- 日本共産党 横浜市会議員団 - http://www.jcp-yokohama.com -

■反対討論(北谷 まり議員)

困難を抱える高齢者が増加している中、市は養護老人ホームの増設や市営住宅の新規建設を

北谷議員:北谷まりです。日本共産党を代表して、6件の議案と3件の請願の不採択に反対し、討論を行います。

まず、市第128号議案 第7期横浜市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の策定についてです。議案関連質疑で、わが党の、「地域社会に対する市の責任を明記すべき」との求めに対し、「自助・共助・公助で補いあうことが重要で、地域包括ケアシステムを構築していくためには、行政が推進役として進めていくことが必要」と市長は答弁されました。
そうおっしゃるのであれば、行政の役割を明記することは当然です。介護については、「介護の社会化」「公的介護保障の充実」を謳った介護保険の原点に戻るべきとの視点に立ち、専門性に裏付けられたサービスを充実させるべきです。高齢者が安心して生活できるようにすることは、公的責任であることを再認識するべきです。

高齢者の住まいについて、6期計画で述べられている「要援護高齢者の生活を支える施設への支援」という項目が、7期計画では削除され、さらに養護老人ホームは、定数を6期・ 最終年548から498人へと減らしています。
養護老人ホームは、環境上または経済的な事情で、居宅において養護を受けることが困難な65歳以上の人が対象の措置施設です。困難を抱える高齢者が増加している中、安心して生活できる養護老人ホームはますます必要とされており、養護老人ホームの増設を計画に盛り込むべきです。市内の無料低額宿泊施設や無届の施設を利用している、低所得の高齢者のことを考えれば、既存の市営住宅の高齢者向け募集枠を増やすだけでは、とうてい追いつかないことは明らかです。
公営住宅法に基づき、市営住宅を新規に建設するべきです。住宅セーフティネット制度の活用などで、充足するものではないことは、あまりにも明白です。

横浜市は市民に民泊を不安にさせないような、情報提供、人員配置、体制等を万全に

次は、市第131号議案 横浜市住宅宿泊事業の実施に関する条例の制定、いわゆる民泊についてです。横浜市は条例制定にあたって、住宅宿泊事業の実施を制限する区域は、第一種及び第二種低層住居専用地域、制限する期間は、月曜日の正午から金曜日の正午までとしただけです。
条例案には、住宅地における生活環境の悪化を防止する目的すら書かれていません。

市の市街化区域の41%をしめる低層住居専用地域は、良好な住居の環境を保護するための地域であり、宿泊施設等の立地がもともと制限されています。

事業者は、住居を民泊に提供するにあたって、宿泊客を守る視点からも近隣住民の安全安心の点からも、地域住民に説明会を開き、宿泊者は対面によって確認し、使用にあたっての説明を行い、火災等緊急事態が発生した場合においては、避難及び救急医療等に係る適切な情報提供をおこなうことができる人員配置と体制を常時確保するべきです。

企業誘致は支援金の増額ではなく、市民の豊かな生活向上が魅力となるべき

続いて、市第134号議案 横浜市企業立地促進特定地域における支援措置に関する条例の全部改正についてです。

わが党は、本市経済の持続的発展にとって企業誘致は必要な課題だと考えています。その点では、市長と一致しています。しかし、違いは企業誘致のために年間30億円から50億円のオーダーで支出する支援金に対する評価です。
}市長はこの巨額の支援金が誘致の決め手だとしています。しかし、これまでも指摘してきたように、アップル社は本市の条例での支援を必要としていません。あくまで、自社の経営戦略に基づいて立地を決めています。

今後は、本市に誘致した企業の立地継続を図る取組に重点を置くことが必要です。そのためには、本市の魅力をさらに磨きをかけることです。
何より、立地企業等の職員がイキイキと生活、子育てすることができ、豊かに生活を楽しむことのできる横浜にすることが必須です。そのことが、全市民の生活向上に寄与する全体最適の施策を進めるべきです。財政支援を大幅に増やす条例案には賛成できません。

保育分野の公的責任を低下させている、市立保育園の民間移管は限界

市第140号議案 横浜市保育所条例の一部改正についてです。2019年4月1日から横浜市川島保育園などの民間移管に伴い、市立保育所を4園廃止するものです。今回移管される4園では、市内法人はひとつしかありません。応募は10法人のうち、市内法人はひとつでした。
これは、市内法人では受けきれない状況であり、民間移管はもはや限界にきていると言わざるを得ません。無理をして移管した民間事業者の中から、公費をかすめ取るに等しい悪質な事業者がいたことは記憶に新しいことです。
保育分野における公的責任を低下させる、民間移管はやめるべきです。

市立保育園の削減は、現場が過重な負担増になり疲弊し子どもにも悪影響、方針の撤回を

請願第17号は、市立保育所の存続等についてです。

2003年度、市立保育所は127か所、民間保育所は140か所でした。2017年度は市立保育所82か所、民間保育所638か所です。市立保育所54園をネットワーク事務局園とし、それ以外は民間移管を進めるという方針のもと、市立保育所の現場からは、悲鳴が上がっています。
ネットワーク事務局園には、ネットワーク専任保育士を配置し、地域の民間保育所等との「つなぎ役」となって、保育施設全体の保育の質の向上に取り組む役割を担うとなっていますが、ネットワーク専任保育士は54園のうち24園にしか配置されていません。
計画当初、市立保育所1か所がネットワーク事務局として担当する園は約15か所だったのが、幼稚園などすべての保育等施設も対象となれば、30か所近くを担当することになります。ネットワーク事務局園である市立保育所の過重な負担は増える一方です。

さらに、正規の保育士が圧倒的に不足しているため、さまざまな仕事に追われ、本来の仕事である、担当しているクラスの子どもたちのことを十分に見ることもできずに疲弊し、ベテラン保育士が退職していくと聞いています。
計画通り粛々と市立保育所を減らせば、さらに少なくなった市立保育所の現場は、ますます疲弊することは明らかです。

市長自ら現場に足を運び、職員から現状を聞くべきです。

児童福祉法24条1項に基づいて、横浜市が保育実施責任を真に果たすためには、市立保育所の民間移管方針は撤回されるべきです。

まちづくりは、住民との合意形成が柱であり、市は事業者側でなく市民の立場に立つべき

市第148号議案 横浜市地区計画の区域内における建築物等の制限にかかる条例の一部改正について、請願第26号 港北箕輪町2丁目地区 地区計画の一部是正について 及び

請願第27号 港北箕輪町2丁目地区 地区計画における開発事業者との再協議について です。

請願者は、この地域に暮らす住民の方々で、箕輪町2丁目地区 地区計画の「壁面位置」を見直し、小学校隣接地についても、5mではなく、小学校隣接地以外と同様に敷地境界線から20m以上後退させることを求めています。
小学校に隣接するところだけは、5mの後退で高さ60mの建物が建てられるのは、子どもたちの学習環境をあまりに犠牲にするものであります。横浜市都市美対策審議会景観審査部会では、「小学校があるということで、圧迫感がないような、子どもたちが学習する場として伸びやか雰囲気が出るような配慮を」などの意見が委員から出されていることからも、現計画は子どもたちの学習環境を阻害することが明らかです。

まちづくりは、事業の整合性、住民との合意形成が基本であることを認識し、行政の責務の原点に立ち返るべきです。市は、事業者が建築計画を具体化する過程で、是正の努力を最大限行うべきであり、同時に事業者に対して、社会的責任、社会的常識の視点から、最大利益の追求だけの考えを転換するよう指導・要請すべきです。
この趣旨で、請願は採択されるべきです。

議案関連質疑で、わが党は、この地区計画が上位計画である都市計画マスタープラン港北区プランとの不適合を指摘し、告示に至る経緯を改めて検証することを求めましたが、市長は「マスタープランの計画期間の中に、その時代時代によって状況が変わってきておりますから、適時そこにフィットして、チャンスを逃さないように、このようなプランをたてていくことは、私は重要であるというふうに考えております。」と答弁されました。
何のための都市計画決定なのでしょうか。都市計画法に基づき、区民の総意で作られた区プランを勝手に解釈して、事業者に有利で法的位置づけの無い、「日吉綱島東部地区まちづくりビジョン」を作って、事業を進めようとすることに、正当性はないことは明らかです。関係地域住民との合意形成・納得が得られていないことも大問題です。

大多数の保護者が反対している北綱島特別支援学校の分校化は撤回し現状のままで

最後は、市第149号議案 横浜市立学校条例の一部改正についてです。北綱島特別支援学校を廃止し、同校を上菅田特別支援学校北綱島分校にするものです。
議案関連質疑で、5校体制という再編整備計画を撤回し、そのまま学校として存続するべきとのわが党の求めに対し、「地域全体では、学校数を増やさなくても受け入れ可能」さらに、「春の学校行事や今後の進路相談が落ち着いて実施できるよう、急ぎ対応する必要があると考え、分校とすることを確認しました」と答弁されましたが、一番の早道はいまのまま学校を残すことです。
学校としての存続を求めている保護者の意向を置き去りにしたまま、急いで議案を提出する必要はありません。

医療的ケアを必要とする児童・生徒の割合が、市立特別支援学校5校の中で最も高い北綱島特別支援学校が、分校になれば、遠く離れた本校の校長が、子どもたちの体調変化や学習状況をこまめに把握することは難しくなるのは明らかです。
「万が一、子どもの命に関わることが起きた場合、責任の所在が不明確にならないか」との懸念は、この3年間で3人の在校生が亡くなり、体調急変で保護者を呼び出す緊急連絡が、半年間で、のべ50件を超えたことがある、という現実から生まれているのです。准校長を置くとは言え、分校とするのは明らかに格下げです。

2015年度の半ばに閉校計画が発表されてからこれまで、学校の存続を求めて、保護者は、ただでさえ子育てで大変な思いをしているにもかかわらず、自分たちの学校をなくさないでほしいと集会をしたり、署名を集めたり、議員に訴えにきたり、こんなことをさせた責任を教育長は感じていないのか、大いに疑問を感じます。

市立特別支援学校校長会は、北綱島の現状のままの存続を含め、市北東部に肢体不自由特別支援学校を維持するよう求め、昨年8月、教育委員会への提言書をまとめました。

2017年11月と12月に開催された、横浜市立特別支援学校 教育推進検討会の議事録を見ても、委員からは、この地域に特別支援学校が必要なこと、北綱島特別支援学校の存続が言われています。

また、分校案が提示されての北綱島特別支援学校PTAのアンケートでは、96%の保護者が分校に移行せず学校として存続を希望しています。

障害のある子が地域の学校に通うことを、どう保障していくかということが問われています。帝京科学大学の加藤洋子准教授は、神奈川新聞で、「法的にも自治体政策としても、さまざまな支援を充実させることが求められているのに、医療的ケアが必要な子が多い学校の分校化は、その流れに逆行している」と批判し、「義務教育段階の通学の権利を保障することは行政の義務。
閉校という選択はその義務を怠り、障害者差別解消法がうたう合理的配慮にも反していた」と述べています。

学校は児童生徒のものであり、保護者のものであり、地域のものでもあります。教育委員会は勝手になくすとか、分校にするとか、当事者が反対し、学校長も異論を述べている中で、やるべき権限を越えています。何の根拠もない5校体制という再編整備計画を撤回し、そのまま学校として存続するべきです。

以上で討論を終わります。