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【2009年第4回定例会】「議案・請願討論」 白井正子

 私は、日本共産党を代表して、今議会に提案された3件の議案と4件の請願の不採択について、反対討論を行います。

市営住宅使用料などの強制的な徴収が行われる懸念

 まずはじめに、市第51号議案、横浜市の私債権の管理に関する条例の制定を行おうとするものです。
 母子寡婦福祉資金貸付金や市営住宅使用料など大量・反復して発生することが想定される約50の債権を対象に、500万円以下のものに限って著しい生活困窮状態などの要件に該当する場合に、議会の議決を得ることなく債権を放棄するというものです。回収困難な債権を放棄することはよしとしても、議会の関与が著しく低下してしまうことが問題です。また、負担能力が十分と判断された場合、支払督促や強制執行等が行われますが、負担能力が十分か不十分かの判断の基準があいまいです。条例で、市長等は適切かつ効率的な市の私債権の保全、取立て等に努めなくてはならないという規定をタテにした機械的な判断により、強制的な徴収手続きが行われる懸念があります。

事業計画書の一部公表では指定管理者是非の判断は困難

 次に、市第90号議案は、青葉区の市立山内図書館の指定管理者に有隣堂グループを指定しようとするものです。わが党は、専門性やサービス水準の低下が懸念されるため、そもそも図書館に指定管理者制度はなじまないと制度導入に反対してきました。
 公募の際、市が示した業務要求水準書では、「職員の配置要件は司書資格者の割合が62パーセントを想定している。サービスの質が落ちないと考えられる根拠を示すことが望ましい」とされています。その要求に沿って事業者が取りまとめた事業計画書は、一部しか公表されていません。図書館運営の要を担う司書資格者の配置や収支計画など事業計画書の全文は、指定管理者制度運用ガイドラインに照らして議案議決後でなければ公開できないとのことです。提案されている図書の宅配などの有料サービスや図書館内での書籍販売がどの程度の規模なのか、設置目的にあった事業なのか、判断は困難です。そのため、選定委員会の判断を鵜呑みにすることしか出来ません。判断材料を示されないで、是非を問うやり方は問題です。
 さらに、常任委員会での説明では、職員は全員契約社員とのことですが、本市がこれをよしとすることは、非正規雇用の解決が急務とされている現下の状況に逆行するものです。

有数の港湾である横浜港は京浜港の一体化に組みする必要なし

 次に、市第91号議案、京浜港連携協議会規約についての協議についてです。
 本議案は、国際競争力の強化のためと称して、横浜・東京・川崎の三港からなる、いわゆる京浜港の一体的な経営に向けた、各港の港湾計画の指針となる基本方針「総合計画」の策定や組織体制の検討等、実質的な一港化に向けた取り組みをするために協議会を設置するものです。
 「三港連携のスケールメリット」「港湾設備の効率的活用」などとしていますが、問題は、単なる調整機能だけでなく、三港協議会によって策定される基本方針「総合計画」が上位計画となり、各港の港湾整備などの「計画」はそれに従うというもので、高規格コンテナターミナル等の港湾整備だけでなく、高速道路網など物流インフラ整備など、新たな財政負担を引き起こしかねません。
 また、国際競争力の強化という大義名分ですが、今年3月末の取扱コンテナ個数で、横浜港が349万TEU、シンガポール港が2,992万TEUに見られるように、残念ながら21世紀の世界のコンテナ貨物等の流れは決まっており、その流れは変えることはできません。すでに横浜港は有数の港湾であり、京浜港の一体化に組みする必要はなく、総合港湾として既存の施設を有効活用した港として、発展・成長を目指すべきことを申し述べておきます。

教育効果が実証済みの30人学級の実施に踏み出せ

 次に、請願第23号は、小学校、中学校、高等学校の30人学級の実施を県・国に働きかけるとともに、本市独自に教員を増やして少人数学級の拡大を求めるものです。
 学級編成について国の標準は1学級40人ですが、神奈川県教育委員会での35人学級研究指定校の学級編成弾力化により、少人数授業やチームティーチングの先生を学級担任に振り替えた少人数学級が実施されております。現在、実施は小学校で88校、中学校で2校です。本市においても、少人数学級の教育上の効果はこれまでの実践の中ですでに検証されています。
 川崎市では、2008年から川崎市として独自に非常勤講師を配置し、小学1年生はすべて35人学級になりました。少人数学級は全国的に広がって、名古屋市や京都市、広島市、福岡市、北九州市、仙台市、千葉市などでも行われていると聞いています。他都市に習って、本市でも独自に予算をつけて少人数学級に踏み出すべきです。

2,414人もの保育所待機児童の解消を喫緊の問題として解決する意思を示せ

 次に、請願第24号は、保育所待機児童の解消を求めるものです。
 先ごろ、10月1日現在の保育所待機児童数が明らかになりました。昨年同時期に比べ800人増えて、全市で2,414人にのぼっています。年齢別に見ると、一番多いのは1歳児の935人、次いで2歳児558人、0歳児417人となっています。昨年同月比ですべての年齢で増加しています。解消に一層力を入れなければなりません。
 市長は、保育所待機児童解消のプロジェクトチームを立ち上げて、緊急的な対応を図ろうとされています。市長が進めているからよしとするのではなく、この課題は、財源確保も含めて関係者や議会が総動員でのぞまなければ進みません。議会が、保育所待機児童を喫緊の問題として解決すると言う意思を示すためにも、この請願を採択すべきです。

自治体が保育に責任をもつ現行の保育制度を守れ

 次に、請願第28号は、保育制度を守るよう国への要請を求めることや、保育予算の拡充等を求めるものです。
 国の保育制度見直しについて、厚生労働省内部の議論では、12月9日に新しい保育制度の詳細が確認されました。利用者と保育所の「直接契約制度」や、株式会社などの参入を促進するための「指定事業者制」の導入などです。
 また、11月に厚生労働大臣が示した方針では、東京都など都市部で保育室の面積基準の引き下げを認めるとともに、全国的に園庭の設置や避難設備の最低基準も撤廃して、地方に任せる方向です。
 また、政府で12月8日に閣議決定された緊急経済対策の中に、保育の制度・規制改革の方向性を、来年前半を目途に固める方針が盛り込まれました。保育制度の変更と基準引き下げの方向が同時に議論されています。
 現行制度では、自治体が保育を直接実施する責任があり、申し込みから入所まで責任を持つことになっています。自分で保育所を探して契約する直接契約となれば、待機児童が発生している本市では、保護者にとって保育所探しがますます困難になるのは必至です。
 また、現在、所得に応じて決まる保育料が、利用時間に応じた応益負担の保育料となり、保育が必要と認められた量を超えれば別料金となります。保育料を保育所が集めることになれば、経営がその時々の利用状況に左右されることになり、経営者にとっても困難となります。
 新制度で注目されているのが、指定事業者制度です。客観的な基準を満たした事業者は全て参入を認めるものです。新制度では自由に事業者が参入でき、1か月前に届けるなどで撤退も自由です。運営費の使途制限も撤廃され、本社が利潤を回収したり、株主配当や他の事業につぎ込むことも可能とするものです。
 本市の認可保育所で、営利法人が運営する港北区と中区の園が、10月と12月に別法人に譲渡されました。認可責任者である本市が指導をしてきましたが、別法人になるまで保護者など関係者は不安をつのらせました。また、運営費の厳格な使途制限を無視した親会社や運営法人への貸付など不正経理も発覚しています。制度的にこれを認めることになれば、保育の質は保てません。保育が儲けの場になることで、保育条件の低下とともに保護者と保育所との関係に、お金でサービスを売り買いすることによる歪みが持ち込まれる懸念もあります。保育制度がこのような局面にある中で、現行保育制度を守るよう国へ要請を求めるなどのこの請願を不採択としたことは、将来の保育のあり方に真剣に向き合った態度とは思えません。

38万5千余の思いを込めた学童保育改善の願いに応えよ

 次に、請願第36号は学童保育の改善を求めるものです。
 2006年に補助事業化され、半数以上の学童が運営が厳しい状況に陥っているといわれているなか、2009年4月現在の平均保育料は1万5,600円で、保護者の負担は年々重くなっています。経済的負担を求められない家庭への減免を全家庭で負担することも行われていますが、結局通うことを諦める家庭もあり、子どもや保護者へのしわ寄せは深刻です。また、指導員の労働条件の引き上げが難しく、そのために人材の安定的確保の困難さが続いています。学童保育を必要とするすべての留守家庭の子どもが通うことが出来るよう、本市からの運営費補助増額は切実です。
 また、施設の確保は地域の協力の下で、保護者が準備するとされていますが、子どもが多すぎてひしめき合う、建物が古く地震が心配、学校から遠すぎる、トイレが足りない現状でも、移転先を探すのは大変です。また、修繕への補助がない現状では、施設改善も進みません。
 運営費の増額と本市の責任で安全な施設の確保を求める38万5千余の署名の重みを、議会として感じて、しっかりと応えるべきです。
 以上で討論を終わります。