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■「議案等反対討論」 かわじ民夫議員(2015.12.17)

 かわじ民夫です。日本共産党を代表し、提案された議案と請願の不採択に反対の立場で、討論を行います。

採算性が見込まれないMICE事業に500億円もの市費投資か

 最初は、市第141号議案についてです。本議案は、みなとみらい21地区のパシフィコ横浜に隣接する20街区に多目的ホールと会議場等を有するコンベンション施設整備と維持管理事業について、竹中工務店グループと約378億円でPFI事業契約を結ぼうというものです。
 市長は、新たな施設をつくる理由として、「パシフィコ横浜は年間を通じて稼働率が大変高く、年間約3,800件の問い合わせに対し、約2割の850件しか対応できてないため、新たな施設を準備」するとの答弁でした。
 そうであるならば、本市自ら定めた国際会議開催件数の目標を超過達成してしかるべきですが、国際会議開催実績は2013年度は中型・大型会議では目標61件を下回る45件、2014年度はUIA基準の国際会議目標75件を大きく下回る49件であり、目標を達成するだけの引き合いがなかったといわざるを得ません。新たな施設をつくれば大きな国際会議が誘致できるという保証がどこにあるのでしょうか。
 さらに、東京では国家戦略特区等を活用した巨大再開発計画が目白押しで、丸の内、大手町、六本木、有楽町、羽田空港跡地に、三菱地所、三井不動産、森ビル、東京都、大田区によるMICE拠点整備計画が進んでいます。東京との誘致競争に勝ち抜くことはますます困難となるばかりです。
 パシフィコ横浜への市の財政負担は2013年度で、出資は41億円、長期貸付金残高160億円、損失補償残高36.8億円、地代減額累計額171.3億円にもなっており、自立した施設とはいえません。今回の事業は土地代を含めれば約500億円もの超大型開発で、運営権はパシフィコ横浜に売却するとしています。しかし、売却金額も収支見通しも明らかにされておりません。もともとMICE事業は採算性がないといわれている中、事業の収支計画も示さないまま、約500億円もの市民の税金を投入する事業を強行することは、あまりにも無責任であり、市民をだましているとしか思いません。
 また、みなとみらい地区の地域住民458人から「眺望や景観の悪化、閉塞・圧迫感、風通しの阻害、臨港パークへのアクセスの制限、防災面での負の影響など、甚大な生活権の侵害である」、さらに「災害発生時に緊急輸送路の指定を受けている港湾2号線の廃道は認められない」と、事業規模の縮小を求める請願が出されていますが、当然の意見だと思います。

格差と貧困を生み出す指定管理者制度

 次は、市第104号議案から138号議案、指定管理者の指定に関する議案についてです。
 わが党市議団はこれまで、この制度に対し、営利法人の指定と直営施設への導入に反対し、非営利法人の指定には賛成という立場でした。しかし、この間、指定管理施設の職員の大半が非正規であることと、指定管理料の不適切使用という問題に直面しました。その事例として、有隣堂が指定管理者となっている青葉区の山内図書館の昨年度収支報告では、公租公課が約550万円、本社経費に2,470万円が支出される等、直営ではありえない事態となっています。さらに、職員は、館長を含め13人全員が1年更新の契約社員、その他アルバイトが23人です。横浜こども科学館では、職員44名で、その内訳は正規職員が1名、非正規の契約社員が34名、アルバイト9名です。
 そもそも、指定管理者制度は指定期間終了後の指定の保証はなく、更新時、指定から外れれば、その雇用者は余剰人員にならざるを得ません。すなわち、指定管理者施設の雇用は、有期限の職員とならざるを得ません。これは、制度自身が非正規雇用者を増やすもので、格差と貧困を生み出す根本問題とつながっています。
 非正規雇用の問題については、厚生労働省は11月4日付けで、全国中小企業団体中央会会長に対し、「非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善に向けた取り組みに関する要請書」を大臣名で出しました。厚労省は「正社員転換・待遇改善実現本部」を設置し、各都道府県労働局と一体で、非正規雇用労働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善に係る具体的な取り組み等をするとしています。
 市長がこのことを承知ならば、非正規雇用について「労働者が選択しているもので、適切に運用してきた」などと胸は張れないはずであり、また、指定管理者制度のもとで働く人たちがやむなく非正規にならざるを得ないことを認識すべきです。市長はかねてより市民生活と雇用を守るとされています。それが腹からの思いであるなら、厚生労働大臣の要望書に沿うよう求めるものです。具体的には、営利企業の参入の規制、直営施設であった施設は計画的に元に戻す、委託可能の法改正を求める、公契約条例の制定等、抜本的な見直しです。こうしたことから、わが党は、指定管理者制度自体に反対です。

学童クラブの存続のために財源の保障を

 次は、請願についてです。
 請願12号は、学童保育の充実・発展のため、運営費の増額と施設家賃の全額補助を求めているものです。
横浜市は放課後児童育成事業で5年後は放課後児童の居場所として約2万4,000人分を確保するとし、そのうち1万人分を学童保育とする計画です。学童保育施設には面積基準を設け、基準を満たしていない学童クラブには広い施設へ移転や分割運営を求めています。
 現在、市内222か所の学童保育は4月1日現在、1万505名の留守家庭児童が通っています。しかし、約半分の施設が面積基準を満していません。5年以内に移転や分割が進まなければ、施設面積から定員が設定され、はじかれる子どもが出ることに憂慮せざるを得ません。
現在の家賃補助や移転補助の金額ではクラブ運営はできず、不足分全額が保護者負担になってしまいます。本来、運営費の負担割合は行政と保護者は半々とされていますが、2013年度決算では横浜市45.2%、保護者54.8%の割合です。現行制度では保護者負担がさらに増え、その結果クラブ運営の危機につながり、本市の放課後児童育成事業計画をこわしかねません。放課後児童の居場所として1万人分を学童クラブに求めるのであるなら、財源の保障があって当然です。31万8,000余人からの請願に賛成を求めます。

中学生に必要なのは配達弁当ではなく給食の実施

 請願第21号は、配達弁当ではなく中学校給食実施を求めるものです。
 本市教育委員会が示していた「横浜らしい中学校昼食のあり方」では、家庭弁当を基本とし、用意ができない場合は、事前予約の「配達弁当」と当日注文の「業者弁当」で補完するとしています。2016年度実施予定の「配達弁当」は「栄養バランスのとれた温もりのある昼食」として、名称が「ハマ弁」と決まり、事業者としてJTBグループ企業が選定され、12月中に5年間の協定を締結するとしています。事業者の全体統括はJTBグループ企業が行い、献立作成会社と3社の弁当製造会社の重層構成です。事業者が重層構成だと責任の所在があいまいになり、対処しにくくなります。また、献立は弁当ということで、栄養価の給食基準である文科省栄養摂取基準は適用されません。文科省栄養摂取基準は成長期の中学生にとって必須のもので、3年前エネルギー、カルシウム、ビタミン類が家庭では摂取しにくいことから、給食での摂取増を求め、基準を引き上げる改定をしました。
 事業者提案の販売価格は、ごはん・おかず・汁物で400円、牛乳をつければ500円近くです。おかずは10℃以下の冷たいものです。町田市では、給食と位置付けて、配達弁当は、ごはんと10℃以下の冷たいおかずで310円。2005年のスタート時の喫食率は40%でしたが、昨年は17.1%にまで下がっていると聞きます。同市は、栄養士が献立を作成し、食材購入基準を設けていても、生徒の利用は低いのです。
 本市では、中学生8万2,000人の2割が注文するとし、1日1万8,000食の想定ですが、給食の位置付けはなく、献立も食材も事業者任せ、価格が高く、冷たいおかずです。喫食率が17.1%という町田市の前例からして、2割の注文予想はきわめて疑問です。喫食率が低ければ事業は成り立たなく、事業者は弁当代と公費負担から利益を得なければならず、その結果、食材の品質低下が懸念されます。
 また、家庭弁当を用意するのが難しい場合の対策も、無料提供は病気やネグレクト家庭が対象で、経済的困窮家庭は対象から外されていることも問題です。
 心と体が最も成長する中学生の時期だからこそ、すべての生徒に栄養バランスのとれた食事を提供することを目指し、多くの自治体が給食実施に向けて動いています。また、本市においても子どもの格差と貧困が拡大し、共働きや一人親世帯の増加、手軽さ・コスト優先の冷凍食品・レトルト食品の繁用等で、食を家庭任せにすることのリスクが広がっている今だからこそ、家庭弁当を基本とする考え方を見直し、中学校給食の実施を求めるものです。

未来の社会の担い手である子どもへの投資を

 請願第13号は、小児医療費助成制度を、大半の都市が実施しているように、当面小学校6年生までの引き上げと、所得制限の撤廃を求めるものです。請願第14号は、子どもたちの行きとどいた教育のために、少人数学級の拡大や教員の増員、小・中・高校の全学年で30人学級の実施を国や県に働きかけることを求めるものです。請願第16号は、保育・子育て支援施策において、保育に関わる日用品の費用、文具費、主食費、行事などの費用の公的予算措置の拡充を求めるものです。請願第20号は、小学校給食を直営で実施し、必要な数の栄養士や調理員の配置等、食教育の充実・発展などを求めるもので、以上4件はいずれも次の社会の担い手となる子ども達の健やかな成長を保証する社会としての投資であり、市に対して求められる責任で、請願は採択すべきものです。

人権無視に等しい公的年金削減

 請願第22号は、公的年金削減の取りやめ等を求める、意見書の提出を求めるものです。
 厚労省は、今年度から物価や賃金の上昇よりも年金を低く抑えるとした「マクロ経済スライド」を発動しました。安倍自公政権は今後、約30年間に及ぶ実質的な年金削減を狙っています。現在、国民年金の平均月額は4万9,000円、女性は3万円台です。これは、年金でしか命をつなぐことができない人に対する人権無視に等しい削減そのものです。高齢者の悲痛な叫びに応えて、請願を採択されることを求めます。

平和メッセンジャー都市「横浜」は戦争法に反対を

 請願第15号は、安全保障関連2法の廃止を求める意見書の提出を求めるものです。
 6割を超す国民の大きな反対世論を押し切って、自民・公明の安倍政権が「数の暴力」で強行した憲法違反の法律を、このままに放置するわけにはいきません。「平和メッセンジャー都市」の称号を得ている横浜市の本議会が平和の立場を示すことは、とりわけ重要です。多くの賛同で、請願が採択されることを願って、討論を終わります。