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【2009年第2回定例会】「議案反対討論」(市職員手当削減) 中島 文雄

 私は、日本共産党を代表して、今定例会に提出された「市第1号議案 横浜市職員に対する期末手当及び勤勉手当に関する条例の一部改正」について、反対の討論を行います。
 本議案は、本市人事委員会の勧告を受け、本市職員に対して6月に支給予定の夏季一時金、期末手当・勤勉手当支給割合を0.2月分、再任用職員については0.1月分減額しようとするものです。

政府与党の削減圧力に屈した勧告

 議案に反対する理由の第一は、政府与党の「削減圧力」に屈した、あまりに異例・異常な人事院勧告に追随したものだということであります。
 従来からの人事院勧告は、例年5月から行う職種別民間給与実態調査において、前年の8月からその年の7月までの1年間に、民間での一時金等特別給の支給実績を精確に把握し、官民較差を算出した上で8月に実施されてきたもので、この勧告に基づいて国家公務員の特別給および給与ベースの調整が行われてきました。
 ところが今年は、「昨年来の世界的な金融危機を発端とした景気の急速な悪化に伴い」「過去20年以上にわたって見られないほどの大幅な前年比マイナスとなることがうかがえた」などと、従来の手続きやルールを一方的に変更し、前倒しで減額するという前代未聞の勧告となりました。
 この異例の人事院勧告の背景には、自民・公明の政府与党が、今年2月に国家公務員の給与の検討に関するプロジェクトチームを立ち上げて、4月初めに出された夏季一時金を減額する方針決定にあることは明白であります。人事院の対応は、この政府与党の動きに追随するもので、今回の勧告は与党の圧力に屈したものと言わざるを得ません。
 公務員に対する労働基本権制約の代償措置としての機能・役割を果たすべき人事院の中立公平な第三者機関の立場を投げ捨てた、今回の政治的で異常な勧告を認めるわけにはいきません。

ずさんな調査による勧告

 第二に、「勧告」の根拠となる民間の支給実績調査の精確性に疑問があることです。
 国会の論議でも、従来は全国から抽出した約1万1000事業所を対面調査するところを、今回は急きょ4月に臨時調査を実施してわずか2700社だけに、それもアンケートによる郵送調査をしただけで、しかも回答を得たのは2017社、そのうちボーナスを決定した企業は1割程度という中でのずさんな調査結果によるものであります。
 「調査がずさんではないのか」との問いに、人事院の総裁は「全体を反映したかと言えばそうではない」と、自らが信頼性や精確性に問題があることを認めています。
 問題なのは、本市人事委員会が、5月14日の「勧告」の中で、「市内民間企業における夏季一時金が大きく減少するものと見込まれる状況等を踏まえ」などとしながら、具体的に市内民間企業の支給実績や実態調査を行っていないことです。職員の夏季一時金を0.2月減額する根拠を、専らずさんな調査にもとづく政治的で異例な人事院勧告に追随した対応に過ぎません。
 そもそも、人事院勧告は国家公務員の給与に関して勧告を行うものであり、地方自治体が人事院勧告に従わなければいけないものではありません。
 本市人事委員会における勧告制度の目的は、「社会一般の情勢に適応した職員の給与水準を示すこと」としており、市内企業の実態も把握せず、「人事院と同様の措置が必要」などとする今回の態度では、人事委員会の存在を自ら否定するものと言わざるを得ません。
 また、財政危機を理由に、例年30億円程度の留保財源を今年度ゼロにした分を、職員の期末手当等一時金のカットで埋め合わせをしようとする市長の意向に追随し、人事院勧告を「渡りに船」とばかりに、本市人事委員会が一時金減額「勧告」をする対応は、勧告制度の目的や役割を放棄するものであることを指摘しておきます。

民間労働者のボーナスにもマイナスの影響

 第三の問題は、「勧告」が、公務員だけでなく、民間労働者の一時金の動向にも否定的な影響をおよぼすことです。
 政府与党の「減額ありき」と言う政治的・意図的な圧力に屈するだけでなく、ずさんな調査による今回の異例な「勧告」によって直接影響を受けるのは、国会での人事院総裁の答弁でも、国家公務員、地方公務員、公務員ベース等に基づいている独立行政法人、国立大学法人等、学校、病院等で合わせて約600万人におよび、約2700億円の支給削減とされております。本市においては、直接的な職員手当等の減額影響額は2万7462人、約22億円と言われ、外郭団体・公社等の職員の影響を加えれば、さらに膨らむことは必至であります。
 問題は、人事院の総裁自身が、「ご指摘のような影響がないとは言えません」と答弁したように、今回の「勧告」によって、直接影響をうける公務員労働者だけでなく、間接的に民間労働者の一時金の動向に大きなマイナスの影響を引き起こすことです。実際に一時金を決定している企業で言えば1割程度であり、中小企業の大半はまだ決まっていません。
 また、労働組合がないような企業においては「人勧」を賃金相場の参考としている事例はたくさんあります。民間準拠といいながら、ずさんな調査によって結果として、人事院勧告がまた民間にマイナス影響を与えることになるという点では、極めて深刻な事態を引き起こすことになります。
 深刻な景気悪化、経済危機の中で、雇用破壊と並んで賃金の引き下げや社会保障の改悪などによる生活破壊が急速に進んでいます。いまこそ、雇用の安定と合わせ、家計を応援して内需主導の経済に切り替えることが求められています。こういう時に、一時金の削減を前倒しで行う道理はまったくなく、春闘にもマイナス影響を与え、市民の消費の低迷と景気悪化の悪循環を加速させるもの以外、なにものでもありません。

市長給与・議員報酬は自ら減額を

 最後に、市長及び副市長、そして議員の一時金等の減額への態度について、ひとこと述べておきます。
 今回の期末手当・一時金等に限らず、市民から高すぎると指摘されている市長の給与や手当等一時金・退職金、及び議員報酬等は、人事院勧告や本市人事委員会の勧告などとは別に、自ら判断して条例を改正し、早急な減額措置を実施すべきであります。
 以上、本議案に反対し、私の討論を終わります。