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過大な横浜園芸博覧会計画の見直しと、無謀な(仮称)上瀬谷ライン計画の中止を求める申し入れ

2021年11月25日

横浜市長 山中 竹春 様

日本共産党横浜市会議員団  

団長 荒木由美子

1)2027年に横浜市内で開かれる国際園芸博覧会=「花博」を運営する組織として国際園芸博覧会協会が11月15日に設立されました。そもそも花博は、林前市長が菅元総理が官房長官の時代に横浜に誘致したナショナルプロジェクトです。協会事務所を中区本町4丁目に設置し、事務局は横浜市職員が大半で16名構成と伺いました。事務局は、会計業務、国との調整業務を担い、花博の内容・企画はほぼ同人数の市職員と国からの2名を加えた都市整備局で担うとのことです。まさに横浜市の知恵と人員と財政を駆使して進められるものです。横浜市が開催責任のほとんどを負うという点では、2009年開催の「開国博Y150」と同じです。Y150は展示、催事などの企画に魅力と集客力がなく、有料入場者数は123万9,325人と、500万人目標の4分の1にも達しませんでした。結果として28億円の赤字を出してしまい、横浜市の歴史に汚点を残しました。花博開催にあたっては、過大な計画の見直しがどうしても必要です。

花博開催にあたっての留意点の一つは、展示・行事・催事等の企画内容にあります。もう一つは、市の財政負担を過大にしないことです。この点では現在の横浜市の取り組みについて幾つかの懸念を拭えず、現行の事業構想案の見直しは待ったなしと考えます。

今市民に示されている事業構想案は、横浜市が2018年3月に策定した基本構想案をベースに国が2021年5月まとめた「横浜国際園芸博覧会具体化検討会報告書」によるものです。横浜市の基本構想案は、30年前のバブル絶頂期の大阪の花博を参考にしてつくられています。建設費320億円、運営費360億円という積算には、コロナパンデミックが考慮されているとは到底思えません。また、企画内容についても、同様です。前提が激変している限り、積算と企画内容の再検討は当然のことではないでしょうか。

企画については、有識者の知見を汲み尽くす必要があります。3回行われた国の横浜国際園芸博覧会具体化検討会には、横浜市の附属機関の委員を務めた涌井雅之氏や、隈研吾氏らの5人も委員として参加されています。コロナ前に横浜市の基本構想案を審議された方々がコロナパンデミックを受けて留意すべき点を挙げられています。

委員からは「コロナ後に、『幸せ』の定義が変わらなければならない」「コロナ後の状況というのは、たくさんの人間に来てもらい、展示することに対して根本的な転換が図られる時代」「大都市の近くで里山的な自然環境が残っているこの場所は、コロナ後の新しい住み方、自然と人間との関係性を再定義するには最も適した場所」「万博とか花博というものの考え方自体をチェンジするものになり得る」と述べておられ、花博のメインテーマである「幸せを創る明日の風景」についての問題提起もされています。

現計画では、建設費の3分の2は国・自治体負担です。残りは経済界です。経済界からは寄付金集めに不安の声が出ています。国の保証も100%ではありません。運営費360億円は、有料入場者数1,000万人のチケット販売でほとんど賄う計画となっています。チケット販売が計画通りいかなかった場合は、横浜市がその赤字を埋めることにならざるをえません。有料入場者数と運営費については見直すべきです。

2)現在、花博に間にあえばと、相鉄線瀬谷駅から同跡地までの2.6キロをつなぐ新交通「上瀬谷ライン」計画が進められています。この計画の大本は、コロナ禍以前に市が策定した土地利用基本計画にあり、巨大テーマパークを核とした「観光・にぎわいゾーン」に、年間1500万人の来場を見込んでいるものです。
 「上瀬谷ライン」の安定的な運営には、花博後に東京ディズニ―ランド級の巨大テーマパークを誘致することが条件になります。しかし当初のテーマパーク海外事業者はすでに撤退。テーマパーク構想を市に持ち込んだ相鉄も早々に撤退し、計画そのものの実現性は全く不透明です。この路線の約7割は地下を通すため、整備費は約700億円となる見通しです。横浜市は、2027年花博までに開業するために、年内に整備費の半分を負担する運行事業者を決め、年度中に運行事業者が国に許可(特許)申請するスケジュールとしています。

報道では、横浜市から運行事業を依頼されている横浜シーサイドラインは18日、事業採算性が見通せないことから、事業に「参画すべきではない」とする有識者の上申書を「妥当」と結論づけ、事業参画を断る方針を正式に決め、11月中に市に回答するとしています。また、25日付の神奈川新聞では「第三セクターが市に反旗を翻すという異例の展開」と書かれており、この事態を重く受け止めるべきです。事業の将来性も見通せず、失敗すれば重い市民負担となる本事業は、今、計画の根本を見直す必要があります。 

よって、花博及び上瀬谷ラインについて以下を申しいれます。

1. 横浜国際園芸博覧会は、コロナパンデミックを受けて、過大となっている建設費・運営費・有料入場者数を抜本的に見直すこと。

2. 上瀬谷ライン計画は中止すること。

3. 長年にわたって取り残されてきた地域の発展と、住民や公園等利用者の足確保に寄与する地域公共交通網を構築すること。