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■「現年度議案反対討論」 古谷やすひこ議員(2012.02.23)

 私は、日本共産党を代表して、3件の市長提案議案に対して反対の立場から討論致します。

「お金を出して企業に立地してもらう」発想では誘致効果は低い

 まず、市第107号議案「企業立地等促進特定地域における支援措置に関する条例の一部改正」についてです。これは、立地に際しての助成金や税の軽減などの対象や助成率を変更し、適応期間を3年間延長するものです。今回の改正案の中には、市民雇用の増や市内企業への発注を増やすようにインセンティブを働かせている点については、中小企業振興条例の趣旨も踏まえ、改善が図られている点もあると評価します。
 しかしながら、この条例案の根底に流れている「お金を出して企業に立地してもらう」という発想では、誘致効果は低いと考えます。
 企業は、その場所に立地を決める際に、何を大きな要素とするのでしょうか。財団法人日本機械工業連合会が2007年に行った調査では、「企業立地に際しての補助金の大型化が進んでいることも近年の特徴である。しかしながら、補助金の大型化が即座に誘致企業の増加に結びつくことはなく、企業側の論理としては補助金の多寡よりも、むしろ操業後のメリットを詳細に検討した上での立地地域の選定をしていることが明らかになった」ということです。また、「今後の立地環境整備の方向性としては、関連産業群の育成、人材育成、インフラ整備などが考えられる」としています。また、国の企業立地促進法の中では、準備段階では「地域の強みや特性を認識し、当該地域にふさわしい企業の集積を図るための企業立地マニュフェストを作成する必要がある」とあります。さらに、実行段階では「インフラや人材確保は企業にとっての生命線。企業の声に耳を傾け、ニーズを十分にくみ取って事業環境の整備を進める必要がある。企業は、立地補助金や税よりも、企業目線での行政サービスを求めている」とあります。つまり、補助金を増額する以上にやるべきことがあるとしています。
 また、今回の改正では多国籍企業の誘致に向けた助成が新設されます。財団法人日本立地センターが行った国内外資系企業への調査では、外資系企業が日本進出・立地を決める際の選定理由として、71%が「マーケットであるから」と圧倒的に回答率が高いものであります。「地方公共団体への期待は」という設問に対しては、「英語での情報」あるいは「地域進出する際のメリットと感じる情報がいまは不足している」とあります。つまり、企業が情報収集源として、取引・提携先企業に問い合わせをするケースがいま多く、いかに日頃から地域に立地している企業から情報収集しているか、また立地している企業に対してフォローやケアをしているかが大きな誘致の手段になるとしています。
 これらを総合して考えれば、まず本市に地域産業の構造分析を実施し、戦略的な産業政策をたて、集積している業種の再強化などを進めたりした上で、はじめてそこにこういう企業を誘致させるためにインセンティブをつけようとか、あるいは地元企業をこうつなげていこうとか、企業立地の条例があればうまく市内産業とも一緒に育っていく土台ができていくのではないかと考えます。
 よって本改正案では、非常に誘致効果が薄く、税のばらまきであるといえるもので、本条例そのものの廃止を求めます。
 加えて、今回の改正にあたっての判断材料となる認定企業向けに行ったアンケートを2回行っているようですが、1回目のアンケート結果が議会に出されていません。この点について、一言申します。私たち議員は、限られた時間的制約の中で議案を議論をする前提として、十分な判断材料となる資料の提供が欠かせないものです。もし、そのことが十分になされていないとしたら、市側と、そしてチェックすべき市会議員側に大きな情報格差が生じてしまい、市民の付託を受けた市会議員がチェック機能を十分に果たせなくなります。これは大きな問題だということも指摘しておきます。

人口減少、インフラ再整備の時期を迎える10年後に高速道路は必要か

 次に、市第129号議案「首都高速株式会社が高速道路の許可事項を変更することについての同意」についてです。これは、東名青葉インターチェンジから第三京浜の港北インターチェンジまでの約7キロの計画で、高速横浜環状北線を接続します。この環状道路構想がたてられたのは今から30年前の1981年、そして供用の開始予定となるのが2022年、実に40年以上にわたっての計画で、2200億円もの巨費を投入する事業であります。
 今から10年後は、どんな横浜市になっているでしょうか。まず一つ言えるのは、間違いなく人口減の社会に入っているはずです。国立社会保障・人口問題研究所が今年の1月に発表した推計では、50年後には我が国の総人口が4000万人減る、総人口の40%が65歳以上の高齢者が占めるようになるとしています。本市でも、すでに生産年齢人口は5年前から減少しています。豊富な労働力を見込めず、当然経済も縮小していく時代に入ってきます。さらに、その頃には今よりも、学校施設をはじめとする多くの公共施設などの建て替えや水道管の更新など、インフラの維持管理・更新などに大きな課題となっているはずです。経済が縮小していく社会の中、物流についても将来予測としてそれほど増える見込みがあるとは思えません。交通量の予測などについても、国は全国交通量の将来予測を見直しをして、大幅下方修正を2008年に行っております。
 そんな中で、巨額な市税を投入し続けなければならない環状道路計画の実施については、慎重の上にも慎重な審議を重ねるべきだし、その前提としての交通量調査や予測なども本市独自で行うことも含めて、最新の情報を使った上での本当に必要なのかどうかを十分に検討していくのがスジではないでしょうか。
 この際、南線も含めて環状道路計画そのものの抜本的な見直しも併せて行うべきであると考えます。私たちの次代を担う横浜の子どもたちが、交通量の減ってしまった環状道路の建設費用を払い続けさせるような事態は避けるために、大人の責任が今こそ問われているのではないでしょうか。

利益を求める株式会社に横浜港の管理・運営を任せるのか

 最後に、市第127号議案「港湾施設の指定管理者の指定」についてです。2011年度から2015年度まで指定管理者として指定していた財団法人横浜港埠頭公社が、2012年4月1日付けで横浜港埠頭株式会社に業務及び全財産を承継するに伴い、団体の実態が同一であることから、2012年4月より横浜港埠頭株式会社を指定管理者として指定するものです。
 そもそも、港は誰のものでしょうか。島国である日本の国民生活や経済活動を支える上で、港は不可欠の社会資本、市民・県民・国民の共有財産のはずです。さらに、防波堤や航路など収益性を求めることができない施設が一体となって機能を発揮していることから、歴史的にも公的主体が管理を担ってきました。横浜港が開港したのは1859年、ペリーが浦賀に来航した翌年であります。そして、第二次世界大戦の終戦時には、横浜港の90%は連合国軍に接収されました。その後、1950年制定の港湾法に基づき、翌年に横浜市が港湾管理者となり市営港湾化され、いわば横浜港が横浜市民のものとなりました。
 その公共の財産であるべき港湾が、株式会社化・民営化することについては、公共性の維持をどう確保していくのでしょうか。港湾運営会社は、一つの港に一社を限って指定するので、いわば地域独占の会社ということになります。港湾運営会社が文字通り株式会社であるわけでありますから、自らの利益の最大化を図った結果、使用料の値上げや必要な投資が行われないなど、公共性の確保がなされない問題が生じないと本当にいえるでしょうか。また、資本規制として20%以上の議決権の保有を禁止することが改正港湾法で規定されていますが、外資を含む民間企業が複数集まれば民間企業のみの運営となり、港湾が投機の対象とされる可能性まで出てきます。
 また、国の改正港湾法が可決された際の附帯決議の中では、「港湾労働者にしわよせが及ばないよう配慮し、適正な料金設定、雇用の安定、職域の確保、福利厚生の増進などを図り、良好な労働条件が確保されるように務めること」と、港湾運営会社による効率化優先の港湾運営をすることでの港湾労働者の雇用・労働条件が破壊され深刻化することが懸念され、附帯決議とまでなっています。これらの論議が、今定例会で尽くされたとは言えず、このまま横浜港の指定管理を株式会社に委ねてしまうことについては余りにもリスクが大きすぎます。
 よって、私たちは反対の立場を表明して、討論を終えます。ありがとうございました。