議会での質問・討論(詳細)
2016年5月20日

■「議案関連質問」 白井まさ子議員(2016.5.20)

◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、質問とそれに対応する答弁を続けて記載いたします。

白井議員:日本共産党を代表して、質問します。
 まず、熊本地震でお亡くなりになられた方々にこころからご冥福をお祈りし、被災された方々にお見舞いを申し上げます。一刻も早い復旧・復興に向けて、あらゆる手立てがとられるように求めていきたいと思います。
 4件の議案について質問します。

神奈川区臨海部の研究開発拠点の整備は市の政策的主体性を明確に

白井議員:はじめに、市第5号議案は、市長の付属機関として、神奈川区の臨海部の守屋・恵比須地区で研究開発拠点施設の整備・運営及び維持管理を行う事業者を選定する委員会を設置しようとする条例です。
 本市は「中期4か年計画」で、京浜臨海部については「研究開発拠点としての機能強化」を掲げており、また2014年度策定された「成長分野育成ビジョン」において、守屋・恵比須地区については「研究機能への転換による新たな研究開発拠点の形成」を図ると位置付けています。昨年度、同地区の研究開発拠点の整備を進めるため、昭和電工株式会社との土地交換で約4,400平米の用地を確保しました。
 今回の議案では、市長は明確な方針・コンセプトを示さず選定委員会を設置し、研究開発事業者の募集要項や選定を諮問するとしています。これでは本市が位置付けている臨海部の研究開発拠点の政策的主体性を欠くものです。事業者を選定する委員会に白紙委任することであれば、本市経済局の怠慢で責任放棄となるのではないでしょうか。本市の政策的な主体性を明確に示して進めるべきと思いますが、どうか伺います。
 本市は2014年に、事業の検討調査を行う事業者をプロポーザル方式で公募し、コンサルタントの日本経済研究所を選定し委託しました。その検討調査業務報告書では、「市内中小企業の利用促進」として「中小企業は、一般に製品開発のリソースが不足しており、これを補うための支援策の一環としての研究開発拠点整備が考えられる」とあります。これは、本市の中小企業振興基本条例で述べる「市内経済の持続可能な発展のためには、中小企業の意欲的で創造的な活動を支援することが不可欠」とすることに合致し、さらに市の責務としている「中小企業の振興に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」としていることそのものです。
 そこで、同報告書が述べている「市内中小企業の利用促進」をこの事業でどのように担保するのか、伺います。
 また、同報告書では次のように述べています。「ポストインキュベーション支援や、周辺の研究開発施設の集積促進といった、政策目標の達成を目指すものである。現段階の試算によれば、市の負担能力を上回る事業への補填が必要と考えられ、大きく事業性を改善させる方向が見当たらない場合は着手することは困難である」としています。今回、委員会を設置し、施設整備の事業者選定の方向へ踏み出したものとすれば、同報告書の指摘する事業性の改善策を市としてどのように考えているのか、伺います。
 経済局の説明では、今回、研究開発拠点施設の整備手法は、デベロッパーが建物を建設し、グローバル大手企業にワンテナントで賃貸して運営することなども想定したものとされています。これでは中小企業の振興にはつながらず、本市の責務にも抵触するものです。
 今回の研究開発施設の整備においても、本市が経済政策の基本としている中小企業振興基本条例との関連を明確に位置づけたものにすべきと思いますが、見解を伺います。

林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
 市第5号議案について、ご質問いただきました。
 市は政策的主体性を示して事業を進めるべきとのことですが、中期4か年計画では京浜臨海部を研究開発拠点として機能強化するエリアとしています。この方針に基づき、本事業は研究開発機能に転換されつつある守屋・恵比寿地区において、市有地を有効活用、さらなる集積を図ります。この目的にふさわしい事業者を選定するため、選定委員会を設置いたします。
 市内中小企業の利用促進についてですが、本施設では市有地を有効活用し、民間ノウハウを生かすことで企業規模に関わらず、守屋・恵比寿地区における研究開発拠点の形成を促進し、市内経済に活力を与える企業が入居することを期待しています。
 事業性の改善策についてですが、本事業は昭和電工株式会社との土地交換により取得した研究開発機能の立地に適した土地を活用し、民間事業者のノウハウや資金力を生かした提案を引き出すことで、本市の財政支援に頼らない持続的な事業運営を目指します。
 中小企業振興基本条例との関連を明確にすべきとのことですが、本事業の目的は京浜臨海部において研究開発機能の集積を進め、市内経済の活性化を図ることにあります。研究開発機能の集積に伴い、市内での事業活動がよりいっそう活発に行われ、市内中小企業の振興にも寄与すると考えています。

マイナンバー利用事務拡大で個人情報漏えいリスクも拡大

白井議員:次に、市第6号議案は、マイナンバー条例の一部改正で、生活保護などの法定事務とは別の市独自利用事務のうち、ひとり親家庭等の医療費助成と小児の医療費助成に関する事務を、マイナンバーを利用して行う事務に追加するものです。
 そもそも、マイナンバー制度は、本質的に個人情報の漏えいの危険性を有し、個人自らの意志と無関係に、情報漏えいのリスクを強いられるとして、憲法13条の保障するプライバシー権を中心とした人格権の侵害と指摘されています。
 本市では、宛先に届かず戻った通知カードが1月4日時点で17万枚あり、いまだに各区役所で保管された通知カードの再確認事務が続けられており、同様に全国の自治体に事務の負担が強いられています。
 今年1月の制度のスタート時から、区役所の端末がたびたび不具合を起こし、マイナンバーカードが受け取れない事態が発生しました。原因はシステム障害だったと地方公共団体情報システム機構が発表したように、システムが万全でないのに国が無理に実施を急いだことの弊害が露呈したものです。
 今回、拡大する事務の2つの医療費助成制度には所得制限があり、現状では市外から市内に転入の際に前年の所得証明書の提示が求められるため、市外の役所で取得するための手数料と郵送料または交通費がかかっています。年間の市外からの転入は、小児医療費助成が約6,500人、ひとり親医療費助成が約200人です。2つの事務に利用が拡大されれば、窓口でマイナンバーを申告すれば所得証明書の提示が不要となるものです。
転入者にとって、手間と費用がなくなれば、確かにメリットではありますが、これと引き換えに、マイナンバーが他の自治体との情報連携に使用されることで、個人情報漏えいのリスクが特段に拡大することとなる懸念があります。この点をどう考えているのか、伺います。
 国とともに本市はマイナンバーカードの取得を推進していますが、マイナンバーカードがなくても、行政窓口ではこれまで通り手続きができることになっています。生活保護などの法定事務の窓口では、マイナンバーを記入するよう求めていますが、記入しなくても、これまで通り手続きができることになっています。マイナンバーカードがなくても諸手続きができること、マイナンバーを記入しなくても不利益はない、これらのことを窓口の職員に徹底し、「広報よこはま」などで市民に周知することが必要と考えます。見解を伺います。

林市長:市第6号議案についてご質問いただきました。
 個人情報漏えいリスクが拡大するとのご懸念ですが、マイナンバーを含む個人情報については法令等でより厳格な取り扱いが定めており、本市でもマニュアルを作成し、研修等により取り扱いの徹底を図っております。また、個人番号利用事務で利用するネットワークをインターネットから分離するなど、システム的な対策も講じております。今後も国の指針に則って、さらに強化してまいります。独自利用事務の拡大に際しましても、これまで以上に緊張感を持って市民のみなさまの個人情報をしっかりと守ってまいります。
 マイナンバーカードやマイナンバーがなくても行政サービスが受けられることを徹底し、市民に周知すべきとのことですが、手続きをされる方がマイナンバーカードをお持ちでない場合は、通知カードと本人確認書類を確認させていただくなどの方法によりまして、マイナンバーを提供していただいております。また、たとえば生活保護の事務において窓口でマイナンバーの提供をいただけない場合であっても、そのことをもって申請を拒んだり、申請を却下するようなことはございません。マイナンバーは市民サービスの向上などのため全国に導入された制度ですので、市民のみなさまに手続き上必要な場合はマイナンバーを提供いただけるよう、引き続き制度の周知を進めてまいります。

訪問サービスには資格を持ったヘルパーの観察力が必要

白井議員:次に、市第10号議案は、介護保険制度において、本市で今年1月から始まった新しい介護予防・日常生活支援総合事業についてです。要支援1・2の人への現行の訪問介護に加え、新たに2016年10月から、事業所がいわゆるホームヘルパー資格のない人を雇用して訪問サービスを実施することを可能にしたことに伴う条例改正です。議案自体は、現在、事業所で利用者40人に対しサービス提供責任者1人が配置されていますが、新たなサービスの利用者も利用者としてカウントする、また、新たなサービスの提供責任者は、これまでのサービス提供責任者が従事するとする内容です。
 国が示した新制度は、要支援1・2の人へのヘルパーとデイサービスの給付を市町村が行う新総合事業に移行し、サービス内容や価格、利用者負担は市町村の裁量で決め、ボランティアやNPOなども担い手にしてコスト削減を図り、要介護認定を省略し、基本チェックリストで対象者を判定できるというものです。介護認定に至らない高齢者を増加させることで費用の効率化をうたっており、総合事業の事業費の伸びは75歳以上高齢者人口の伸び率の範囲内に納めるよう、上限が設定されます。
 本市では、要支援1・2の人へのサービスの給付総額のうち、総合事業移行分の直近3か年平均が8.38%増加しているため、これを75歳以上高齢者人口の直近3か年の伸び率実績である4.4%の範囲内に収めるとしています。
 10月から、ヘルパーの資格がなく事業所で研修を受けた人による訪問サービスが選択肢に加わります。ヘルパーの資格のない人も、もちろん掃除・洗濯・調理などは可能で、利用者とかかわりますが、そこには専門的な観察力の不足は否めません。資格のあるホームヘルパーによる生活援助は病気や認知症の発見につながるような専門的な観察力を持った上で利用者とのかかわりがあるため、要介護になることを留めることになっているケースが多々あると思います。新たなサービスを選択肢に加えることが要介護への移行を止めることになっていくのか疑問です。
 現行相当のホームヘルプサービスか、それとも無資格者によるサービスのうち、どのサービスが適当かは、最終的には地域包括支援センターの担当者の判断となりますが、利用者の選択権が優先されるべきです。しかし、市として事業費の伸びを抑えるという枠内での実施となるため、利用者の希望や包括の判断に何らかのタガがはめられるのではないか危惧します。仮に、市が利用者の希望や包括の判断をコスト優先で緩和基準によるサービスに誘導するようなことがあって、不本意なサービスしか受けられないという制約が出てくれば、サービスの質の低下となります。この点についての認識を伺います。
 新たに実施される緩和した基準に基づく訪問型サービスは、事業所への報酬を現行の9割としていますが、事業所では新たな雇用者への研修業務も加わるためその費用も発生し、事業所の経営難につながりかねないと考えます。名古屋市では市が研修を行うと聞いています。「事業所が研修を実施する費用を横浜市が負担するなど、研修に市が責任を持つべき」という事業者からの声があります。この声にどう応えるのか、伺います。
 介護保険制度の改定によって、従来の要介護認定に加えて「基本チェックリストの仕組みが導入されました。このチェックリストは、介護予防事業の対象者を把握するための25項目の簡易な質問項目です。医師が意見書を書く要介護認定とは別物であり、当然要介護認定の判定はできません。チェックリストだけで振り分けを進めれば、本来「要介護」に該当するはずの人まで認定から締め出され、要支援者と要介護者が減らされるリスクが指摘されています。介護保険サービス利用申請者を窓口で要介護認定から締め出す新たな「水際作戦」ではないかとの市民の不安を解消するために、基本チェックリストは認定を希望しない場合のみの限定的な実施とすべきと思いますがどうか、お考えを伺います。

林市長:市第10号議案についてご質問いただきました。
 訪問型援助サービスの導入についてですが、本サービスはご本人と相談の上、必ずしも専門的な資格を持った訪問介護員によるサービスを必要としない場合に提供します。従事者には介護事業所による一定の研修やOJTを通じて必要な知識・技術等を身につけていただくことで、サービスの質が確保できると考えています。人材不足に対応するためにも、本サービスを導入することで介護人材の裾野を広げる必要があると考えています。
 研修について、市が責任を持つべきとのことですが、人材確保をしやすくするために、各事業所で採用後に研修をしていただくことにしました。
 訪問型生活援助サービスの単価については、事業所の人材育成の負担等を考慮して、現行単価の90%とし、他都市と比べ高めの設定をしています。また、研修実施にあたっては、本市として標準テキストを作成し、必要な内容をお示しします。
 基本チェックリストについてですが、本年1月から各区1か所の地域包括センターで試行実施しています。試行実施にあたり、制度について丁寧にご説明した上で、訪問介護、通所介護や一般介護予防事業など、総合事業のみを利用することが想定される方などにご案内をしておりますが、要介護認定を希望される方には認定申請をしていただいています。今後全市で実施していくにあたりましても、ご本人のニーズにあわせて適切なご案内ができるよう、必要な研修を行いながら進めてまいります。

寿町の市営住宅建て替えは簡易宿泊所入居者の受け入れ先を考慮せよ

白井議員:市第12号議案は、横浜市営住宅条例の一部改正です。中区の寿町総合労働福祉会館の建て替えに伴い、会館の4階から9階を占める市営寿町住宅80戸を一旦廃止などするものです。
 寿地区は、かつては日雇い労働者のまちで、1974年に国・県・市の所管で福祉施設・職業紹介施設・市営住宅を含む寿町総合労働福祉会館が開設され、今般、耐震対策が必要となり、2014年4月に、将来のまちのあり方も想定した建て替えでの再整備計画が策定されました。
 現在は、地区内に生活保護を受給する人が増加し、福祉ニーズが高くなっていることから、会館再整備の基本方針として、寿地区のまちの方向性を「高齢者をはじめ誰もが安全・安心に住み、お互いに支えあいながら交流しやすい開かれたまちづくりを緩やかに進めていく」としています。これに基づき、新たに建てる会館にこれまでと同じ80戸を市営住宅として整備するとしていますが、2DK・3DKのファミリータイプをメインにして整備する計画で、1DKの単身用は20戸程度となっています。
 この寿地区の現状は、主な住民は単身高齢の男性です。市の調査では、122軒の簡易宿泊所で生活する人は約6,300人で、地区人口の7割を占め、その8割以上が生活保護受給者です。昨年6月に市議団は簡易宿泊所を見学しました。外観はきれいなマンションのようでしたが、居室は3畳一間で、押し入れはありません。トイレと洗面所は共同、シャワー室と洗濯室は有料です。あくまで、簡易宿泊所は旅館業法に位置付けられる宿泊所であり、そもそも長く住む住居ではありません。3畳一間が人の住まいとしてふさわしい場所とは到底いえません。
 中区役所が、簡易宿泊所生活者のうち、希望者に民間アパートなどへの転居を働きかけていると聞いてはいますが、実際には家賃や保証人の壁があり、生活習慣の改善の必要なケースも多く、新たな地域にもなじみにくいことなど、民間アパートへの転居は困難となっていることは想像に難くありません。市が責任をもって簡宿からの転出を進めるためにも、受け入れ先として寿地区内に市営住宅の大幅な整備が必要です。会館の再整備基本計画では1DKの想定住戸面積は30平米から35平米です。会館建て替え再整備のチャンスをとらえて、国の労働行政に関わる機能を検討中としている敷地も含めて、簡易宿泊所生活者の人の住まいとしてふさわしい受け皿としての市営住宅を大幅に増やすお考えはないのか伺って、質問を終わります。

林市長:市第12号議案についてご質問いただきました。
 寿町総合労働福祉会館再整備を機会に、市営住宅を簡易宿泊施設入居者の受け皿とすべきとのことですが、今回の再整備は国の施設も含め、現地での建て替えとなり、敷地条件等から従前と同様の規模となります。建て替え後の住宅は地域の多世代間の交流も目指し、高齢単身者やファミリー所帯向けに80戸を建設しますので、周辺の簡易宿泊施設に入居している方々も応募資格を満たせばお申し込みいただくことができます。
 以上、白井議員のご質問にご答弁申し上げました。


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