議会での質問・討論(詳細)
2016年6月3日

■「議案等に対する討論」 宇佐美さやか議員(2016.6.03)

 宇佐美さやかです。日本共産党を代表して、6件の議案、3件の請願の不採択に、反対の立場から討論いたします。

中小企業振興基本条例の立場で中小企業の開発研究を支援せよ

 まず、市第5号議案、京浜臨海部守屋・恵比須地区研究開発拠点施設整備・運営等事業者選定委員会条例の制定についてです。
 横浜市は「中期4か年計画」で、京浜臨海部については「研究開発拠点としての機能強化」を掲げており、2014年に策定した「成長分野育成ビジョン」では守屋・恵比須地区を「研究機能への転換による新たな研究開発拠点の形成」を図ると位置付けています。そして、事業の検討調査を行う事業者をプロポーザル方式で公募し、日本経済研究所に委託しました。同研究所から出された検討調査業務報告書は、研究開発拠点強化の必要性や開発予定地の概況、拠点機能の立地可能性や事業性の検討など、さまざまな角度から調査・検討したものです。
 ところが、報告書の提案する中小企業が多く入居する事業計画案では市費がかかりすぎると同報告書を白紙にし、今条例案で設置する委員会に業者の選定だけでなく募集要項・審査基準の策定まで丸投げしようとするものです。
 しかし、横浜市中小企業振興基本条例の立場に立てば、本当にこれでいいのでしょうか。日本、横浜経済のために、中小企業の研究開発事業を支援・成長させるための事業と位置付け、必要な予算をしっかり付けて、同事業を進めなければなりません。
 今回の議案は中小企業振興基本条例の精神と相反するものであり、賛成することはできません。

個人情報の漏えいの危険性をはらむマイナンバーの利用範囲を拡大するな

 次に、市第6号議案についてです。これは、ひとり親家庭等の医療費助成と小児医療費助成に関する事務をマイナンバー制度に追加するものです。
 マイナンバー制度導入で、国民の利益と権利が大きく損なわれます。その根拠の第一は、マイナンバーには個人の所得、健康保険・雇用保険の社会保障、貯金、健康診断、予防接種などの広範な個人情報が紐づけられるために、いったん情報漏えいすると、個別情報の流出にとどまらず、あらゆる個人情報の漏えいにつながる危険があることです。また、その管理は行政にとどまらず、民間事業者毎に保管・管理されることや、マイナポータルというWebサイトの設置によって、個人情報の漏えいの危険が飛躍的に高まることです。
 第二に、国家によって個人情報が一元管理されることです。マイナンバーカードの発行状況にみるように、国の計画通りにはマイナンバー制度は進んでおらず、一方国民の側では不安や批判の声と運動が拡がり続けています。
 マイナンバー制度はプライバシー権などを侵害し憲法に違反するとして国を相手どって、個人番号の収集・利用の差し止めや削除などを求めた訴訟が、横浜を含め全国8つの地裁で進んでいます。このような状況のもとで、本市が率先して「できる」規定である利用範囲を拡げることに同意できるはずがありません。

訪問介護サービスは有資格のヘルパーの観察力があってこそ

 次は、市第10号議案についてです。
 本議案は、市町村が主体となって行う新しい介護予防・日常生活支援総合事業に関するはじめての議案です。横浜市の総合事業のうち、訪問型サービスでは、今まで国家資格が必要な要支援1・2向けのホームヘルプ業務の一部を、一定の研修のみを受けた無資格の人に担わせ、その報酬を9割としています。
 市長は無資格の方が担うことについて「介護のすそ野を広げる」と答弁されましたが、そもそも介護人材が足りないのは、処遇が低すぎるためです。今回の処遇で、無資格の方や住民ボランティアと同列の事業従事者とされた有資格のヘルパーさんたちの賃金や労働条件が劣悪になっていくことが危惧されます。
 ヘルパーさんたちは今まで、訪問介護サービスで利用者を専門的な観察力で見守り、介護度の重度化を抑制してきたケースが多くあると聞いています。本市の対応は、そういったヘルパーさんの専門性をないがしろにするものです。
 利用者にとってサービス水準が落ちること、従事者にとって処遇が改善しないことを、認めるわけにはいきません。

寿町市営住宅建て替えは現行戸数ではなく大幅増を

 次に、市第12号議案についてです。寿町市営住宅の建て替えに伴って条例を一部かえるものです。
 市営住宅の建て替え自体については賛成ですが、建て替えの原因となる寿町総合労働福祉会館再整備事業は、「地域住民の生活環境及び福祉の向上等」のニーズに応えるとともに、「寿地区の将来を見据え」、まちづくりを進めることを目的とするものです。
 寿地区の最大の課題は、三畳一間の簡易宿泊所を事実上の住まいにしている単身・高齢者の住環境の改善です。寿地区の将来を見据えた計画というのであれば、この課題解決に資する計画にするべきです。そのためには、市営住宅の建設戸数を増やし単身用住宅の戸数を増やすことなど、建て替え計画を充実させる必要があります。わが党が議案関連質問で提起したように、「職安」として国が使用していた部分も含めて活用を図るなど、積極的な対応が必要です。
 寿地区の課題解決への機会として、福祉の向上の見地から本事業の計画を見直し、市営住宅戸数を現状維持ではなく増やすべきと考えます。

紹介状なしの場合の受診料加算は市民への負担を増すもの

 次は、市第24号議案および病第1号議案についてです。
 「持続可能な医療制度を構築するための国民健康保健法の一部を改正する法律」が昨年5月に成立したことを受けて、市立大学病院と市立病院に紹介状がなく受診した際に、初診で5,400円、再診で2,700円を上乗せするものです。
 国は、国民健康保険について制度発足以来の大改悪を行い、医療費削減の仕組みを作るとして、2018年度から国民健康保険の財政運営が市町村から都道府県に移管されます。市町村が引き続き保険料を決め徴収しますが、都道府県が標準保険料率を示すことになり、今後は保険料の値上げや取り立て、保険証取り上げなどが一層強まる恐れがあります。また、後期高齢者医療制度の保険料の特例軽減を政令により廃止する、65歳以下の入院時の食事代引き上げなど、どれも国民への負担を増すもので、いつでもどこでも安心して医療にかかれる国民皆保険を根底から揺るがすものです。
 今回の条例もその改悪の一つで、「大病院に患者が集中しないように」という理由で患者に一定額の負担を強いるものです。すでに一部の病院で追加負担を実施していますが、全国医学部長病院長会議の調査では、患者の減少につながらないことが判明しています。いくつも病院を回らないと診断がつかない患者が少なくない中で、追加負担は病気の早期発見・治療を妨げる結果しかもたらしません。

事業主の配偶者や家族を労働者と認めない所得税法56条を廃止せよ

 次は、請願第1号「所得税法第56条を廃止するよう国に意見書を提出すること」についてです。
 所得税法第56条とは「事業主の配偶者とその家族が事業に従事したとき、その対価の支払いは必要経費に算入しない」というもので、自営業・農業に従事する女性や子どもに対する人権侵害だとして廃止を求める運動が広がっています。
 この第56条廃止については、この一年間で新たな進展がありました。2015年12月25日に閣議決定された「第4次男女共同参画基本計画」の「税制の検討」には同法が含まれると、政府は国会質疑で答弁しています。また、2016年4月、業者団体の政府交渉の中で、財務省は「引き続き検討する」と回答しています。さらに、今年2月に開催された第63会期国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に対し、家族経営における女性の労働を認めるよう所得税法の見直しを検討することと勧告しました。
 現在、この意見書を採択した地方議会は445あります。「女性差別撤廃条約」締結国の日本として、国連からの勧告を受け止め、この間の政府の見解を前進させるために、全国最大の基礎自治体である本市会から所得税法第56条を廃止するよう国へ意見書をあげるべきです。

放課後児童クラブが家賃補助・移転補助を国から受けられるように

 請願第3号は、「放課後児童健全育成事業実施要項の改善を国に求める意見書の提出方について」です。
 横浜市は国に対して、放課後児童クラブ待機児童はいないと報告しています。そのため、今年度国が予算化している放課後児童クラブ運営支援事業のメニューのうち、賃借料補助や移転関連費用補助等は受けられません。これらのメニューは放課後児童クラブのニーズが高く、かつ施設賃貸料が高騰している横浜市域だからこそ必要性が高いものです。請願は、この国の支援事業が横浜でも利用できるよう国に意見書の提出を求めるものです。
 神奈川区にある放課後児童クラブの保護者会の代表の方は、移転できる物件を見付けたものの、「耐震補強をした証明書がないために許可がでなかった」「再度耐震検査をするのにもかなりのお金がかかる」「折角見付けた良い物件だったけど、諦めました」と言っていました。
 児童の安心安全を考えて昨年施行された「放課後児童クラブの設備及び運営についての基準条例」に則り、耐震化と面積確保のために移転しようとしているのに、資金不足を理由に断念せざるをえなかったことは、やはり納得がいかないと思います。
 条例に定められた基準を満たす施設を確保するためには国費の投入も必要です。現行の国の補助条件である待機児童要件は実態に合っていません。その要件の廃止を求めることは道理あることです。

放課後児童クラブに必要なパソコン等の購入のための国庫補助を

 請願第4号は、放課後児童クラブにパソコンやパソコンソフトの購入経費として、国費を入れた新たな補助を求めるものです。
 現行で補助されている運営費からパソコンやソフトを購入できることになっていますが、各クラブでは、より優先される使途があるために、なかなかパソコン購入費にまわせないと聞いています。
放課後児童クラブでは個人情報を扱います、安全に事務を行うための機器の導入や更新の優先順位は高いわけですから、国費を入れて補助の充実を求めるのは当然です。
 以上で、討論を終わります。


新着情報

過去記事一覧

PAGE TOP