議会での質問・討論(詳細)
2010年12月16日

■「反対討論」 かわじ民夫議員(2010.12.16)

 私は日本共産党を代表し、今定例会に提案された議案のうち、18件の議案と4件の請願の委員会不採択について、反対の立場から討論を行います。

開国博Y150失敗、中田前市長、市幹部職員、与党会派の責任は重大

 最初は、市第82号議案・特定調停申立事件についての調停、および市第119号議案・平成22年度横浜市一般会計補正予算の関連部分についてです。
 これらの議案は、「開国博Y150」の収支不足について、調停委員会の調停案を受け入れ、その赤字約25億7700万円のうち約半分の12億6600万円を税金で補填しようとするものです。
 開国博Y150の有料入場者が目標の500万人を大幅に下回る124万人という惨憺たる結果は、当然失敗に帰着する原因があったはずです。その原因や責任を明確にせず、早期の解決を図ろうと妥協して調停案を受け入れ、横浜市分を税金で補填することは、開国博Y150失敗の責任を市民に押し付けるもので、到底、市民の納得を得られるものではありません。
 開国博Y150失敗の最大の原因は、企画のまずさにあります。イベントの企画を請け負った博報堂JVは、契約上定められた業務を実施したとしていますが、実施設計・政策運営を行った会社として、当然失敗の責任を負うべきです。博報堂JV債務残高の負担割合を、協会と横浜市で7割、博報堂JVが3割とする調停案は、あまりにも妥当性を欠きます。
 さらに、その博報堂JVの企画に対し、全幅の信頼をすると市民に吹聴し、成功間違いなしとして、入場者増加策など適切な対応をしなかった中田宏前市長と、その市長に唯々諾々として追従してきた副市長をはじめとする市幹部職員、そして、前市長に同調して後押ししてきた与党会派の責任は重大であり、責任逃れは許されません。

学生の心が離れるばかりの横浜市大の中期目標

 次に、市第117号議案・公立大学法人横浜市立大学の中期目標についてです。
 議案は、法にもとづき、市大が2011年から2016年度までに達成すべき業務運営に関する目標を定めるものです。
 反対の理由は、まず策定過程の閉鎖性と非民主性です。法では、中期目標を定める場合は、法人の意見を聞き、当該意見に配慮しなければならないとありますが、実際には、市派遣幹部職員等を中心とした一握りの大学関係者の意見だけしか聞いていないことです。大学の活動の大半を担う一般教員やプロパー職員の意見を伝える機会がないという旨の訴えが、某準教授からわが党議員団に寄せられています。
 2点目は、法人化がもたらした現状と問題点の検証がないことです。国際総合科学部では、この5年間で教授と准教授が他大学に20人も転出しています。また、同学部の経営科学系では、受験者が5年前の1009人から今年は750人と、大きく減っています。中田前市長が「大胆な改革で生まれ変わる大学の姿勢がみられる」と絶賛した市大の改革結果が、この実態です。
大学実施の学生アンケートでは、市大を選んだ理由として「指導を受けたい教員がいたから、教育内容に魅かれたから」が、2005年の26%から2009年は11.8%へと激減。学部生のカリキュラムの満足度は、満足とやや満足を足した満足派は29.2%なのに対し、不満とやや不満の不満派は38.8%。授業内容についても、満足派19.7%に対して不満派22.2%と、いずれも不満派が満足派を大きく上回っています。市大のどこが好きでどこが嫌いかを問う設問では、「教育・研究内容・カリキュラム」を好きなところとした学生が9.5%なのに対して、嫌いなところとした学生は36.4%で、「教育・研究内容・カリキュラム」は嫌いなところの第1位です。このように、夢を抱いて入学し、学んでいる学生は、魅力にとぼしい大学と烙印を押し、極めて厳しく評価をしています。
 これらのアンケート結果から、市大の教育水準が、受験生・在校生の期待や要望と乖離していることは歴然です。今般の中期目標は、第1期中期目標の内容と大差なく、これではますます受験生と在学生の心は市大から離れるばかりです。
 3点目は、前市長が強権的にすすめた改革路線を踏襲していることです。首都大をまねたとされる教員全員任期制の押し付けは、教員の大量流出の要因ともいわれており、導入根拠を示せない制度は撤廃すべきです。
 また、大学が目指して強調している、英語の外部試験トイフル500点以上を国際総合科学部3年への進級条件とするプラティカル・イングリシュ制度に対し、効果・効用が無意味だ、授業の質が悪すぎるなど、怒りや疑問視する向きも多く、不評で、よしとする声は皆無です。教育効果が実感されない制度にいつまでも固執するのではなく、廃止を大学側に求めるべきです。

特定の道徳観を押し付ける「心のノート」はやめよ

 次は、市第119号議案・平成22年度横浜市一般会計など計16件の補正予算についてです。
 最初は、道徳教育の副教材「心のノート」の予算についてです。
 「心のノート」は、道徳教育の副教材として国が作成し配付しているもので、官製教材で特定の道徳観を押し付けるものとして導入時から問題になっています。
 国は、このほど事業仕分けで、無駄なものとして「心のノート」の予算を縮減し、直接配付の中止を決めました。しかし、「道徳教育総合支援事業」の中で、「心のノート」など教材活用の事業提案が認められた教育委員会には、国費をつけるとし、本市教育委員会は手をあげてこの事業を受託しました。本予算は、「心のノート」を本市が印刷し、各校に配布するもので、民間会社の教材でも可なのに、あえて「心のノート」を選んだものです。
 国の委託事業であれば、学校での使用実態や効果の報告が当然求められます。委託事業を口実に、子ども達に特定の道徳観を押し付けることになります。そもそも教材は、学校の特色や子どもの実態や効果に合わせて選定するべきです。道徳教育は、憲法に基づき、基本的人権の尊重を中心にすえ、子どもたちが自らモラルを形成できるようにすべきもので、予算案は認められません。

公務員給与の引き下げは景気や地域経済の停滞

 次は、人件費の引き下げに関してです。
 予算案は、国の人事院勧告に準じた本市人事委員会の勧告に従って、公民給与の格差を解消するとして本市職員の給与を引き下げようとするものです。
 民間の時勢を反映したとはいえ、公務員給与の引き下げは、中小企業や地場産業の給与にも影響を与え、景気や地域経済を停滞させるものと、有識者から指摘されています。内需後退を引き起こし、景気後退につながる職員給与の引き下げはやめるべきです。

子どもの医療費無料化の拡充で子育て支援を

 次は、請願第29号・子どもの医療費無料化の拡充等についてです。
  「横浜市民生活白書2009」によれば、理想とする子どもの数は3人としながら、実際に持つつもりの数は2人としています。その理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が最も高く、32%にもなっています。経済的負担の大きさが少子化の主な原因の一つだということではありませんか。
 お金の心配をせずに必要な医療が受けられる小児医療費助成制度の拡充は、子育て支援として国や自治体の当然の役割であり、県下でも最低レベルにある本市においてはとりわけ急務です。委員会で理由も述べずに不採択にすることは、議会として許されるものではありません。

敬老パス制度の精神に反する利用者負担増はやめよ

 次に、請願第32号・敬老特別乗車証制度の現状維持についてです。
 請願者は、「高齢化に伴い、高齢者の健康維持・介護予防・社会参加が大きな問題になっているが、敬老パスは、これらの克服に大きな役割を果たしている」と述べています。これらの効果は健康福祉局も認めています。高齢者にさらなる負担を強いることは、交付率の低下につながり、高齢者の社会参加を促し、健康の増進と医療費の抑制を目的とした敬老パス制度の精神に反するものです。
委員会で、高齢者の生活実態を一顧だにせず、理由も述べず不採択にすることは、市民の厳しい批判は免れません。

法律違反の中学校給食未実施を議会は容認するのか

 次は、請願第37号・中学校給食の実現と小学校給食の直営存続を求めたものについてです。
 学校給食法第4条は「義務教育諸学校の設置者は、当該義務教育諸学校において学校給食が実施されるようつとめなければならない」とあり、義務教育学校の設置者つまり地方自治体は、法で学校給食を実施する努力が義務づけられています。しかし本市は中学校でミルク給食さえも行っておらず、実施の努力は感じ得ず、法律に違反していることは明らかです。
 議会は、行政を監視する機関です。日本最大の政令市である横浜市の法律違反を議会が容認しているとすれば、議会の怠慢・恥です。
 学校給食法では、給食という体験を通じて子ども達が生きる原点を学ぶものと学校給食の教育の大切さを強調していますが、昼食を生徒の自己責任とすることは、教育の放棄ではないですか。近年、偏った栄養摂取、朝食欠食など食生活の乱れや肥満、痩身傾向など、子どもの「食」を取り巻く問題が深刻化しているだけに、給食の役割はますます重要になっており、法の精神からも、当然採択されるべきものです。

学童保育の充実を求める37万5464人の思いに応えよ

 最後は、請願第38号・学童保育の運営費の増額など学童保育の拡充を求めたものについてです。本請願は、全市の指導員や保護者など学童クラブ関係者が一丸となって取り組み、最終的には37万5464筆に到達しています。
 「『学童クラブ充実を』声届かず」「34万人署名の請願、横浜市議会の不採択」「審議十数分、意見は一人」。これは子ども青少年・教育常任委員会における本請願の審査状況を報じた12月15日付け朝日新聞の見出しです。新聞は、「終了後、反対した自民党市議は『うちにも相談にきてほしいといっているんだが』。公明市議は『今のやり方では賛成できない』。民主市議は『学童中心の政策に切り替えろという要望はどうか』」と、報じています。
 行政区等、ブロックごとで取り組まれる市会議員と学童連絡協議会との懇談会では、要求への賛意を示す議員も多いと聞きます。ブロックごとの懇談の内容は学童連絡協議会の総会議案書に盛り込まれており、各会派に相談に行っていないとは思えません。
 本請願は子ども達の健やかな放課後と保護者の就労を保障するものであり、児童福祉法で「国と地方自治体が児童の育成に責任を負う」と位置付けられている点や、保護者が払う平均保育料は全国平均の2倍にもなっている現状を改善することから見ても、当然採択すべきものです。
 以上、私の発言を終わります。


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