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【2007年第2回定例会】「現年度議案反対討論」白井正子議員

  私は、日本共産党を代表し、今議会に提案された議案のうち市報第3号他5件の議案について反対の討論を行います。

指定管理者としての資格が問われる問題

  まず、市報第3号は、横浜市高齢者保養研修施設「ふれーゆ」の指定管理者の指定についてです。
 「ふれーゆ」は、2006年4月から明治アクアスポーツ・山武が指定管理者に指定されています。ところが、明治アクアスポーツが親会社である明治スポーツプラザに吸収合併され消滅した明治アクアスポーツの権利・義務の全部を継承したとして明治スポーツプラザを指定管理者に指定することを市長が専決処分し、議会での承認を求めたものです。

 これまでわが党は、公の施設への指定管理者として、利益を優先する株式会社はなじまないとしてきました。本議案は吸収合併という会社側の都合を優先させ、1年足らずで指定管理者を変更せざるを得ない結果になったことから発生したものです。しかも、吸収合併という重大な内容が、1月23日に両者で合意されていたにもかかわらず、3月20日まで市にはまったく知らされないという常識では考えられないような会社側の対応は無責任という他ありません。市として、「厳重に注意」したということですが、そもそも指定管理者としての資格が問われる問題です。

 協定書との関係でも、市長が「本市の事前承諾を得ずに権利義務を第三者へ譲渡・継承ということを禁止しており、協定書の規定の趣旨について周知徹底を図って適切な運用に努めたい」と答弁されていますように、親会社は第三者であり、規定の趣旨が遵守されないということですから、「指定管理者との実態が同一」で良しとする市の対応も不十分と指摘せざるを得ません。

 「指定管理者制度」そのものについて市長も「実験段階」と述べていらっしゃいますが、先にわが党が指摘したように、合併や倒産などによるリスクに対し、協定書を見直し、事前の連絡の取り決めや対応など、規定を明記すべきです。また、指定管理者は当然ながら日報月報を義務付けられていますが、それらの運用についても、改善を図るよう求めておきます。

 先日、港北区の大倉山記念館の指定管理者の内紛が報じられたばかりですが、指定管理者への市民の信頼を得るためにも、会社の都合を優先し、議会を軽視する結果となるような専決処分のやり方はとるべきではありません。

条例改定の前に入札公告とは議会軽視

  次に、市第6号議案は、直営の公会堂へ指定管理者を指定し、指定管理者が行う業務の範囲等を定めるとともに、利用料金制の導入等を行おうとするものです。具体的には、瀬谷公会堂が対象ですが、瀬谷公会堂は瀬谷区役所と一体の建物であり、瀬谷区総合庁舎の建替えにPFI手法で行うことから、当然PFI事業者が公会堂の指定管理者になるというものです。

 反対する理由は、市長答弁で「入札公告を5月上旬に行った。条例改定の議決を条件として行った」としていますが、議案が確定してから入札公告を行うべきであり、手続き上議会軽視といわざるを得ません。

 市民利用施設の公会堂の管理・運営については、PFI事業とは明確に切り離し従前同様直営で行うべきです。

障害者自立支援法で利用者負担増はおおいに問題

 次に、市第8号議案は、横浜市身体障害者更正授産所等を障害者自立支援法に規定する障害福祉サービスを提供する施設に移行するための条例改正です。

 問題は、支援費制度から障害者自立支援法へ移行することによって利用者負担が増えることです。通所の知的障害者施設「つたのは学園」の場合、1日当たりの負担が新たに27円増えて633円。1ヵ月、20日間の通所として1万2660円にもなります。障害者自立支援法は、1割負担導入のため必要なサービスすら抑制せざるをえないという問題が指摘されているところです。議案に係る該当施設においても起こり得る問題です。しかも、総合リハビリテ―ションセンター、身体障害者更生授産所、松風学園、中山みどり園については、現段階で利用者負担がいくらになるのか不明です。5年間の経過措置も認められており、負担増を急ぐ理由は何もありません。

必要な投資を怠り動物園を指定管理者にまかせるのは
市の責任の投げ捨て

 次に、市第11号議案、横浜市動物園条例の一部改正についてです。これは、野毛山と金沢の両動物園に指定管理者制度を導入し、「緑の協会」にズーラシアと一体経営させるためのものです。

 2004年7月、当時の緑政局は「横浜市立動物園のあり方懇談会」を設置し、市立動物園の経営改善等について検討を依頼してきました。そのあり方懇談会の報告書が2005年4月にまとめられました。あり方懇の提言要旨は「横浜市立動物園は入場者数の減少と財政危機の2つの課題に直面する。この難局は現場の自助努力だけでは乗り切れない。市役所が主導し、動物園の基本戦略を再構築するとともに、経営体制の一本化や金沢動物園の抜本改革等の課題に早急に取り組む必要がある」と述べています。

 ところが、本市では動物園改革の基本戦略なるものは、示されておりません。本会議の議案関連質問で、なぜこの「基本戦略をもてないのか」との質問に、市長答弁は「3動物園の経営の一体化を進めることが基本であり、指定管理者と協力し合って戦略を持ちながら進める」とのことでした。あり方懇談会の経営改革の提言を真正面に受け止めているものとは到底感じられないものでした。肝心要の戦略については曖昧にしたままでは、これから動物園は何を目指してどこに向かおうとしているのか見えません。それを市民に示さないでは、コスト削減、効率化のため、経営体制の一体化に矮小化したとの批判は免れません。

 あり方懇談会は、横浜市立動物園の現状評価については、「内外の大都市と比較した結果、横浜市の3園の規模や数や立地の体制、内容と質は都市格に見合ったものであり、集客力と経営効率も国内の他都市と比べ遜色ないもの」と評価する一方、金沢動物園のコンセプトの陳腐化や過少投資の弊害による悪循環に陥っていると指摘し、従来の常識を断ち切った抜本的見直しを求めています。

 市長は、動物園改革推進費として2006年度570万円、2007年度1,857万円計上と胸をはっています。しかし、施設整備費については、あり方懇談会の報告後2年がたつものの、ようやく今年度野毛山動物園施設改修事業に370万円投じられることになっただけです。大都市横浜にふさわしい動物園に改革する意欲は予算上には反映させていません。

 2006年1月に開かれた横浜市立動物園改革第3者評価委員会の会議記録では、「3園の自助努力や改善活動は、現場の人達が本気になってやった成果であり、大変すばらしい」と評価する一方で、「これを継続するには投資が必要、自信を持って、必要な予算は要求すべき」との意見や、「動物園に行く人は、まず動物と触れ合えることを発見できることに魅力を引かれる。そこにお金をかけてほしいと思う」と意見を述べています。的を得た指摘です。3園のそれぞれの経営形態も、現在のままで連携は十分担えているものであり、あえて今、本市の動物園の基本戦略が示されない状況において、また必要な投資を怠ったままあえて今、金沢、野毛山に指定管理者制度を導入し、「緑の協会」に3園の経営、運営を委ねることは、結局のところ、同協会に丸投げすることと変わらず、本市が果たすべき責任を投げ捨てることにもなります。

 2園に働く職員は、「緑の協会」に派遣と聞いています。市職員定数が減らされ「自立経営」の名による指定管理料の切り下げが強行されれば、まちがいなくコストは削減されます。必要な投資もせず、動物園への将来像も描かないでは、コスト削減だけをねらったものと言わざるをえません。

 先日、よこはま動物園ズーラシアでは、日本で3園でしか飼育されていないキンシコウの赤ちゃんが誕生し、元気な姿が見られるそうです。また、金沢動物園では、色素がない白いヒガシオオカンガルーが人気者になっています。命の誕生、飼育を担い、環境教育にも大きく貢献し、都市型動物園として観光資源ともなっている野毛山動物園、金沢動物園の2園は、それぞれの特色を生かした直営を継続すべきです。

過料で効果が得られるのか

 次に、市第12号議案、空き缶、吸殻散乱防止に関する条例の一部改正についてですが、問題は過料として市民に一回2000円を科すという問題です。

 市長答弁で「人混みの中での喫煙により、市民の安全が保てない」と「安全」について強調されていますが、そのとおりです。私も、実際に火傷をさせられた方の話を聞きました。さらに、今やタバコが有害だということは医学的にも証明済みの問題です。禁煙指定区域を設定し、啓発することは大いに賛成します。しかし問題は、過料を科せば効果が得られるのかという問題です。たばこの製造や販売についても検討が必要です。そうしたことの検討もなく、やみくもに過料を科し、モラルへの責任追及だけで効果があがるとは思えません。

開発計画は住民の意見をよく聞いて

 最後は、市第13号議案です。この議案の問題は、山下本町通り地区計画に関わる地区計画の決定です。今回の計画は、都市の空間の重要性を考慮に入れず、土地の合理的利用と都市機能の充実に重点を置いたもので、山下町全体の街づくりからの視点が欠けていると言わざるを得ません。

 この開発計画は中区山下町の本町通りに面した約1万2千平方メートルのかながわドームシアター跡地などにホテルや店舗などが入る高さ約75メートルの商業ビル2棟と、県立新ホールとNHK横浜放送局の入る高さ約50メートルの施設の建設が予定されています。すでに都市計画決定がされ、今回、その建築物に関わる事項を条例化するものですが、新聞報道では周辺住民から県議会等に4000を超える署名が寄せられるという反対運動が起きています。

 今回の開発計画は、大部分が県有地であり市民の財産でもあります。その土地の開発は周辺住民の意見を開発計画に十分反映させることが基本です。都市計画決定の手続きのなかで法定縦覧、公聴会等で住民の意見を聞いているとされていますが、本来、開発プラン策定の段階から、周辺住民・関係市民を参加させることが求められていました。今からでも関係住民・市民の意見を聞き、計画に取り入れてこそ、市民に愛される施設になると考えます。

 以上で、私の反対討論を終わります。


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