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横浜市敬老特別乗車証制度のあり方検討に関わる「最終とりまとめ」(案)に対する見解

2007年11月15日

日本共産党横浜市会議員団
        団 長 大 貫  憲 夫

 11月13日、第5回「横浜市敬老特別乗車証(以下、敬老パス)制度のあり方検討会」(以下、検討会、会長高橋紘士立教大教授他委員9人)が開催され、「最終とりまとめ(案)」(以下、「最終案」)が提案されました。
 わが党は、9月の段階で「最終取りまとめ」を審議・決定する第5回検討会の前に、募集・集約した「中間取りまとめ」への市民意見について、議論・検討する検討会を開催することを申し入れていました。しかし、市民意見は、各委員に送ったきりで、検討会も開かれず、どのように反映されたのか市民からは不透明のままです。 

市民意見が反映されていない「最終案」

 第5回検討会に「中間とりまとめ」に対する市民意見募集結果が報告されました。結果は、制度の維持希望・現状維持と制度拡充が907件。一方、制度見直しは制度の廃止を含めても810件でした。集計の仕方が、制度の見直しの意見に「所得に応じた負担がよい」23件などを含むなど、見直し件数を多く見せる恣意的なものですが、それでも制度の現状維持・拡充の意見がうわまわったことです。にもかかわらず、全く「最終案」反映されていないのは問題です。
 検討会は公募による委員の構成、市民へのアンケートや市民意見募集の取り組みに取り組みました。しかし、そこで示された意見や結果が反映されなければ、それは形だけになり、市民を欺く手段にすぎなかったと言われてもしかたありません。

一方で、市民意見を全く無視できなかった「最終案」

 その背景には、敬老パスの負担増に反対し現状維持を求める市民の運動や世論の大きな高まりがあります。
 その1は、制度の目的に「本来の意義を幅広くとらえたうえで」との文言を挿入し、通院や買い物は社会参加でないとした考え方の手直しをせざるを得なかったことです。
 その2は、受益者負担や利用回数など具体的項目について両論併記ではないまでも、市民意見として対立する意見も書きこまざるを得なかったことです。
 その3は、他の意見として項目を起こし、今後の見直し検討の際の参考意見として、「中間とりまとめ」ではなかった「市民の多くが現行制度をのぞんでいる。あと5年程度はこのままでよい」など現状維持を求める意見を書き送らざるを得なかったことです。
 市側も、市民合意もない段階で、市費負担増の軽減を最優先するような拙速な制度見直しは見送るべきです。

高齢者の社会参加支援にならない「最終案」

 検討会の資料によると、敬老パスの利用者は、市民税非課税者、またはそれ以下の低所得者が58%を占め、課税者の700万未満を合わせると98.3%です。敬老パスが低所得の高齢者の社会参加を経済的に支援する、まさに福祉の制度として機能しています。
 わが党は、「中間とりまとめ」が発表された時に、受益者負担や利用回数の制限の考え方を制度に導入すれば、外出への障害となり、福祉の制度としての敬老パス制度を形骸化・変質する重大な問題として厳しく指摘しました。
 「最終案」では、具体的な実施方法として①プリペイド方式②回数券方式等が考えられるとしていますが、プリペイド方式で実施した札幌市の場合、無料の変更前から1枚当たり平均5363円の負担に変わりました。市費負担額の減である8億5000万円を交付枚数で割った数字です。5万円分が上限で、その場合の負担額は1万円ということです。本市においても、札幌方式を導入すれば、1万円とはならないまでも負担増は必死です。しかも、利用制限がつくことから人によっては更なる負担、あるいは利用控えがおこることはあきらかです。

考慮する事項の危険性

 一つは、「現行制度の維持」を望む声が少なくないことを認めながら、あくまでも「持続可能な制度の構築」「利用実績」を重視することを求め、個別事項についても検討会の考え方を踏まえることを強調していることは、市民の意見に対する敵意をむきだしにしたものと言うほかありません。
 二つは、交通事業者は利用実績に応じた収入を求めていますが、その要望を全面的に認め、できる限り早い時期のICカード導入検討を約束したものになりました。さらに「中間とりまとめ」にはあった、「利用者確保に向けた事業者の経営努力を促進するため」を消して欲しいという要望も受け入れられ、交通事業者の意見は全面的に取り入れられています。交通事業者にとっては敬老パス事業が確かな収入になる事業だという市民の声があることも謙虚に受け止めるべきです。

事業実績や財政負担などの周知を盛り込んだ問題

 「中間とりまとめ」に対し、見直しの背景として市の厳しい財政状況を全面に出し、「負担増ありき」の恣意的描き方だと批判してきたところですが、「最終案」では、これでも足りないと思ったのか市民や利用者に十分に周知し、市の説明責任を果たすとしています。
 検討会の議論でも、市民意見募集結果でも、市費の使い方への意見や疑問が出されています。しかし、それは敬老パスへの市費負担上限を83億円とすることに納得がいかない100億円を限度としてもいいじゃないかということで、まさに、政策的に何を優先させるのかという市の判断が問われている問題です。市側に都合のいいようにすりかえることは許されません。
 わが党は、高齢者の住民税等の負担増が数年相次いでいるもとで、さらなる負担増は避けるべきと考えます。高齢者が積極的に社会とつながり、生きがいをもって安心して暮らせる支援策となるよう敬老パス制度の拡充にむけて全力をあげるものです。 

以上