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■カジノ住民投票条例案 関連質問 みわ智恵美議員 2021.1.6

みわ議員:日本共産党のみわ智恵美です。党を代表し、林市長に質問します。「市第100号議案横浜市におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致についての住民投票に関する条例の制定」についてです。

今回横浜市民は19万3,193筆の署名を集め、住民投票条例制定の直接請求を行いました。これに基づき住民投票条例案を議会に提出する際に付けられた市長意見は、住民投票を実施することは意義を見出しがたいと住民投票を否定するものとなっています。否定の理由を4つ挙げていますが、いずれも市民の納得を得られるものではありません。最初にこの点について何点か市長に伺ってまいります。
第1は、一般的な制度化がなされていないことをもって住民投票の位置付けが難しいとしていることです。これは
住民投票制度を矮小化し、貶める誤った考えです。

今から20年も前である2000年に、「地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財政の充実確保に関する答申」が地方制度調査会から出され、住民自治の更なる充実方策として「住民投票制度」があげられています。市長は、そこで、「一般的な住民投票の制度化については、その成案を得るには至らなかった」としていることを挙げて、一般的な制度化が現在でもなされていないことから「住民投票の位置付けの難しさがうかがえる」などと結論付け、この答申の内容を捻じ曲げて引用しています。

実際答申は、「多様な住民ニーズをより適切に地方公共団体の行政運営に反映させるために、代表民主制を補完する意味で、直接民主的な手法を導入することも必要であり、住民が投票によりその意思を直接表明するという住民投票の制度化の検討は、住民自治の充実を図るという観点から、重要な課題である」としているのが本旨です。そして、全国でも、地方の重要な課題に関する重要争点型の住民投票が、直接請求方式の条例化で、昨年の8月9日までで総務省の調査などを元に45件確認されています。もともとこの直接請求による条例制定は地方自治法第12条と74条で法定化されているものです。

今回、まさに横浜市民が地方自治法に基づき直接請求によって直接民主主義を行使できるようにと住民投票条例制定を求めているのです。市長が住民投票について、一般的な制度化がなされていないことをもって位置付けが難しいとして、住民投票の仕組み自体を懐疑視するのは、全国の45の住民投票実施自治体及び73の住民投票条例を常設している自治体の首長・議会・住民を愚弄するだけでなく、地方自治法をないがしろにして、住民自治そのものを否定することとなります。市長の見解を求めます。

林市長:一般的な制度化がなされてないこともって位置づけが難しいとするのは、住民自治そのものを否定するものとのことですが、今回の意見においては、住民自治そのものや住民投票条例を一律に否定するものではなく、地方制度調査会の答申について述べさせていただきました。地域における合意形成の手続きがIR整備法に定められていることや、これまで様々な観点から議論が積み重ねられていることを踏まえ、議会における議論を基本として、法定の手続きを着実に進めていくというのが私の思いです。

みわ議員:第2は、「コスト等のことも考えなければならない」として住民投票を否定する重要な理由にコストを挙げていることです。

住民が投票するという民主主義と地方自治についてかかるコストを、これを否定するための理由であるとするならば、憲法と地方自治法を否定する考え方です。カジノ誘致の是非について市民の判断を仰ぐことは、日本国憲法が保障している地方自治の本旨、住民自治の原則に沿った行為であり、その支出は、民主主義の実践費用として市民的合意は確実に得られるものです。

市長は投票結果の法的拘束力のないことに市費を投ずることに疑問を呈しています。
条例による住民投票は、「法律が定めた長や議会の権限を拘束することができない」、つまり法的拘束力を有さないということについては、直接請求に取り組んだ市民は百も承知のことです。しかも、民主主義のコストとあえて市長が言われるならば、このコストがかかる事態を招いたのは条例制定を求める住民の責任ではありません。市長は選挙では「カジノ誘致は白紙」と態度表明をせずに当選しましたが、「カジノ誘致をすすめる」あるいは「カジノ誘致に賛成」と公約に掲げていません。現在IR誘致推進の市長が選挙での公約に掲げていればこの事態は生じていないのです。市長は住民投票は無駄だとおっしゃるのですか。コストがかかるとして住民投票に否定的であるのは、民主主義と住民自治を理解していない姿勢を示すものと考えます。見解を伺います。

林市長:コストがかかるとして住民投票に否定的であるのは、民主主義と住民自治を理解していないとのことですが、意見ではコストがかかるとして住民投票に否定的であるということではなく、IR整備法においては、地域における合意形成手続きが定められているということを申し上げたものです。

みわ議員:第3は、IR整備法で民意を反映させる制度が整っているとして住民投票不要論を展開していることについてです。

IR整備法9条7項には「都道府県等は区域整備計画を作成しようとするときは、公聴会の開催その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない」とあります。住民が直接請求した住民投票はまさに「住民の意見を反映させるために必要な措置」ではありませんか。市長が住民投票制定にここまで否定的なのは、住民投票ではIR誘致に賛同を得られないとの判断なのではないでしょうか。どうか伺います。

林市長:実施結果を想定して投票条例に否定的なのではないかとのことですが、意見では、政府の地方制度調査会における議論の経緯やIR整備法との位置付け、市会での議論の過程などを記載したものです。否定的とのご指摘ですが、市としてはIR事業に関する住民投票の実施における課題について、事実に基づき意見を述べさせていただいたものです。

みわ議員:第4は、市長が、IRについて「様々な観点から議会において議論が積み重ねられている」としていることです。繰り返しますが、市長と議会を構成する議員は、この重要課題について選挙での公約には掲げていません。

市長は、2017年市長選での公約「10のお約束」の「お約束9」で、IRについては「市民の皆様、市議会の皆様の意見を踏まえたうえで方向性を決定」としていました。そして、2019年8月22日に、市民に一度の意見も聞かないうちに「IR誘致を決断した」と表明しました。決断前に議会で「白紙から態度を決める前に」「(IR整備法における)公聴会ではなくて、その前に横浜市としては市民の皆様からご意見を伺う機会や具体的な方法について検討している」と約束していましたが、これも反故にしています。市長は、民意を問うていないとの問いに対して、丁寧に説明し、ご意見を伺うと言います。言葉は丁寧でも、実際は民意の反映には程遠い、聞き置くという封建時代の為政者の姿勢でしかありません。

また、議会については、議員は、私たちのようにIRカジノ誘致反対で当選した議員はいますが、IR誘致賛成と公約に掲げて当選した方は一人もいません。ところが、市長は、意見において「代表民主制が健全に機能しているといえる本市において、地方制度調査会が『代表民主制を補完する点で有意義』と指摘する住民投票を実施することは、これまでの議論の棚上げを意味する」として、住民投票を否定しています。2017年の選挙では、一大争点となり、「横浜にカジノはいらない」と市民の声が沸き起こったにもかかわらず、林市長は「白紙」といって選挙を行いました。2019年の一斉地方選挙では、今ではIRカジノ誘致賛成、推進の方々が選挙の公約に掲げずに当選され、その多数の議員によって議会での議論が繰り返されていても、到底代表民主制が健全に機能しているとは言えないのではありませんか。IR誘致の問題は、2019年の市会議員選挙後にふってわいた問題ではありません。ですからIRについて、白紙としてその是非に関しての態度表明を一切していなかった市長と旗幟鮮明としなかった多数の議員よる議会でのIR問題での議論は「代表民主制が成り立っている」どころか「機能不全」ではありませんか。どうか伺います。市長の付した意見書については以上です。ぜひかみ合った答弁を求めるものです。

林市長:代表民主制が機能不全であるとのことですが、これまでも本市会においては議員の皆様との様々な課題に対する粘り強い議論によって、政策決定をしてきており、代表民主制は健全に機能していると考えています。IRについても、予算の議決を頂き、平成26年度から検討に着手し、市民から選ばれた議員の皆様と議論を重ねてまいりました。今後も市会でしっかりと議論を頂きながら、事業を進めていきます。

みわ議員:次にカジノ誘致手続き等に関して4点質問します。
世界的な新型コロナ感染症の拡大で、世界のカジノ事業者も甚大な被害を受けています。その影響も確実にあるでしょう。国の実施方針確定も遅れに遅れました。国の申請期間の延期によって、国へのIR区域整備計画の申請は、夏の市長選挙で新たに選ばれた新市長によって行われることとなりました。選出された新市長がIRカジノ誘致に否定的見解で当選されれば、横浜市のこれまでのIR誘致の方針はガラッと変更されることもありうるわけです。官房長官時代にインバウンド政策を主導と誇示した菅首相は、IRは世界130の国・地域がもっている、横浜ではIRの実態をよく説明することが必要と語っています。これを受けてか、市長は39人のIR推進室体制はそのままに、菅総理の言う事業説明会の開催など事業者募集に進む準備を進めています。このように、申請準備を進めていくことは問題です。見解を伺います。

林市長:現時点で申請準備を進めることについてですが、地方自治体のあらゆる施策や事業は、その時々の自治体の長が、議員の皆さんと議論しながら適切に判断し、執行していくものと認識をしています。今現在の任期における職責を全力で果たしていく考えです。IRについても魅力ある都市横浜のさらなる飛躍と、将来にわたる横浜市民の豊かな暮らしを実現するため着実に取り組んでいきます。

みわ議員:新聞報道では、林市長の4期目出馬が取りざたされています。IR推進を強力に押している菅首相との面談も異例の形で行われたとの報道もあります。しかし、夏の市長選挙は林市長が出馬かどうかにかかわらず、その結果は市民の手にゆだねられています。選挙でIR誘致反対の市長が選ばれた場合に、現市長のIR誘致の行政判断に拘束されるかどうか伺います。

林市長:新しい市長は、現市長の判断に拘束されるかについてですが、その時に付託を受けた市長が、議員の皆様と議論しながら、それまでの経緯を含めて適切に判断していくものと考えています。

みわ議員:多くの市民が常習とばくによる犯罪・経済破綻・一家離散・自殺などの社会不安の原因を行政が推進してつくりあげること、併せて横浜のイメージ低下を招くものと疑念を抱き反対の声を上げています。横浜ブランドと賭博は合わないとの思いが大きいのです。コロナ禍の中で、市民お一人お一人が、直筆で名前・住所・生年月日を明記のうえ印を押すという、何重にもハードルの高い署名がわずか2か月という限られた期間で、法定署名数の3倍を超え19万3,193筆集められました。市長は「条例制定の直接請求がなされたことは、IRに関する市民の皆さまの関心の表れと受け止めている」と記者会見では述べられていますが、実際市長はこの署名数の重みをどう受け止めているのでしょうか。

住民投票直接請求者は「選挙において横浜市民は、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致について明確な意思表示をする機会がなかったのである。かかる状況のもとでIR誘致に係る事務執行を進めることは、日本国憲法に由来する民主主義と住民自治の原理をないがしろにすると言わざるを得ない」「住民投票が実施されれば、賛成、反対にかかわらず多様な意見、情報が市民に提供され、市民的な議論のもとに市民ひとりひとりが熟慮の上、賛否を判断し、その意思を表明できる。市民の多数の意思を明らかにした上で『方向性を決定する』ことは市長の公約であり、民主主義と住民自治の原理に適うものである」として、住民投票の実施を求めています。市長、19万3,193筆の市民の署名数について、その重みをどう受け止めているのですか、自治体の長として住民自治を尊重する立場から見解を伺います。

林市長:署名数に重み対する見解ですが、この度、地方自治法に基づく条例制定の直接請求が成され、法定数を上回る署名が集まったことは、IRに関する市民の皆様の関心の表れだと受け止めています。

住民投票に対する考えについてですが、法の手続きに従い、直接請求の条例案を市会に提出させていただいた本市を代表する長としての考えは、議案に記載した意見の通りです。IR整備法には公聴会の実施や議会の議決など地域における合意形成の手続きが決められています。IRに関して市民の皆様のご意見をしっかりと伺いながら、事業を進めるという考え方や、市会における議論を基本とするという姿勢は、これまで同様変わることはありません。引き続き議員の皆様と議論を重ねながら、法の規定に基づき、手続きを進めてまいります。

みわ議員:市長は、記者会見での住民投票への姿勢が、色々と、次々と、大きく変わってきているのではないでしょうか。

カジノの是非を決める住民投票の署名運動が中盤を迎えたころ、法定署名数を超えたことが明らかになりました。
その10月16日の記者会見では、「手続き通り議会に提出し、議会でお諮りいただく」とし、「住民投票がもし行われ、その結果、IR誘致が反対多数であれば、それは当然尊重したいと思います」と述べられています。
また、10月28日、署名運動も終盤を迎えたころですが、住民投票条例を市長が議会に提出するときに付する意見について「住民投票をしてくださいという条例制定の提案がありましたということを、丁寧に状況を説明して提案します」と述べておられます。

そこでは、「IRについては、今まで通りやる方向で考えています」とも述べられていますが、市長の「住民投票の結果、反対が多かった場合、やはり遵守すべきと考えています」の発言に対して、記者からの「すなわち誘致を撤回すると捉えてもよろしいですか」の問いに、「私個人としてはそうです。結果はそういうことになります」とまで、述べられています。
ところが、今回議会に提出された市長意見は、完全に住民投票を否定するものとなっています。市長いったい何があったのですか。

住民投票の結果を受け止める覚悟があるのであれば、議会にも住民投票を実施するべく意見を付するべきではなかったでしょうか。
この間で、市長のお考えが大きく変化していると考えるのですが、その点についての見解を伺い、一回目の質問とします。

林市長:住民投票の結果への対応については、条例案を提出しご審議頂いてる現段階では、お答えは差し控えさせていただきます。

第二質問

みわ議員:市長に第二質問いたします。
重みを受け止めている、地方自治法をないがしろにするものでは無いといわれました。しかし、今回の議案の資料には、地方自治法の第74条のみが付されています。これは直接請求に係る条文です。

地方自治法の第12条も私たちは重要だと考えます。それは「日本国民たる普通地方公共団体の住民は、この法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の条例の制定又は改廃を請求する権利を有する」と、住民の権利としての条例制定権が明記されています。

今回の資料の在り方は、住民が根本的に有している権利を見えないようにするもので、19万3,193人の市民の声の重みを受け止めている行政としての資料の在り方は問題です。市民を下に見ていませんか。市長は住民の条例制定権を否定するのでしょうか、伺います。

林市長:市民の権利として、直接請求がなされましたので、法に基づき議会にお計りをしてるものでございます。

みわ議員:10億円のコストがかかると聞いたと伺っています。市長は、記者会見などで、住民投票の結果を順守するといわれてきましたけれども、各地の住民投票は、その結果が、施策に反映されたものがほとんどですから、市民の声に応えるというのが、当然の判断で、コスト云々は理由にならないと思います。それとも、市民の声を聞かずに決めたことについて、改めて市民に問うことでコストがかかって申し訳ないということですか。それとも、市民の声を聞く気持ちはないから、住民投票は無駄だということですか。改めてこのどちらなのか、どちらもなのか、伺います。

林市長:IR整備法で手続きが定められていること、それに加えまして、投票することで、コストの点については課題があると申し上げました。

みわ議員:今、IR推進については、このまま進めていくと話されました。現在横浜市でも、直面する重大な課題は、新型コロナ感染拡大を防止し、市民の命とくらしを守ることです。保健所も市立病院も他の医療機関も人員体制で苦しみ、経営が悪化しています。保育所も学童保育も学校も大変です。様々な部局から人員を差し向けて応援しています。その中で、IR誘致室だけが、人員体制を堅持してすすめることは問題です。横浜市がIRカジノを推進するかどうかは次期市長にゆだねられる判断です。今、届けられた19万3,193筆の重みに市民の声を聞き、立ち止まる時ではありませんか、どうか伺います。

林市長:それからIR整備法には、所定の手続きが定められておりますので、その手順で、今、私は進めているというところでございました。

みわ議員:先ほどの答弁で、新しい市長が、今の行政が進めていることに拘束されないということが確認できました。

最後に、市長の考えが大きく変わった点について、「私は何も変わっていない」と言われましたけれど、また投票の結果については差し控えるともいわれましたけれども、年が明けた神奈川新聞のインタビューに市長は、「IR法では、住民投票をやる必要がないと決まっている」とまで言われています。これはどう見ても法を超えた判断です。そのようなことはどこにも示されていません。国から、そう判断できるとの助言でもあったのですか。住民投票の結果をふまえて進めるんだともいわれました。市長は尊重する態度を貫かれればよかったのです。何故ここまで、住民投票に対する態度が変わったているのか、先ほどの答弁ではお答えになっていません。きちんとお答えください。

地方行政は、地域住民の便宜に最も貢献するように運営されなければならないとされている住民福祉に仕える機関です。憲法に根差した、横浜の住民自治・民主主義を大きく前進させるために住民投票を議会の総意としていただくよう心からお願いし、質問を終わります。

議事進行(答弁漏れの指摘)

みわ議員:答弁漏れがありましたので改めて質問します。住民の条例制定権を否定するのですかどうか伺いました、この点について市長の考えを伺います。
また、これまで市長が住民投票の結果を踏まえて進める、反対が多ければIR誘致を撤回するとまで言われてきたのに、今回の意見を付けられている住民投票に対する態度が変わっていると思います。この点について明確に伺いたいと思います。

林市長:最初のご質問ですが、市長の権利として否定はしていません。住民投票に対する考え方が変わったのかといことについてですが、法の手続きに従い、直接請求の条例案を市会に提出させていただいた本市を代表する長としての考えは、議案に記載した意見の通りです。IR整備法には公聴会の実施や議会の議決など地域における合意形成の手続きが定められています。IRに関する市民の皆様のご意見をしっかりと伺いながら、事業を進めるという考え方や、市会における議論を基本にするという姿勢は、これまで同様変わっていません。引き続き議員の皆様と議論を重ねながら、法の規定に基づき、手続きを進めてまいります。