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【2010年第3回定例会】「決算反対討論」 大貫憲夫

 私は日本共産党を代表して、2009年度一般会計歳入歳出決算及び事業会計決算15件の認定に反対し、討論を行います。

福祉・地域経済など市民の期待に応えた行政かといえば「ノー」

 2008年の秋のリーマンショックに端を発した金融危機・世界同時不況の影響を受け、2009年度は横浜経済も大きな打撃を受けました。決算審査意見書では、「このような中で、身近な暮らしを支える福祉・医療の充実や活力を生みだす地域経済振興など、行政の果たすべき役割に市民の期待はますます高まっている」と指摘しています。その点で、2009年度がその期待に応えた行政であったかといえば、「ノー」です。
 予算では、2009年を「開港150年からのチャレンジ」として景気・経済対策のための絶好の機会と位置付け、4月から9月に開かれたテーマイベント「開国博Y150」の市内への経済波及効果を約550億円と見込みました。しかし、有料入場者数は目標の25%にとどまり、その経済波及効果は皮算用に終わり、「開国博」は見込みで24億円に及ぶ赤字という無残な結果となりました。中田市長と野田副市長は、その責任から逃れるように突然辞任するという醜態をさらけ出しました。今後、この24億円の赤字を市民に付け回してはなりません。
 また、開港150周年記念事業の財源に、2009年度は43億円で、累計109億円の財政調整基金を取り崩しました。この基金は、年度間の財政不均衡の調整や税収が不足した際に重要な財源となるものです。本来、開港150周年記念に使うべきものではないこの基金を使ったことは、まともな財政運営を逸脱したものといわざるを得ません。

企業誘致促進事業による市内企業への経済波及効果は疑問

 次に、地域経済振興という問題では、企業誘致促進事業によるその経済波及効果がほとんど市内企業に及ばなかったことです。
 2009年度の企業立地促進条例による支援額が市税軽減と助成金合わせて約17億4000万円だったのに対し、誘致企業からの税収は約10億円で、決算審査意見書でも「支援額に対する税収額の費用対効果は7億円のマイナス」「費用対効果を考慮する検討を行う必要がある」と指摘しています。
 また、2009年1月の調査では、誘致企業が発注した準市内企業への建設工事や設備工事は87.7%です。そのほとんどが、例えば日産本社ビルを建設した清水建設のように、東京等に本社を持つデベロッパーです。また、原材料の調達、物品購入などの市内企業への発注も17.4%にとどまり、同事業による市内経済への費用対効果はほとんどないといっても過言ではありません。しかも、どれほどの市民が誘致企業に雇用されたのか、これまで全くデータはありませんでした。
 市内への経済波及効果も市民雇用もほとんど期待できない企業立地促進条例は、費用対効果の面からも即時廃止すべきです。同時に、これまでに助成金などのインセンティブを受けた企業については、市内企業への仕事発注、物品購入、委託や市民雇用などの目標を提示させ、その実行を求めるべきです。

みどり税徴収して、みどりアップ計画事業費余らす

 2009年度は横浜みどり税徴収の初年度で、決算額は15億3300万円でした。ところがみどり税を投入して行う「横浜みどりアップ計画」の事業費は、18億円の不用額を出しました。
 みどりアップ計画は、底なしの不況下で苦しむ市民に超過課税してまで集めたみどり税を財源に加えた事業です。その事業費を余らせたということは、みどり税は不要だったということであり、即刻みどり税は廃止すべきです。
 「みどりアップ計画」は大切な事業です。一般会計を財源とし、緑を減少させる一番の原因とされる都市計画法を改正するように国に働きかけ、同時に市街化区域の緑の保全のために、分割開発などに対する開発規制を強めることが必要です。

払いたくても払えない市税等滞納者に厳しい取り立て

 歳入の面では、未収債権の処理も重要です。資力がありながら市税や国民健康保険料などを納入しない悪質な滞納には、断固としてその債権を徴収しなければなりません。しかし、問題は、この不況の影響で市税等を払いたくても払えずに滞納している市民への対応です。
 市税の滞納処分については、特別催告が来たので資金手当てをして準備していたにも関わらず、指定納付期限前に突然、通告もなしに銀行口座が差し押さえられ、その結果、銀行から保証協会付きの融資の一括返済を要求された例など、強権的な処分によって苦しめられている例が多数発生しています。
 本市は地方税の徴収手続きを国税徴収法と国税通則法に則って行うとしていますが、これらの法の強権的な部分は、悪質な滞納者を想定したもので、多くのやむにやまれず滞納してしまった善良な市民に向けられるものではありません。滞納処理は、強制処分の前にまず滞納者の個別の事情を十分調査・聴取し、その上にたって滞納者個々の事情に即応した滞納整理・徴収業務が求められます。

子育て世代への支援が後景に

 歳出についての問題では、子育て世代への支援が後景に押しやられたままだったことです。
 保育所の待機児童は、今年4月1日付で過去最高の1552人になりました。学童保育は民間任せ、少人数学級や中学校給食はコストを理由に検討する姿勢さえ見せません。小児医療費無料化も就学前までで、全県の中でも最も遅れた水準です。一般会計に占める教育費の割合は、18の政令指定都市中17位の低さです。
 少子高齢化社会のなか、若い世代の定住をめぐって各自治体間で「都市間競争」が繰り広げられています。これでは、子育て世代が本市に見切りをつけ、流出することになります。
 本市統計ポータルサイトに掲載された2009年度中の人口動態では、本市への転出入は20歳代から30歳代が大半を占め、その特徴は、東京区部、東京都下、神奈川県内、埼玉・千葉県への転出が転入を上回っていることです。まさに、若い世代、特に子育て世代が流出しているのです。重大なことです。
 若い現役世代のために、環境と子育て、教育の充実による魅力あるまちづくりを行わなければなりません。その結果、横浜市が坦税能力のある市民の居住地に選ばれ、ひいては市税増収によって財政にも大きく貢献し、また、将来の横浜を担う人材でもある子どもたちの成長と発達にもつながります。
 新年度は、若い世代の流失問題をしっかり念頭に置いて、大型開発偏重の予算編成を改めなければなりません。

南本牧大水深バース・コンテナターミナル建設に巨費投入

 経済状況等を見誤った大型開発の典型は、南本牧大水深バース・コンテナターミナル建設整備事業です。2009年度には国費と市費を合わせて126億円が投入されました。民間企業が倒産する原因の一つに、あやふやで不確実な展望によって行われた過剰設備投資による資金ショートがあります。本事業はその典型です。
 国土交通省港湾局の2009年速報値では、コンテナ取扱量の第1位はシンガポール、2587万TEU、横浜港と競争関係があるとされる釜山は、5位の1195万TEUです。わが横浜港は36位280万TEUで、取り扱い量はシンガポールの9分の1、釜山の4分の1以下に過ぎません。さらに、釜山では現在17ある大水深バースを2015年までには29バースに増設すると聞いています。残念ながら、港湾施設の規模でも、また、中国という巨大マーケットに近いという地理的条件でも、その差が大きすぎます。
 横浜港のコンテナ物流については、内航海運の利用促進や近隣諸国のハブ港を活用する協調も含めた、総合港湾として発展させることが必要です。港湾経営のためにも無駄な投資は避けるべきです。

身の丈に合った横浜駅周辺再整備を

 もう一つの大型開発、横浜駅周辺大改造計画「エキサイト22」も2009年度に策定され、今年度から横浜駅西口の民間ビルの建替えが始まるなど、なし崩し的にスタートしました。同計画は、20年後の横浜駅周辺を描いた再整備とされ、本市が中心にすすめる基盤整備だけでも、平均毎年約150億円のオーダーで公的資金が投入されることになります。
 浸水などの防災対策やバリアーフリーなど、市の責任で行うまちづくりの基本計画はたてる必要があると思います。しかし、「羽田空港国際化を契機に横浜から世界へ新たな価値を発信し、都市間競争に打ち勝つ」として、巨費を投じ、リトル東京のような高層ビルが林立する市街地再開発を行うことは、逼迫する市の財政状況や、環境負荷の側面からみて、あまりにも無謀な計画です。
 この事業を含め、すべての再開発と公共事業を抜本的に見直し、少子高齢化と人口減少という社会経済情勢の変化を見据え、身の丈にあった整備計画へ転換すべきです。

間違いだらけの自由社版中学歴史教科書を採択した市教委の責任は重大

 最後に、歴史教科書問題です。
 2009年8月4日、横浜市教育委員会は18区中8区で「新しい歴史教科書をつくる会」の自由社版中学校歴史教科書を採択しました。その後、横浜市教育委員会の要望で、教科書採択地区がこれまでの18地区から全市1地区になりました。これらのことに関し、驚愕と批判の声が、教育界だけでなく各界各層から上がっています。
 自由社版歴史教科書は間違いだらけの教科書です。同教科書は2008年の教科書検定審議会で欠陥・間違いが516か所指摘され、2009年にも自ら40か所を訂正しています。
 この教科書がこの9月から中学校1年生でいよいよ使われ始めました。授業が進む中で、写真が裏焼きされて左右が逆になっているものや、史実の記述、編集上のミスなどが20か所以上も教育現場から報告されています。
 横浜市教育委員会として、この自由社版歴史教科書の調査を行い、指摘された誤りが明らかな場合、教科書を回収して訂正版を配布すべきです。なお、2002年には、誤記が26か所見つかった中学校英語教科書が、「教科書を発行する会社としての責任を全うする」として当該教科書会社によって約38万部回収された事実があります。
 このような間違いだらけの自由社版歴史教科書を、市教科書取扱審議会の答申を無視し、無記名投票で強引に採択した市教育委員会の責任は重大であることを指摘して、私の討論を終わります。