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「予算に対する反対討論」(大貫憲夫)

日本共産党を代表し、2019年度横浜市一般会計予算案等に反対する立場から討論を行います。

私の32年間の議員生活の中で、これほど露骨で類を見ない、時の政府追随の予算が組まれたのを見たことがありません。地方自治を貫く立場から、とても賛成できるものではありません。

「世界で一番企業が活躍しやすい国」をかかげ、首都圏に経済、人口を一極集中させ、国際競争力をつけるという安倍自公政権の成長戦略は、その最も忠実な執行役を、我が国、最大の政令指定都市、横浜に求めてきました。その要請に、これまでになく積極的に応じたのが2019年度予算案です。

2019年は本市の人口がピークを迎え、今後、減少の一途をたどるとされる、まさに、時代を画期する年です。今後、少子高齢社会が進み、生産年齢人口の減少を加速させ、産業の縮小と変化を生み出します。人口減少率をできる限り小さくすることが求められています。この時代の流れを正視し、予算編成することが市長の一番のしごとです。

しかるに、新年度予算案において人口減少を枕詞には据えてはいるものの、中身をみれば、対前年比3割増しに編成した2018年度の施設等整備費を、さらに上回り、2.2%増の2486億円を計上し、既存公共施設の保全や更新など、市民生活に密着する公共事業のための市債発行を抑え、新市庁舎整備や横浜環状北西線などの市債発行を増発し、さらには、南本牧や新たなふ頭・新本牧ふ頭整備・都心臨海部再整備など高度経済成長期を彷彿させる大型公共事業への大盤振る舞いです。

新年度、大型公共事業に突出した予算案が出された理由は、大型建設特需で湧いた2020年までの東京オリンピック・パラリンピックイヤーの終了を見据えて、新市庁舎整備・横浜環状北西線建設事業にけりをつけ、市庁舎の移転にともなう関内・関外再開発や、みなとみらい地区開発、東高島駅北地区再開発などなど、横浜の活力をつけると称し、大型公共事業を本格稼働させる目論見があるからではないでしょうか。これでは、まるで安倍自公政権の成長戦略の実行部隊としか言いようがありません。

なぜ、安倍自公政権下請け丸出しの市政になってしまったのか。それは、2013年、市長2期目の市長選において、自民党の推薦欲しさに都市整備、医療・福祉・教育、文化、観光など6分野にわたり、非公開で政策協定を結んだことによるものです。

2014年の第一回定例会で市長は、「国は政策を掲げ、法や制度をつくりますがそれを実行し、成果を皆さまに届けるために、現場で汗を流すのは、私たち基礎自治体です」と施政方針演説を行い、現在に至っています。この根本理念は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」という地方自治法第一条に掲げている地方自治体の役割と相反するものです。

さらに、市長は基本方針演説で、「横浜の将来を見据えたときに何より注力すべきことは、次代を担う人づくりです」と述べられました。私には市長が本心からそのように考えられているとはとても思えません。

市長もご存じのはずです。現在でも、子育て世代が市外に流出しています。

本市の人口動態は、外国からの転入者を差し引くと国内の移動では、横浜からの転出者が転入者に勝り、転出先は東京区部だけでなく、周辺の都市・地域への転出超過の状態が続いているのです。2017年度の年齢別内訳は、20歳代が30.4%、30歳代が25%、40歳代が14.1%です。転出者の多くは子育て世代です。はっきりと本市の子育て支援施策の遅れを物語っています。生産年齢世代の市民が横浜で、第2子、第3子を産み育てる環境をつくり、真剣に少子化対策を行うことにより、人口減少率を引き下げることが可能です。

現状の子育て世代の流出に手立てを講じることなくして、今後の人口減少対策を考えることはできません。なぜなら、現在の延長線上に将来の横浜が存在するからです。

子育て支援施策の中で他都市と比較し、遅れている最たるものは、中学校給食の問題です。市長は、給食未実施について、これまで答弁のすり替えや様々なごまかしで弁解してきました。

すり替えの問題では、2月21日の本会議でわが党の古谷議員が行った中学校給食の位置づけを問う質問に市長は、最重要な課題として、その認識を明らかにしました。ところが、3月15日の予算特別委員会総合審査での岩崎議員の行った「中学校給食は最重要と考えているという市長答弁に変更はないか」との念を押す質問に市長は、「中学校昼食は、最重要な課題」と、「給食」を「昼食」と、あえてすり替えました。これは、過日の本会議での古谷質問に対する「中学校給食は、最重要課題」という市長の答弁を事実上取り消すものです。これは、市長の本会議での発言の信頼性にかかわる重大問題です。本会議での発言が間違っていたならば、なぜキチッと訂正しないのか。それをせずに誤魔化して済ませることは、あってはならないことです。これを放置すれば議会の審議そのものが成り立ちません。そして、この問題で予算特別委員会は「市長の言わんとすることは変わっていない」という訳のわからない当局説明を「よし」として、多数決で不問に付してしまいました。重要問題を質そうとしない議会は、その存在意義が問われるといわざるをえません。わが党はこの事態を看過するわけにはいきません。引き続き市政の重要問題として取り上げていく所存です。

ごまかしの第一は、中学校給食未実施の理由は、多額の費用が掛かるなどという財政的理由です。政令都市20の内、横浜市を除く19市は、多額の費用が掛かっても中学校給食を実施しています。多額の費用が掛かっても、やらなければならない事業なのです。だから、他都市は実施しているのです。

その第二は、できるところから給食を実施すると公平性に欠けるためと、信じられない理由を挙げました。教室へのエアコン設置は3カ年事業でした。何の問題もありません。何よりも、他の都市の中学生は給食があるのに、同じ日本の義務教育でありながら、本市の中学生には給食がありません。これ以上の不公平はないではありませんか。

カジノ誘致調査検討費をただちに中学校給食導入検討費に変えるべきです。

市長は横浜市の人口減少に備えて、横浜の活力を伸ばす確かな道筋をつけるため、更なる成長戦略に取り組んでいかなければないと述べています。

そして、第一番目に掲げたのは、戦略的な企業誘致です。

企業立地促進条例に基づき元ゴーン会長が率いる日産自動車に本社誘致、工場設備更新として75億円に上る補助金等の支援を行っています。確かに、誘致された企業は、その後、それなりの自社の実績を納めています。しかし、誘致された企業に求められるのは、どれだけ地域に同化し、地域経済と結びついて、地域の仕事興しや新たな産業群を、横浜に生み出すことができるかが、評価の対象となるものです。その点ではこれまでの企業誘致事業は、ほとんど評価に値しません。単なる、大企業援助でしかありません。

安倍自公政権の意向に従う本市の経済戦略は、このまま推移すれば、百年後、日本の人口は3分の1に減少するとされる、厳しい時代の流れに対応することはできません。今こそ、明確に人口減少を抑える政策を正面から打ち出し、持続的で、豊かな地域社会を基礎とした都市横浜をつくる努力が必要です。

発想の転換が必要です。人口減少社会のもとでの経済振興のエンジンは、高齢社会をも同時に見据えて、徒歩圏内で行ける日常生活圏の中で、求められている多様な福祉施設や保育所などの公共施設、民間商業施設などを整え、地域での雇用や生業を増やし、生活密着型公共事業を旺盛に行うことです。これまでのように成長経済の波にのり、建設することが最大の目的になるような不要不急の大型公共工事から、本市の財源が市内に循環し、拡大再生産に結びつく生活関連の公共工事にシフトすることです。人口が減っても生活の質は低下させず、質が向上する計画を立てることが本市に求められています。

新年度予算案で、地域経済を支え自立的なヨコハマ経済の担い手の小規模事業者に焦点を当てた小規模事業者支援策は、その規模はともかくも、新年度予算のなかで数少ない積極的な施策として評価に値します。今後もこの動きを加速させるためにも、小規模事業者への持続的な支援を保障する条例の制定が必要です。

市長におかれては、残りの実質2年の任期を、自民党の「くびき」を断ちきり、呪縛から脱し、市長ご自身の思う市政「コンクリートから人へ」と住民重視を掲げた初心に帰られることを提言して、予算反対討論とします。