議会での質問・討論(詳細)
2022年6月7日

討論 宇佐美さやか 2022.6.7               

財政ビジョン策定について

日本共産党を代表し、今定例会に上程された議案3件と委員会で不採択とされた請願に対して討論を行います。

まずはじめに、市第1号議案 横浜市の持続可能な発展に向けた財政ビジョンについてです。議案に対しては、賛成します。しかし5月27日、全委員参加で特別委員会が開かれ、市長や関係局長への一問一答の質疑が行われた際、党市議団は「これまでの行政運営のやり方を切り替えなければ横浜市の財政状況は改善しない」と厳しく指摘せざるをえませんでした。本市は、川崎・京都・大阪・神戸・名古屋の政令市と比べて、1人当たりの社会保障費は低く、大型公共事業などの投資的経費が高いことが財政ビジョンのデータ編で明らかになったのですから、財政の議論だけを先行させるのではなく、政策と一体で「公共性」を軸に考え議論すべきとも指摘しました。また、今回の財政ビジョンを策定(さくてい)して、改めて公約実現にどうつなげていくのか市長に質問したところ「市民の皆さんのニーズや新しい政策課題に対してしっかり対応していく為には、現在の硬直化した歳出構造を転換した上で、政策を展開していく必要がある。財政ビジョンに基づき、歳入歳出両面の取組を進める中で、施策の財源を確保していく」と答弁されました。

党市議団が今、実施している市民要望アンケートでは、20代~40代の子育て世帯の方々から「全員制の中学校給食の実施」と「3つのゼロ」のうち、小児医療費、出産費用のゼロに対する期待が多く寄せられています。横浜で子育てしている方々が、本当に安心して子育てできる横浜に変えていくためには、今のような財政状況に陥った検証結果を踏まえて、同じ過ちを繰り返さないようにしていくことが、当然必要です。

明石市は、子ども部門の予算を10年間かけて2倍にしています。その財源を生み出すため、土木費の136億円を半減、さらに公債費は約1割減としました。そして、所得制限なし、自己負担なしの5つのゼロを実現しました。その内容は、医療費、高校生まで無料、中学生の給食費完全無料、第2子以降の保育料完全無料、遊び場は親子とも利用料無料、おむつは満1歳まで無料と、子育て世帯にとっては、実に羨ましい政策が並んでいます。明石市は、子育て世帯の流入が増えています。明石市に倣えば、市長の目指す横浜市に近づくのではありませんか。市長の重点公約である、全員制の中学校給食は、市の試算によればミックス方式で年間経費55億円、3つのゼロは、104億円で合わせて、159億円が毎年新たに必要と、市が試算しています。市長は、削るべきところがどこなのかをもう理解しておられると思います。使い道を変えるしかないということを再度申し上げます。

そして、ビジョンで示された3つのリスク「人口減少・少子高齢化、大規模災害、気候変動」は多くの自治体と共通している課題だということで「国への積極的な働きかけを」と市長に求めました。市長は「国と地方が共に取組むべき課題である。こうした課題が深刻化する中で、国においてより充実した制度の構築や、早期構築、財源の確保に責任を持って取組む必要がある。引き続き、市独自の要望や、指定都市市長会の要望の機会を通じて、国への継続的な要望を行う」と答弁されました。出産費用一時金の引き上げは、国においても議論が始まろうとしています。6月4日報道された厚労省の調査では、2021年の出生数は統計開始以来過去最少の約81万1千人です。国の対策は成果につながらず、抜本的な見直しは待ったなしです。国に対して、しっかり要望していくことを求めます。

「横浜市営交通審議会」の設置について

次は、交第1号議案 横浜市交通事業の設置等に関する条例の一部改正についてです。この議案は、審議会を設置するために新たな条文を加えるというものです。この審議会で審議される内容は「管理者の権限に属する事項で、市営交通の経営に関する助言及び提言」、「効率的で中長期的な視点に基づく経営基盤の強化策」、「その他の市営交通の経営改善に資すること」とし、それぞれ交通事業や公営企業の経営に精通した専門家、交通施策等の学識者、企業経営者、公認会計士などから構成される委員が揃い開かれることになると聞いています。

金沢区の並木地区では、昨年3月まで並木地域から金沢区役所まで行かれたバスが、4月に運行廃止となりました。並木地区でバスを利用されていた住民のみなさんが廃止された影響を調べ、バス路線の復活を求め、並木1丁目全世帯約(4000戸を対象に署名運動を行い、5月10日、2,707筆が交通局に提出されました。この大規模団地は、横浜市の6大事業である金沢地先埋立事業として開発された団地です。市が整備した団地から区役所までの移動手段を奪うことはあってはならないことです。

高齢化により免許を返納された方々にとってバスは、通院や買い物に無くてはならない移動手段です。市民の移動の権利を今後どう守るのかを主眼として、市営交通の経営の安定策を検討することは必要ですが、新型コロナウイルス感染症の収束も見通せないなかで1年に5回程度開く審議会で、中長期的な経営見通しを立てるとなると、それは拙速だと言わなければなりません。議案には、賛成しますが、値上げ前提、路線の廃止など合理化ありきの議論としないこと、審議会は、オープンとするだけにとどまらず、市民の意見を広く聞くことを強く要望します。

「横浜BUNTAI」(旧横浜文化体育館)の利用料金について反対討論

次は、市第7号議案 横浜市スポーツ施設条例の一部改正についてです。

新たに整備される横浜BUNTAIは、市民利用施設であるにも関わらず、市民利用料金設定の仕方が興行利用を基準に設定されていることは、問題です。既に供用開始している横浜武道館の料金設定方針は、旧横浜文化体育館の料金を基準として、物価指数を勘案して設定されていることに対し、新しいBUNTAIの市民利用料金は、興行利用料金の上限を設定しその1割とするものです。議案関連質疑で大久保副市長は「市民の皆様が利用しやすい料金に設定してまいります」と答弁されました。しかし、旧文体の土日祝日1日貸し切りで7万7,800円の約4倍、28万6千円にも跳ね上がる市民利用料金では、利用しやすい料金とは言えません。さらに、市民利用施設であるにも関わらず、市民利用料金が議会にも諮られることなく事業者との話し合いだけで進めていることは看過できません。これでは、市民に開かれた行政とは言えません。

また要求水準書には、市民利用を「100日以上確保する」としていますが、土日祝日は30日です。興行中心で市民利用が制限れかねません。過大な値上げと市民利用制限となり認められません。

「消費税インボイス制度」の実施延期を求める請願は採択を

最後に、請願第1号  インボイス制度の実施延期を求める意見書についてです。

消費税の「インボイス」適格請求書制度が来年10月から導入されることに、自営業者などから不安と批判の声が上がっています。適格請求書、インボイスとは、小規模事業者などが、その事業者を採用する事業者に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。

国税庁は2021年10月から事業者登録の開始などインボイス発行へ向けた準備を進めています。インボイスが導入されれば、これまで消費税の納税を免除されていた小規模の事業者や個人事業主に新たな税負担がのしかかります。新型コロナ感染の長期化などで収入が減って苦境に立つ事業者に追い打ちをかけるものです。物を売った事業者は、お客から受け取った消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引いて納税します。いま帳簿などで行っている計算を、インボイスを使って納税することが義務付けられます。インボイスには取引の金額、年月日、品目、消費税額などのほか、税務署が割り振った事業者ごとの登録番号が記載されます。インボイスは7年間保存しなければなりません。

深刻なのは、事業者の税の負担増です。現在、年間売り上げ1000万円以下の業者は、消費税納税を免除されています。しかし、インボイスの導入は、消費税の価格転嫁の困難な零細業者にも課税業者になることを迫ります。

インボイスは課税業者しか発行できません。今は、課税業者が免税業者から仕入れた場合でも、消費税がかかっているとみなして控除できます。今度は、インボイスのない仕入れでは消費税額の控除は認められなくなります。そうなると、多くの課税業者は免税業者との取引をやめることが想定されます。それを避けるために課税業者になるしかありませんが、赤字経営になっても身銭を切って消費税を納めざるをえなくなります。今現在すでに経営が厳しい事業者の倒産や廃業が相次ぐことが強く懸念されます。

インボイス制度の影響を受けるのは、個人タクシー、文化・芸術に関わるアーティスト、シルバー人材センター、農家をはじめ、ウーバーイーツなどの宅配パートナー、電気・ガス検針員、1人親方など多岐にのぼり、その数は1000万人前後とも言われています。しかし多くの関係者は、自分が納税者になるという自覚がないままでいることが危惧され、このまま実施すれば混乱を招くことは必至(です。

データでみる横浜経済2020によれば、市内には、72,161の中小企業があり、その内の59,844者が、製造業、建設業、運輸業では、20人以下、卸売業、サービス業、小売業では5人以下という小規模事業者です。地域に根を張り市内経済を支えている中小・小規模事業者を苦しめることは、本市経済を更に厳しくすることにつながります。この様に問題が多いインボイス制度ですが、今回の請願は「制度の延期」を求めています。コロナ禍で苦しむ中小小売業、フリーランスの方々の生活を支えることを最重要課題ととらえ、本市から政府に対し「消費税のインボイス制度の実施を当面、延期する」意見書を提出することに、議会の多くのみなさんのご賛同をお願い申し上げます。

日本共産党は、所得の少ない人ほど重くのしかかる最悪の不公平税制である消費税の制度導入当初から、反対をしてきましたが、まずは、このコロナ禍で苦しむ市民の暮らしを支えるため消費税の5%への減税を求めています。市民の所得を増やすことと同時に、暮らしを支えることで経済の好循環を生み出すために、引き続き力を尽くすことを表明し、討論を終わります。

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