議会での質問・討論(詳細)
2018年6月5日

■古谷 やすひこ議員 (鶴見区選出)が反対討論

規制緩和は劣悪な居住環境の簡易宿所が終の棲家となっている人々への困難な事態をもたらす

古谷議員:古谷やすひこです。日本共産党を代表して、本定例会で上程された議案のうち、市第5号議案、市第6号議案、市第11号議案、市第12号議案、および議13号議案、請願第4号の委員会の不採択について反対の討論を行います。

 まず、市第5号議案「旅館業法施行条例の一部改正」についてです。

 この規制緩和の対象には寿地区の簡易宿所も入っています。現在5,394世帯の生活保護世帯が寿地区の簡易宿所が事実上、終の棲家となっています。横浜市自体が簡易宿所を住居として認めています。寿地区の簡易宿所は、3畳一間(5㎡)が一般的な広さです。国の住生活基本計画では単身の最低居住面積水準は15畳25㎡と定められています。

 今議案では、そんなもともと貧弱な簡易宿所の住居機能を更に減ずることができるような提案が入っています。例えば、押入れが必置であったものをなくしてしまったり、トイレや洗面所について、それぞれに客室の床面積の合計が100㎡を超える場合は5以上などの規定が現行では定められていましたが、改正案では、洗面所の規定は削除、トイレは「適当な数」ということです。客室の窓の規定も事実上なくしてしまい、陽のあたらない不健康で非衛生的な客室となることは明らかです。現状でさえも、とても住まいとは言えないような環境なのに、なぜこれ以上の悪化を認めるのでしょうか。

 寿地区は、高齢化率も全国平均の2倍、更に近年は低所得の障害者の居住も増えてきています。高齢で障害をもち、男性の単身者が住む町ということです。そんな寿町の簡易宿所の玄関帳場では、単純なフロント機能というだけではなく、時には自分でお金をおろせない人に代わってお金をおろしに行ったりして、一人暮らしの機能を支えています。また寿町で開業する山中医師によれば、今でさえ「3日に一人は孤独死する」と言われるほどであります。今回の議案が通れば玄関帳場に人がいなくなれば、寿町で暮らす方々がどういう困難な事態に陥るかは明白です。

 市長、横浜市は、公的住宅を建設してこなかったことで、低所得者の住居が圧倒的に足りなくなり、それを満たすために便宜的に簡易宿所を住まいにして、生活困窮する方を劣悪な居住環境の簡易宿所に押し込んできました。今回の議案は、便宜的に簡易宿所を住まいにしてきた実態から、本来であれば寿地区の簡易宿所は旅館の客室ではなく、今回の規制緩和から外すべきでありました。しかしそれもせず、寿町の簡易宿所も旅館業法の規制緩和を適用して経営の効率化のために改悪するという、間違いに間違いを重ねるようなやり方で、断じて認めるわけにはいきません。

市民合意が得られていない上郷町猿田地区開発について市長は説明責任を果たせ

 次に、市第6号議案「横浜市地区計画の区域内における建築物等の制限に関する条例の一部改正」についてです。

 私たち日本共産党市会議員団は、一貫してこの問題について開発を認めることなく上郷猿田地区の緑を守るべきと二つの理由から主張してきました。

 一つは、上郷猿田地区が緑・自然の宝庫であるとともに、歴史的価値の高い遺跡がある市民の貴重な宝であるということです。そんな貴重な緑地を開発するというのは、「市街地の抑制、市街地縮少へと舵を切った国の国土利用計画からも反しています。また、本市が進めているみどりアップ計画にも反し、横浜スタジアム約4個分の市街化調整区域を市街化する計画は極めて異常です。横浜市は人口減少社会に突入しました。そんな時に、なぜ貴重な緑地を壊してまで新しい市街地が必要なのでしょうか。市長からは合理的な説明は今までのやり取りの中では一回もありませんでした。市長、もう一度言いますが、いまさら大規模開発する時代ではありません。

 もう一つは、この上郷猿田地区は開発に適さない土地だということです。国の国土利用計画、国土強靭化基本法、災害対策基本法も「行政は自然災害の未然防止を図る責務を有する」としています。横浜市自らが認める難のある軟弱地盤の上に、最大14mもの谷を埋め土地造成を行う開発計画の強行は、どこから見ても正当性がありません。

 都市計画審議会の議決から告示までの間に、市長は都計審の中で出された反対意見も踏まえて熟慮・再検討の余地がありました。しかし市長は粛々と告示をしてしまいました。市長、この上郷猿田地区の開発問題については、約11万筆もの反対署名、都市計画案の縦覧時に提出された反対意見書は8,507通にも及んでいます。粛々と片づけられる問題ではありません。市長は、自らが決めたことをなぜ市民に説明しようとしないのでしょうか。市民に対しての説明責任を果たすべきです。

上郷森の家が長年果たしてきた公的な役割を投げすてるな

 次に、市第11号議案「横浜市上郷・森の家の指定管理者の指定」、市第12号議案「上郷・森の家改修運営事業契約の締結」についてです。

 上郷・森の家条例の中には、設置された目的が定められています。「宿泊等の機会を通じて、市民に横浜の貴重な自然に触れることができる環境の中で様々な体験、相互交流及び学びの場を提供することにより、ふるさと意識及び連帯感の醸成を図るために、横浜市上郷・森の家を横浜市栄区に設置する。」こう定められています。

 この施設の年間利用者うち、半分以上を小学生が占めます。平成28年度でみれば、体験学習の利用は165校、16,482人です。体験学習のシーズンである5月から11月の部屋の稼働率は8割以上、特に6月、7月は9割以上となっています。それは公の施設として他の民間施設に比べ低廉に利用できるため、青少年の学びと健全育成の点で大きな役割を果たしてきました。

 そんな上郷・森の家が今回の提案では、大幅な値上げとなることが危惧されます。今議案に先立って行われた改定によって現行では5,500円から宿泊料金が設定されていたものが宿泊は上限で15,000円に、温浴施設は、現行500円が2,000円に、バーベキュー場は、平日の利用で1,500円だったものが、1時間につき800円に。駐車場は、1時間まで無料、1時間100円ということでしたが、これは30分につき300円、などとあります。こんな値段で運営を行われれば、もはや公の施設とは思えません。横浜市が当初、上郷・森の家を設置した際に掲げていた目的を全て投げ捨てたと思われても仕方がないほどの改悪です。

 そもそも、今まで低廉な料金で運営していたのは、先ほどの設置目的を果たし公的な役割を果たしている上郷・森の家に対して市の補助金が入っていたからです。今回の提案では、運営費に入れていた補助金を一切をなくしたために、運営に係る経費の全てを利用料金収入で賄わなければならず、値上げになることは必然です。

 上郷森の家が今まで長年果たしてきた公的な役割を投げ捨てることにつながる今回の提案には、反対です。

党市議団が提案した「平和事業の推進に関する条例」の採択を

 次に議13号議案 横浜市平和事業の推進に関する条例の委員会不採択についてです。

 本条例は、本市行政に対して、市民と協働して平和事業を積極的に実施し、核兵器廃絶の実現に向けて国内外の都市等と連帯することを求めて、その成果を議会に報告することを義務づけるものであります。

 これまで横浜市会は1970年に平和都市宣言に関する決議を、1984年に非核平和都市宣言に関する決議をしています。この二つの決議は非核・平和を求める横浜市会の決意です。本来であれば、市長はその議会の決議を受け横浜市として全国に非核平和都市宣言を発し、決議に基づき市民とともに平和行政を推し進めることが求められていました。しかし、歴代の市長は時の自民党政権に忖度し、平和行政を後景に追いやってきました。事実上、多くの市民は本市が議会による非核平和都市宣言都市であることを知らないのが現状です。まさに本市行政が積極的に平和行政を行ってこなかったことの証拠でもあります。

 今日、世界が、横浜市に国際平和都市として核兵器廃絶・平和事業の積極的な推進を求めています。我が国最大の政令都市として、本市の平和事業への貢献が求められ、その役割を果たさなければなりません。本市の平和行政の基本的原則とその基本的事業及び、その実践の年間報告を条例で定めることによって、本市行政・議会・そして市民がオールヨコハマとして決意を市内外に示すことができます。

 世界平和、核廃絶は、思想信条を超えて人類すべての願いです。もちろん、そのための道筋や考え方の違いがあることは当然です。しかし、平和事業として平和の大切さや核兵器廃絶の意義を普及し、情報や資料の収集など展示などを旺盛に行うことは、平和を求め核兵器廃絶を求めるすべての人に共通の財産となり、それぞれの運動・行動を進める力となり、その力に依拠し本市が率先して他都市等と平和に関する交流を進めることが、本市の平和・核兵器廃絶に向けた意思を発信することになります。この事業の意義と重要性に基づき、具体的に行動することが世界と時代の要請であり、本市会が採択した二つの決議に命を吹き込む保証となる本条例案 議第13号議案に議員各位の賛成を強く求めるのものであります。

「消費税増税の中止を求める意見書」は採択を

 最後に、請願第4号「消費税増税の中止を求める意見書の提出方について」の不採択についてです。

 請願は、住民の暮らしと地域経済に深刻な打撃を与える消費税増税は中止することを求め、来年10月からの10%への引き上げの中止を求める意見書を政府に出してほしいというもので、反対されたみなさんは、来年10月からの10%への消費税増税、大いにやるべきとお考えになっているのでしょうか。

 消費税、10%を強行するとどういう事態になるでしょうか。2014年の8%への消費税増税では、同時に約19兆円規模の景気対策を実施したものの、消費は戦後最悪の落ち込みとなりました。経済が冷え込んだために、財政再建も遠のき、完全な失政でした。そのため、政府は消費税10%への増税時期について、15年10月、17年4月の2度の延期を余儀なくされました。

 この間、実質賃金が長期にわたって減少傾向を示し、年金、医療、介護などの社会保険料負担の増加で可処分所得も大きく減っています。消費税10%への増税を予定する19年10月は、東京オリンピックに向けた建設特需が終息していく時期とも重なり、暮らしと経済に大打撃となります。

 このように、安倍政権は消費税増税で進むことも、立ち止まることも困難な状況に追い込まれています。そこで、政府は消費税10%の強行を前提に、その打撃を小さくする景気対策として、再び大型公共事業の拡大をもくろんでいます。すでに経済財政諮問会議の中では、経団連会長が「成田羽田の高速輸送システム」や新たなハコモノ建設を求め、安倍首相も「政府一丸となって検討する必要がある」と言っています。またもや失政が再現されようとしています。

 雇用、所得、医療、年金、介護などの国民生活の基盤に大きな問題を抱える状況の中で、国民にいっそうの負担を強いる財政運営は持続不可能です。大事なことは、消費税増税など国民負担を強化する財政運営から脱却すること、そのためには、財政の「ばらまき」や「無駄遣い」を中止することです。

 横浜市民にとっても、横浜経済にとっても、益は一つもありません。政府がそんな失政を繰り返さぬよう、改めて請願の採択を求め討論を終えます。


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