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■「反対討論」 北谷まり議員(2017.6.6)

北谷議員:北谷まりです。日本共産党を代表し、提案された議案のうち、5件の議案および1件の請願の不採択に反対し、討論を行います。

横浜スタジアムの管理運営を40年に渡って民間事業者にゆだねるな

はじめに、市第8号議案、横浜市公園条例の一部改正と、市第13号議案、公園施設の負担付寄付の受納についてです。議案は、株式会社横浜スタジアムから、40年間の管理運営を行うことを前提に、横浜市公園施設である横浜スタジアムを増築し、その後、本市に寄付すると提案され、それに伴い横浜スタジアムに係る(かかわる)使用料等を改定するものです。株式会社横浜スタジアムは、DeNAが2016年に74億円をかけて、買収した球場運営会社です。

6,000席の増席やバリアフリー化等は、球場の利便性を高めるものであり、歓迎です。問題は、条例改訂で「有料施設の属する公園」から横浜公園と同野球場を削除することです。現在、横浜スタジアムの使用許可権者は市長です。球場使用者が支払う使用料も条例で規定されています。今回の措置によって、使用許可権は株式会社横浜スタジアムに移り、使用料の決定も同社に委ねられます。

これまで条例に明記されていた、野球場等の利用料が削除されることについて、市長は「今後も現在横浜市公園条例及び同施行規則で規定している料金と同様とするよう管理許可の条件としてます」と答弁されました。しかし、10年ごとの更新であり、市の提案を事業者が受け入れる保障はありません。事業者が負担する増改築費は85億円と聞いています。また、営利会社である限り、総額159億円の先行投資の回収は待ったなしです。市民の立場にたった管理運営がなされる担保がないままでは、事業者は高い使用料を徴収できるイベント・興行を優先させることは明らかです。市民利用について、市長は「市民、アマチュア利用について、具体的に定めるとともに、年間使用計画書を毎年提出していただき、その状況確認してまいります」と答弁されましたが、それがどこで担保されるのか、これについても明らかにされていません。市の所有する公共施設でありながら、条例に明記されていたものが削除され、議会の関与がなくなるのは、公の施設の管理のあり方として、容認できません。

住民と民間墓地事業者が話し合いの最中に用地内の市道廃止は、計画の容認に等しい

次に市第11号議案 市道路線の認定及び廃止についてです。今宿第446号線は旭区四季美台で民間の墓地開発業者が、開発の手続きのひとつとして廃道の申請をしているもので、事業者に用地を提供するためのものです。墓地計画は、約9、400㎡の土地に1,600区画の墓地を造成するものです。最大の問題は、この計画地と既存(きぞん)の住宅地が接していることです。住居の目の前に広大な墓地が作られるわけです。住環境の悪化を危惧される住民の声はもっともなことです。

現在、事業者と地元との協議が続けられています。墓地開発の手続きでは、事業者と市とで事前に行われる事前協議の後に住民説明会が行われることになっています。これまで3回の説明会が開催されています。7月に4回目が行われると聞いています。話し合いの最中であるこの時期の市長の廃道提案はどういう意味をもつのでしょうか。事業者の計画を事前に容認したと同じ事です。事業者はこれで障害はなくなったとして、強気になるのは必至です。話し合いが住民に不利になることが危ぶまれます。提案時期が間違っています。住民より事業者を優先させることは認められません。地元の声をふまえて、現時点での廃止手続きはやめるべきです。

平成24年度 墓地に関する市民アンケートの結果では、民間の墓地よりも、市営墓地を市民が望んでおり、市の責任で市営墓地を拡充することが必要です。そうすれば、民間の墓地開発の規制をしても市民に支障はありません。県内では、横浜市が接する川崎市、藤沢市、大和市、相模原市をはじめ多くの自治体が、学校、病院、福祉施設、人家からの距離規定を定めています。横浜市においても、同様の距離規定を設けるなどして民間墓地開発の規制をし、住民の生活環境を守るべきです。

鶴見駅東口唯一の24時間公衆トイレを無くすな

次は、市第12号議案 鶴見区鶴見中央1丁目所在 市有建築物の無償譲渡についてです。議案は、京浜急行電鉄株式会社より、京急鶴見駅高架下リニューアル工事に合わせて、公衆トイレの改修及び維持管理を行いたい旨の申し出があったため、当該建物を無償譲渡するものです。

現在は24時間利用が可能な、東口近辺では唯一の公衆トイレで、利用者もたいへん多いと聞いています。しかし、譲渡後の利用可能時間は7時半から22時までとなり、利用が大幅に制限されます。しかも、公衆トイレとしての指定期間は10年間だけであり、指定期間終了後の公衆トイレ設置が担保されていません。本来、市の施設は市が適切に管理し、責任を持つべきです。市民の財産を安易に譲渡して、市民サービスを低下させることを認めるわけにはいきません。

福祉的な支援を必要としている市営住宅入居者への追い出しと損害賠償請求の提訴は、弱者切り捨ての典型だ。

議案の最後は、市第15号議案、市営住宅明け渡し等についての訴えの提起についてです。市営住宅に住む当該入居者が、玄関前に物を堆積し放置するなど、迷惑行為を行ったこと等を理由に、市営住宅の明け渡しを求める訴訟を提起しようとするものです。

住宅の明け渡しと損害賠償金を求められていることで、当該入居者は追い詰められています。ご本人から、「追い出されてもほかに住む場所がありません。市の方からホームレスになれと言われているようなものです。私自身のことがうまくできず、出て行けと言われても本当に困ります。」と党市議団にSOSが発信されてきました。 区役所は、福祉的対応をしていたとのことですが、建築局による明け渡し請求によって、状況を悪化させることになったといわざるを得ません。昨年、12月1日に施行された、いわゆるごみ屋敷条例は、その基本方針を定め、建築物等における不良な生活環境は、堆積者が自ら解消することを原則とするとしながらも、堆積者が自ら解消することが困難であると認められる場合は、市と地域住民等が協力して、解消にむけた、あらゆる対策を行うこととしています。果たして、明け渡し請求があらゆる対策といえるのでしょうか。11月29日に明け渡し請求を発出するにあたり、この判断が福祉の視点に照らし、本人にどのような否定的影響を与えるかについて検討が不可欠でした。しかし、区、建築局、健康福祉局との間では協議をしていません。これが問題です。いわゆるごみ屋敷条例施行の時期にも関わらず、条例の精神が活かされませんでした。

そもそも、市営住宅は公営住宅法第1条で定められている「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的」に整備されたものです。福祉マインドを持ってしっかりと取り組むのは当然です。にもかかわらず、建築局は管理者の視点からの対応にとどまり、福祉の視点からの対応に徹し切れていませんでした。また、区と健康福祉局は福祉的対応への否定的影響を認識して、市営住宅課に協議を求めるべきであったにもかかわらず、これを怠ったと指摘せざるを得えません。市営住宅条例第47条1項7号には、迷惑行為を繰り返す等の「その他この条例に違反したとき」は、「明け渡しを請求することができる」とされていますが、この規定は「できる」規定であり、市の裁量の余地があるのです。家賃を滞納していないのに、損害賠償金を求めるのは、当事者のおかれた状況を一顧だにしない、あまりにも冷淡な仕打ちであり、論外です。「訴えの提起」にふみきる前に、福祉的視点から本人の立場に立った支援によって、問題を真に解決することに注力すべきです。
本議案は議決せず継続審議とすることを求めます。

家族労働を必要経費と認めない女性差別の所得税法56条廃止を求める請願は採択すべき

次は請願第1号で、所得税法56条廃止の意見書の国への提出を求めるものです。

請願者は、小規模企業振興基本法や男女共同参画社会基本法が制定される以前から、地域の経済を支え、活力を与えるのに不可欠な存在である、中小零細業者の営業と暮らしを長期にわたって支えてきた、女性たちです。

我が国の自営商工業の多くが家族労働によって支えられていますが、所得税法56条の規定により、家族従業者に給料を支払っていても、その分は必要経費とは認められていません。

例えば、事業主が夫である場合には、妻や息子や娘が働いた対価として給料を支払っていても、その給料分は必要経費とは認められず、認められているのは、低額に抑えられた配偶者控除86万円と白色専従者控除50万円です。家族従業者も自らの労働に見合うだけの給料が公式に認められないことから、社会的にも不利益を被っています。例えば、不測の事故に遭遇した場合、給与所得の公的証明が得られないために、受けた被害の補償が適正に査定されないことなどです。

「青色申告にすれば給料を経費にできる」という所得税法57条については、税務署長が「一部経費を認める」という特典であり、いくつもの義務が課され、税務署長の裁量で取り消されことがある、など家族一人ひとりの働き分を認めたものとは言えず、この規定によって差別が解消されたとは言えません。

2016年3月7日、国連女性差別撤廃委員会が総括所見を公表し、「家族従業者の働きを認めない所得税法は見直しを」と日本政府に勧告を出しました。総括所見の勧告は、政治参加や教育、雇用などのさまざまな分野にわたり、差別根絶、男女平等を求めるもので、日本政府の対応の遅さを厳しく指摘しました。初めて明記されたことは、「所得税法が自営業者や農業従事者の配偶者や家族の所得を必要経費として認めておらず、女性の経済的独立を事実上妨げていることを懸念する」「締約国に対し、家族経営における女性のエンパワーメントを促進するために、家族経営の労働を認めるよう所得税法の見直しの検討をすることを求める」というものです。

アメリカ、イギリスをはじめ、世界の主要国では、家族従業者の賃金は経費としています。国際都市横浜の市議会が、この世界の流れに目を向けないというのは、大きな矛盾であるといえるのではないでしょうか。

本市では、「日本一女性が働きやすい、働きがいのある都市の実現に向けて」を掲げて第4次横浜市男女共同参画行動計画が作られています。同行動計画でうたう、女性の有業率73%という目標値達成には、すべての女性にとって働きやすい環境を整備することが急務です。女性の就労にとってマイナスに作用するこの規定は、廃止すべきです。

これまで482自治体が国に所得税法56条廃止の意見書を上げていますが、中小企業、とりわけ 家族労働に依拠する零細自営業の苦境を知って放置できない自治体が、その原因のひとつとして、所得税法56条廃止の提言を行っている事実は重く受け止めるべきです。横浜市は、市内企業の約97.1%が中小企業であり、小規模企業が91.5%を占めています。小規模企業振興基本法に照らしても、本市会から、意見書を上げるべきです。

以上で討論を終わります。