議会での質問・討論(詳細)
2009年3月26日

【2009年第1回定例会】「予算議案反対討論」 大貫憲夫議員(09.3.26)

世界不況のもとで、何を優先課題として予算を組むのか

 私は、日本共産党を代表し、2009年度横浜市一般会計ほか15件の会計予算案および9件の予算関連議案に反対し、討論を行います。

 新年度予算でもっとも重視されるのは、世界を被っている不況のもとで、何を優先課題として予算を組むのかという問題です。
 昨年、アメリカの金融危機に端を発したこの不況は、わが国経済を直撃し、実質GDPの成長率は年率換算でマイナス12.1%となり、2月の月例経済報告でも景気の基調判断が5か月連続で下方修正を余儀なくされ、直近の市内企業の業況を示す数値BSI値は過去最低水準となり、今後大半の企業がさらなる業況悪化を覚悟しているという状況です。
 また、雇用では非正規雇用のみならず、正規社員の首切りや一時帰休が予定され、昨今の報道でも今年の春闘は軒並み現賃金体系維持として、賃金は上がらず、一層市民生活が苦しくなることは必至です。
 この情勢のもとで求められる予算は、不況に苦しみ、不安になっている市民の暮らしや中小零細企業・業者の営業を守ることを最優先に編成されなければなりません。

不況下にあっても基本的にはじゅうらいどおりの予算編成

 予算に反対する第1の理由は、この不況下にあっても基本的には従来どおりの予算編成であることです。
 新年度予算案を発表するに当たって、市長は、「この社会経済や本市の財政状況は、まさに『危機的』ともいえる状況」として、「通年とは異なる市政・財政運営が求められる期間と捉えて編成」したと述べています。
 しかし、実際には、この命題を理由に市民要求を抑え込み、「市民生活や市内経済を守る」とした施策は、国の施策の域を出るものではありません。一方、競争力のある国際都市づくりとして、スーパー中枢港湾整備など国言いなりの大型公共事業を聖域として進めることは、まさに「従来どおりの取り組み」です。

収支不足の穴埋めに市民サービス切捨て、国保・介護保険料引き上げ

  第2は、270億円の収支不足を埋める方法です。
 昨年9月に新年度の予算編成方針を示した時点で170億円であった収支不足が、この不況の影響を受けて270億円に増大したとして、その解消のために市民サービスを切り捨て、職員定数を減らすことにより経費を削減し、あわせて市債発行の増額や基金の取り崩しによって捻出するとしています。
 市民サービスの切捨てとして、940件の事業の見直しや受益者負担や職員定数の削減によって98億円を縮減するとしています。昨年度の504件、97億円と比較しても分かるように、その中身たるや、乾いたタオルを絞るようにして削っています。
 具体的には、私立幼稚園、里親推進事業、女性緊急一時保護施設などへの補助金の削減、老人クラブ助成金の削減、生産環境整備事業、市内農産物の生産振興事業の削減等々、ひとつひとつは小さいものですが、それぞれ関係する市民にとっては切実な問題ばかりです。
 受益者負担の見直しでは、定時制高校の給食費の値上げ、区役所駐車場料の有料化、介護保険料、国保料の引き上げなども問題です。
 市職員定数を538人削減し42億円の経費の軽減をしたとしていますが、業務がなくなり定数を削減したのではなく、その多くが業務の担い手を非正規職員や業務委託による不安定雇用の民間労働者に置き換えており、「官製ワーキングプア」を生み出す危険性が多大です。貧困と格差が広がる中で、自治体が労働者の低賃金化をもたらすスパイラルを加速する行為にほかならず、自治体がなすべき雇用対策からも逆行するものです。
市債発行の増額や基金の取り崩しで177億円を確保し、収支不足を埋めるとしています。これまで市長は、市債発行に当たっては民間投資家に向けてその格付けをあげるために、横浜市自身の財政健全性の証明手段として、市民生活に必要な市債発行まで厳しく抑えてきました。同時にそれは、市長にとっては行政改革の旗手を誇示するためのものであることは底が割れています。
 新年度予算では、特別会計等の市債発行が計画を下回った分の一部を上乗せすることによって、対前年度比マイナス5%の枠内で市債を増発したとのことですが、未曾有の経済危機状況のもとで市民サービスを低下させないための財源として、対前年度比マイナス5%にこだわらず、新たに市債残高を増加させない範囲で市債を発行することが必要です。また、基金についても来期の景気の動向をみながら可能な限り取り崩し、市民生活防衛に当てるべきです。

トップダウンで配分、各区局内で競争を強いる「自立分権型予算制度」

 第3は、予算編成の方法です。
 2009年度の予算編成方針は、これまでと同様に、競争力のある国際都市づくりに伴う国際戦略予算以外は、トップダウンで配分された予算内でコスト削減をするよう各区局内で競争を強いる「自立分権型予算制度」です。このやりかたは、現不況下で市民が求めている施策を、どのように予算に反映させるかという自治体本来の任務を放棄しているといわざるを得ません。市長の役割は、市民生活を防衛する立場で、何を優先して3兆円を超える予算を配分するのか、各区局の要望を積み上げ、市全体を俯瞰して予算編成方針を打ち出すことです。それをせずに、自立分権と称して、「競争力ある国際都市づくり」以外は前年度対比でマイナス10%シーリングを示すだけで、後は「これでやれ」という態度は許されません。
 このほど行われた市職員満足度調査で、市長、副市長は仕事をしていないとした職員が6割に達していることも、市内部からもトップダウンで各区局にコスト削減を指示するだけの予算編成のやり方に対する批判が高まっているものを示すものです。この「自立分権型予算制度」の根本的見直しを求めます。

検証も実態把握もしない不況対策は闇夜に鉄砲

 第4は、不況対策についてです。
 今後、非正規雇用の解雇によって厚生労働省の試算で15万人、業界団体の試算では40万人を超す失業者が発生するとされ、そのうえ正規社員の首切りも予想されます。
1月発表の本市緊急雇用対策で行った雇用・住宅対策では、予定した募集数に対し応募数が大幅に下回り、つまりあまり役には立たなかったわけですが、そのことに対する検証もされず、市内での失業者の発生実態や予想も把握されていないことは、闇夜に鉄砲を撃つようなもので、とても「的確」とはいいがたいものです。
 2009年度緊急経済対策として打ち出された雇用対策についても、国の「ふるさと雇用再生特別交付金」等の域を出るものではありません。求められているのは、本市独自の新たな雇用を創出する政策です。こういうときだからこそ、市長として本市独自の経済対策を打ち出し、市民の雇用と生活、中小零細企業の営業を守るという強いメッセージと姿勢を示すことが求められています。それをしない市長は、この不況に対する認識、ひいては市民の苦しみや不安に対する思いやりが欠如しているといわざるを得ません。
 新年度予算で道路整備や学校修繕費の増額を行い、公共工事を前倒し発注し、市内業者への発注を確保したことは、大いに評価できるものです。しかし、絶対量が少なすぎます。施設等整備費として対前年度比8.3%削減しましたが、たとえば市営住宅の新規建設、大地震発生時の緊急輸送路やライフライン確保のための電線類の地中化、保育園や特別養護老人ホームの増設など、こういうときだからこそ大胆に予算を投入し、内需拡大に結びつけることが必要です。

国いいなりの「競争力のある国際都市づくり」

 第5は、「競争力のある国際都市づくり」のための予算だということです。
 新年度予算では、スーパー中枢港湾推進、高速横浜環状道路整備、横浜駅周辺大改造、羽田空港の再拡張整備費を合わせると、総額で178億円です。
 世界では、ものづくりの中心が中国をはじめとするアジア諸国に移り、それに従って物流が大きく変化しました。また、景気の回復のため内需拡大に産業構造をシフトさせようとしているなかで、昨年来の世界同時不況はわが国の極端な「外需頼み」、特にアメリカに依存する脆弱な経済を露呈させました。これらのことは、これまでのようにコンテナの数をステータスとするような港湾経営の変更を求めています。スーパー中枢港湾推進・南本牧MC3・4整備は、少なくとも今後の世界の産業構造の状況や物流の変化を見定めるまで、事業を凍結すべきであり、高速横浜環状道路も同様です。
 羽田空港の再拡張整備に、国の言いなりに無利子資金を貸し出すことには反対です。さらには、横浜駅周辺大改造計画、新市庁舎整備なども凍結し、なによりも市政の中心を市民生活に傾注することが本市の任務です。

教職員がベネッセの宣伝は地方公務員法違反

 第6は、教育の問題です。
 本市の教育行政にも一言、苦言を呈します。横浜市教育委員会は民間企業・ベネッセと協働して家庭学習に関するガイドブックを作成し、今年入学の小中学生に配布するとしています。すでに2月の保護者説明会で一部配付済みです。
 横浜市教育委員会は、同委員会が目指す家庭学習の内容と、ベネッセが保有する教育情報や家庭学習のノウハウなどを合わせて、保護者にとって読みやすく役に立つガイドブックを作成し、その費用1500万円をベネッセが負担したことで経費削減にもつながったと自我自賛しています。
 しかし、ガイドブックで、ベネッセの研究員と大阪の大学教授から家庭学習「アドバイス」が一方的に述べられ、さらにはベネッセの通信教育「進研ゼミ」への入学の呼びかけや、応募すると鉛筆やドリルが無料でもらえる綴じ込みハガキまで付けています。このガイドブックを公立学校の教職員が配付することは、公正・中立でなければならないことを定めている地方公務員法30条に反する違法行為であり、教育委員会がベネッセと協働してベネッセの教材を購入させるように子どもたちを煽っているようなものです。即刻、ガイドブックの配布を中止させるべきです。
 横浜市教育委員会は、何よりもまず30人以下学級をはじめとする学校教育条件の充実を子どもたちに保障すべきです。

改憲手続法のための国民投票人名簿システム構築費

最後に、選挙管理委員会予算に改憲のための国民投票人名簿システム構築費5700万円を計上した問題です。
 「日本国憲法の改正手続きに関する法律」「改憲手続き法」は、国民の反対意見を無視して強行されたものであるとともに、最低投票率の定めがなく、投票率がどんなに低くても改憲案が通る仕組みになっていることや、公務員や教職員の自由な意見表明運動や国民投票運動などを不当に制限しているなど、国民の主権の原理に反する不公正で反民主的な内容です。さらに、改憲案の広報や広告の仕組みが、改憲勢力に有利になっています。こうした問題をあいまいにしたまま、手続きを既成事実化する選挙管理員会予算には反対です。
 以上、予算反対討論を終わります。


新着情報

過去記事一覧

PAGE TOP