- 日本共産党 横浜市会議員団 - http://www.jcp-yokohama.com -

■現年度議案反対討論(北谷まり)

北谷まり:北谷まりです。日本共産党を代表し、5件の議案に反対、1件の議案に賛成し討論を行います。

カジノ汚職の最中、IR事業者選定委員会を設置することは認められない

北谷まり:はじめに、反対議案についてです。

まず、市第135号議案 横浜市特定複合観光施設運営事業者選定等委員会条例の制定についてです。この議案は、市長が任命する委員7人以内をもって構成する横浜市特定複合観光施設設置運営事業者選定等委員会を設置するものです。つまり、圧倒的に反対が多い市民世論を無視して突き進むカジノを含む統合型リゾート、IR誘致に向けた議案であり、国の基本方針が定まっていないのに提出された、不適切な議案です。

カジノは賭博です。刑法で犯罪と定められています。横浜の経済を支え発展させてきた立役者である港の皆さんが、とばく場だけはだめだと言っても、多くの市民のみなさんの勝手にきめないでほしいとの声も無視して、横浜市はIR整備に突き進んでいます。IR事業は人の不幸に乗っかって利益を出す仕組みで、経済成長や増収効果だといって地方自治体が選択する施策ではありません。カジノIR誘致促進のための事業者選定は行うべきではありません。

国が当初のカジノ整備区域と認定するのは3カ所であり、日本のカジノ運営企業の座をめぐって、カジノ企業の進出争いも熾烈を極め、日本に支社を置き地元のスポーツチームのスポンサーになるなど地域社会での影響力を高めるといった綿密な作戦が進行中です。カジノ汚職は、カジノ企業による利権争いはあらゆる手段を使い、容易に贈収賄にまで踏み込むものであることを白日にさらしました。国会議員がわいろを受け取ったという疑惑がある以上、IR推進室の職員以外の職員と市長・副市長はIR事業者との接触は禁止すべきです。また、職員と事業者との間のやり取りは非公開であり、公平性・透明性が担保されていません。どういうやり取りをしているのか、市民に公開すべきです。

IRに関するアドバイザリー業務委託事業者、EY新日本有限監査法人について、業務担当者については、特定のIR事業者との関りがないとのことですが、EYはグローバルネットワークで結ばれており、EY海外法人はIR事業者2社との取引があることを確認しています。両方とも横浜でのIR展開を希望していると言われています。EY新日本有限監査法人は実施方針、募集要項などの策定に関与します。選定委員は募集要項と一体で作られた選定基準に基づいて審査します。選定基準は審査のポイント・配点を定めます。EY監査法人との取引事業者が有利となる選定基準とされる可能性もあります。EYとのアドバイザリー契約は公平公正に反するのではないですか。

また、米カジノ企業代理人による政治資金パーティー券購入名目の資金提供、2017年2月の日米首脳会談の際の安倍首相とカジノ企業トップの接触も新たな疑惑に包まれています。疑惑の徹底解明が必要であり、検証作業なしにカジノ誘致に向けてこのまま前にすすめることは、市民が許しません。

市立保育所の民間移管は保育士不足の解消など課題解決にならない

北谷まり:次は、市第140号議案 横浜市保育所条例の一部改正についてです。

2019年4月1日現在、市内認可保育所は798園あり、そのうち市立保育所は75園しかありません。それは、2014年に策定された基本方針では、54園をネットワーク事務局園として指定し、それ以外の市立保育所については民間移管の対象として検討するとされ、2018年度以降の民間移設等対象園については、原則年4園ずつ移管を進めることとしています。2020年4月から4園の民営化に続いて、今回の条例改定により2021年には6園が、2022年4月以降もさらに民間移管が進められていくことになっています。今回廃止される公設公営の4園のうち、移管先法人の所在地を見ると、市内は2園で、あとは東京と宮崎県です。市外所在の法人本部へは監査する権限が本市にはありません。これ以上、監査の手が届かなくなる保育園を増やすべきではありません。市内法人への移管がすでに限界にきている今、基本方針は撤回するべきです。

公立保育園は、すべての家庭に対する子育て支援を視野に入れて、安定して障害のある子どもや、貧富の格差、家庭での困難を抱えた子どもたちを積極的に受け入れています。さらにベテランの保育士がいることで、子育てで悩む保護者の声をじっくりと時間をかけて聞き、アドバイスができること、この点を市として評価するべきです。民営化の効果は費用縮減、つまり人件費を減らすことだけでした。保育士不足の原因は処遇が悪いからで、民間保育園における保育士不足は一向に解消されませんが、安定した処遇の公立保育園では、2019年度、154人が受験し合格者は63人と、2.4倍の倍率です。保育士不足に悩む民間園に移管することは、保育士不足の事態をさらに深刻にするだけです。これ以上の公立保育園の民間移管はやめるべきです。

市立の授産所等の廃止は、市が現場把握できなくなり、長年のノウハウも失われる

北谷まり:次は、市第145号議案 横浜市福祉授産所条例の一部改正についてです。議案は、1970年代から80年代にかけて、障害者が働ける場がまだ少なかったため、障害者が働く場として横浜市が開設した、中区の中福祉授産所、港北区の港北福祉授産所を民営化するものです。

2019年12月現在、港北福祉授産所では、29人の知的障害者と2人の身体障害者が自動車部品の組み立てや梱包用緩衝材作成などの作業に従事し、職員は8人です。

福祉が十分でなかった時代に、横浜市が福祉施設を開所し30年以上にわたって直営で運営してきたノウハウと、直接かかわってきた職員は市の財産であり、これまで蓄積してきた市の貴重な資源は、引き続き事業所の指導・監督や福祉事業の推進に生かすべきです。福祉の増進のためには、市自らが現場の状況を把握し、これまで通り直営で行うべきです。2年後には南区の南福祉授産所と戸塚区の戸塚福祉授産所の民営化が予定されていますが、直営で継続するよう見直すべきです。

市第146号議案 横浜市知的障害者生活介護型施設条例の一部改正についてです。議案は泉区の横浜市松風学園内設置の、一般就労している障害者が自立して生活する知的障害者福祉ホームと、障害者が自宅を離れて生活能力訓練を行うための知的障害者短期訓練施設を廃止するものです。グループホームなどの代替サービスが制度化されたとはいえ、まだまだ十分ではなく、更なる福祉の充実が求められています。本市が先導的に整備し運営してきた施設を廃止するべきではありません。

現場活用の検討ない小中学校への「一人一台」タブレットPC配備は拙速

北谷まり:次は、市第159号議案 令和元年度横浜市一般会計補正予算第4号、教育用コンピューター整備事業・教育情報ネットワーク事業についてです。

安倍政権が経済対策として2019年度補正予算に盛り込んだギガスクール構想は、個別最適化された学びを実現する」としています。しかし、もたらすのはコンピューター端末による「学びの分断」だとの指摘があり、「子どもたちがコンピューター端末でそれぞれ異なる課題に取り組むようになれば、集団の中で学び、人格の完成を目指す学校教育のあり方が根底から壊れてしまう」「子どもたちが人とのかかわりの中で豊かに学び、教職員が専門性を発揮するには、コンピューター端末でなく、教職員を増やすことが求められます」との声が現場から上がっています。小学校で4月から始まるプログラミング教育もいまだに何をすればいいのかわからず、現場は振り回され、教員の負担は増えるばかりです。議案関連質疑での、教員の多忙化の解消やPC機器を教員が使いこなせるのかなどの懸念事項に対して、どのような対応をするのかとの質問に対し、市長は研修の他、小学校へのICT支援員の訪問日数や支援内容の充実、中学校への訪問など検討していると言われました。これでは、教員のさらなる多忙化に拍車をかけるだけです。現場に負担をこれ以上押し付けることはやめるべきです。正規の教員を増やすことなしには、教員の多忙化の解消の根本的な解決には繋がらないことを市長は認識しておられないのでしょうか。

教育研究者・鈴木大裕氏は日本全国で教員不足が叫ばれているときに1人1台端末は財政的にも優先順位がおかしい。政府が出すのは初期投資の予算だけのことなので、数年後にはランニングコストが自治体の財政を圧迫すると指摘しています。必要なのは、コンピューターではなく、正規の教員を増やすことです。

雇用環境の改善につながる今回の指定管理者の指定に賛成

北谷まり:最後の、市第148号議案 横浜市スポーツ医科学センター条例の一部改正については、賛成の立場で討論します。本議案は、現指定管理者を指定管理者として指定することができる旨の規定を追加するものです。

指定管理者制度の最大の問題点は、指定期間が定められていることです。本市の場合は、みなと赤十字病院の30年、歴史博物館、各区の精神障害者生活支援センターなどの10年は例外で、ほとんどが5年となっています。これでは、事業者側は正規職員を採用することに躊躇し、非正規に頼らざるをえません。党市議団は雇用が不安定となることをそのまま見過ごすことはできず、制度そのものには賛成していません。しかし今回の改正は条件つきですが、現行5年の指定期間を実質廃止するものです。これは、中長期的視点で職員の人材育成と確保ができる雇用環境を創出することが必要とのことで、雇用環境の改善につながり、この点は評価できるものです。専門職の人材育成、確保、定着を図り、よりよい施設運営となることを期待します。以上で討論を終わります。