申し入れ等
2019年11月21日

新たな劇場に関する「中間とりまとめ」を受け、改めての日本共産党市議団からの要望

2019年11月21日

横浜市長 林 文子 様

横浜市新たな劇場整備検討委員会

委員長 高橋 進 様

日本共産党横浜市議団

団長 荒木 由美子

日本共産党市議団は、新たな劇場整備検討委員会(以下検討委員会)での審議にあたり、6月24日、林市長あてに5項目の要望を提出しました。

この9月に公表された中間とりまとめは、検討委員会が3回の会議を経てだされたもので、検討途中で中間とりまとめを行うことを求めた私たちの要望に沿ったものではありますが、残念ながらこれに対する市民意見は募集していません。また、劇場を整備するにあたっての基礎となるオペラ、バレエに関する需要・供給の定量的把握を検討委員会として行っていません。

検討委員会は、中間とりまとめの冒頭に「整備を前提とした検討に偏らず、必要性から整備、運営の見通しなどについて、市民理解が得られるとりまとめにつなげる」と書いています。自治体として税金を使って箱物を創っていくための大前提である謙虚な姿勢が表れています。ところが構成は中間とりまとめの5章建てで1章横浜市の文化芸術を取り巻く状況、2章新たな劇場整備の検討、3章新たな劇場の使命と目標像、4章整備のあり方の検討、5章新たな劇場の運営のあり方となっています。これでは整備を前提とした検討に偏り過ぎており、言行不一致と言わざるをえません。今後の検討委員会としては、原点に立ち戻った検討をされるよう強く求めるものです。

中間とりまとめは、新たな劇場の運営のあり方について、上演ジャンル、舞台芸術の実演団体の育成、公的支援など6つの論点を示し、実際の運営に必要な要件として人材や資金力、マーケティングにも言及しています。これらがあと3回の会議のなかで検討されて、年内には最終とりまとめが行われます。この拙速さについては、議会のなかでも多くの会派から指摘されています。

私たちは、新国立劇場を10月25日に視察しました。同劇場は、年間収入約70億円のうち、40億円が国からの委託費(補助金)、20億円がチケット売り上げ、寄付金が4億円。職員はオペラ・バレエ・演劇の各ジャンルに分かれており総勢150名です。オペラ、バレエ、演劇のそれぞれに芸術監督を配置し、専属団体として新国立劇場合唱団、新国立劇場バレエ団があります。また、3つのジャンルごとに研修所も有しています。オペラ劇場は4面舞台で、上下奥舞台の機構を使い、入れ替え公演が行われます。オーケストラピットは常設で、上げ下げができ、座席数は1814席。劇場は構想段階から完成(1997年)までに31年間かかり、総建設費約800億円です。

9月30日の第4回会議に出された資料に他劇場のオペラ、バレエの上演状況が書かれています。東京文化会館、新国立劇場、オーチャードホール、神奈川県民ホールの4館のうち、2016年から2018年の3年間の公演回数では東京文化会館がオペラ96、バレエ239、新国立劇場がオペラ160、バレエ93と、2館が各々1、2位を占め、バレエでは東京文化会館、オペラは新国立劇場が抜きんでています。

中間とりまとめは、新しい劇場の目標像として「舞台芸術におけるアジアの拠点となる劇場」「優れた舞台芸術の人材育成、活性化の拠点となる劇場」などを掲げています。市長は「世界レベルのものが横浜にあることを世界に示したい」と本会議場で述べています。この目標を達成しようとすると新国立劇場に限りなく近い劇場が求められることになります。しかし、第4回の会議では、実演団体のフランチャイズ化は議論されていますが、専属のバレエ団、合唱団とその研修所については議論されていません。議論の目標像との乖離が大変気になるところです。横浜市がめざす劇場として自主公演中心の新国立型なのかそれとも貸館を中心とする東京文化会館型なのかはっきりさせることが市民理解を得るうえでは不可避です。

私たちが最も懸念していることは、オペラ、バレエの愛好者が減っていること、そのニーズは高くないという調査結果が出ていることです。2017年3月のJTB総合研究所の「ホール・劇場等に係る調査・分析」報告書では、5年間で鑑賞回数の増減質問に対し、オペラ:大きく減った22.4%、少し減った11.8% 対して大きく増えた1.9%、少し増えた7.4%、バレエもほぼ同じで「減った」が「増えた」の3倍です。余暇が増えたときに鑑賞したいジャンルの質問に対し、オペラは14.9%、バレエ12.3%で14ジャンル中8位、10位とあり、オペラ・バレエの需給動向は新しい劇場整備について全く楽観できない調査結果となっています。

劇場建設にあたっては、芸術団体の活動場所を確保し、すべての市民にとっての鑑賞の機会を保障するという目的と芸術文化の活性化の拠点としての役割を果たすことが肝要と考えます。

これまでの検討のやり方には多くの瑕疵、特に市民参加が全く行われず、箱物としての劇場建設ありきで進められていることは問題です。今後の検討にあたり、次の措置を講じられるよう申し入れします。

1、 目指す劇場について例示など具体的に示し、市民の判断材料をわかりやすく提供すること。

2、 最終とりまとめは、需給調査を行いその分析を踏まえて行うこと。

3、 需給調査は、オペラ・バレエに特化した劇場に関する需給調査とし、

① オペラ・バレエに関して市民のニーズ調査と首都圏におけるオペラ・バレエ上演の劇場の個別調査を行うこと。

② 定性調査として、国内と海外で先進的取り組みを行っている劇場の運営実態を把握すること。

4、 施設整備と運営に対する国からの新国立劇場並みの財政支援を得る国との合意形成をはかること。

5、 最終とりまとめの答申案について市民意見を募集すること。

6、 目指す劇場像と運営の方向性について、その是非など上演団体、他施設の劇場運営者の意見を幅広く聞くこと。

●2019年12月5日に申入れの回答が届きました。


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