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■「一般質問」 関美恵子議員(2010.12.8)

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

関議員:私は、日本共産党を代表し、介護保険、敬老パス、自由社版歴史教科書について、林市長及び今田教育委員長に質問いたします。

「介護の社会化」をうたった介護保険制度だが

 介護保険がスタートし、10年が経過しました。今年9月の内閣府の世論調査によると、4人のうち3人までが、自分が要介護者になることに「不安」をもち、その理由として7割強の人が「家族に肉体的精神的負担をかける」次いで6割の人が「介護費用の負担が大きい」ことをあげています。
 わが市議団が実施中のアンケートにも「76歳の夫を介護している。保険外で人に世話になると金額が高く、認知症でこの先、どの位かかるか解らない。保険料も上がる話もある」等の不安の声が多くよせられています。
そもそも介護保険は「介護の社会化」をうたい導入されましたが、家族への負担はむしろ増していると思います。介護の現状に対する市長の認識を伺います。

林市長:関議員のご質問にお答え申し上げます。介護保険についてご質問いただきました。
 介護の現状についての認識ですが、介護保険制度は家族の介護の負担を軽くし、社会全体で支援するために創設されました。サービスの利用者数はスタート時の約2.7倍となり、また平成19年度に行った高齢者実態調査では、約6割の方が介護をする家族の負担が軽くなったと答えています。このように、介護保険制度は、高齢者を支える制度として定着し、家族の負担はある程度軽減されたと考えています。
 しかし、その一方で、認知症高齢者や孤立化した1人暮らし、高齢者の増加などの課題も深刻化しており、これらに適切に対応していくことが重要であると認識しています。

重い負担でサービスの利用抑制

関議員:サービスの時間や回数を減らさず、介護度に見合ったサービスを受けてはじめて要介護者や家族も安心して生活を送ることができると考えます。ところが、本市の2009年度在宅サービスにおける限度額の利用割合は5割弱と低いレベルにとどまっています。重い負担によるサービス抑制が考えられますが、その理由は何か伺います。

林市長:在宅サービスにおける支給限度額に対する利用割合についてですが、支給限度額は利用者の要介護状態に対応できるように、介護保険で利用できるサービス量の範囲を設定したものです。サービスの利用に当たっては、ケアマネージャーが本人や家族の意向を聞き、心身の状況をふまえたケアプランを作成しており、この中で必要なサービスが提供されているものと考えています。なお、介護保険制度では、低所得者の低所得の方でもサービスが利用できるよう、月々の利用者負担に上限を定めているほか、本市でも独自に一定の条件にあてはなる負担を軽減するなどの配慮をしております。

認知症等への軽度判定が大問題に

関議員:新介護認定は、認知症等への軽度判定が大問題になって、手直しされた経緯があり、新介護認定での審査委員の役割は重要です。グループホームに入所したことで落ち着き、軽度の判定になり、ホームを出なくてはならなくなったのですが、審査委員の意見で重度変更した話を聞いています。2009年度の認定者は10万9357人ですが、30日以上要した認定が10万3258件と異常に多くなっています。理由は何か、また、審査委員を増やすなど審査委員の声を反映した改善を求めますが、あわせて伺います。

林市長:要介護認定までに日数がかかっている理由ですが、申請者数が増えていることや審査判定に必要な主治医意見書の入手の遅れなどがあげられます。
 次に、認定までの日数を短縮する改善策ですが、申請者数の増加に対応するための方策として、部会数を増やすなどの検討を進めるほか、医療機関に意見書の作成を早めることの協力をお願いするなど、必要な対策をとっていきます。なお、要介護認定は、申請時にさかのぼって効力が発生することから、認定結果が出る前であっても暫定ケアプランを作成し、介護サービスを利用することは可能となっています。

介護人材確保のための支援を引き続き実施すべき

関議員:本市の介護人材不足を重視し、市として人材確保、処遇改善、人材育成、介護福祉士やヘルパー資格取得への支援を行っていますが、国の補正予算による時限措置で処遇改善などは切れます。引き続き実施すべきですが、伺います。

林市長:市独自の人材確保策などを継続的に実施するべきとのことですが、本市では介護人材を安定的に確保するため、これまで新たな担い手の育成や介護職員の処遇改善など様々な支援に取り組んできました。今後も国の動向を見極めつつ、引き続き必要な支援を検討していきます。

24時間対応集合住宅等総合支援事業とは

関議員:本市が立ち上げる予定の24時間対応集合住宅等総合支援事業は、1人暮らしや高齢のみ世帯への支援、孤独死を発生させない支援として注目するところです。夜間対応型訪問介護を昼間まで拡大したもののようですが、事業の内容、いつからやるのか、人材確保の見通しはあるのか伺います。また、高齢者の住宅に関する施策として、建築局等と横断的プロジェクトを立ち上げ、「横浜市高齢者居住安定確保計画」を策定するとのことですが、今後の見通しはどうか伺います。

林市長:集合住宅等相互支援事業についてですが、集合住宅等にお住まいの要介護高齢者などの孤立の解消や、日常生活を支援するサービス提供の仕組みづくりを通して、効果的なサービス提供のあり方を検証することをねらいとしています。具体的には、24時間365日対応できる窓口を設置し、電話や専用機器による相談の受付、介護保険外サービスを含む必要なサービスのコーディネートおよび提供を行い、総合的な生活支援を行います。また、この事業に必要な人材確保についてですが、本事業は、市内1か所でモデル事業として行うものであり、すでに人材は確保されております。
 横浜市高齢者居住安定確保計画についてですが、この計画は住宅政策と福祉政策が連携して、高齢者に対する賃貸住宅および老人ホームの供給目的、供給目標などを定めるものです。現在、関係局の課長をメンバーとした検討委員会を設置し、検討を始めており、23年度中の策定を目指しています。

公費負担割合の引き上げを

関議員:内閣府の世論調査でも公費負担割合の引き上げを求める回答が43%と、トップです。ところが、国の社会保障審議会介護部会の意見書は、公費負担割合の引き上げを見送り、高所得者の自己負担割合を2割に引き上げや軽度者に対する利用料負担増もちらつかせています、これでは、介護への不安は高まる一方です。そこで、公費負担割合の引き上げ等財政支援を国に要望すべきですが伺います。

林市長:国に対して財政支援を要望すべきとのご意見についてですが、高齢化の進展に伴い、介護や支援を要する人が増え、介護サービスに係る費用も年々増大していることから、今後も介護保険料が上昇することが見込まれています。このため、保険料上昇を抑え、負担感を軽減する意味からも、国に対して介護職員、処遇改善交付金を廃止し、介護報酬に上乗せするのではなく、個々において継続することや、低所得者への負担軽減策を拡充することなどを要望しています。

高齢者の社会参加に寄与している敬老パス

関議員:次に、敬老パスについて伺います。
 この事業は、70歳以上の高齢者の社会参加を支援する福祉の制度として、今や32万7000人が利用するまでになっています。1人が2.9種類の交通機関を乗り継ぎ、市営バス、神奈中バス、市営地下鉄は日常的に利用されていることが、昨年の市の2万人のモニター実施であきらかになっています。敬老パスが高齢者の社会参加に寄与している状況をどう評価しているのか、伺います。

林市長:敬老特別乗車証交付事業について、ご質問いただきました。
 敬老パスによる高齢者の社会参加の状況に評価についてですが、19年度に行った市民アンケートによれば、利用目的として日常の買い物、通院、趣味、レジャー、家族や友人との交流が上位となっています。このことから、敬老パスは高齢者の社会参加だけではなく、広く外出の支援に役立っているものと考えています。

市費投入80億円にこだわるのはなぜか

関議員:80億円が市費投入の抑制ラインとされていますが、明確な根拠はありません。また、3万人アンケートには「多額の市費を投入」との設問があり、市民から「多額かどうか決めるのは市民だ」と市長へ抗議があったようです。特別養護老人ホーム1人当りの市費負担は24万8000円ですが、敬老パス1枚あたりは3万900円です。敬老パスを活用し特養を必要としない百万人の元気高齢者づくりを重視し、敬老パスの優先順位をあげ市費投入を増額すべきではありませんか。それとも750億円の収支不足解消の対象として80億円にこだわる考えか伺います。

林市長:市費負担についてですが、市税収入の増加が見込めないなかでは、80億円というものがひとつの目安になると考えています。具体的には今後検討を進めるなかで議論していきます。

交通事業者に協力をあおげ

関議員:事業主とは、毎年、単価や回数をめぐり、厳しいやりとりがあると聞いています。各社への助成金支出額が最も多い横浜市営交通には、2009年度市営バスへ36億5000万円、市営地下鉄へ17億4000万円が助成されています。安定した収入源として各社にとっては貴重だとは思いますが、市の財政状況が厳しい現在、事業主に協力してもらうことも考えるべきでないのか伺います。
林市長:事業者に協力してもらえる考えも必要とのご意見ですが、これまでも交通事業者には高齢者福祉の充実にご理解をいただき、事業費の積算にあたって単価設定などの便でご協力をいただいています。今後とも、厳しい経営状況とは思いますが、可能な協力をお願いしていきます。

敬老パスの利用者負担は現状維持を

関議員:敬老パスの負担増が敬老パスの利用抑制になることが、この間の負担増後の交付実績で明らかです。現在、利用者全体の約半数を占める非課税者は3200円の負担ですが、東京都の1000円と比べても高く設定されています。少ない年金がたよりの高齢者にとって負担増は耐え難いものになります。「安心してどこへも出かけられる敬老パスはありがたい」という声をたくさん聞いています。高齢者を励まし期待に応えるためにも現状維持をはかるべきですが伺います。
 3万人アンケートは、制度見直しアンケートにもかかわらず、市費負担の側面のみ強調され、制度の説明になっていません。正確さに欠けるアンケートをもとにした制度の見直しは許されません。

林市長:現状維持が重要であるとのご意見についてですが、今後高齢化の進展に伴い、対象者の増加が続くなかで、現行制度のままでは事業の運営が困難な状況であり、限られた財源で時速可能な制度としていくためには、見直しが必要であると考えております。
 残りの質問については、教育委員長よりご答弁させていただきます。

間違いだらけの自由社版中学歴史教科書でいいのか

関議員:次に、自由社版歴史教科書についてです。
 7月28日、キトラ古墳等の壁画写真の裏焼き6枚の「訂正申請」が自由社より文科省に出され9月6日に承認され、新たに裏焼き1枚の「訂正申請」が追加申請され10月15日に承認がおり、各学校への「訂正」のリーフレットは11月11日に配送されています。その後、11月16日に「訂正とお詫び」が自由社より今田教育委員長に届けられたことで「訂正」の事実を教育委員会として確認したわけですが、自由社版歴史教科書については教育委員会は「教育委員たちが何度も勉強を重ねてきた」とこれまで繰り返し説明してきたものです。教科書のどこをみていたのか、余りに杜撰ですが伺います。
 訂正内容の学校への通知は発行者が行いますが、その通知のやり方について教育委員会として発行者に求めてはならない規定はありません。自由社版教科書採択の折「教育委員会の権限と責任において公正適正に採択した」と市民に豪語されたわけですが、訂正が明らかになった今、責任ある説明と教育委員会として自由社に教科書の回収・交換を求めるなどの対応を市民に示すべきでないのか、伺います。
 自由社版歴史教科書の間違いは写真だけではありません。専門家による史実や記述の誤りがいくつも指摘されていることです。例えば、縄文時代の集落の生活では考古学的根拠のない想像図になっています。また、南蛮貿易の頃の銀は金と同じか、金以上の価値をもっていたとの記述は、16世紀頃は、金1が銀11から12に相当し、専門の歴史家なら絶対に書かない間違いなどです。
一字一句でも間違ったことがあってはならない。生徒に教えてはならない。それが教科書だと思います。「内容の誤り」等について教育委員会の責任で確認し自由社に訂正を求めるべきと考えますが、伺います。
 重大な間違いと同時に、この教科書が「近代日本の戦争の肯定」「極端な天皇中心主義」「偏狭な日本中心主義」というゆがんだ歴史観に貫かれ、生徒の歴史認識に与える影響は深刻です。改めてこの教科書の採択を見直すことを強く求め、質問を終わります。 

今田教育委員会委員長:自由社版歴史教科書について、いくつかご質問をいただきました。
 教科書採択の検討結果でございますが、申し上げるまでもなく、この教科書は文部科学大臣の諮問機関である国の教科用図書検定調査審議会での専門的かつ学術的な審議および文部科学省の教科書調査官による調査を経て、検定を通ったもので、学習指導要領の主旨をふまえたものでございます。
 今回のような写真の印刷ミスがあったことは誠に残念ではございますが、このような軽易なミスについては本市で採択している他の教科書にもあり、その旨文部省にも報告されております。自由社におきましては、法令に基づき、自らの責任において対応したものと理解をいたしております。
 今後の対応についてですが、国の定めた教科用図書検定規則では、検定を経た図書について、誤記、誤植、脱字等があることを発見したときは、発行者が文部科学大臣の承認を受け、必要な訂正を行わなければならないとされております。また、訂正の内容につきましては、通知につきましては、同規則実施細則の規定により発行者が行い、周知に努めなければならないとされております。今回はそれをふまえ、自由社より写真の印刷ミスを訂正する資料が教科書を使用している学校に全生徒分が送付されております。
写真の印刷ミスについての訂正を求める云々についてでございますが、さきほどご説明申し上げましたとおり、検定を経た教科書におけるこのような軽易な訂正につきましては、法令に基づき、発行者が文部科学大臣との間で行うこととされております。従いまして、特に教育委員会として発行者に訂正を求める必要はないものと考えております。
 なお、この教科書について厳しいご指摘がございましたが、ご承知のとおり、この教科書は昭和18年の、平成18年の12月に教育基本法が改正されて以降、国の検定を合格した唯一の教科書であり、他の教科書と読み比べても日本文化の取扱量も多く、質も優れており、また歴史的事象の説明等バランスがとれており、本市の教科書採択の基本方針に照らして横浜の子どもたちが学ぶにふさわしいと判断し、一部の地区において採用されたものでございます。
 軽易な印刷のミスがあったことは残念ではございますが、このことと教科書の中身、内容を通じた全体的評価とは、これは冷静に区別して考えるものであるというふうに思っております。
 以上、ご答弁申し上げました。