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【2010年第3回定例会】「一般質問」 かわじ民夫

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

関係部局の連携や地域協議会の設置などで中小企業振興基本条例に魂を入れよ

かわじ議員:日本共産党を代表し、市長に質問してまいります。
 最初は、横浜市中小企業振興基本条例に対する市長の認識についてです。
 本年第1回定例会でわが横浜市議会は、議員提案された横浜市中小企業振興基本条例を全会一致で採択しました。これまでの歴代の市長、特に中田前市長は、市内中小企業・自営業者の振興については、口では「中小企業は横浜経済の宝」と言いながら、具体的施策については後景に押しやっていたのが実情です。本条例は、本市行政のこれまでの対応に対し、議会側が明確に反省を求め、中小企業・自営業者を名実ともに本市経済の根幹に据えることを宣言し、中小企業・業者の振興に関する市の責務を明確にした画期的なものです。
 たしかに、この条例が制定されても、市の施策全体に反映されるまでには時間も手間もかかるのは実際のところです。まず始めるべきことは、この条例を市民および中小企業・自営業者に対する普及・啓発に努めることです。しかし現状では、パンフレット1枚作成されていません。条例の普及・啓発活動をいつからどのように行うのか、伺います。
 この条例に魂を入れ、実効性を持たせるには、都市計画、交通、環境、福祉、教育、建築などなど、本市行政の各部局や関係機関の連携を図ることが必要です。また、中小企業支援を本市の仕事の柱に据えるために、横断的全庁的な組織づくりが必要と考えますが、伺います。
 さらに、組織の点では、中小企業・自営業者の要望を具体的につかむため、全市を対象にした意見聴取システムをつくることが求められます。市長はどのようにお考えでしょうか。
 また、地域に密着した中小企業振興策をまとめるため、市内18区に地域協議会を設置することが必要と考えます。市長の明快な答弁を求めます。

林市長:かわじ議員のご質問にお答え申し上げます。
 横浜市中小企業振興基本条例について、ご質問いただきました。
 条例の普及・啓発についてですが、市のホームページに条例が制定された旨を掲載したほか、各種経済関連メールマガジンなどを通して9000を超える中小企業および事業者に周知を図りました。また、横浜経済7団体ほか各種団体に関連企業に対する周知をお願いし、ご協力をいただいております。私も、経済関係団体の交流会など企業のみなさまが集まる機会あるごとに、4月にこの条例が施行されたことをお話し、その意義をお伝えしています。今後もさまざまな機会をとらえて、条例の周知に努めていきます。
 中小企業支援のための横断的全庁的な対応についてですが、条例の目的でうたわれている中小企業の振興に関する施策を総合的に推進するため、各区局が連携し、条例の趣旨を反映した施策に全庁をあげて取り組んでいきます。
 意見聴取システムについてですが、市内中小企業および事業者のニーズを把握し、効果的な施策を展開するためには、職員自らが現場に足を運び、現場目線で企業のみなさまの声を直接聞くことがなにより重要と考えています。具体的な取り組みとして、四半期に一度、市内企業1000社を対象に、景況、経営動向調査を実施しております。また、21年度には市内の300を超える商店街を対象に経営実態調査を実施しました。さらに今年度は市内のすべての製造業を対象に技術実態調査を実施します。
 地域協議会の各区への設置についてですが、中小企業振興策のなかでも、商店街やソーシャルビジネスなどは、周辺の住民ニーズや身近な課題への対応など、地域に根差した取り組みが必要です。そのため、全市的な取り組みに加え、これらの地域特性を踏まえて、区と関係局および関係機関、団体が連携した取り組みを進めていきます。

公共施設の保全事業などで市内建設業者の仕事興しを

かわじ議員:次は、建設業者の仕事興しについてです。
 景気が大きく後退し、市内経済の中心を担う中小企業の経営は厳しく、中でも市内の建設業の倒産は深刻です。横浜市建設労働組合連絡会が今年4月組合員に行ったアンケートには175件の業者から回答が寄せられ、それによれば1か月間1日も仕事がなかった業者は11人7%、8日から14日間の仕事は8人5%、15日から21日間が70人42%で、収入から道具代・交通費・作業服など必要経費を差し引くと、半数近くが生活保護基準以下。若い職人のなかには夜の飲食店のアルバイトで、食いつないでいるとのことでした。市長はこうした状況をどのように認識しておられるのか、伺います。
 横浜市事業評価会議での当局資料では、本市の2011年度から2028年度の施設保全費は1兆5000億円が見込まれます。年間平均で約833億円の施設保全事業を、中小企業振興基本条例を生かし、市内中小建設業者の仕事として優先発注するべきです。
 また、財政が厳しい時こそ、施設を大切に維持管理することが重要であり、そのための点検作業は欠かせません。横浜建設連絡会が行った市内8か所の小学校の点検では、さまざまな不具合が確認されました。旭区の小学校では、廊下・トイレ・教室・階段・窓・体育館・プール等の点検の結果、壁の剥離・タイルやゴムパッキンの破損、天井の窓枠破損、プールの鉄柱塗装の剥がれ、ビスの緩み等です。点検した他の小学校でも同様の不具合が確認されています。その改修を後回しにすることなく、適切に行われれば費用の縮減につながるものです。そこで、施設の現状の評価点検作業を緊急雇用創出と位置付け、地域事情を熟知し、技術のある市内建設業者を活用すべきですが、見解を伺います。
 また、大工等地元の職人への支援も重要です。現在、学校営繕事業や市民利用施設の修繕は入札資格を有する業者に特定されていますが、身近な職人に頼めたら施設管理者も心強いものです。自治体が発注する小規模工事に入札参加資格を有しない業者も参加登録できる、小規模工事登録制度を創設することが必要です。見解を伺います。
 さらには、大型の保全事業等は分離分割発注で、中小業者の仕事興しにつなげるべきと思うがどうか、伺います。
 中小企業の仕事興しと同時に、本市が発注する公共工事等で働く労働者の深刻な実体の改善も急務です。自治体が発注する事業で、発注者と落札者・元請け建設業者の契約に、その作業に従事する労働者の賃金等を定める公契約条例が有効です。千葉県野田市では今年4月から施行され、県内では川崎市を始め相模原・逗子・平塚・伊勢原市でも制定の検討が始まりました。この件に関し、事業発注者の本市が下請け労働者の賃金は労使の関係だとしていることは余りにも無責任ではないでしょうか。見解を伺います。
 公契約条例の実効性をはかるには、建設業者の経営改善の支援が不可欠です。そのためには、「適正な予定価格の設定」や「最低制限価格を予定価格の90%以上の設定」が必要だと思いますが、市長の見解を伺います。

林市長:建設業者の仕事興しについて、ご質問いただきました。
 市内建設業の現状認識についてですが、世界的な不況による民間投資や公共投資の減少によって、経営環境が悪化し、非常に厳しい状況におかれていると考えています。建設産業はその裾野の広さから、経済波及効果が大きく、市民の雇用を支える重要な産業です。また、公共工事の品質確保、災害時の市民の安全確保などにも大きな役割を担っており、その活性化は大きな課題であると考えています。
 公共建築物の評価や点検についてですが、公共建築物の長寿化対策を計画的、効果的に実施するためには、施設の劣化状況を一定の期間ごとに定期的に把握することが重要です。現在、公共建築物の劣化調査や法令に基づく定期点検は市内の建設関連業者に発注しています。今後も継続して定期的に調査・点検を行い、長寿命化対策を推進していきます。
 小規模工事の登録発注制度の導入についてですが、修繕等の小規模な工事であっても、公共工事としての適性な施工を確保することが重要であると考えています。このため、建設業の許可を受けていることや、経営審査を受けていることなどを入札参加資格とすることにより、適正な施工を確保しています。
 公共工事の分離分割発注についてですが、市内経済の活性化の観点から、中小専門事業者の育成や受注機会の確保は非常に重要です。そのため、従来から本市工事の発注では可能な限り分離分割発注を行っており、今後も引き続き徹底します。
 公契約条例の制定についてですが、労働者に支払われる賃金の額などの労働条件は、最低賃金法や労働基準法などによる制約のもとで、労使間で自主的に決定されるものと考えています。いずれにいたしましても、公契約条例の制定については、さまざまなご意見があることは聞いておりますので、今後とも国の労働政策等の動向や関係する方々のご意見を確認し、研究していきます。
 予定価格につきましては、市場の実勢価格を反映した積算を実施し、適正に設定しています。また、最低制限価格につきましては、20年4月に一部引き上げを行いましたが、建設事業者の健全な経営環境や工事の品質の確保を図るため改正した国の基準に準じ、21年7月に算出式を見直し、さらに引き上げました。今後とも国の動向を踏まえつつ、建設事業者の経営環境や工事の品質などを確認していきます。

大きく遅れている横浜の小児医療費助成制度の拡充を

かわじ議員:次は小児医療費助成制度についてです。
 本市が昨年6月に発表した次世代育成支援行動計画策定に係るニーズの調査では、「子育てで負担に思うことは何か」との問いに、「出費がかさむ」との回答が49.4%でした。わが市議団が昨年行った市民アンケートでは、30代の要求のトップは小児医療無料化の年齢引き上げでした。小児医療費助成制度において、東京都やさいたま市は中学卒業まで、名古屋市・神戸市は小学校3年生まで無料です。県内では今年度、厚木市・大和市など7つの市町で年齢が引き上げられ、その結果小学校卒業まで無料は5市4町1村、中学校卒業までは3町となります。それに対し本市は就学前までで、それも所得制限があるなど、大きく立ち遅れています。
 安心子育て施策を掲げる市長は、本市の小児医療助成制度の遅れについて、どのように認識しておられるのか、見解を伺います。
 2010年度から5年間を計画期間とした、「かがやけ横浜こども青少年プラン後期計画」では、小児医療費助成について、「制度のあり方を検討していきます」とあるだけです。
格差と貧困がいっそう広がるなかで、子ども達が家計によって医療が左右されるとしたら、余りにも不憫です。いまこそ、小児医療費助成制度の拡充を子育て安心施策の最重要課題に位置づけて、所得制限をなくし、対象年齢を引上げるべきです。市長の見解を伺います。

林市長:小児医療費助成制度について、ご質問いただきました。
 制度に対する評価についてですが、本市はこれまでも所得制限や対象年齢について段階的な拡充を行っており、子育て世代の経済的負担の緩和を図っています。所得制限の有無や対象年齢について、他都市との格差があるのは事実ですが、本来医療費助成は全国どの市町村に住んでいても同じ水準で受けられるものが望ましいと考え、国に対して自治体間の格差解消に向けた環境整備を行うよう、要望しています。
 本市の子育て支援策における小児医療費助成制度の位置付けについてですが、少子化が進むなか、子どもを産み育てやすい環境づくりをすすめていくことは重要なテーマであると考えています。しかし、たとえば東京23区並に中学卒業まで医療費を無料にするには、本市の場合約77億7000万円の費用がかかります。小児医療費助成制度の拡充について、市民のみなさまの期待は十分承知していますが、国の動向などを見極めながら、本市の子育て支援施策におけるこの制度の優先順位を考えていきます。

池子米軍住宅建設計画の撤回と市内米軍施設の早期返還を国に求めよ

かわじ議員:最後は、基地問題についてです。
 池子米軍住宅建設問題で8月27日、深山南関東防衛局長から日米合同委員会第5回施設調整部会の報告を受けた市長は、「400戸程度に削減されたことについては、本市の要請を踏まえて結果を出されたものと受け止めた」と発言しておられます。
 池子住宅は横須賀基地の空母常時出撃体制を支える後方支援施設であり、たとえ建設戸数が減ったといえ、貴重な緑の破壊は変わらず、追加建設は米海軍の強化・恒久化を図るものであり、市是である「基地の全面返還」をいっそう困難にするものです。前市長が実質容認した「米軍住宅の追加建設計画」の撤回を国に求めるべきです。市長の見解を求めます。
 さらに、市長の「米軍施設の返還については、残りの4施設が約束どおり速やかに返還されるよう、改めてお願いします」との発言に対し、南関東防衛局長は「横浜市内の施設・区域の返還については、池子住宅地区における住宅建設事業の進捗状況を踏まえ」ると、述べています。日米地位協定第2条3項の「必要でなくなったときは」「返還しなければならない」との条項を根拠にした、先ほどの答弁にもありましたが、本市の「4施設返還と住宅建設は別」との立場に立つなら、防衛局長の言い分は到底受け入れられないものですが、市長の見解を伺って、質問を終わりにいたします。

林市長:基地問題について、ご質問いただきました。
 住宅建設計画の撤回についてですが、本市は16年9月に発表した市内米軍施設に係わる第3回施設調整部会の協議結果に対する本市の考え方で示したとおり、横浜市域での住宅等の建設、施設の返還に係わる具体的協議に応じるとしています。今後もこの対応方針に基づき、引き続き国の動向を見極めながら、適切に対応していきます。
 南関東防衛局長の発言についてですが、米軍施設の返還は日米安全保障条約および日米地位協定で必要なくなった時は無条件で行うことが大原則であり、住宅等の建設とは切り離し、この大原則を踏まえて返還の環境が整ったものから逐次返還すべきと国に対して主張しています。
 以上、ご答弁申し上げました。