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「横浜市中期4か年計画2018~2021」(素案)についての日本共産党の見解

2018年5月15日

日本共産党横浜市会議員団

団長 荒木由美子

 横浜市はこの度、「横浜市中期4か年計画2018~2021」(素案)を取りまとめ、発表しました。同計画は2030年を展望した中長期的な6つの戦略と4年間で推進する38の重点的政策を記載しています。38の政策実現にむけて207の具体的事業と事業ごとの目標数値と事業費見込み額を示し、総事業費を1兆8500億円と推計しています。実施するパブリックコメントによる市民意見を踏まえ、9月頃「原案」を策定、議会承認を経て最終確定されます。パブリックコメントは5月14日~6月22日の間実施されます。

林文子市長は、発表にあたり「横浜を飛躍させる計画」、「力強い経済成長、文化芸術創造をしっかり位置付けているのが特徴」と述べています。地方自治法は地方自治体の使命について、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」(第2条)と規定しています。党市議団として、同計画が、切実な市民要望に応え、住民福祉の向上に寄与し、国から独立した自主性が貫かれたものであるかどうか検証しました。

1)多くの市民がギャンブル依存症増加、治安の悪化、青少年への悪影響などを理由に反対し、林市長も市長選を機に「白紙」としていたカジノについては、「統合型リゾート(IR)については国の動向を見据え、検討します」と記しています。計画素案に先立って市が取りまとめた「新たな中期計画の基本的方向」にはこの記述がありませんでした。国の動向について「整備法制定・区域整備計画認定」と注釈をつけており、法が制定されれば誘致宣言するとも読み取れます。安倍自公政権が国会に提出したカジノ実施法は、設置数は3か所としています。最初に認定されないと後7年間待たねばなりません。地元紙が「IR検討“復活”」と報じているように、カジノ推進派の自民党市議団に「配慮」して、これまでの「白紙状態」という市長の態度を実質的に撤回したものと云えます。

2)20ある政令市のうち横浜市だけが実施していない中学校給食について、実施にむけた調査・研究すら行わず、実施は全く視野に入れていません。これでは「子どもの豊かな学びを育むための魅力ある学校づくり」という政策は看板倒れです。ハマ弁の喫食率を20%(2020年度)など、中学校昼食における「選択制」(ハマ弁、家庭弁当、業者弁当から選択)の充実をはかるとして、これまでの方針の踏襲です。4年間のハマ弁実施費用見込み額は43億円です。

3)保育、学童保育、小児医療費助成、少人数学級など子ども・教育関連施策はどうでしょうか。

①待機児童数ゼロに向け、引き続き保育所整備を進めるとしています。設置場所、保育士の配置など保育の質をどう確保していくか市民の側からの継続的なチェックが必要です。

②学童保育クラブ支援については、面積基準等に適合するための分割・移転等を31年度までに100%にするとことを明記しています。画餅にしないよう本気の応援が必要です。

③小児医療費助成は、通院助成を中学3年生まで拡大します。しかし、市長が、市長選後の議会で「検討する」としていた所得制限の緩和については記述がありません。

④小1、小2で実施している35人学級の拡大については、「未来を切り拓く資質・能力を育む教育の推進」を掲げながらも、言及なしです。教職員の働き方改革では、時間外勤務80時間超の教職員の割合を0%にするとしていますが、その保障ともなる教員増は盛り込んでいません。施策として重視しているICTを活用した学習活動や、グローバル教育は財界の要求に応えたものです。教育の基本は子どもの全面的発達をめざすことにあり、本来の教育を取り戻すための世論と運動が求められています。

⑤子どもの貧困対策 生活・学習支援を拡充し、子ども食堂等の居場所づくり支援では現行8件を60件へと大幅に増やします。しかし、就学援助金制度の拡充、低収入世帯むけの成績要件のない高校奨学金創設は計画にはありません。

4)高齢者福祉では、特別養護老人ホームの整備量を年間600人分に倍増、しかし入所までの待機月は、現在の12か月と同じであり、この計画で‘よし’とするわけにはいきません。敬老パスについては記述がありません。しかし、「効率的な財政運営の推進」として、「経費節減」を謳い、また、自民党市議団から市営交通の乗車料収入の確保を求める意見があがっており、現行制度の継続は予断を許しません。

5)地域経済では、「中小企業の経営革新と経営基盤の強化」を政策のトップにかかげています。この政策実施に充てる費用は金融と中央市場整備を除くと43億円です。企業誘致に投ずる費用124億円の1/3にすぎません。横浜経済の成長は、地域経済を支えている中小企業の発展にかかっています。ここの対策に優先して、予算配分すべきです。

6)防火対策の貧弱な共同住宅、ネットカフェ代用など低所得の高齢者や若者の住まいの貧困が深刻です。計画ではこうした人を対象とした国の新たな住宅セーフティネット制度による家賃補助する住宅供給目標は700戸です。しかし、制度発足の昨年10月から7か月経過して手をあげた家主は4戸だけです。目標達成は極めて不透明です。安心の住宅提供は、民間任せの新制度だけに頼るわけにはいきません。市は、住宅確保要配慮世帯数を15万9千と試算しています。市の責任で公共住宅を確実に供給することが不可欠です。しかし、計画では市営住宅の新規建設はゼロです。

7)平和推進・住民自治について、「海外諸都市や国際機関との連携・協力を通じて『世界とともに成長する横浜』の実現を目指し、国際社会の平和と繁栄に貢献します」と記しています。国際平和を目指す事業・施策の具体化はありません。また、成長する横浜のために海外諸都市、国際機関との連携・協力するとする方針自体が対等・平等・互恵等の都市間外交の原則に反しており、この記述の修正は待ったなしです。住民自治と住民参加では、行政の肩代わりを住民に求める施策の羅列で、住民自治をはき違えていると云わざるをえません。

8)地球温暖化対策では、市域の32年度温室効果ガス排出量を25年度比22%減とします。排出量換算すると25年度の1885万t-CO2/年を32年度には1470万t-CO2/年にします。27年度時点では1734万t-CO2/年です。過去5年間の削減量179万t-CO2から見て、現行の対策で目標達成できるか検証が求められています。自然エネルギー活用でも全国最大の基礎自治体として先進を走る役割が求められています。国が建設を進める石炭火力発電は、CO2の排出量が最も多く、地球温暖化防止対策に逆行しています。自然エネルギ-に依拠する政策展開に地方自治体が力をつくす時です。しかし、それにふさわしい施策展開は見当たりません。

9)大型開発に予算を集中します。高速道路1426億円、巨大岸壁等港湾整備約953億円、新市庁舎関連909億円、横浜駅周辺・東神奈川臨海部周辺とみなとみらい21地区の開発・再開発275億円など大盤振る舞いです。人口減少・低成長という時代背景のなかでは、従来型の大型開発は見直しが不可欠です。一方、市民生活関連事業は抑制しています。市営住宅は再整備のみです。通学路・歩道整備、道路拡幅など生活関連道路は150億円、高速道路の約1割です。道路のバリアフリー化は4か年で8㎞、年平均2㎞にすぎません。がけ地の防災対策では、市の調査によると、崖崩れにより、生命と財産に著しい被害を及ぼすおそれがあり、早急に対策を実施することが必要な崖地は、1,356か所ありますが、計画では4か年で120か所としています。木造住宅が密集する住宅不燃化推進地域での建替補助件数は1400戸、約4万の対象戸数の3.5%です。防災スピーカーも4か年で190か所。限られた財政のなかで、大型開発に巨費を振り向けるために、市民生活関連や防災の公共事業が犠牲となっています。

以上みてきたように、同計画は、市民生活の実態と市民要望に目を向けたものとなっていないことは明白です。大型公共事業を突出させ、国家戦略特区等をつかった都心部などの街づくり方針は、アベノミクスの下請けそのもので、行政の自主性を放棄するものです。市の実施するパブリックコメントに多くの市民が参加し、要望を届け、改善をはかる市民運動が待たれています。

日本共産党市議団は、同計画が市民生活に向き合った計画となるよう力をつくします。

以上