議会での質問・討論(詳細)
2016年10月6日

■建築局(岩崎ひろし)

上郷の森は市民の貴重な財産

岩崎議員:委員長、スライド使用許可をお願いします。
 栄区上郷猿田地区の開発から伺います。まず、スライド(スライド1)を見てください。

建築局スライド1 上郷開発地区は、丸で囲んでいます。こちら(スライド2)は、その地区を近くでみた場合です。
建築局スライド2円海山を中心に緑地がありますが、大規模開発でできた住宅地で囲まれています。開発予定地は、その緑地を守る最前線に位置しています。これ以上緑の浸食をやめなければならないと思います。
 いよいよ都市計画決定の手続きが開始されます。私達は重大な段階にいると思います。上郷開発について、今一度、原点に立ち返って考えるべきだと思います。当局にも少し協力してもらって、改めて勉強してみました。その成果も生かして、意見を述べたいと思います。
 上郷の森は、緑・自然の宝庫であるとともに、歴史的価値の高い遺跡もある、市民の貴重な財産です。今日、国は国土利用計画で市街化抑制、市街地の縮少を打ち出し、本市はみどりアップ計画を推進中です。こうした時に、樹林地を横浜スタジアム約10個分位切り開く、こんな計画は極めて異常であります。実際、現在、12.5ヘクタールもの樹林地を一気に切り開く開発事例は、市内にはありません。
 人口減少・超高齢社会になる2025年まであと9年です。上郷開発事業が完了に近づく時期と重なります。その時に、新しい市街地が必要になるとは想定できません。さらに、予定している大規模盛土造成地にしても、大地震の際の安全対策はいまだ確立していません。果たしてこの開発は思惑どおりできるのか、大いに疑問であります。
 このように見てきますと、開発事業者が40年前に土地を買い集めた時とは状況は全く違ってきています。今では、この土地は不良資産といってよいと思います。長い間、翻弄され続けた元々の地権者のみなさんは、その意味では被害者ではないでしょうか。
 上郷猿田地区は、今更、大規模開発する地区ではありません。
 そこで伺っていきます。11日8日に予定する「上郷猿田地区都市計画市素案説明会」、この説明会は、開発がどういうものなのか、市民が知るうえで極めて重要な機会です。私は、昨年11月の説明会に参加しました。そこでは、開催のお知らせ・周知が足りないと思いました。
 昨年11月の説明会、今年11月に予定する説明会、それぞれ案内チラシの作製数、配布対象地域、配布方法について、伺います。

中川企画部長:昨年の市素案の案の段階では、基本的な周知として、広報よこはま11月号に説明会等のお知らせを掲載しております。また、先生おっしゃる地区内および周辺の住民の方々へは、都市計画の決定や変更を行う区域から50メートルの範囲に含まれる自治会町内会単位を原則としまして、ポスティングによるチラシの配布を行っております。約4,100枚のチラシを作成し、委託により配布したり、区役所や最寄の地区センター等で配布をいたしました。
 来月予定しております市素案説明会についても、広報よこはま10月号に掲載したほか、今月3日よりホームページでの公表や、地区内の地権者の方々へのリーフレットの郵送を行っております。そのほか、昨年と同様に約4,100枚のチラシを作成し、配布を行ってまいります。

岩崎議員:あまりにも貧弱な取り組みです。11万筆の反対署名があり、何万人もの周辺住民が生活している地域です。賛成、反対の立場は別に、大変関心の高い案件でもあります。周知の規模を抜本的に引き上げることを求めておきます。

住民説明会は複数開催を

岩崎議員:次に、多くの人から「専門用語ばかりで、よく理解できない」という声を聞いてきました。参加者に理解してもらえる説明内容にどう改善するのか、伺います。

中川企画部長:説明会では、説明会の主旨や専門的な都市計画の内容を、図や文字の大きさ、色の組み合わせなどに配慮し、スクリーンにスライドを映しながら、なるべく分かりやすく説明する工夫をしてまいります。また、説明会に参加できない方もいらっしゃいますので、説明会で使用したスライドをホームページで公表するなどしてまいります。さらに、ご不明な内容がございましたら、窓口あるいは電話などでもお問い合わせいただけるよう、ご案内をしてまいります。

岩崎議員:11月の時にはですね、参加者の多くの方が発言できずに終わってしまいました。今回の説明会では、これで終わりとしないで複数回開催するなど、そういう機会を工夫すべきだと思いますが、どう考えておられるんですか。

坂和建築局長:委員のご指摘は、市民の理解を得ながら進めていくべきだという主旨だと受け止めさせていただいております。 
 これまでも、26年1月に都市計画提案を受けて以降、任意の手続きになりますが、昨年までに説明会を3回開催してまいりました。また、この間、地元の方々から直接、要望書などをいただいたほか、様々な団体や個人の方々とお話をさせていただきました。その中で、緑地保全への思いや将来のまちづくりに対する期待や不安、防災面、また蛍や遺跡に関する内容など様々な意見をいただきながら、今回の市素案を作成させていただきました。引き続き事業の進捗にあわせまして、その都度必要な説明などを進めさせていただきます。

岩崎議員:賛成反対はともかくとして、この開発っていうのはどんなものか、どういう意味を持っているのかということが市民のみなさん、地域のみなさんに良く分かるように、しっかりやっていただきたいということをお願いしておきます。

都市計画審議会は、市民の意見を尊重した審議を

岩崎議員:次に、この手続きを進めていく都市計画審議会およびその審議のあり方についてです。市民が意見を述べる機会は、今後どのようになるのか、伺います。

坂和建築局長:今月末から来月にかけまして、市内各所で実施する線引きの全市見直しに関する説明会などと、これとは別に、先ほど先生おっしゃいました11月8日に上郷猿田地区に関する説明会を開催し、来年1月には公聴会を開催する予定となっております。その後でございますが、横浜市地区計画等の案の作成手続きに関する条例に基づく縦覧や、および意見書受付や、都市計画法に基づく縦覧および意見書受付などによりまして、広く市民のみなさまの意見を伺った上で、来年度に都市計画審議会へ付議し、ご審議いただくという予定となっております。

岩崎議員:次に、本市の線引き見直し手続きの中で、市素案の案から市素案になる過程で、24地区で修正がありました。都市計画手続きが開始されたとしても、その後の審議や検討、市民の意見などで当局の案が変わり得ることを示したものとして注目しています。今回24地区修正したことを、一つの見識として評価したいと思います。上郷の森についても、ぜひこれにならって努力してほしいと思います。
 そこで伺います。都計審が審議を通じて今回の上郷地区の問題で当局案を否決した場合は、開発する決定をしないと考えてよいのか、伺います。

坂和建築局長:都市計画法では、都市計画審議会の議を経て、都市計画を決定するものとされております。今後、都市計画審議会の場でご審議いただきますので、その審議結果についてはしっかり尊重したいと考えております。

岩崎議員:ちょっと分かりにくい答弁ですけど、要するに審議会がこれを了承しなければ開発はできないというふうに理解をしておきます。
 市は、上郷地区の開発を許可する判断として手続きを始めました。都計審はこの判断が妥当かどうかを審議することになります。都計審が市民の意見を真摯に受け止め、原点に立ち返って審査されることを強く求めておきます。
 上郷猿田地区は調整区域であります。そうした地区を、わざわざ線引き変更してまで開発許可する必要はありません。現行の線引きを維持して開発を抑制すべきです。

都筑区マンション問題、引き続き被害住民に寄り添った支援を

岩崎議員:次にいきます。都筑区マンション問題について伺います。
 私たち日本共産党は、「原因の徹底究明、再発防止の答えは現場にある」として、当局に原因糾明の努力を求めてきました。
 当局は、建築基準法第12条5項や同・施行令第38条1、3項等に基づいて、大変努力したと思います。8月26日、ついに建築基準法違反を認定しました。一連の取り組みを評価したいと思います。これまでの取り組みと到達点について、当局はどう評価しているのか、伺います。

坂和建築局長:これまで事業者や施工者に対しまして、建物の安全性の確認、徹底とした原因究明、住民の方への適切な情報提供と丁寧な対応の3つの指導方針のもと、指導してまいりました。これまで、先生言われましたように建築基準法第12条5項に基づく安全検証や原因究明を事業者などに求め、検証が進んでいるものの、現在まだ一部が提出されていない状況でございます。また、昨年10月に国土交通大臣へ再発防止の観点から、建築業法など関係法令の検証に関する緊急要請をし、国土交通省におきましては、今年1月に施工者に対して建設業法による処分がされ、3月には工事管理ガイドラインが策定されるなどの対応がされています。
 今回の問題は、住まいの安全という市民生活の根底を揺るがす、決してあってはならないことであり、これまでの取り組みを踏まえ、引き続き対応を進めてまいります。

岩崎議員:三井不動産レジデンシャル株式会社など事業者側は、今、答弁にもありましたけど、一部原因調査報告書を未提出と聞いています。今後、違反に対する処分等も含めた責任追及が必要です。そこで、市としては今後、どう取組むのか、伺います。

小野田建築指導部担当部長:今ご質問いただきました件でございますが、建築基準法第12条5項に基づく安全検証につきましては、一部の建物につきまして杭の支持力が不足することや、震度5強程度の地震で柱や梁の一部に損傷がある可能性があることが確認できたことから、今年8月にご指摘のように建築基準法違反を特定いたしまして、国土交通省に報告を行うとともに、事業主と施工者などに是正勧告を行ってございます。
 また、原因究明につきましては、事業主や施工者からの報告が一部ご指摘のとおり完了してございませんが、引き続き施行や工事管理などの観点から内容を十分精査し、建設業法や建築仕様を所管している国土交通省へ報告することとしてございます。

岩崎議員:事業者側が居住者の生活再建に責任を負うのは当然です。同時に、市としてしては、建替えが円滑に行われるように被害住民に寄り添った支援の継続が引き続き必要だと思いますが、市として今後どうするのか、伺います。

坂和建築局長:住民のみなさまについては、これまでの安全性や生活の激変への不安を抱えながら大変ご苦労されてきたと思います。住民のみなさまからのご要望につきましては、管理組合を通じて庁内体制を整えて支援してまいりました。引き続き、転居に伴う通学への対応や、建替え手続きなどが適切に行われるよう、庁内連携して住民のみなさまが安心できるよう支援してまいります。

行政はもっと踏み込んだ建築トラブル対応を

岩崎議員:次に、建築にかかわるトラブルや住民相談への行政の対応について伺っていきます。建築紛争に関して、市はこれまで「民・民の問題に立ち入らない」との姿勢でした。しかし、そこにとどまっている限り、市民の暮らしと財産は守れないと考えます。そこで、戸塚区の3つの現場を例に伺います。

建築局スライド3 スライド(スライド3)を見てください。上倉田町の建売り住宅が建ったところです。ここでは、3階建建売住宅が建築されたために、隣接住宅は朝日と午前の太陽を遮られてしまいました。
 次のスライド(スライド4)は、戸塚町工場跡にマンションが建ちました。中高層マンションの建築で、近隣住宅地は、この写真でいうと右側が新しいマンション、左側の並びに住宅がかなりあります。この住宅地全体が、午前中の日照がほぼ奪われています。
 この2つの事例では、日照障害や資産評価の下落など、実損が発生しています。建築局スライド4
 次のスライド(スライド5)を見てください。平戸三丁目の宅地開発です。ここは面積3,000平米超の開発にもかかわらず分割開発方式で、道路等の公益用地を免れています。狭隘道路の交通安全の課題が解決できません。
 3件に共通するのは、区役所や建築局に相談したが、「民・民の問題」とされ、結局相談にならなかったということです。この3つの事例を踏まえ、市としての課題認識を伺います。建築局スライド5

坂和建築局長:この3つの事例につきましては、いずれも建築基準関係規定に適合している計画ではありますが、相隣関係で日照阻害など様々な問題が生じてございます。
 市としてもこれまで市民のみなさまからの相談には適切に対応してまいりました。このような民事上の問題は解決が困難な場合が多く、その背景といたしましては、住民と事業者の間に計画に対する専門的知識の差があることや、あるいは話し合いの場、コミュニケーションの場が不足していることなどといった課題があると認識しております。

岩崎議員:それでは、その課題を解決するために行政はどう対応しているのか、伺います。

坂和建築局長:市民からの相談の際は、しっかりとお話を伺った上で、適応される関係法令などを詳しく説明行うほか、必要に応じて弁護士による法律相談等の窓口をご案内させていただいております。また、中高層条例等の対象となる建築規模の計画につきましては、法律や建築の専門家から助言を受けることができる専門家助言制度や、斡旋調停の制度を運用し、紛争の防止や解決に向けて取り組んでおります。さらに、紛争の未然防止を目的といたしまして、全ての建物を対象に、建築士事務所には工事の事前説明を求めるチラシを、また市民の方には紛争予防のための詳しいパンフレットの配布を開始いたしました。

岩崎議員:様々な取組を行い、民事への対応に一歩前進させたことは評価したいと思います。ただ、始まったばかりで効果がまだ見えないと思いますが、引き続き期待したいと思います。
 とはいえ、実際には、先ほど紹介したように日照被害や地価の下落など、市民の生活や財産を守れていない事態は続いています。そこで、民法や建築基準法、宅地造成等規制法等々、関係法を視野に入れた、行政のもう一歩も二歩も踏み込んだ対応が必要だと思うんですけど、局長、どう考えておられますか。

坂和建築局長:実は私も入庁の時に、昔の日照相談室というのがございまして、そこに最初の入庁から4年間在籍いたしました。その際、民法、建築基準法、都市計画法、様々な法律の知識が必要だなと強く感じております。
 そうした観点から、民事上の問題に行政が介入するのは様々な課題ありますが、市民の不安を解消するためには、行政としても真摯に取り組むべきだと考えております。そのために、今年度は局職員が全戸を訪問し、紛争調停制度の周知や相談状況を聞きとるなどして情報共有を行い、連携の強化を図っております。
 また、職員が市民の相談内容を確実に聞き取り、関係法令などの説明とともに、関係法を所管する各局や市以外の組織を適切に紹介し、案内ができるよう、研修の充実、OJT等により人材育成にも取り組んでいます。引き続き、相談体制の充実、市民サービスの向上に努めてまいります。

岩崎議員:終わります。


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