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【2009年第4回定例会】「決算反対討論」 大貫憲夫

 私は、日本共産党を代表して、2008年度一般会計歳入歳出決算および事業費会計決算等の認定に反対し、討論を行います。

         開国博を途中で投げ出した中田前市長
                その言いなりの幹部職員の責任は重大

 反対理由の第一は、開港150周年記念関連事業における財政支出です。
 2008年度、同関連事業の決算額は91億円です。問題は、この事業に財政調整基金を47億円投入したことです。財政調整基金は、市民サービスや福祉を切り刻み、痛みを伴って生みだされた余剰金を積み立てたものです。この基金は、災害などの緊急を要する財政出動や、年度間の財源不均衡の調整などに使う貴重な財源です。この本来の目的から外れて開港150記念関連事業に使ったことは、まともな財政運営を逸脱しています。
 開港150年記念事業で最も重大なことは、中田前市長が開国博Y150の途中で突然逃げ出し、開国博の本市責任者であった野田前副市長も総括を待たずに辞任し、さらには現在の責任者の金田副市長も辞表を提出したことです。やめるのは結構です。しかし、開国博の総括や25億円といわれる赤字を解決せずに退職するのは、余りにも無責任であり、許されません。
 開国博の惨憺たる結果は、中田前市長におもねり、その言いなりになってきた幹部職員にも責任があります。2008年秋から販売を開始した前売り券売上の伸び悩みがわかった時点で、幹部職員は市長に提言し、対策を講じるべきでした。
 市長の顔色を見て行動する「ひらめ」幹部は要りません。このことは、林新市政でも同様です。これまでの経歴から率直にいって、行政経験の少ない市長に対し、市民の立場に立って問題があると思うときにははっきりと提言する幹部職員が、今こそ求められます。
 開港150年記念関連事業での大きな疑念は、マリンタワー再整備事業への財政支出です。2008年度は10億8,000万円、2006年度からの合計は約31億円になります。2007年度には、マリンタワー再整備事業者の社長夫婦が中田前市長に個人献金の最高限度額である150万円をそれぞれ献金していたことが問題になりました。2008年度決算審査でも指摘したように、事業者決定の際に出された計画書にあったFMヨコハマサテライトスタジオがブライダルサロンに変更され、現在マリンタワーではレストラン、カフェテラス、結婚式場や深夜営業の高級スタンドバーなど、山下公園周辺の賑わい創出という事業目的とは程遠い営業が行われており、単に特定の企業のための営業施設が出現しただけです。市の財産を特定の企業のために使ってはなりません。ましてや、そのために31億円もの市税を投入することは、市民に対する背信行為ともいえます。

 これ以外にも、2008年度は不明朗な財政運営が噴出しました。2008年3月まで中田前市長を応援する政治団体「ヨコハマから日本を変える会」の代表であった塩原和夫氏らが引き起こした横浜市病院協会への補助金の不正融資や、中田前市長の後援会「若獅子の会」の代表者に対する港湾用地の不当貸し付けの疑惑も発覚しました。まさに、中田前市政はスキャンダルにまみれ、汚辱に満ちたものだといわざるを得ません。

市民要望の強い学童保育・中学校給食・少人数学級には後ろ向き

 第二は、子育て・教育の分野です。
 株式会社エキスパートシステムが経営する港北区と中区の認可保育所にし、交付された運営費と補助金7,638万円が社長個人の貸付などに不正流用していたことが、2008年度の監査で指摘されました。しかも、こども青少年局はその実態をつかみながら、結果的に現在に至るまで放置し、改善されていないことは重大です。

 山内図書館に指定管理者制度が導入されました。導入の主な目的は人件費1,570万円の削減です。コスト最優先の指定管理者制度は、5年ごとに指定管理者が変わる可能性があるため、継続的な市民サービスをはばみ、不安定雇用を生み出し、優秀な司書の安定的な確保が難しいなど、多くの問題点で図書館にはなじみません。

 2008年度もまた、子育て・教育などに寄せられた市民要望には後ろ向きでした。学童保育については、40万を超す署名に寄せられた要望を一顧だにせず、わが日本共産党市会議員団が行った市民アンケートで世代を超えて要求が高かった中学校給食にも背を向けたままです。食育として教育の一環であり、成長期に必須の栄養摂取を保障する中学校給食を、林市長のいう子育て支援の一つとして位置づけるべきです。また、30人以下学級についても何の動きもありませんでした。林市長は市長選挙の際のテレビ討論会で、「少人数学級というのは本当にやっていきたい」と述べられたにもかかわらず、市長就任後は「少人数教室」という言葉であいまいにしたことは、市長に対する不信感を市民に与えます。発言通り、少人数学級を実施すべきです。

子育て支援の財源確保のためには、大型公共事業の凍結・中止を

 第三は、大型公共工事と市民サービス削減の問題です。
 2008年度は、大型公共事業の継続や再開、そして新たな巨大事業の準備を開始しました。
 横浜環状道路南線では、地域住民の反対を押し切って道路建設事業者ネクスコへ市有地を売却し、地球温室効果ガス排出抑制の立場からも見直すべき同事業を無理やり推し進めました。

 また、凍結していた南本牧MC3・4高規格コンテナターミナルの建設事業を再開し、同事業を含むスーパー中枢港湾関連事業に94億円を投入しました。南本牧MC3・4高規格コンテナターミナル事業費は、総額700億円、本市負担300億円という巨大事業です。
 21世紀の世界のコンテナ貨物の流れはすでに定まっています。本年3月末現在の横浜港のコンテナ取扱量は349万TEUで、シンガポール港2,992万TEUの9分の1に過ぎません。残念ながら、コンテナ物流の本流から外れてしまった港がどれほど立派な施設を整備しても、その流れを変えることは出来ません。これ以上の投資は過大投資です。わが横浜港はすでに世界一流の港湾です。今後はコンテナ数量を争うのではなく、総合港湾として既存の施設を有効活用して、より質の高い港湾を目指すべきです。

 2008年度、横浜駅周辺大改造計画の策定が進められました。決算額は1億7,000万円です。概ね20年後に向けたこの計画は、基盤整備や参画民間企業への補助金・助成金に莫大な投資が予想され、来年度からスタートするとしています。また、もう一つの巨大事業である新市庁舎建設・関内地区再開発事業の準備も、2007年度の135億円に33億円を加え、進められました。
 林市長は来年度の予算編成にあたり、530億円の収支不足を理由に、中田前市長と同様、選択と集中によって財源を生み出すとされました。市長が掲げる子育て支援等の財源の確保のためであれば、この2つの事業は凍結もしくは中止すべきです。

 中田前市政は、これらの大型公共事業の財源の一部を捻出するために、市民サービスの応能負担から応益負担への転換を進め、その予算を切り詰めてきました。市民の願いに背いて、敬老パスや市立病院等の分娩費介助料の値上げ、福祉施設等への上下水道料減免の全廃、在宅障害者手当ての廃止などを強行しました。

 市民いじめの極め付きは、3万を超える国民健康保険の資格証発行です。先の決算総合で林市長は、加入世帯に対する資格証発行世帯の比率は福岡、千葉に次いで3番目だから、横浜市が飛びぬけて多いとは思わないと述べられましたが、その感覚こそが問題なんです。全国保険医団体連合会の2007年度の調査では、国保加入者の年間受診件数が1人当たり7回から8回なのに対し、資格証明書での受診はその53分の1、つまり限りなくゼロに近いと報告されています。3万を超える世帯の市民が、医療を受けたくても受けられない実態を直視しなければなりません。中田前市長も林市長も、保険料滞納問題と医療を受ける国民の権利を混同し、国民健康保険法第1条の「国民健康保険制度は社会保障制度である」という認識が欠けています。少なくとも経済的理由により国保料を滞納せざるを得ない世帯には、名古屋市や広島市、さいたま市などと同様に、資格証明書の発行を直ちに中止すべきです。

雇用創出、市内経済の活性化につながらない企業立地条例は適用中止を

 第四は、横浜経済に対する対応です。
 2008年度前半は投機マネーによる原油や穀物の高騰、それに加えて後半はリーマンショックによる金融危機が本市経済を直撃しました。本市は昨年11月に「横浜市緊急経済対策」を打ち出しましたが、その内容は政府の緊急経済対策の域を超えるものではありませんでした。その効果にも疑問符が打たれるものです。
 特に雇用の問題では、市民の雇用創出を目的の重要な柱に据えた企業立地等促進条例で合計51億円の助成・支援を受けている日産自動車が、横浜工場で130人の派遣労働者を解雇したことに対し、市は何ら有効な手立てをとりませんでした。これは、企業立地等促進条例が市民雇用の確保に有効性を全く発揮しなかったことを示すものです。また、この条例で誘致された大企業の横浜経済、特に中小企業への技術移転や経済波及効果も全く顕在化していません。費用対効果も検証されていない以上、条例適用を中止し、これまで支援した企業の横浜経済・中小企業への経済波及効果と市民雇用の状況を調査・公表すべきです。

 景気後退・金融不安など不況が深刻化する真っ只中に、中田前市長は、全国の市町村に先駆けて、市民税の超過課税として横浜みどり税を導入しました。市民の理解を得ずに強行的に徴税という権力を行使したことは、行政による権力の横暴そのものです。

市民に苦しみを与えた中田前市政から住民こそ主人公の市政に転換を

 7年と4か月の中田前市政は多くの問題点とマイナスの教訓を残しました。そのひとつひとつを市民の目線で検証し、中田前市長によって市民に苦しみを与えられた横浜市政を、「住民こそ主人公」の立場で、子育て・教育・福祉最優先の市政に転換するために協力することを申し添えて、2008年度決算認定反対の討論といたします。