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【2016年度決算に対する反対討論】大貫憲夫議員(2017.10.20)

小規模企業振興施策の展開で、地域循環型の横浜経済を

私は日本共産党を代表して2016年度決算の認定について反対の立場から討論を行います。わが党は2016年度予算代表質問において、予算案は安倍政権の成長戦略を横浜市として推進するものであり、住民が主人公という地方自治の本旨と相いれないものと指摘しました。そして、その指摘通り、市民が切実に願う市政運営と、大きな齟齬と乖離をきたした一年でした。

その第一は経済施策についてです。

2016年度は現行の中期計画の3年目の年度でした。中期計画は将来の法人市民税増収のため、横浜都心部再整備に大胆な投資を行うとして実施されています。しかし、市長の言う将来への大胆な投資が、本当に果実として将来の法人市民税を増やす保障は何もありません。しかも、その大胆な投資は、大ゼネコンの仕事興しにはなっているものの、現在の市内中小ゼネコンや地域経済にはその波及効果はほとんどないことが、2016年景気動向調査にも現れています。

市内経済振興のために必要なのは、中期計画そのものを見直し、公共インフラの維持保全などを中心に、本市のもっている莫大な財源を市内経済の資源として有効に使い、市内中小企業の仕事興しにつなげ、地域循環型経済を振興させることです。そして、将来に向けては、国の成長戦略の焼き直しではなく、地域循環型経済の土台に立った本市独自の産業政策を明確にし、持続的発展をさせなくてはなりません。そのためにも、市内中小企業の83%を占める小規模企業に光を当てた政策と事業を、地域を一番よく知っている区役所に人員を含めた体制をとり実施することです。

市長は常に中小企業振興を横浜経済の支えとして、本市の最も上位に置くべき施策に位置づけているとしています。先に行われた連合審査において、わが党の「区役所に地域経済振興を支援する部署を置くことが必要だ」という質問に対し市長は、「全くその通りです」と答弁されました。政令指定都市では新潟市がすでに、行政区に各区の事情に沿って経済産業担当課を設置しています。市長がやろうと思えばできるのです。市長は、連合審査での答弁のとおり、来年度から区に経済振興の部署を設置すべきです。

第二の問題は防災対策です。

2016年度本市市民意識調査での市政要望は例年と同様、防災対策の強化が第一位です。

2016年4月、熊本県・大分県で震度7を観測する大地震が発生しました。8月には全国各地で、迷走台風10号をはじめとする台風災害や、線状降雨帯等による豪雨などによって、ガケ崩れや土砂災害などが多発しました。頻発する災害を受け本来、年度途中においても補正予算を組み、予算と人員を増やし、防災対策を強化すべきでした。

2016年度横浜市内には、土砂災害防止法による警戒区域内の急傾斜地が2428エリアあり、その中で崖が9800ヶ所に及んでいます。しかし、その対策は2016年度実績30件に過ぎません。予算は中期計画で15億円・一年度4億円以下です。遅れの原因は少ない予算と職員数が9人と、余りにも少ないことです。木造密集市街地対策も遅々として進んでいません。ここでも、資金も人も足りません。狭隘道路整備事業についても同様です。一方、災害時の救急・物資輸送を支える道路ネットワーク等の構築事業の2016年度決算額は561億円です。しかし、その事業の大半は横浜環状道路関連の整備であり376億円が投入され、事業費は2015年度に比べ67億円増額し、職員も69人体制で実施されました。市民が切実に望むガケ対策や木造密集市街地対策と比べ、資金も人もその差は歴然としています。さらに、みなとみらい21地区20街区マイス(MICE)施設整備事業にかかわり、緊急輸送路港湾2号線の指定を解除し、廃道するという暴挙も行いました。これでは災害から市民を守る立場に立っているとはとても思えません。

第三は、都市整備についてです。

2016年度は、東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるためと言う理由で、山下ふ頭再整備、高速横浜環状道路の北西線・南線、国際コンテナ戦略港湾の南本牧MC-4、新市庁舎整備に加え、みなとみらい21地区の新たなマイス(MICE)施設整備が進められました。また、横浜駅きた西口鶴屋地区市街地再開発事業、東高島駅北地区再開発事業などなど、安倍政権が進める特区・規制緩和策にのって、枚挙にいとまがないほどの大型開発・大型公共事業が着手、推進されました。しかもこれらは、市内経済の活性化や防災上も重要な役割を担う骨格的な都市基盤施設への投資・都心臨海部再整備として実施されました。しかし、実際は「安倍政権の成長戦略を現場で具体的に実現するのが基礎自治体としての役割」という市長の市政方針のもとで行われたものです。まさに、市民が求める切実な要望を逆手に取り、安倍政権の成長戦略を市政に持ち込み、財政が出動された典型です。

先の市長選挙で争点になったIR・カジノ誘致問題にかかわり、2016年度は山下ふ頭再開発事業に81億円もの予算を投入し、これまで凍結していた臨港幹線道整備計画を復活し、山下公園前面の海底トンネル建設や、中心市街地と山下ふ頭を回遊する一台1億円という連節バスやLRTの運行事業計画構想などの策定が進められました。

市長は現在、カジノ誘致は白紙としています。しかし、依然として、臨海部再生マスタープランには山下ふ頭がIR誘致対象地の一つとされています。カジノ誘致について本当に白紙とするならば、カジノ立地そのものを同プランから削除することが必要です。それなしに市長の言う白紙は偽物と言わざるを得ません。

第四は、子育て支援と学校教育をめぐる問題です。

2016年度についても、子どもの貧困が全国的に大きな問題になりました。本市は同年3月子ども貧困対策計画を策定しました。予算で計上された事業は「寄り添い型支援事業」や「ひとり親家庭等日常生活支援事業」など14事業とされていましたが、いずれも対象数に見合った事業規模になっておらず、そのうえ14事業のうち本市独自の事業は、2事業に過ぎないものでした。子ども食堂事業に至っては、市長は「民間の自発的な取り組みも、大変感謝しております」とするだけで、施設や財政面での公的支援は実施しませんでした。

保育所待機児童問題について横浜市は、2016年4月1日時点の待機児童数は7人だったと発表ました。しかし、希望通りの保育所を利用できない、いわゆる「保留児童」は3,117人と2015年の同時期と比較して583人増えました。放課後児童対策でも、放課後児童クラブの移転を必要とする122ヶ所に対し、2016年度の移転は21ヶ所しか実現していません。

学校教育をめぐる問題で、横浜市の教育行政の在り方が鋭く問われたのは、原発避難いじめ問題です。原発事故で福島から本市に自主的に避難した当時児童から、いじめによる苦しみを何とかしてほしいと訴えがあったにも関わらず、教育委員会事務局の調査が始まるまで1年7カ月を要し、調査結果が明らかになった以降も、教育長の態度を巡って生徒を苦しめ続けたことは重大です。この問題は、全国に衝撃を与え、横浜市の教育行政そのものの信頼を失墜させました。

いじめ防止のためには学習面でも学校生活でも、教員が子どもたち一人ひとりの成長発達をしっかり把握することが必要です。そのためには少人数学級の拡大、クラブ活動など、教員の多忙化と長時間勤務を是正することです。教育長も長時間勤務については、「対策は打っているが、効果が上がっていない」と自ら課題だと認めています。これらの課題解決の根本は教職員を増やすことです。教育条件の整備に責任を持つ市長の責任です。県費負担教職員の給与負担等の権限が本市に移管されました。市長は、本市の将来を支える子どもたちへの投資として、必要十分な教職員の増員について決断すべきです。

2016年7月ハマ弁の試行が始まり、今年1月に全校実施となりました。喫食率は今年7月現在で1.4%です。生徒と保護者の支持を受けていないことは明確です。市長選での出口調査でも明らかになったように、市民の多くは中学校給食の実施を要望しています。一刻も早く学校給食法に基づく中学校給食への切り替えが必要です。

最後に平和問題です。

本市は、1987年に国際連合からピースメッセジャー都市の称号を受けながら平和施策には、これまで、後ろ向きの姿勢に終始してきました。国際局にかかわる2016年度での平和施策費が、27万円にしか過ぎないことに現れています。

2016年オバマ米大統領が現職大統領として初めて被爆地・広島を訪れ、核なき世界を訴えました。今年7月、国連加盟国の約3分の2の122か国が賛成して歴史的な核兵器禁止条約が採択され、このほど核兵器廃絶国際キャンペーンICANがノーベル平和賞を受賞しました。核兵器のない世界・核兵器完全廃絶の実現に向けて世界的に大きな波が起きています。その波の原動力は市民の世論です。そして、それを組織してくのがヒバクシャ国際署名です。この大切な国際署名について、全国の18県知事を含め875市町村長が積極的に署名しています。ところが、林市長は国の動向を見るとして一貫して署名をしようとしません。安倍政権の顔色を見ているとしか言わざるを得ません。平和の問題でも核のない平和な世界を求める市民の願いに沿って、核兵器禁止条約に賛同し、ヒバクシャ国際署名に署名し、平和運動の先頭に立つことが、地方自治の精神に基づく市政運営です。市長がこの立場に立ち戻ることを求めて、私の2016年度決算に対する討論とします。