申し入れ等
2020年1月10日

旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画(素案)についての見解

2020年1月10

横浜市長 林 文子 様

日本共産党横浜市会議員団

団長 荒木由美子

旧上瀬谷通信施設は、2015年6月に返還された米軍施設の跡地で、農地・草地などみどり豊かな面積約242ha(国有地約110ha:45%、市有地約23ha:10%、民有地約110ha:45%)に及ぶ首都圏で貴重で広大な土地です。横浜市は「旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画(素案)」(以後「基本計画(素案)」とします)を取りまとめ、2020年1月15日(水)から2月14日(金)にかけて市民意見を募集するとしています。市民意見募集に当たり党市議団の見解を発表します。

旧上瀬谷通信施設は、農地や山林であったところを旧日本海軍が使用していましたが、戦後は米軍に接収され利用されてきました。2004年10月、日米合同委員会において、市内米軍施設6施設を対象とした返還方針が合意され、この中には旧上瀬谷通信施設も入っていました。横浜市は、米軍施設の跡地が、まちづくりや市民の福祉の増進に寄与する貴重な資産であるとして、2004年10月から、市経営責任職による「横浜市返還施設跡地利用プロジェクト」を設置し、跡地利用の検討を進めました。2005年7月には、学識経験者等を委員とする「横浜市返還施設跡地利用構想検討委員会」を設置し、市会基地対策特別委員会の意見も交えながら、同12月に同委員会は「返還施設の跡地利用に関する提言」を出しました。

この提言は、米軍施設の跡地を活用し、新たな時代要請である環境への積極的な取り組みを進めるという環境に重点を置いたものでした。横浜市は、多くの市民のみなさんから支持されたとして、この提言を尊重して2006年6月に「横浜から始める首都圏の環境再生」を全体テーマとする「米軍施設返還跡地利用指針」(以後「2006年跡地利用指針」とします)を策定しました。

この「2006年跡地利用指針」は、旧上瀬谷通信施設について「農・緑・防災の大規模な野外活動空間」を利用方針のテーマと設定し「首都圏全体を見据えた防災と環境再生の一大拠点として位置付け、平常時には多く首都圏の人々が訪れ農と緑を楽しみ、災害時には首都圏の広域防災活動拠点となる空間の形成を目指します」としています。東日本大震災の被害を目の当たりにする前の時点でこのような指針を持っていたことは、自治体としての知見の深さと大都市としての役割を意識したものと考えます。

また、旭区や瀬谷区の「都市計画マスタープラン」にも、「土地利用の方針」や「都市環境の方針」に、豊かな自然や農業の展開と共に、「全市的・広域的課題への対応等を検討」とされています。

しかし、2015年6月上瀬谷通信施設返還後の本市の対応は、2006年跡地利用指針等の方針・計画から逸脱したものになってしまいました。2016年4月に「農業振興ゾーン」と大規模開発につながる「土地活用ゾーン」からなる「跡地利用ゾーン(案)」を公表。さらに、2019年7月には、「観光・賑わい」「農業振興」「公園・防災」「物流」から成る土地ゾーン案を公表、跡地の半分を観光・賑わいゾーンとして、集客力のある大型施設の誘致宣言です。

そして、今回の「素案」では、まちづくりのコンセプトとして、「郊外部の新たな活性化拠点を形成~みらいまで広げるヒト・モノ・コトの行き交うまち~」を目指していくことをテーマとし、3つの方針を新たに位置づけ、土地利用ゾーンでは観光・賑わいゾーンを「テーマパークを核とした複合的な集客施設が立地し、国内外から人を呼び込む観光と賑わいの拠点を形成」と踏み込んだ内容となっています。

党市議団は、2019年9月の決算特別委員会都市整備局審査で計画が観光・賑わいに偏重していることと地権者と開発事業者主導という問題点を指摘し、見直しを求めています。

「素案」は、「第3章」において、地権者による将来の土地利用を検討する「まちづくり協議会」(2017年11月設置)は、2019年、土地利用の具体案作成に民間企業の参加を求めてきた中で、突如将来的には年間1500万人もの訪問客を見込むとするテーマパークを中心とした土地利用を「今後検討を深度化すべき提案として決定した」とし、さらに、土地活用事例として「物流施設」の提案をも受けたとしています。「素案」は、民間企業からの提案を丸呑みしたものです。地権者の意見を聞くのは当然のことながら、民間企業の参画によって、上位のまちづくりの計画をもひっくり返す利益追求に偏った開発優先へと大きく変質させたものと言わざるを得ません。

また、「第4章」まちづくりのコンセプトにおいて、「将来予想される課題への対応」の項目に、「医療、福祉、公園型墓園等を検討」が書かれてはいますが、カッコつきです。さらに「第5章」の土地利用においては、どこにも見当たりません。地域住民からは、病院や老人ホーム、介護施設やスポーツ施設等の要望が大きいのですから、本気で取り組む姿勢を示すべきではないでしょうか。

最大の問題点は、132haもの公有地のうち、公共的利用に供されるのは公園防災の50haだけ、残りの82㏊はテーマパーク用地とする点です。110㏊の民有地(農地)で、農地として利用継続するのは50㏊と半分にも達していません。このように「素案」の土地ゾーン案では、緑地として利用されるのは、農地と公園の100㏊で全体の4割だけ、残り6割142㏊は「環境再生」とは無縁なテーマパーク、倉庫等に利用です。

「2006年跡地利用指針」の「基本姿勢」には、70年以上もの間、米軍基地あるがゆえに大きくまちづくりが阻害されてきたことをうけて「跡地利用を計画するにあたっては、接収という厳しい歴史的経緯を経て現在に至っていることを認識しつつ、これからの時代に広くその価値が認められるような大規模空間の利用のあり方を、市民はじめ関係者の総力を挙げてかたちづくっていきます」としています。これまでのまちづくりや当該指針に立ち返って「基本計画(素案)」は出されるべきでした。

地権者の権利擁護は行いつつも、民間の儲けの対象とした開発ではなく、市民意見を踏まえた土地利用の考え方を示すものとするべきです。よって、以下について求めます。

1、公有地82㏊を民間資本等の使用に供することになる、旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画(素案)は、2006年6月に横浜市が策定し「横浜から始める首都圏の環境再生」を全体テーマとする「米軍施設返還跡地利用指針」に立ち返り、抜本的に見直しすること。

2、公有地部分の見直しに当たっては、街づくり協議会とは別の組織を立ち上げ、審議すること。

3、見直しに当たっては、市民参加で地域住民の要望・要求の位置づけを重視した計画とし、性急な計画推進は行わないこと。

旧上瀬谷通信施設土地利用基本計画(素案)については、市のホームページをご確認ください

旧上瀬谷通信施設地区


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