議会での質問・討論(詳細)
2016年3月25日

■「教育委員会委員の任命議案に関する質問」白井まさ子議員(2016.3.25)

白井議員:私は、日本共産党を代表して、市第232号議案 横浜市教育委員会委員の任命について、市長に質問します。

制度が変わっても教育委員の役割は重要

 そもそも、教育委員会制度は1948年の教育委員会法成立に基づいて発足し、その際に「3つの根本方針」が示されました。1つは、国が教育内容の細部まで規定し監督するのでなく、教育は地方自治だということ、また住民の教育に対する意思が反映することが肝心であること、そして教育委員会は知事や市町村長の下に属さず独立していること。これが、子どもの幸せを考えた教育委員会制度の根本原則です。根本原則に沿った運営が行われるかどうかは、教育への識見や専門性を持つ教育委員が、保護者、子ども、教職員、住民の願いや要求をつかみ、自治体の教育施策をチェックすることで教育委員としての役割がどう果たせるかにかかっています。
 その後に、教育委員会制度を定めた地方教育行政の組織と運営に関する法律が2014年に改定され、新教育長が教育委員会の代表者となり、その権限が他の教育委員と比較して大きくなりました。本市は、2015年度から新制度となっています。しかし、法改定後の2014年7月17日付け文科省「通知」では、「改正後においても、教育委員会は合議制の執行機関であるため、その意思決定は、教育長及び委員による会議において、出席者の多数決によって決せられるものであり、委員の役割が引き続き重要」、また「改正後においても、委員は、執行機関の一員であり、教育委員会の重要事項の意思決定を行う責任者である」と記されているように、教育委員の役割は引き続き重要です。

グローバルな視点には日本の侵略戦争と植民地支配へ反省と清算が不可欠

 さて、今回の教育委員任命にあたって、市長は、任命の考え方に、「グローバルな視点」をあげておられます。この点に関わっては、看過できない事実を指摘せざるを得ません。それは、市立中学校で2016年度以降も育鵬社版歴史教科書が継続使用されることです。
 日本が国際政治に登場した明治維新以降の歴史の中で、アジアの一員でありながら、アジアの隣国を植民地化したり、領土拡大で攻め込んだ国は日本だけです。日本がアジアの中で生きていくための絶対条件は、アジア諸国民に多大な被害を与えた戦争と植民地支配についてきっぱりと反省をし、その誤りを清算することです。国際都市の横浜にとってはなおさら重要です。
 育鵬社版歴史教科書では、太平洋戦争時の日本のアジア進出について、第75節で「長く東南アジアを植民地支配した欧米諸国の軍隊は、開戦から半年で日本軍に破られた。日本軍の勝利に東南アジア、インドの人々は独立の希望を抱いた」で始まり、「これらの植民地は戦争が終わった後、十数年の間に次々と自力で独立を勝ち取っていった」で終えています。昨年8月の教科書採択時に育鵬社と同数票の帝国書院版には、植民地の支配と抵抗という項を起こし、戦争と植民地支配への反省材料を提供しています。日本の戦争と植民地支配への反省と清算という歴史認識が不可欠です。世界とアジアでは通用しない歴史教科書で学んだ横浜の子どもたちが大人になった時が、本当に心配です。
 また、育鵬社版の歴史教科書は、戦前の日本による「韓国併合」について、第59節で「欧州列強」が異を唱えなかったことを紹介し、「朝鮮統治では、併合の一環として近代化が進められた」として、「韓国併合後の朝鮮の変化」と題する表を載せ、人口増、米麦の増産、植樹数と普通学校数の増加などが記されています。しかも、検定合格8社のうち、育鵬社だけが「植民地」という用語を使っていません。帝国書院版には、「韓国の植民地化を進め」「日本は韓国を併合して、植民地としました」と明記しています。

仁川広域市の教育監、市民、市議会が歴史教科書採択に懸念

 本市は海外都市との連携に取り組み、交際交流を図っています。具体的施策として、姉妹友好都市8都市、パートナー都市7都市、姉妹・友好・貿易協力港6港です。韓国に関しては、釜山広域市と仁川広域市の2市がパートナー都市です。
 仁川広域市教育監は、本市の教育長に当たる方ですが、昨年8月の教科書採択前の7月22日付で岡田教育長あてに、「歴史教科書に関連する憂慮が教育長ならびに教育委員に伝わるよう願う」と書簡を寄せています。また、仁川広域市では「日本の教科書検定・採択の基準に国連の教育指針を適用すること」を求める国際共同アピール署名が取り組まれ、13万2,680筆となったと報じられています。仁川広域市教育庁の学校教育課長が教育監の代理として来日し、7月31日に、教育監の書簡と13万の署名を提出しようとしたところ、事前にアポイントを取ってあったにもかかわらず、受け取ったのはカウンター越しの教育委員会事務局でした。仁川広域市の市議会も、「日本の歴史歪曲教科書採択に反対する」決議を上げていると聞いています。
 こうした仁川広域市の意向に反した横浜市教育委員会に対して、どんな感情を抱くでしょうか。結果的に本市の両市との連携・交流事業が崩れることになりかねません。本市と仁川広域市の間で行われてきた職員派遣交流事業で、仁川広域市から1年間毎に職員が派遣され、本市で働いていますが、現に、仁川広域市の方から2016年度は中止すると言ってきており、派遣はありません。
 太平洋戦争をアジア解放の戦争とする偏った歴史認識は、「グローバルな視点」とは両立しません。そこで、市長が子どもに持たせたい「グローバルな視点」とはどういうものか、伺います。

問題多い横浜市の教育行政に対して市長の評価は

 次に、市長は、任命の考え方として、候補者は「本市教育行政の方針を大所高所から決定し得る識見を有していると考える」としておられます。この本市教育行政についてです。
わが党は、これまで、現行の本市教育行政のさまざまな課題を指摘し、解決に向けた提案をしてきたところです。
学校現場の大きな課題は、いかにして全ての子どもの発達と学力を保障し、いじめや不登校をなくすかです。そのために、保護者、市民が求めているのは、先生が子どもに目が行き届く少人数学級の拡大、全員が食べられる中学校給食など、子どもの悩みや困難さの背景にある貧困と格差を是正する手立てを学校現場でとることです。
 しかし現実は、市独自の少人数学級の拡大はありません。また、あえて教育の一環としての中学校給食を実施せず、家庭弁当の良さをことさら強調し、固執しています。「ハマ弁」を始めようとしていますが、問題は、無償での提供がごく一部の生徒に限られることです。ごく一部に限られることで、かえって負の烙印を押されるのではないかと懸念します。誰もが受けられる支援でなければなりません。教育委員会が「ハマ弁」を始めることで、新たな生徒の悩みが生まれては元も子もありません。また、校長先生から聞いているのは、「教育委員会から、ネグレクト家庭は無償提供するので学校で対象者を上げるようにと言われているが、どの生徒が該当するかの判断は児童相談所の専門職でも難しいのに、学校ではできない」ということです。「ハマ弁」の実施は学校現場を混乱させています。
 また、市立南高校の中高一貫校化で、すでに受験競争の低年齢化という弊害を招いていながら、サイエンスフロンティア高校にも付属中学校を設置します。一部のエリート教育は格差是正どころか、格差拡大を伴います。その一方で、重度重複肢体不自由の子どもたちが通う北綱島特別支援学校を3年後に閉校するとしています。設置義務は神奈川県にあり本市にはないので、左近山1校を新設するには、引き換えに北綱島1校を廃止せざるを得ないという理屈ですが、設置義務が市にないのは市立高校も同じです。
 また、4年前に国が武道の授業を必修化した以降、本市の中学校では柔道の授業でけがが続出しています。受診で医療費給付制度が適用された件数は、2015年度は169件です。市内の中学校数が146校ですから、全ての学校でけが人が出ているほどの数です。この中には、医師から障害が残る可能性を告げられている生徒もいます。必修化になる際に安全対策をとることが約束され、これまで武道安全対策委員会の開催や武道安全研修も続けられてきました。対策は取っていても事故が発生している現状をみれば、必修化そのものに無理があるのではないかと感じます。
 このように横浜市の教育行政にはさまざまな問題点が横たわっています。市長と教育委員会がこの現実を直視することが子どもたちへの責任の取り方ではないでしょうか。
 そこで、市長は、教育委員の任命権者として、本市の教育行政をどう評価しておられるのでしょうか。合わせて、何を課題と考えておられるのかを伺って、質問を終わります。

林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。市第232号議案について、ご質問いただきました。
 子どもに育んでいきたいグローバルな視点ですが、開港の地横浜で育つ子どもたちには、多様性を認める柔軟さを持ちながら、世界の人々と積極的にコミュニケーションをとり、協働を共生する姿勢を身につけてほしいと考えております。国際社会の中で、バランス感覚や自ら挑戦する気概を持ち、横浜の歴史や伝統文化に対する理解を深め、さまざまな国の人々と理解しあい、協働できる人になってもらいたいと考えています。
 教育行政の評価ですが、本市では、確かな学力、豊かな心、健やかな体の3つの基本に加えて、公共心と社会参画意識、国際社会に寄与する開かれた心を大切に、横浜らしい教育を推進しています。また、小学校1年生からの外国語活動や全中学校での英検の導入、児童支援専任教諭の全小学校への配置など、日本の教育を牽引する取り組みを進めていると評価をしています。
 課題についてですが、支援が必要な子どもへの切れ目のない対応や、教職員が子どもとしっかり向き合うための環境整備に取り組む必要があります。
こうした課題解決のほか、子どもたちが本物に触れ、豊かな感性を育む機会を創出することなども大切と思っております。オール横浜で教育を推進してまいります。
 以上、ご質問にご答弁いたしました。


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