議会での質問・討論(詳細)
2010年12月3日

「議案関連質問」 白井まさ子議員(2010.12.3)

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

白井議員:私は、日本共産党を代表して、質問します。

横浜Y150の赤字の責任はどうするのか

 はじめに、市第82号議案、市第119号議案は、横浜開港150周年記念イベントの収支不足についての調停に本市が合意し、補助金として12億6,600万円を一般会計補正予算で財団法人の協会に支出するものです。
 閉会式で林市長は、「横浜の未来を輝かせる夢の種をまき、育てていただいた。大いに盛り上がりました」と述べられたと聞いています。事業全体をばら色に描かれましたが、学校から教育プログラムに参加をした小学生から、「はじまりの森の開港の歴史の展示の張りぼては、見ててはずかしかった。小学校の美術部の作品展のほうが断然立派だった」という声もききました。
 私たちは、計画段階から、お祝いは喜ばしいこととしながら、財政調整基金を取り崩してまで多額の市税を投入することには反対し、入場者数の不振がわかった時点で、不振を認め、原因を分析し打開策を講ずるべきとも主張してきました。また、赤字のツケを市民に押し付けるべきではないと、前市長に求めてきました。これまで多額な市税投入に加え、さらに今回12億6,600万円も市民にツケを回すことは「心苦しいがご理解いただきたい」と答弁されましたけれども、そもそも財政調整基金を取り崩して事業に当てたことについては、市長はどうお考えか、伺います。
 市長は11月19日の会見で「全体的には私がしっかり責任をとる」とおっしゃいました。中田前市長、野田前副市長の任期途中の退職での無責任さ、またそれに関わった責任ある方々に、応分、相応の金銭的負担を求めてこそ、真にある責任ある道ではないでしょうか。何らかの対応が必要ではないでしょうか。伺います。

林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
 市第82号議案および市第119号議案について、ご質問いただきました。
 財政調整基金を取り崩して事業にあてたことについての考え方ですが、150周年関連事業が21年度までの時限的な事業であったことのほか、毎年度の歳入の伸びが見込めない中で、19年度末の財政調整基金残高は約250億円であり、市税等を使う他の事業に影響を及ぼすことがないよう、臨時的に基金を取り崩したものでございます。
 市民の意見に対する対応についてですが、今回の特定調停では、調停委員会からも個々の責任を特定することでは困難であり、責任論では問題の解決は難しいとの見解が示されております。実際に多くの要因が複雑に絡み合い、多数の人が関わった事業の中で、特定の個人に負担を求めることは適切でないと考えております。市政を預かるもの全員が、今回の案件を教訓にして、深く胸に刻んで、今後の市政運営に生かしていくことで責任を果たしてまいりたいと考えております。

市内業者が指定管理者に参入しやすい仕組みを

白井議員:次に、市第83号議案から115号議案、指定管理者の指定についてです。
 今回の指定にあたり、新規指定4施設中2施設が、また、現指定管理者と変更となる28施設のうち12施設が、本社を市外におく民間企業を指定候補としています。その12施設のうち11施設は、これまで市内事業者が運営していました。今回の選定では、結果として、市内事業者が、仕事の場を失うことになります。これは、地域経済と地域雇用にも痛手です。市外業者の選定では市税収入上からもマイナス要因です。
 本市中期4カ年計画原案では、4月施行の中小企業振興基本条例に基づき、市内中小企業の受注機会増大の施策実施を図る必要性を謳っています。今回の選定にあたり、これに逆行する事例が多数ありますが、中小企業振興基本条例の趣旨をどのように反映させたのか、伺います。
 本市の補助事業は原則市内企業に限定されたことや、共創推進事業本部がホームページで、指定管理者制度について市内企業やNPOの参入を呼びかけていることにとどまらず、指定管理者制度運用ガイドラインに、市内に主たる事業所や本社を所有する法人事業者が参入しやすい仕組みとして、選定時に市内事業者に加点するなどの基準設定をする方向で見直すべきではないでしょうか。
 また、市外事業者を指定する場合は、市内事業者への優先発注、市民雇用の義務付けなど、市内経済の活性化、地域雇用の充実に繋がる内容を選定・契約手続きに定める必要があると思いますが、どうか伺います。

林市長:市第83号議案から市第115号議案の指定管理者の指定について、ご質問いただきました。
 中小企業振興基本条例の趣旨の反映についてですが、指定管理者の選定にあたっては、条例の趣旨を踏まえ、個々の施設の特性に合わせて、市内事業者がより参入しやすい環境作りに取り組んでいます。
 具体的には、市内企業を主な対象とした指定管理者制度に関する窓口を新たに設けたり、情報提供や制度に関する相談を受けるとともに、地区センターのような身近な施設では、地域特性をふまえた提案を評価し、選定するなど、地域の状況を熟知する市内事業者の参入機会の拡大に努めてきました。
 市内事業者の参入促進に向けたガイドラインの見直しについてですが、現状では指定管理者制度を導入している約900施設の99%で市内事業者が指定管理者となっており、地域の活性化を進めるという観点から望ましい状況であるものと認識しています。指定管理者制度運用ガイドラインについては、2期目の指定が終了した段階で改めて課題の整理等を行い、必要に応じて見直しを検討してまいります。
 市民の雇用や市内企業の受注機会の拡大に向けた工夫についてでございますが、指定管理者における職員の雇用や契約等は、基本的には各指定管理者が判断すべき事項ですが、現在の厳しい経済状況においては、市民の雇用の場の確保や市内事業の受注機会の拡大は重要な課題と認識していますので、その趣旨について指定管理者にもご理解をいただくよう、協力を求めています。

市大を劣化させる中期目標は抜本的な見直しを

白井議員:続いて、市第117号議案、公立大学法人横浜市立大学の中期目標についてです。
 市大が2005年に独立行政法人化され、第1期中期目標期間の6年が経過し、今回第2期中期目標が策定されました。第1期中期目標と第2期は一部手直しはありますが大差はありません。
 しかし、大学の現状はその存在意義が根底から脅かされるほど深刻で危機的です。大学が、2009年に実施した学生生活アンケートに寄せられた自由意見には、「学生切捨ての大学改革だ」「こんな大学と知っていたらわざわざ来ませんでした。私の人生最大の失敗でした」「高校生には絶対に横浜市大だけはやめろと言っている」、こういう事態です。また、国際総合科学部では文科省からの委託研究獲得実績がないことから、他大学の研究者や経営者からの評価も下がっています。教員・職員からも「大学の体をなしていない」との声も聞かれます。中期目標に大差がないということは、PDCAにもとづいての事態の直視をしていないからです。現場主義を標榜しておられる市長ですから、大学の理事長など執行部任せではなく、自ら点検・実態把握をすべきと思いますが、どうか伺います。
 この間、教授・准教授など教員の流出が続きました。国際総合科学部では5年間で90名が転出し、採用されたのが66名ですから、24名減っています。そのうち教授は37名の流出です。初年度82名のうち半数近くが市大を去っています。学生から、「すばらしいと思い学んだ教員が数名やめ、他の大学へいってしまった」「ゼミの教員が他大学へ移り、やりたい研究が出来なくなり困った」など悲痛な声です。アンケートでは、大学を選んだ理由のうち、「指導を受けたい教員がいたから、教育内容に惹かれたから」が4年前の26%から11.8%へと激減しています。法人化後、入学志願者が急落し、低迷するのも当然です。また、4割の学生が「カリキュラムについて不満」と回答し、満足派の3割を上回っています。
 教員流出の要因は、教員自ら大学組織のあり方を問題視し、「見切りをつけた」という声を聞いているとともに、国内の大学でも例のない全員任期制に対する不満・不安があります。他大学では任期制が一部のポストに限定される中、市大では原則として全教員に3年または5年の任期制が導入され、雇用が継続されるかどうかは評価次第という不安定雇用です。これでは、教員にとっても学生にとっても、継続して取り組むべき研究に支障が出るのは当然です。教員の全員任期制はやめるべきと思いますが、どうか伺います。
 議会でたびたび取り上げてきました「プラクティカル・イングリッシュ制度」についてです。留学条件の基準となるTOIFLで500点が3年次の進級要件になっています。この制度についてはアンケートの自由記述には、「PEの指導内容を改めてほしかった。中学で習ったような基礎的な部分からやるのは無駄だと感じた」「やりたいことがやれず、生徒の個性をつぶす。早くやめればいい」など、この制度の必要性と効用を疑い、廃止を求める声が多数あります。先に述べたように教育内容にも不満が鬱積している中で、学生のための大学であるとしたら、こうした声に応え、PEの廃止を含めた抜本的な見直しが必要と思いますが、どうでしょうか。
 本市からの運営交付金は、2005年度が142億円でしたが、2010年度は112億円まで削減されました。この金額には医学部定員20人増員のための加算も含まれていますから、それ以外の正味の金額は、さらに少なくなっているわけです。国では、国立大学運営交付金5%削減の方向がだされています。国立大学の法人化以降6年間で、教育研究費が半減したなど、授業が満足に出来ない事態が報告されています。国に追随して運営交付金を削減すれば、市大の教育研究内容がますます低下し、学生負担増にもつながります。市の運営交付金をこれ以上削減することは絶対避けるべきですが、この場でその決意を表明していただきたいと思います。削減路線は見直す必要があります。いかがでしょうか。
 市民の共有財産である横浜市立大学を発展させ、市民の中に根付いた存在とするため、是非、市長自ら学生生活アンケートに目をとおすなど、当事者の声をよく聞いて、現状把握に努め、大学のあり方を根本的に見直し、目標を策定し直すべきと考えますがどうか伺って、始めの質問をおわります。

林市長:市第117号議案について、ご質問いただきました。
 学生、教員、職員の声を聞いて、現状把握に努めるべきというご意見についてですが、外部有識者で構成される法人評価委員会から、法人の業務を継続させる必要性、組織のあり方および業務の全般にわたり評価を受け、法人がひきつづきその業務を継続することを適当と認めると評価されています。
 第2期中期目標の策定にあたっては、日頃から学生、教員、職員の現状を把握している法人と意見交換をしながら、行いました。また、中間案については本年8月に幅広く市民のみなさまからの意見募集を行い、いただいたご意見も参考にして、最終案を策定いたしました。
 任期制についてですが、第1期中期目標では、本市から努力すれば報われるような人事制度の構築という目標を提示し、法人は新
たな人事制度のひとつとして、任期制を導入いたしました。これについては、昨年度学校教育法に基づく大学評価、学位授与機構による評価を受け、他の人事制度とあわせて、教員組織の活動をより活性化するための適切な措置が講じられていると評価されております。教員、職員の能力、モチベーションの向上を図ることは重要でありますので、今後とも人事制度をよりいっそう効果的に運用していただくよう、法人に求めてまいります。
 プラクティカル・イングリッシュの単位取得についてですが、市大からは学生が国際社会で活躍できる基礎となる幅広い教養を身につけるために必要な英語によるコミュニケーション能力として、TOIFL500点相当が最低達成水準であると聞いております。こうした大学の教育方針につきましては、大学自身の取り組みを見守りたいと思います。
 運営交付金は削減すべきでないというご意見についてですが、市大は独立行政法人として本市からの運営交付金の他、学生からの授業料、病院における医療収入、国等からの研究費などさまざまな収入により、自主自律的に運営されております。本市といたしましても、引き続き中期目標を達成するために必要な経費を支援してまいります。
 大学のあり方などについてのご指摘ですが、市大は公立大学法人化後、学部、大学院の再編をすすめたことや、国際的な視野を持った人材育成の観点から、英語教育の充実といった特徴ある取り組みを進めるなど、様々な工夫をし、大学運営を進めています。また新たに大学内に地域貢献センターを設立して、市民の生活に密着した課題解決に向けた知的資源の還元を進めています。さらに、医学部定員増などにより、地域医療の人材育成の強化も図っているところでございます。このような市大の様々な取り組みは、本市が有する大学として大きな役割を果たしていると考えておりまして、第2期中期目標においても、これまでと同様に公立大学法人としてその使命を果たしてもらいたいと考えています。
 以上、白井議員の質問にご答弁申し上げました。

(第2質問)
白井議員:市大中期目標についてですけれども、ぜひ関係者から意見を聞いていただきたいと思います。教員組合や市従組合大学支部からの要望、そして学生生活アンケートでの意見や要望など、ぜひ林市長の目で確認していただいて、目や耳で確認していただいて、責任をもった対応をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。伺います。

林市長:白井先生、貴重なご意見ありがとうございました。私も現場主義でやっておりますので、そのご意見承りました。ただ、第2期中期目標の策定にあたっては、日頃から学生、教員、職員の現状を把握している法人と私どもも意見交換をしておりますので、そのへんはご理解を賜りたいと思います。


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