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原発避難いじめ問題について市長のイニシアチブ発揮を求める申し入れ

2017年1月17日

横浜市長 林 文子 様

           日本共産党横浜市会議員団

                    団長  大 貫 憲 夫

 2011年の東京電力福島第一原発事故後に福島県から横浜市内に避難してきた男子生徒(当時小学2年、以下被害児童)が、転入小学校でいじめを受けていた問題については、当該保護者の調査申し入れにもとづく市教育委員会の「いじめ問題専門委員会」による調査報告書(答申)をうけて、教育委員会による検証と再発防止策の検討が進められているところです。

 いじめ防止対策推進法の第30条では、専門委員会の調査結果について、「重大事態への対処又は当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは、附属機関を設けて調査を行う等の方法により、・・・・調査を行うことができる」と市長に再調査権を付与しています。本市ではいじめ防止基本方針を策定し、その第4章「重大事態への対処」の第2項で、同様の規定をしています。そして、すでに、条例で、市長が再調査を実施する機関として、「横浜市いじめ問題調査委員会」を設置しています。

 市長は、12月9日の本会議で「教育長には第三者委員会からの指摘を誠実に受け止め、今回の事案の検証と再発防止の検討を着実に進めるよう指示した」と答弁されたように、再調査を行わないとされています。

 もともと、本事案が、専門委員会に諮問され、調査が開始されたのは、当該児童の不登校開始から約1年7か月以上経過した2016年1月19日でした。専門委員会は「いじめの調査は、速やかに本委員会に諮問がなされ、調査を実施すべきであった」と教育委員会の対応の遅れを批判しています。法28条は「重大事態」の定義づけをしています。「児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認められたとき」として、いじめ防止のための基本方針のなかで、金品等に重大な被害を被った場合を例示しています。また、「児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めたとき」として、基本方針のなかでは、相当の期間は年間30日を目安にする、一定期間連続して欠席している場合は、教育委員会、学校の判断により、迅速に調査に着手する必要があると明記しています。本事案は、このふたつの要件を満たしていることは明白であり、教育委員会の対応がまったく不適切であったといわざるをえません。

 日本共産党市議団は、12月9日の本会議で、教育委員会が長期間にわたって訴えを放置し、親子を苦しめたことは、原発避難者に寄り添う姿勢が欠如していたといわざるを得ないと指摘し、失われた信頼を回復し、市民に開かれた教育行政を目指すことは、現教育長のもとでは困難と主張しました。

 教育委員会が最初に議会に提出した調査報告書は、経過部分は、除外されていました。12月12日開催の常任委員会ではじめて経過部分が公表されました。大方が黒塗りではありましたが、これによると、教育委員会(学校教育事務所)は本事案の初期段階から学校から報告を受けています。しかし、事実関係の正確な把握に努めるよう指導しただけです。教育委員会である学校教育事務所は、学校現場、特に小学校の大変さを承知し、こうした事態に学校が自力で対処できないことをわかっていたはずです。学校へのサポートを放棄した教育委員会の責任は重大です。

 12月9日保護者側が、被害児童の手紙を添えて、教育委員会の検証と再発防止の検討に当たって要望書を教育委員会に提出しています。その内容は、SOSが見過ごされた理由の検証、学校報告についての検証、被害児童を傷つけるような報告がされた理由の検証、重大事態として対応できなかったことについての検証、被害の食い止めが遅れたことについての検証、情報公開及び謝罪の検証など8項目です。この要望の扱いについては、教育委員会担当者は、内部検証と再発防止策の検討は専門委員会の答申を踏まえて行うものであると説明するだけでした。この要望を踏まえるとの明言はありませんでした。この教育委員会の姿勢では、保護者の納得がいく内部検証が行われるのか疑問を持たざるをえません。

 その上に、新たな局面が展開しました。1月10日、保護者が専門委員会の調査・答申についての「所見」を市長に提出したことです。「所見」提出の手続きは、文部科学省が策定した「いじめ防止等のための基本的方針」‐‐保護者側が希望した場合にはその所見をまとめた文書の提供を受け、調査結果の報告に添えて地方公共団体の長に送付する‐‐の規定に則ったものです。「所見」は、専門委員会が金銭授受行為をいじめと認定しなかったことに対する異議申し立てであり、市長に再調査をも視野に入れていじめと認定するよう求めています。もともと、保護者側は、先の要望書に記載されているように「未だ真相の解明に至っていない」と感じ、「報告書にある学校や教育委員会の報告は真実でない」と危惧しています。

 以上の経過と現下の状況を見ると、専門委員会の答申にもとづく教育委員会の手による内部検証では、真相解明と有効な再発防止策を打ち出すことは難しいと判断せざるをえません。当然のこととして、被害児童とその保護者の納得を得ることも困難です。

 この行き詰った状況を打開できるのは、市長です。下記の方向で、事態を打開されるよう申し入れるものです。

1、教育委員会に対して、金銭授受行為をいじめと認定したうえで、要望書に沿った内部検証と再発防止策の検討を行うよう、必要な手立てを講じること。

2、上記1が成就しない場合は、市長の手で「再調査」を行うこと。