることで中立性が発揮され、利害調整のための仲介役をこなす。日本の特性が生かせるポテンシャルだと思います。それこそが他の国にはまねができないことで、日本が非武装でやる積極的な世界平和のための活動、非常に能動的な活動だ」と、こう言っています。戦争をしない国、戦争に介入しない国、侵略に手をかさない国として、日本が憲法9条に基づく活動を積極的に展開し、国際的な信頼を得ることこそ、日本の進むべき道ではないでしょうか。そういう良識をこの横浜市議会から示そうではありませんか。
本議案の採択をこの場にいるみなさんの良心に呼びかけるとともに、意見書に賛成することを表明して、日本共産党を代表しての私の賛成討論、終わります。


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