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歴史教科書の採択に関する申し入れ

2009年8月5日

横浜市教育長 田村幸久 様

日本共産党横浜市会議員団
団 長 大 貫 憲 夫

 昨日の横浜市教育委員会の会議で、中学校の歴史教科書として18区中8区で「新しい歴史教科書をつくる会」の自由社版が採択されたことに関し、驚愕と批判の声が教育界だけでなく各界各層から上がっています。「イデオロギーの問題は文科省の検定でクリアしている」として、自由社の歴史教科書は太平洋戦争を「自存自衛」のための戦争と描くなど、日本の侵略戦争美化の立場にたっていることを直視せず、その教科書で学ぶ子どもたちに与える影響を省みることなく、特定の歴史観・価値観を優先させて、採択したことにたいし、公正をかいたやり方と批判があがるのも当然です。
 今回の採択は、採択権者である市教育委員会の「権限と責任」で適正におこなったとされています。しかし、適正な手続きという点では重大な落ち度があることを指摘せざるをえません。それは、教科書取扱審議会の答申を完全に無視したことです。同審議会は、市教育委員会が決めた「平成21年度横浜市教科書採択の基本方針」にもとづき、教科書の内容と児童生徒の学習実態について、その相互関連が明確になるよう答申しています。区ごとに、学習実態を踏まえ、望ましい教科書として4~7の基準・観点を示し、もっとも相応しい教科書を基準・観点ごとに選んでいます。自由社が採択された8つの区での答申では、自由社がもっとも相応しいとした基準・観点は1点だけでした。それ以外の基準・観点では、自由社・扶桑社以外の二社(帝国、東書)がもっとも相応しいとしています。しかも、答申は、自由社については、「他民族の生活や文化の扱いがやや弱く、生徒の多様な見方や考えを育てるにはやや適さない」と問題点を指摘しています。
 4年前の採択時に、当時の教育長は、「横浜市に採択手順として、審議会の答申にもとづく案を尊重したい」との毅然とした態度をとりました。しかし、今回は教育長からはその言明もなく、審議会答申で評価が低い自由社が、多数決で採択されました。
 「権限と責任」といいながら、無記名投票であり、説明責任も果たされていません。教育委員として、公開で態度を示してこそ、責任ある対応です。
 審議会は条例で設置された機関です。その審議会の答申をまったく無視し、逆の判断をすることは、議会が承認した条例をないがしろにした市民への挑戦でもあります。
 基本方針は、審議会答申をうけて、公正かつ適正に採択を行うとし、審議会は、教育委員会の審議に資することができるよう答申すると記しています。審議会の答申内容を無視することは、自ら決めた基本方針の否定でもり、採択の正当性に瑕疵があるのは明白です。
 以上の立場から、次の申し入れを行うものです。

 横浜市教育委員会は、今回の教科書選定を振り出しに戻し、基本方針で定めた採択の手順にそって、歴史教科書の選定をやり直すこと。