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■「決算関係議案反対討論」 岩崎ひろし議員(2011.10.28)

くらしや行政サービスの充実言いつつも、大型公共事業に巨費投入の林市政

 日本共産党を代表して、2010年度横浜市一般会計決算および16件の特別会計決算に対する反対討論を行います。
 2010年度は、林文子市長にとって最初の年度予算でした。
 市長は、「市政の基本方針」で、財政健全化の取り組みを継続することを前提に、選択と集中による予算編成をすすめるとして、1つ、市民のくらしの充実、2つ、現場目線でぬくもりのある行政サービスの充実、3つ、環境問題への更なる取組み、4つ、国際都市化の一層の推進と経済の活性化、この4つの政策展開の方向付けを行いました。
 ここで示された政治姿勢は、中田前市長による福祉、医療、教育など市民向けサービスの廃止、縮小、市内業者に冷淡だった時代とは、一味違った市政運営となりました。
 しかし、財政は厳しいとしながら、国際競争力を強めるためとして、国際ハブ港湾、高速道路など大型公共事業に巨費を惜しみなく投じる姿勢は、前市長と変わっていません。
 2010年度を振り返ると、国民健康保険料の引上げ、命にかかわる保険証の取り上げ、市税滞納者への強権的回収、特別養護老人ホーム入所待機者の増加、児童虐待など子育て環境の悪化など、市民生活の深刻さが広がりました。

市長の政治姿勢と市民生活の実態との乖離がどのようなものだったのか

 次に、市長の政治姿勢と市民生活の現場の実態との乖離がどのようなものであったのか、また「選択と集中」が妥当であったかどうか、私の認識を述べます。

大型公共事業は推進、生活道路は先送り

 第一に、横浜のまちづくりのすすめ方について、述べます。
 2010年度は、社会、経済情勢だけでなく、自然と環境にも大きな変化がありました。にもかかわらず、南本牧大水深バース建設など大型公共事業が、何の見直しもなく推進されています。
 3・11大震災は未曾有の被害をもたらすとともに、その衝撃は、まちづくりに関わるすべての事業について、考え方を根底から見直すことを迫るものになりました。本市の対応では、当面の対策で補正は組んだものの、2010年度内に各事業を根底から見直す作業が始まったことを今回の決算からは、確認することはできません。
 次に、通学路の安全対策、駅および周辺のバリヤフリー化、生活道路の補修・改良、幹線道路網整備、安全・便利な街区整備など地域住民の切実な要望が、先送り、置き去りにされています。
 その最大の理由に、土木事務所や関係局がやりたくても予算が少なくできないという現実があります。
 まちづくり関連予算における「選択と集中」のあり方の妥当性が問われます。

企業誘致のために必要もない助成金・税軽減は市税の使い方として不適切

 第二に、予算の執行と管理が、適切に行われたかどうかについて、述べます。
 埋立事業会計の破綻状況は、南本牧埋立事業の現場を検証すれば明白です。
 第2次中期財政プランで、南本牧は2010年度までの処分予定面積を3ヘクタールとしましたが、予定した区画は全く売却しようとせず、道路用地として国交省に売却した0.14ヘクタールだけでした。
 国への売却額は1平米あたり約8万円。一方、土地の造成費は1平米あたり60万円。売却すればするほど赤字が膨らみます。異常な低価格で国に売却したことは、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に抵触する恐れもあります。しかも、売却予定地は必要な基盤整備がされておらず、公募すらできない未完成の土地のままです。
 これだけでも、事業会計改善への努力が全くなされていない無責任極まりないものであります。
 次に、企業誘致のための助成金や税の軽減が、効果的な投資になっていないことについて、述べます。
 2010年度、企業立地推進条例にもとづく助成金で16億8600万円、税の軽減で6億6800万円、合計23億5000万円が使われています。
 わが党は、企業誘致そのものは、市内経済の活性化、雇用の創出、税源の拡大などのために必要と認識しています。しかしながら、助成金を用意して、企業の進出意欲を誘導する手法は、予算の効率的運用の観点からは不適切であると考えます。
 経済局が横浜へ立地した企業49社に、進出理由をアンケートした結果では、交通の利便性、子育て条件、環境、その他など、横浜の立地条件をあげるものが72%。行政の支援を挙げたのは、わずか10%にとどまりました。つまり、財政的な支援がなくても、進出するのであります。市税の使い方が、ミスマッチ状態であることは明らかです。横浜の都市としての総合的な魅力をアップすることにこそ、財源を振り向けるべきであります。
 次に、運営費を不正流用した保育園運営会社の逃げ得を許さないことについて、述べます。
 7000万円余の運営費を不正流用し、二つの認可保育園の運営から撤退した株式会社エキスパートシステム社は、判決が命じた運営費の精算金の払い戻しに応じないうえに、不正流用分の内容確認も拒否し続けています。これに対して、こども青少年局は、「精算金の支払いは求めるが、不正流用部分の返還は法的に難しい」と、手をこまねいています。
 保育運営費の財源の多くは市民の税金です。不正流用分についても、あらゆる手立てを講じて返還させるべきであります。

全国最低レベルの教育予算は市長と教育委員会の責任が問われる

 第三に、福祉・医療・教育など拡充を求める声に応えたかについて、述べます。
 市税滞納者の実態把握を十分行わないまま、強権的に滞納整理を行いました。昨今の経済情勢のもとで、納めたくても納められない市民が数多く生まれています。強権的な滞納整理の現場では、差し押さえを受けて苦境に陥った市民から怨嗟の声が上がっています。
 納める資力がありながら不当に滞納している場合、行政が厳正に対処するのは、当然であります。一方、困難を抱えた滞納者には、生活上の相談に応じることも含め、親切で分かりやすく、丁寧な対応をするべきであります。
 市民のくらしを守ることが市政の役割です。市民のくらしをどん底に突き落とすようなことは、断じて認められません。
 次に、全国最低レベルの教育予算について、述べます。
 2010年度、教育費決算額は769億円。児童一人当たり29万円となっています。他の政令市比較で見ると本市は最下位から2番目の18位、一位の神戸市65万円の半分以下という低さです。安上がりの教育が行われていることが歴然としています。
 10月22日、東戸塚小学校創立60周年記念式典が行われました。これには、私も参加しました。式典のあいさつで、PTA会長が、次のように話されました。
「教育予算が足りないために、子どもたちの勉強に必要な備品さえそろえられず、学校は大変困っています。ぜひ、教育予算を増やしていただきたい」ということでした。そのあと、PTAから、「料理実習のまな板を置く棚など備品一式」が記念品として贈られました。教育予算の削減が、学校の現場で、子どもたち、父母たちに、こんなに切ない思いをさせているのかと痛感しました。
 憲法が保障する義務教育の無償および市政の基本方針の「現場目線でぬくもりのある行政サービス」などに照らしても、この落差は許されません。
 また、本市は、中学校給食を実施していないために、昼食がとれない中学生が多数存在するのも教育現場の姿です。
 さらに、自由社版歴史教科書が間違った記述を正さないまま、中学生に押し付けられています。このことに対して教育委員会がいっさい是正措置をとらなかったことは、最良の教育条件を整備する使命を持つ教育委員会の責任放棄であります。これを追認してきた市長の責任も免れないと考えます。
 市長が、決算特別委員会総合審査において、わが党の質問に、「私は、確かに教育についてもっともっとお金をかけるということは申し上げています」と答弁されています。この答弁に基づいて、教育予算を抜本的に増額し、教育条件の向上・充実に、努力を求めるものです。
 市長は、「市政運営の基本方針」において、「すべての答えは、現場にある」と強調されています。
 市民が「このまちでくらしてよかった」と実感できるまでには、大変な努力が必要になります。とりわけ、「選択と集中」のあり方が、問われることになります。
 以上、述べたとおり、2010年度決算全体は、「選択と集中」のあり方が適切さを欠いていたといわざるを得ません。

大震災と原発事故の教訓を生かし、いのちくらしを守る福祉向上の予算を

 一方、2010年度の林市長の市政運営を注意深く見れば、中小企業振興基本条例の推進、保育所待機児童解消への取り組み、市立学校教室へのエアコン設置、平和市長会議への加盟など、市民要望に応えた施策も見られます。
 市長が強調される「市民の気持ちに寄り添う市政運営」にふさわしく、「すべての答えは現場にある」という見地で、市民要望に一層寄り添った施策を展開することを期待するものです。
 わが党は8月25日、2012年度予算編成に当たって、市長に申し入れを行いました。3・11東日本大震災と福島第一原発事故は、日本の社会・政治・経済・国民生活のあり方をも根本から問い直させる未曾有の大災害であったこと、加えて日本経済の落ち込みが一層深刻になっていること、少子高齢化も加わり今後の税収の見込みが厳しくなることなどを指摘して、次のように提起しました。
 このような状況のもとで、市政運営の方向性を、1つは防災の観点をあらゆる施策に貫くこと、2つは低エネルギー社会を展望して自然エネルギーの本格的導入に踏み出すこと、ここにおいて、予算編成に当たっては市民のいのち・くらしを守る福祉の向上のための財源を最優先で確保する姿勢を貫くべきであると申し入れました。林市長が、市民の負託に応えた2012年度の予算案を編成されることを、あらためて強く要望します。
 2010年度横浜市一般会計歳入歳出決算および16件の特別会計決算は、認定できないことを表明し、討論を終わります。