議会での質問・討論(詳細)
2010年9月29日

【2009年度決算特別委員会】「総合審査(1日目)」 白井まさ子

就学援助を申請しやすい制度に改善を

白井議員:日本共産党を代表して質問します。まず、就学援助制度についてです。
本市の場合、認定に当たり設けられている所得限度額は、生活保護基準と同額となっています。生活保護制度では制度からはずれ、リバースモーゲージでの貸付けにうつる場合には1.5倍の支給になっています。これは、人として最低限度の生活をするには、医療費、税など必要経費として5割増しを認めているわけです。就学援助で1.5倍化はまあともかく、せめて1.1倍まで引き上げて、実質的に生活保護世帯以下の厳しい生活をしている世帯に手を差しのべるべきと思いますが、教育長、いかがでしょうか。

山田教育長:いま、先生おっしゃったように、本市の就学援助奨励費の所得制限がございますけれども、現在生活保護基準の1.0倍でございます。これは、本市は所帯が大きいということもございますけれども、他都市とくらべても決して低い額ではなくて、また非常に厳しい財政状況のもとでは、現行の基準を維持していきたいというふうに考えております。

白井議員:ぜひ、引き上げを検討いただきたいと思います。
次に、本市の援助率ですけれども、2009年度で12.75%です。他都市と比較してみると、新潟市はほぼ30%、それから東京都足立区はほぼ40%と高くなっています。これを、調べてみましたら、新潟市では、保護者が記入する申請書に所得の証明の書類の添付は不要となっています。また、所得や家族構成の確認は保護者に同意をとった上で、役所の方で所得や住民基本台帳の情報を確認しているわけなんです。足立区では同様の申請方式で、保護者は切手不要の封筒で教育委員会へ直接郵送しています。
本市では、申請書に所得証明の書類の添付が求められていて、一手間かかるわけなんです。また、学校へ提出となっているため、学校へ経済状況を知られたくないと思う保護者が、提出を控えることにもなっていると思われます。電算システムの導入の準備が進められていると聞いています。ぜひ、申請書類を簡素化して、教育委員会へ郵送する方法に切り替えていただきたいと思いますが、教育長、いかがでしょうか。

山田教育長:学校の方にいま、いったん提出をさせていただいております。これはなぜかといいますと、学校では児童・生徒一人ひとりとしっかり向き合うことと合わせまして、各ご家庭の状況をしっかりと把握していくなかで、教育を進めていくことが肝要だというふうに考えております。
また、事務サイドといたしましても、申請の受け付けでは学校を経由することで、世帯の構成員あるいは所得の確認、記載漏れや書類不備などが早期に訂正できている面も多々ございますので、現行方式が横浜にとっては望ましいものというふうに考えております。

白井議員:一度教育委員会に出たものを学校に戻せば、その家庭の状況は学校で把握できるわけですから、ぜひ、直接教育委員会へ郵送する方法を検討いただければと思います。
そして、市長に伺いますけれども、制度を切り替えれば、当然援助率がアップして、予算が増えるのは必至なんですけれども、子育て・教育施策の優先順位を高く掲げておられる市長ですから、増えることがあっても必要とする家庭がもれなく受けられるように対処していただきたいと思いますが、市長の決意を伺いたいと思います。

林市長:財政状況が厳しい中ですけれども、必要な額については確保していきたいと考えております。

本市の児童虐待は年々増加して2009年度2208件

白井議員:次に、子ども虐待防止対策について伺います。
このところ虐待で幼い命が奪われていることが連日報道されて、異常な事態になっているわけですけれども、本市の児童相談所が対応した虐待対応件数は年々増加して、2009年度は2208件になっています。虐待が生じやすい共通要因には貧困と孤立があって、しかも複合的といわれていますから、行政が責任を持って、あらゆる機会を捉えてリスクを見つけ出して、経済的困窮へは公的制度を適用するなど、適切な支援をして、発生させないことが必要だと思います。
その対応策についていくつか伺います。

飛び込み出産を実態把握し、対応体制を強めよ

まず、妊婦健診を受けないでの「飛び込み出産」が増えていると、現場で出産現場で働く知り合いから聞いています。こういうケースの中には経済的な困窮であったり、発達障害や精神疾患を抱えていたり、望まない出産などで子どもがかわいく思えないといった問題を持った、虐待リスクの高いと思われるケースが含まれます。行政として、飛び込み出産の実態を把握し、その場で必要な支援をする体制が必要と思います。そこで、飛び込み出産の把握と対応状況はどうか、局長に伺います。

鯉渕こども青少年局長:飛び込み出産のデータは整っておりませんが、神奈川県産科婦人科医会における19年4月アンケート調査によると、県内の基幹病院における飛び込み出産の件数は、平成15年は年間20件でしたが、年々増加し、平成18年は年間44件、19年は調査が終わった時点になってしまいますが、1月から4月までで35件となっております。これは神奈川県の産科婦人科医会が改めてアンケート調査を実施するときいております。
飛び込み出産の分娩費用を払えない場合は、病院の医療相談室などを通じて生活保護等での医療費の支払い手続きを取ることになります。

白井議員:全体数の把握に加えまして、飛び込み出産があった場合に、その場で対応ができるよう、体制をぜひ強めていただきたいと思います。よろしくお願いします。
そして、続いて、小さいながらも虐待リスクのある人を見つけ出して、リスクが大きくならないための手立てを取ることが大切と思います。母子健康手帳の交付時がそのチャンスと言われていますけれども、面接する際に、無料券を利用して妊婦健診を受けるよう勧めていると聞いているんですけれども、より踏み込んで「計画的な妊娠でない場合に、その出産費用はあるかどうか」「相談できる人が身近にいるかどうか」など把握する必要があると思います。最近のこの面接時の対応状況はどうでしょうか。伺います。

鯉渕こども青少年局長:本年度は、母子健康手帳交付時に、看護職による面接を実施しております。看護職が面接することによりまして、妊婦健診の受診を勧奨するとともに、妊娠中の心身に関することや兄弟児との関わりなどの相談を受け、妊娠中からの不安の軽減を図っております。また、妊娠登録の際のアンケート内容や面接時の相談内容により、区の助産師や保健師が引き継ぎを受け、継続して対応にあたるなど、妊娠期間のきめ細かな支援に努めております。

白井議員:また、妊婦健診の未受診者を把握して、飛び込み出産とならないよう手立てをとることも必要と思いますけれども、その対応状況はどうでしょうか。

鯉渕こども青少年局長:21年度の妊婦健診の受診延べ数でございますが、38万8537件で、この年間出生数約3万2000人で割りだしますと、一人あたり平均12.1回受診していることになります。妊婦健診の重要性につきましては、母子健康手帳交付時に看護職の面接に際し、妊婦健診の未受診防止を図っております。
現時点では、妊娠者の状況は把握できていませんが、妊婦健診受診状況管理システムをつくりまして、妊婦健康診査費用、補助券の利用状況を入力しております。今後は個別の受診状況を把握し、妊娠者の受診勧奨を行ってまいります。

白井議員:これから、管理システムで個別に把握するということなんですけれども、出産前に未受診者が特定できるということが大切で、飛び込む出産を減らすために出産前の特定というところにもぜひ工夫をお願いしたいと思います。

乳幼児健診場所で福祉、市税・国保減免などのワンストップを

それでは、区役所内の福祉保健センターで行われている乳幼児健診ですけれども、ここで母子が孤立していないかどうか察知するチャンスの場であり、また必要な支援が出来る場です。DVを受けていたり、それから生活費に困っていたり、仕事が不安定で心配しているなどといった家庭環境や経済状況なども意識的に聞きだして、必要であればすぐに生活保護や市税・国保・年金減免など福祉の対応ができるように、健診会場に女性相談員や福祉担当の職員を配置して、ワンストップですぐに対応できるようにする必要があると思いますけれど、どうでしょうか。

鯉渕こども青少年局長:現在、乳幼児健診では、問診項目やその他の状況から総合的に判断いたしまして、必要に応じ、個別相談をお受けしていますが、その多くが子育てに関する相談です。その中で、保育所の入所ですとか、経済的な不安などの福祉や生活面での相談が必要な方には、その場でそれぞれの区の相談窓口をご案内しております。なお、育児不安が強い場合ですとか、子どもの発達面での心配がある場合などには、後日保健師が家庭訪問を行いまして、養育環境やご家庭でのお子さんの様子を確認し、育児上の助言をするなど、不適切養育の防止や発達支援を行っております。

白井議員:窓口にはつないでいたり、またその後の家庭訪問も行われているということですけれども、健診会場で悩みをかかえていたりする場合に、子ども連れですとなかなか移動ということもたいへんですので、その会場の中でワンストップで親身な相談、そして解決ができるような、そういう体制をぜひしていただきたいという思いですので、よろしくお願いいたします。
それでは次に、新聞社が8月に東京23区、そして都道府県、政令市などへ実施したアンケート調査では、乳幼児健診に来なかった家庭を職員が訪問するなどした結果、住民登録地に住んでいなくて、所在不明となっている乳幼児が、全国で355人というふうに発表されまして、本市ではデータがないということなんですけれども、乳幼児健診に来ない家庭は虐待のリスクが高いとみるべきで、他都市のようにフォローを感じております。4か月児健診を受けないケースには、担当者を配置して電話連絡して確認しているということ聞いていますけれども、1歳6か月児健診そして3歳児健診でも同様にすべきと思うんですが、いかがしょうか。

鯉渕こども青少年局長:本年4月から4か月健診未受診者への支援体制を強化するために、看護職を配置いたしまして、未受診者に対する電話かけを行っています。その際、育児相談にも応じており、さらに継続的な支援が必要と思われるご家庭には、保健師等が訪問しております。
先生おっしゃっているお話ですが、今年度4か月健診未受診者の対応を始めたところですので、この状況を検証いたしまして、来年度以降の体制の検討材料とさせていただきたいと思っております。

港北や戸塚での虐待事件を教訓に対策を

白井議員:それでは、ここから、具体例について伺います。
昨年12月に港北区で1歳2か月の女の子が木箱に入れられて窒息したという痛ましい事件がおきまして、私の地元の港北区で起きたということで、私も責任を感じているところなんですけれども、こういうことを二度と起こさない覚悟で質問したいと思います。
区の福祉保健センターと本市の児童相談所が関わっていた経過の中で幼い命が失われてしまって、本市の責任が発生していると思うんですけれども、局長の認識、すでにもう常任委員会で述べられたことは聞いているですけれども、ちょっとこの場で改めてお願いいたします。

鯉渕こども青少年局長:港北区の事例につきましては、児童相談所と区役所が関わっていた中で、子どもの命を守れなかったことを非常に申し訳ないと思っております。本事例につきましては、児童虐待による重篤事例等検証委員会において、検証作業をすすめております。また庁内に設置いたしました児童虐待対策プロジェクトにおいて、検証委員会での意見を踏まえ、二度とこうした事件が起きないように、点検の仕組みや制度や体制等を検討しております。

白井議員:またもう1件の例ですけれども、7月にコンビニで万引きした食べ物をトイレで食べ見つかって保護されたという戸塚区の小学校5年生の男の子が虐待を受けていたという例なんですけれども、この学校には児童支援専任教諭が配置され、関わっておられたようですけれども、これから全校配置ということになりまして、今後役割がしっかりと果たせるような条件整備が必要と思いますが、どのように行うのか、伺います。

山田教育長:児童支援専任教諭の専門性の向上のために、現在計画的な研修を実施いたしておりますけれども、その内容でございますが、課題をかかえる児童の教育相談、あるいは個別の教育支援計画の作成、危機管理演習など、専門的な知識あるいは対応方法についてのスキルを身につけること、あるいは相互のネットワークの形成を図っていくということが中心になってございます。また、児童支援専任教諭の役割につきましては、校内はもとより、保護者あるいは地域、外部機関などに今後十分周知していくことが重要であるというふうに考えています。

市費でスクールソーシャルワーカーの増員を

白井議員:続けて、教育長に。文科省の事業を活用したスクールソーシャルワーカー、市内で5人配置されているときいているんですけれども、個々のケースが問題が複合化していて、福祉的対応も求められるために期待がされておりますので、本市としてこの増員を国へ要望したり、また国への対応を待つだけでなく、市費での配置を要望しますが、教育長いかがでしょうか。

山田教育長:今年の7月に国に対しまして指定都市教育委員会教育長協議会を通じまして、平成23年度文教予算の編成にあたっての要望というものを提出いたしております。この中で、スクールソーシャルワーカーの活用事業などについては、地方の負担を増加させることなく、配置内容に応じた適切な財政措置をしてほしい旨の要望をいたしているところでございます。
また、お尋ねの市費での配置につきましては、本市でも国のスクールソーシャルワーカー活用事業を使いまして調査・研究をいたしておりますけれども、今後これまでの成果あるいは課題を検証いたしまして、国の動向を踏まえ、慎重に検討してまいりたいと考えております。

白井議員:それでは、最後に市長が伺います。市長が自ら参加されている虐待防止策を検討される児童虐待対策プロジェクトがスタートして、今年度中に取りまとめると聞いていますけれども、今回の2例の件を踏まえまして、市長が責任を持って、行政として、いろんな機会をとらえて支援をしてリスクを少なくすること、それからそのために専門の職員を配置して体制を整備することなど、ぜひ、このプロジェクトに反映させていただきたいと思います。お考えを伺います。

林市長:児童虐待対策は、妊婦健診や乳幼児健診の未受診者対策等による予防、そして地域やコンビニエンスストアと連携した早期発見、庁内の体制整備も含めた早期対応の重視など、さまざまな施策を効果的に組み合わせて展開することが重要だと考えています。児童虐待対策プロジェクトは私も参加いたしまして、外部委員による検証委員会の意見や、関係機関へのヒアリング結果などを参考に、様々な角度から具体的な施策の検討を行います。今後尊い子どもの命が奪われることのないよう、あらゆる対策を講じてやってまいります。


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