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いわゆる「ごみ屋敷」対策条例案策定にあたっての申し入れ

2016年4月21日

横浜市長 林 文子 様

日本共産党横浜市会議員団
団 長 大 貫 憲 夫

 住居やその敷地内にごみ等をため込み、周辺住民に影響を及ぼす、いわゆる「ごみ屋敷」が社会問題になっています。しかし、ごみ屋敷解消に向けて、対策を進めるための条例を施行している自治体は、東京都足立区、大阪市、京都市などでまだ少数です。そのような状況の中、横浜市がごみ屋敷対策のための条例化を進めていることは、評価するところです。
 横浜市では現在、この条例案骨子についての市民意見を募集中です。日本共産党横浜市会議員団は今年1月、京都市、大阪市を訪れ、ごみ屋敷対策条例および対策状況等について調査を行いました。そこで得られた知見等を含め、条例化にあたっての意見、提案をいたします。
 ごみ屋敷対策は、いわゆる「ごみ」を処分することに主眼を置くのではなく、ごみ屋敷状態を生じさせた人(以下、当事者)への福祉的支援を中心に行うべきものです。当事者が理解・納得することなしに無理やり「ごみ」を処分しても、またごみ屋敷状態に戻ってしまいます。本市では、所管局が健康福祉局であり、2月19日付け神奈川新聞の報道によれば「当事者に寄り添う福祉的立場に立ちつつ」対策を行うとのことですが、くれぐれも「ごみ」の処分だけを目的にしないようにすべきです。
 当事者への支援にあたっては、暮らし、健康状態、家族関係など当事者に親身に寄り添って、相談に乗ったり、福祉サービスを利用したりすることが必要になる場合がほとんどと推察されます。そこで、支援や調査等にあたっては、当事者のプライバシーに十分な配慮が必要であり、条例に守秘義務を盛り込むべきだと考えます。
 当事者がごみ屋敷状態を解決しようとしても、金銭的理由でできないことがあります。大阪市では、ごみ屋敷解消にあたって100万円を上限とする経済的支援を実施するとしています。横浜市では、撤去等の支援に際して必要となる費用について減免規定が設けられていますが、減免だけでなく、経済的支援も必要だと考えます。
 一方、京都市の条例では、当事者が命令に従わない場合などに行政代執行および罰則としての過料を設けています。しかし、当事者には、ごみをため込んでしまう何らかの事情があります。従って、当事者の納得なしに行政代執行を実施したり、または過料を課しても、ごみ屋敷の解決には至りません。京都市でも、代執行を実施したのは近隣住民の命の危険性が認められた1件だけで、過料が課された事例はありません。
 京都市では、ごみ屋敷対策担当職員として専任2名と複数の保健師を配置し、各区に配置した対策事務局や関係局と連携して、対応にあたっており、大阪市でも対策会議を条例に設けています。ごみ屋敷対策を進めるには、関係区局が連携して、対策を協議し、支援を実施することが大切です。また、京都市が全国で初めて行ったごみ屋敷に対する行政代執行にあたっては、執行前に担当職員が126回訪問し、61回接触しており、他の例でも何回も訪問して良好な人間関係を築いて解決に結びつけるように努力しています。このようなことが出来るのは、専任の職員がいるからです。横浜市においても、条例の施行にあたっては、専任の職員を複数配置すべきです。
 ごみ屋敷を解決するには粘り強い働きかけが必要で、時には長い時間がかかります。強制的な措置を強引に進めることのないようにしていただきたいと思います。
 以上により、条例化にあたっての要望を下記のとおり、申し入れます。

1.ごみ屋敷状態を生じさせた当事者への福祉的な支援を、条例の中心に据えること。
2.当事者への支援、調査にあたっては、当事者の人権を守り、十分にプライバシーに配慮するよう、関係者の守秘義務を盛り込むこと。
3.ごみ屋敷状態の解決にあたって、経済的支援を設けること。
4.担当職員、関係区局等による対策本部、対策会議等の設置を明記すること。
5.行政代執行は盛り込まないこと。
6.罰則としての過料は課さないこと。
7.条例施行にあたっては、専任の一般職員・保健師ともに複数配置すること。

以上

当局からの回答は、次をご覧ください。
いわゆる[ごみ屋敷」策条例案策定にあたっての申し入れに対する回答について(PDF)