議会での質問・討論(詳細)
2021年3月23日

2021年度予算案反対討論 大貫憲夫 2021.3.23

日本共産党を代表して2021年度横浜市一般会計予算に反対の立場から討論を行います。

新型コロナウイルス流行によって、日本の社会システムのさまざまな矛盾や課題が露呈し、明らかになりました。本市市政においても同様です。今、本市に求められていることは、一番大切な「市民の命と暮らし」を守ることです。新年度予算での水道料金、介護保険料、国民健康保険料の値上げは真逆です。

この間、知りえた科学的知見・専門家の提言に立ち、コロナ感染対策を強化し、同時に、コロナ禍で明らかになった様々な問題を正面から分析を行い、正すべきものは正すことが必要です。そして、コロナ禍を乗り越え、よりよい横浜にするための予算編成を行うことです。

明らかになった思考停止型市政

コロナ禍によって思考停止型市政の実態が、改めて明らかになりました。新年度予算でのコロナ感染症対策を見れば明白です。

緊急事態宣言が21日に解除されました。しかし、コロナ感染は変異ウイルスの流行が懸念され、リバウンドの危険性が指摘されています。ワクチン接種のスケジュールは不透明をぬぐえず国民全体の集団免疫を確保するには、まだ相当の時間がかかります。今こそコロナ封じ込めのためには、無症状感染者を発見保護するための大規模な社会的PCR検査が必要です。

新年度予算において日本共産党市議団は、県が実施する高齢者入所施設等の職員に加え、通所施設や学校、病院なども含め社会的PCR検査等に市費を投入し実施することをはじめ、北九州市や神戸市、世田谷区など各地の自治体が独自に展開している検査と同様に、その対象を広げるよう求めました。しかし、昨年7月に政府の内閣官房が出した「PCR検査は100%の感度・特異性を持たない以上広範な実施は問題があり、医療崩壊につながる恐れがある。医師や保健所によって、必要と認められる者に対し検査を実施する」というマニュアルに従い市長は、社会的PCR検査の拡大を拒否しました。政府の古い方針にしがみついて自主的判断を放棄した思考停止型自治体の典型です。

しかし、菅政権はその後の3月5日、1日1万件程度と規模が極めて小さいという問題点はあるものの、これまでの態度を改め無症状感染者に対するPCR検査の実施を発表しています。さらに、4月には大都市部で1日500件のモリタニングを行うことを18日、表明しています。政府が社会的PCR検査の有効性を認めたにも関わらず、いまだに、内閣官房が出した古い政府の方針にかたくなにしがみついている本市の態度は、異常であり許されません。

デジタル化について

新年度新たな統括本部を立ち上げる予算が計上されました。デジタル統括本部です。29人体制で関連予算として233億円が付いています。菅政権は持続化給付金などの交付の遅れなどの理由をデジタル化の遅れに求め、マイナンバーなどを利用した経済成長につなげるため、デジタル化の推進を最重要課題の一つとして一気に進めようとしています。本市はデジタル化によって住民サービスを向上させることができるとし、デジタル化には個人情報漏洩という人格権の侵害や社会経済的損失の可能性があり、個人情報やプライバシー権など人権保障がないがしろにされた菅政権の方針を無批判に推進しようとしています。デジタル技術の進歩は本来、市民の幸福に資するものでなくてはなりません。本市がなすべきことは、デジタル化による市民の求める行政サービスの在り方や、行政目的をはっきりさせることです。デジタル化がいかに進もうと個人の尊厳がしっかり守られるべきです。菅政権の方針に、ただ単に追随する行政はやめるべきです。

「IRカジノ・広報よこはま」について

先日、「横浜イノベーションIR」「202Ⅹ未知なるリゾートへ」という広報よこはま特集号が新聞折り込みされました。中身はコロナ流行前の文書「よこはまIRの方向性」と全く同じ内容です。コロナパンデミック後のグローバリズムの変化を含め、地上型カジノを中核にしたIRカジノが明らかに斜陽産業化したことをも無視しています。今後も新たなウイルス感染流行が発生しうるという世界の常識さえ否定したものであり、市民をミスリードする作為的なものと断ぜざるを得ません。

しかも、特集号にはIRカジノによって得られたお金は「将来見込まれている税収減や収入不足を補い、財政改善につなげる」と市民の豊かな暮らしを支えるものとしています。では、どれくらいの額になるか計算のもとになるIRカジノの経済効果について、市長はわが党の予算代表質問に対し、「IRカジノの経済効果については具体的な提案を選定した後に区域整備計画の中で整理し示す」と答弁しています。何たることでしょうか、市長は現在、コロナ禍後のIRカジノ事業の採算性について数字的根拠を持っていないのです。無責任の極みです。つまり、IRの事業自体が“大博打”だと宣言しているものです。昨年行われた世論調査では66%の市民がIRカジノ誘致に反対しています。その市民の反対の声を跳ね除け、遮二無二に推進するのはなぜかという質問に市長は「IRイノベーションは国家プロジェクトだから」と答弁しています。それは、IR事業はアベ政権から続く菅政権の国際観光戦略に位置づけた国家的プロジェクトの目玉であり、それを実現するのは基礎自治体としての横浜の責任だという市長の持論以外に理由はありません。

花博について

IRカジノ誘致だけではありません。2027年の3月から9月まで6か月間の入場者を1500万人以上と見込む旧米軍上瀬谷基地跡地で予定されている花博・国際園芸博覧会です。花博そのものには反対するものではありません。コロナ禍後のニューノーマルな社会において年間1500万人という入場者数が荒唐無稽だということです。最近、理由も示さず有料入場者数1000万人と引き下げています。

本市には忘れてならない失敗があります。2009年に5ヶ月間行われた横浜開国博Y150は有料入場者500万人を予定し、結果は125万人を下回り23億円の赤字に終わりました。無残な結果に終わった最大の理由は、入場者数が単なる希望で全く根拠がなかったことです。花博の1000万・1500万人という入場者数も根拠が示されていません。横浜開国博Y150と同じです。

新交通システム・上瀬谷ラインについて

その上、花博開催後に年間1500万人入場者の巨大テーマパークを誘致するとして、相鉄線の瀬谷駅から会場までの2.6キロをつなぐ新交通システム上瀬谷ラインの整備計画が提案され、花博が開催される2027年までに営業を開始するとしています。事業費は700億円と報じられています。

年間1500万人という入園者数は花博同様、根拠が示されていません。コロナ禍で世界のエンターテインメント・テーマパークは減収・事業縮小しています。この点について担当副市長は「新型コロナウイルス感染症の収束後は、テーマパークの賑わいも戻ってくると思います」と無責任な答弁をしています。

多額な財政をつぎ込む大型プロジェクトは、すべて安全側に立ち事業を進めなくてはなりません。行政の常識です。コロナ禍後のグロバリーゼーションはコロナ禍前と同じになるという認識で良いのか、人の動きは本当に元に戻るのかを考えたとき、過大見積もりの花博、そして巨大テーマパーク構想は、安易な願望だけが先行したものであり、菅政権の国際観光戦略の具体化そのものです。

コロナ禍後の新しい横浜の街づくりについて

コロナ禍で横浜市政になくてはならないものがはっきりしてきました。一番大切なのは開発優先のリトル東京づくりではなく、市民の命を守るケアを大切にした社会、375万人の市民の生活をまもるまちづくりです。

市長が言われるように、今後の少子高齢化、人口減少社会において安定的な財源を確保するのが市政の役割でもあります。しかし、これまで市長とってきた横浜市都心臨海部再生マスタープランのような国の成長戦略に従った大型プロジェクトや観光政策などを中心にした経済政策では、大手ゼネコンの仕事おこしには役に立っても99.5%を占める中小・小規模事業者への波及効果は微々たるものです。それどころか、コロナ禍後の目測を誤ると残ったのは莫大な財政負担と、膨大で不必要なインフラ群となる恐れがあります。

着実に長期にわたり財政を涵養するためには、国のお先棒を演じ、三密を避けるなどニューノーマルな社会の在り方を破って国際観光戦略に活路を求め、一時的な交流人口は増えても、市財政を支える生産年齢人口を直接的に増やすことにはなりません。これまでの本市の人口動態を見ると子育て世代が様々な理由で市外に流出しています。実際、党市議団が行った市民アンケートでも、子育て世代が求めているのは保育所の増設、小児医療費助成制度の拡充、全員喫食の中学校給食、少人数学級、低廉で住みやすい住宅、整備された公園など多岐に及んでいます。ここにこそ着目し施策を充実し、若い人たちが横浜で家庭を持ち、第2子、第3子と安心して生み育てられる環境を整備することです。

エピローグ

討論の最後に私は、コロナ禍を経験し、そこから新たな教訓を引き出そうとしない林市政そのものが市民にとって不幸だということを言いたい。これまで私は何度も指摘してきましたが、市長が自民党の支援で2期目当選を果たした翌年の2014年1月6日の市の賀詞交換会で「国の経済成長を現場で具体化するのが基礎自治体としての横浜の役割」とのべ、同14日の施政方針演説においても「国は政策を掲げ、法や制度をつくりますが、それを実行し、成果を市民のみな様に届けるため、現場で汗を流すのは、私たち基礎自治体です」と宣言したこと、この考えそのものが8年間の市政に貫かれ、国の誠実な下請け自治体、思考停止型市政にならしめた原因です。コロナ禍後の市民に顔を向けた新しい横浜市政に変えるためには、林市政そのもの転換が必要と申し述べて、討論とします。


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