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■現年度議案関連質問 宇佐美さやか議員 2022年2月9日

市の個人情報の保護に関する条例の一部改定にあたっては現行の規定を削除しないで

宇佐美議員:日本共産党を代表し、今定例会の議案に対し質問します。
まず、はじめに、市報第30号 横浜市個人情報の保護に関する条例の一部改正についての専決処分報告です。この専決処分は昨年成立したデジタル関連法の一つである改正個人情報保護法との条文上の整合性をとるための事務手続きです。
「デジタル関連法」は、首相のもとに強い権限と膨大な予算を持ったデジタル庁を新設、国や地方自治体のシステムや規定を標準化・共通化し、個人情報を含むデータの利用を強力に進めることを企図したものです。デジタル化は、真に市民のくらしに役立つために使われるのであれば否定はしませんが、現在連日のように報道では、スマホ決済のシステム障害やクラウドを運営する会社の顧客管理システム障害、LINE社による個人情報の漏えいなどインターネット上の問題点が浮き彫りになっているなかで、法制定による個人情報の悪用は絶対あってはならないことです。
台湾と韓国などでは、個人情報を守るための「忘れられる権利」つまり自分のデータを完全削除・消去、利用停止を求める権利が確立されています。台湾の個人情報保護法は保護すべき個人情報の項目を具体的にならべ記されています。
日本は、デジタル先進国に比べて、プライバシーを守り、安全性やデータ保護を確実にする規制やルールの規定、監視・監督機関の整備などの脆弱性・遅れは深刻です。昨年の法案審議では、行政機関が個人情報を目的外に使うことのできる要件をより限定的にすることや「個人情報の取り扱いについて自ら決定する権利」の保証を明記するよう求めた修正案を与党は拒否してしまいました。一方で安倍政権による「森かけ問題」「桜を見る会」など、政権に都合の悪い情報の偽造・捏造・隠蔽を繰り返している政府が地方自治体に個人情報を提供させようとすることに対しては、懐疑的にならずにはいられません。 

今回のデジタル関連法によって、各自治体の個人情報保護条例は改正個人情報保護法に集約、一本化されます。独自の保護措置があった自治体では保護水準の後退を招くことは必至です。それは、本市も同じです。
本市の条例は「個人情報を収集する際は、法令の定めがある場合を除き、本人から収集しなければならない。公益上特に必要があるとして本人以外から収集するときは、個人情報保護審議会の意見を聴かなければならない」「思想、信条及び宗教に関する個人情報並びに社会的差別の原因となるおそれがある個人情報は、法令等の定めがある場合や公益上特に必要があると認める場合を除き収集してはならない」、さらにオンラインとの結合についても禁止していることも明記されています。ところが法にはこの規定はありません。
今回の法改正により、本市では、段階的に条例を改定し、予定では来年春ごろまでに全文を改定すると聞いています。国は、自治体が「必要最低限の独自の保護措置」を制定することを認めています。現時点で、来年までに行う条例改定の検討状況と改定の方向性について伺います。

山中市長:市報30号についてご質問をいただきました。令和5年春、施行予定の法改正に伴う個人情報保護条例の改正の検討状況および方向性ですが、法律の範囲内で地域の特性に照らして必要最小限の独自の保護措置が許容されております。令和4年3月頃に公表される国のガイドラインの内容を確認した上で、独自の保護措置が必要か否かを検討してまいります。

北綱島特別支援学校を本校に戻すにあたっては保護者の声に向き合って

宇佐美議員:次に、市第129号議案 横浜市立学校条例の一部改正についてです。この議案は今年、4月1日から上菅田特別支援学校北綱島分校を本校に戻すという内容です。これは市長の選挙公約の一つであり、市民への約束を守ったということになります。
党市議団は、閉校計画が発表された当初から、本校のまま残し存続することを主張し続けておりましたので、本校に戻ることを歓迎します。そして、何より6年間、北綱島特別支援学校を守りたいと運動されてきた保護者のみなさんや地域の方々には、粘り強く運動を続けてこられたことに敬意を表したいと思います。

この間の経緯ですが、市教育委員会が2015年に「市内の肢体不自由特別支援学校は5校」とする方針を示し、旭区の左近山に新設する代わりに、北綱島特別支援学校を閉校するということを、当該校の保護者に事前に知らせることなく一方的に突如発表しました。閉校とする理由の中で「人口減少が本市でも・・・」と述べているものの実際は市北部では人口が増え続けており今後、重症心身障害があるケアが必要な子どもたちも増えることが予測できると、保護者のみなさんは「存続させる会」をつくり、お子さんのケア、家事・仕事などをこなしながら、学校存続を求める署名に取組み、わずか3か月で3万人以上の署名を集め市教委に提出されました。市教委は、閉校案から「期限付きの分教室案」その直後「期限なしの分教室案」と計画を次々と変えていきました。18年には「本校同様の教育環境を確保する」として、今度は「分校」へと移行することが提案されたのです。分校化の条例案に党市議団は、反対しましたが議会の賛成多数で可決され、19年に分校としての運営が始まりました。市教委は、市の持ち出しで校長を配置するなど、本校と何ら変わらない環境を維持してきました。市会で分校案が議決されたという条件下で、保護者の思いに応えるために市教委は苦肉の策を打ったと理解します。

山中市長が誕生した8月の市長選挙を受けて、昨年の10月に市教委は「文部科学省が9月にこれまで定めていなかった特別支援学校の設置基準を決めたことを受け、本市は、特別支援学校が6校必要と判断した」と方針転換しました。本校化を説明する保護者説明会では、保護者のみなさんは、再び過ちを繰り返さないために「閉校の方針が間違っていたことを認めて謝罪してほしい」「閉校・分校計画の誤りを検証してほしい」という声が上がったと説明会に参加した白井議員から聞いています。教育長は、「6年間ご心配をかけて申し訳ない」と表明されましたが、市教委は「閉校計画が誤っていたという前提には立っていない」という頑なな姿勢は変えていません。「分校案を議決した議会が誤っていた」と教育委員会が公言できない事情はくみ取れます。前市長の下での問題ではありますが、この6年間の保護者のみなさんの思いを受け止め市として対応できるのは、市長ではありませんか、市長の認識を伺います。

山中市長:市第129号議案についてご質問をいただきました。北綱島特別支援学校についてですが、これまでも教育委員会で保護者の皆様からのご意見等を伺う場を継続してまいりました。教育委員会には引き続き、全ての学校において保護者に寄り添い、子どもたちの安全安心と学校生活の充実に取り組んでもらいたいと考えております。

市のコロナ対策の総点検・検証を行い更なる強化を

宇佐美議員:市第138号議案 補正予算案の感染症対策について伺います。新型コロナウイルスの変異株であるオミクロン株による感染爆発により、恐れていた第6波の真っ只中にある今、本市として、感染拡大を止めて減少へと転じるために総力をあげることが必要だと考えます。そのような状況のなか、神奈川県は、感染の急拡大でひっ迫する医療機関や保健所の負担を減らすとして、リスクが高い患者に対応を集中させるため重症化のリスクの低い方が市販の抗原キットなどで陽性になった場合、医療機関や保健所を介さずに療養を選択することができる「自主療養」を始めました。自己申告による療養を可能にする全国でも初めての試みと報道されています。

今月末までの予定で、市内の薬局で無料のPCR検査を実施していますが、検査薬が無くなるなどの事態が起き、受付を中止した薬局が多数出ています。発熱外来は検査キット、試薬不足で受け入れを制限、その結果、陽性者が7割、8割という事例も発生しています。各区の福祉保健センターは、医療機関から届く全ての患者の情報を確認し、重症化しそうなリスクの高い人とそうではない人を分けているそうです。その中で、高齢者などリスクの高い患者の割合が増加し、1人当たりの健康観察にかなりの時間がかかるようになっていると聞いています。福祉保健センターのみなさんの仕事量は患者の増加に比例し、増え続けているのは、誰もが認識をしているところです。救急搬送困難件数は、今年1月3日の週で125件から、1月31日の週では、344件と約3倍に増加しています。

医療機関から、PCR検査の試薬がないため、「医療機関に優先して確保できるように国が対応を始めたと聞いているが、現場に届いていない。」「発熱外来の補助金を復活させてほしい」「感染のリスクが格段に上がり人手と手間がかかることから体制を厚くしたいが経営的に厳しい。」と悲痛な声が寄せられています。

このような事態となっていることから、現在の感染防止策が万全ではないことは明らかです。ワクチン接種の遅れや検査体制の脆弱性など、多くは国の責任ですが、市民に日々向きあっているのは地方自治体である横浜市です。保育所、学校、高齢者施設、病院でのクラスター発生も続出しています。本市の対策を立て直すことが切実に求められています。

市として、今現在の対策で感染拡大を抑え、感染者を減少させることができるのか、果たして今回の補正予算で足りるのか、対策の総点検、検証が急務と考えますが、市長の見解を伺います。

党市議団として、新たな感染の波から市民のいのち、生活、営業をまもるために、安定したワクチンの供給体制の確立、検査体制の拡充、医療・保健所の体制強化、補償と生活支援など包括的な対策と、市長自身がSNSなどを活用し直接市民へ、毎日、コロナ感染状況、感染対策等の発信を行うことを要望しておきます。

山中市長:市第138号議案についてご質問をいただきました。現在の取り組みで感染拡大を抑え、感染者を減少させることができるのか、今回の補正予算で足りるのか、対策の総点検・検証が急務であるとのことですが、現在の爆発的な感染拡大の渦中にあっては限りある医療資源を集中させて、目前の悪化する患者の命と健康を守ることが最も重要です。そのため重症化リスクのある方への療養支援を優先に実施しております。なお、今回の補正予算では感染拡大の防止及び医療提供体制の強化とともに、小児及び高齢者へのワクチン接種の加速化に注力していきます。
これまでのデータあるいは、科学的知見から明らかになったオミクロン株の特性を踏まえつつ従来の予算もしっかり活用しながら柔軟に対応してまいります。

保育士等の処遇改善は対象者の拡大を

宇佐美議員:次に、保育士等の処遇改善について伺います。

新型コロナウイルス感染拡大以前から保育士の確保が厳しく、どこの保育所も苦労をされてきました。それは、命を預かる大変な仕事であるにもかかわらず、他のどの業種に比べても処遇が低く抑えられていることから、保育士の資格を取り、就職しても将来を考え現場を離れてしまうという方々も多くおられると聞いています。
このような中で、コロナ感染急拡大は、この保育所にさらに過大な負担が押し付けられることになりました。子どもや保育士の陽性で休園の場合、保健所の聞き取りによる濃厚接触者の特定はしないとなっていることから、再開においても、感染再拡大防止策をどうとるかについても、園は難しい判断を迫られています。保育所に抗原検査キットの追加配布も行われますが行政の関与が薄くなる分、現場の過重負担は否めません。

社会を支える基盤である保育労働者の処遇改善は、喫緊の課題でした。国で保育労働者へ3%程度、月額にして9,000円の賃金引上げのための予算が計上され、本市で執行されます。本市は、保育の質の担保のため、国の低い保育士配置基準より高い基準を設け市独自に保育士を加配しており独自の加配分も同様の9,000円の引き上げを実施することを評価します。しかし、事業の種類、例えば一時保育や延長保育等を担っている方々は、今回対象にならないと聞いています。保育事業を支えている方々には代わりないのですから同等に支給する必要があると考えます。さらなる予算を国に求める考えはないのか。そして、市独自で措置を講ずることを検討してはどうか合わせて市長に伺います。

山中市長:処遇改善の対象を、一時保育等に携わる保育士等へ拡大するよう国に要望し、市予算も増額すべきとのことですが、今回の処遇改善にあたっては、国が対象とした施設や事業に加えて、本市の基準で手厚く配置している保育士や市独自事業の横浜保育室の保育士等について、市費で独自に処遇改善の対象といたしました。
一方国の補助事業でありながら、今回の処遇改善の対象外となった一時保育等の事業については将来的な財政負担の観点から、本市独自で対応することが難しいと考えております。本市としても多様な保育ニーズへの対応と充実のため、従前から一時保育等に携わる保育士等の処遇改善を国に要望しております。今後も引き続き、強く要望してまいります。

開発事業者を優遇しすぎる東高島駅北地区開発事業は抜本的な見直しを

宇佐美議員:市第147号議案 市街地開発事業費補正予算のうち、繰越明許となる東高島駅北地区土地区画整理事業について伺います。

私の地元である神奈川区の神奈川一丁目、二丁目、千若町及び星野町の一部に跨る地域において、市が水域の一部を埋め立てることで市有地を創出し、その市有地を活用した法人参加の組合施工による土地区画整理事業を一体的に行い、JR貨物など民間デベロッパーによる最大高さ195メートルという超高層マンション約2000戸を建設するものとなっています。国の所管する公有水面と市の水路の埋め立て許可を得て市税18億円を投入する埋め立て事業と、土地区画整理事業の総事業費110億7,900万円のうち国と市からの補助金総額が53億2,500万円で、48%も公費を入れるものとなっています。埋め立てをしなければこのマンション建設は実現しません。工期延期により埋め立て事業費も5割増しが見込まれています。

現在の場所で事業をされている方々の移転先が中々見つからなかったことや工事車両の出入りのため設置しようとしていた仮の橋が埋設物により設置が遅れる等の理由で、工期が当初の予定より2年延期されるために、繰越明許補正を行おうとするものです。
住民参加で策定された神奈川区のまちづくりプランには、当該地域は「工場や物流倉庫など創業環境の維持を図る、土地利用転換に際しては計画的な再整備を行い、新たな産業の集積を促進」となっています。

地域住民は2015年にこの開発計画が示されたとき「多くが木造住宅に居住している東南側の区画整理地区に185mもの超高層建物3棟が建設されると、日照、眺望、ビル風等において現在の日常生活や居住建物において多大な支障をきたす、都市計画で定められた工業地域の絶対高さ制限20メートルを厳守して」と要望を出されました。しかし、区プランの翌年に策定した東神奈川臨海部周辺地区再整備計画によって区プランにはなかった住宅や、埋め立てという行政の方針を無理やり入れ込み、東高島駅北地区再編整備事業の条件をつくりました。
市は、48%もの公費を投入することに対し「公共性のある都市計画道路、公園整備、排水施設整備のため」と繰り返し答弁してきました。公共用地としては、横浜駅周辺浸水対策下水道のポンプ場用地2979㎡、道路、公園、河川の護岸用地、広場合わせて2.8ha。全体面積7.5haからみれば公共用地面積は37%、急ぐべき横浜駅周辺の浸水防止のための雨水処理を行うポンプ場用地面積はわずか4%です。この土地区画整理事業で最大の恩恵を受けるのはマンション建設事業者です。公園や用地内の道路の整備費をすべて公費である補助金で賄うことには道理がありません。事業者に応分の負担を求めるのが本筋ではないでしょうか。しかも、土地区画整理法には組合事業への公費投入の規定は無く、市がこれまで根拠としてきたのは国の社会資本整備総合交付金要綱に基づく補助金ですが、これも「できる規定」にすぎず、横浜市の判断でしかありません。市長は、既存事業見直しについて、「より踏み込んだ見直しのためにはこれまで以上に十分な庁内検討や市民・議会の皆様との丁寧な議論が必要。時間がかかったとしても事業内容や事業効果に関する十分な検証を行い、事業の廃止も含む歳出改革とも言うべき見直しに取り組む」と議会で答弁されています。

この事業こそ歳出改革見直しの対象に値すると考えます。市長は、これまでの行政に、しがらみがありません。行政の継続などという言葉に縛られては、これまで通りの事業推進となってしまいます。市長もおっしゃる通り、事業の検証には一定の時間を要します。今回の埋め立て事業の工期延長に伴い、土地区画整理事業も工期延長となります。検証する時間的余裕が生まれたのです。このチャンスを逃すべきでないと考えますが、市長の見解を伺います。
当該地域は、勝海舟が日本で初めてメートル法で設計をしたと云われる神奈川台場の遺跡が在ります。一部は、個人の住宅の裏にひっそり、公園の隅、マンションの一角などに残されています。台場に向かう「二本の渡しがあるのは珍しい」と台場の保全活動に取り組んでいる方から伺い、渡しの発掘を楽しみにしておりましたが、運河を掘削しても発見には至らなかったということで、とても残念です。歴史的な遺産として残してほしいと活動している方々も居られます。今後の工事日程で台場の片鱗でも発見された場合、写真を撮るだけの記録保存ではなく、そのまま現物を保存することを要望し質問を終わります。

山中市長:市第147号議案についてご質問をいただきました。東高島駅北地区都市区画整理事業の検証をすべきとのことですが、本地区では横浜駅やみなとみらい21地区に近接した立地の特性を生かし、都心臨海部にふさわしい都市機能の再編や、土地の高度利用を図るため、土地区画整理事業によって道路や宅地造成などの基盤整備を進めております。引き続き都心臨海部の新たな拠点作りに向けて、事業者である組合の皆様をしっかり支援し、事業を進めてまいります。以上、宇佐美議員のご質問にご答弁申し上げました。