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■「予算代表質問」 大貫憲夫議員(2012.02.23)

※実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように、対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

大貫議員:私は、日本共産党を代表して市長に質問します。

横浜経済に大打撃を与える消費税増税に反対せよ

 まず第1に、市長の政治姿勢について伺います。
 民主党・野田政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して、消費税を10%に増税し、同時に老齢年金と障害年金の給付削減、年金の支給開始の先延ばし、医療費窓口の負担増、保育への公的責任を投げ捨てる「子ども・子育て新システム」の導入など、高齢者にも現役世代にも負担増と給付削減という連続改悪を進める方針を決めました。
 地方自治の精神は、国が国民に悪政を強いるときに、その悪政から住民を守ることにあります。この立場に立てば、野田政権の進めようとしている「社会保障と税の一体改革」にはノーと言わざるを得ないと思いますが、市長はどのように評価されるのか見解を伺います。
 消費税の増税が日本経済に破壊的ダメージを与えることは、1997年の消費税3%増税後の14年間の累計で、84兆円も税収が落ち込こんだことも明らかです。本市の場合、法人市民税は96年の600億円が99年には470億円となり、130億円も減収になりました。
 21日に発表された労働総研の試算では、消費税税率が10%に増税された場合、GDP・国内総生産は2.5%低下し、雇用は114.9万人減少するといわれています。
 市長は、予算案を発表するに当たり、「経済が潤えば、子育て、福祉、医療も一層充実させることができます」と表明されています。消費税増税は、本市経済に深刻な打撃を与え、疲弊させ、市民生活を困難におとしめることは必至です。市長として、また横浜市中小企業振興基本条例の立場から、消費税増税に反対すべきと考えますが、市長の考えを明確なお答えを求めます。

林市長:大貫議員の質問にお答え申しあげます。
 社会保障と税の一体改革についてご質問いただきました。
 地方自治の精神に基づき、反対すべきとのことですが、市民のみなさまの安全安心のためにも、年金や医療、介護、子育てなどの財源を確保し、将来に渡って持続可能な社会保障制度としていく必要があります。
 国は分かりやすく国民に説明をつくし理解を得ていくだけでなく、社会保障の大部分を担っている地方自治体の意見を十分に反映させ、地域の実情と社会状況の変化に柔軟に対応できる制度にすべきと考えています。
 消費税の引き上げに反対すべきとのことですが、2月17日に閣議決定した社会保障税の一体改革の大綱では、27年10月に10%に引き上げる案が示されました。このことについては、経済動向を踏まえつつ、国民の皆様に丁寧に説明し、理解していただくことが前提になりますので、十分国で議論をつくしてもらいたいと考えています。

林市長の「選択と集中」とは何か

大貫議員:次に、2012年度予算編成方針について、いくつかの重要な問題について伺います。
 市長は、先ほども出ましたけども、「選択と集中」という言葉を好んで使われます。「選択と集中」とは、経営・ビジネス用語で、自社の得意な事業領域を明確にして、経営の資源を集中的に投資するというものです。中田前市長もこの言葉を多用して、市民サービス切り捨てのための口実として使いました。林市長のいう「選択と集中」は中田前市長とは違うと考えますけども、市長のいう「選択と集中」とは何か、予算案ではどのように具体化されたのか、説明してください。

林市長:24年度予算編成に関するご質問をいただきました。
 「選択と集中」の考え方についてですが、厳しい財政状況だからこそ、現場の声をしっかりと聞き、真に必要な投資を行うとともに、不断の改革に取り組むことが不可欠と考えています。
 24年度は、耐震対策や子育て、医療、教育など安全安心の確保に向けた施策を始め、文化芸術や観光MICE(マイス)など横浜の魅力を生かした取り組みや、中小企業振興などにより横浜経済を活性化する施策に重点を置く予算としました。

子育て優先の予算で子育て世代の市外流出を防げ

大貫議員:予算案における重点取り組みとして、「『感動・挑戦』の街づくり」と「『安心・共生』の人づくり」を掲げ、横浜の魅力は何よりも横浜の「人」であり、特に横浜の将来を担う子どもたちとした上で、横浜経済の振興を強調されました。その通りだと私も思います。そのためにも現状をしっかり把握しなければなりません。
 まず、本市の子育て環境の現状です。「横浜市民生活白書2009」によると、横浜市の人口流動は転入超過が続いているものの、東京都や神奈川県内の他市への転出超過傾向が強まっています。調査季報165号では、年齢別にみると、0歳から4歳と5歳から9歳の転入超過率が2008年にマイナスに転じ、この年代の親に当たる30代から40代の子育て層が市外に転出する傾向にあるとし、子どもが小学校卒業までの層の居住地選択理由は「子育て環境」「教育環境」の割合が高いと分析しています。
 30代から40代とその子どもたちの市外への流出は、横浜の将来を支える大切な層が少なくなっていくということです。この本市の存続基盤にも及ぶ重大な事態をこのまま放置しておいてよいのでしょうか。市長は、そもそも、その認識を持っておられるのか、持っているとされるならば、その打開策をどのように考えているのか、伺います。
 町田市と東京区部に横浜から転居した、知り合いの30代2組のご夫婦に話を聞いたところ、やはり横浜は子育てにとてもお金がかかり子育てしにくい、さらには教育環境も遅れていると語っていました。
 本市の新年度予算案では、約10億円の保育料の引き上げが提案されています。小児医療の無料化も拡大するとはいえ小学校1年まで。少人数学級も国の水準を超えず、全国8割の自治体で行われている中学校給食も実施しようとしていません。教育の重視といいながら、教育予算は昨年並み、学童保育も図書館も少ない、児童館もない。いずれの事業も、横浜市は大きいから予算がかかり過ぎて簡単ではないというふうにいわれるかもしれませんが、それは理由になりません。小さな自治体でも、少ない予算の中で実施しているではありませんか。
 これは、予算の優先順位の問題です。まさに選択と集中の問題であり、市長の構えの問題です。30代から40代の流出は、本市の子育て環境の水準の低さが原因です。教育も含め子育て予算全体の優先順位を抜本的に引き上げることこそが、横浜の人づくりへの「投資」であり、将来の大切な布石になると考えますが、市長の見解を求めます。
 
林市長:市民の転出傾向に対する打開策が必要とのことですが、30代から40代の市民は、平成22年に転出数が転入数を上回っており、引き続き動向を把握する必要があります。なお、21年度の市民意識調査において、市外への転出を考えている市民にその理由を伺いました。この世代では家賃、住宅の価格や、通勤・通学の交通の便を理由としてあげた方が多いなど、その理由は様々であり、子育て支援に限らず、総合的な施策を進めていく必要があると考えています。
 子育て予算全体の優先順位を引き上げるべきとの考えですが、未来担う子どもたちが健やかに育ち、学べる環境を整えることは大変重要であり、24年度においても、児童虐待対策、産科・小児医療の充実、教育環境の整備などに重点的に取り組む予算としています。
 また、こうした取り組みに加え、利便性・快適性など横浜の魅力を総合的に高める施策を進めることにより、多くの人を引き付ける都市としていくことも重要と考えています。

公契約条例の制定で生き生きと活気あふれる街づくりを

大貫議員:次に、経済振興の問題です。
 市長は、横浜の魅力として「人」に着目されました。市長がいうように、暮らす人たちが生き生きとして活気にあふれる街を、どのようにつくるかが大切です。
 予算案に掲げてあるように、方法は私たちと違いますが、確かに、企業立地促進をはじめ外から色々なものを招いて、外発的な力で横浜経済を牽引することは必要です。同時に、内発的な活気を旺盛にしなければなりません。そのために大切なのは、活気のベースになる市民の雇用と賃金を確保し、ふところを豊かにすることです。同時に、福祉、医療を充実させ、安心して消費生活をおくれる環境をつくることが内需を押し上げる力になると考えます。市長の見解を伺います。
 市民の雇用と賃金の確保をする施策として注目されるのが、中小企業振興基本条例と公契約条例です。今回の予算案では、中小企業振興基本条例に関する施策の充実には評価するものがあります。しかし、公契約条例については、いまだ研究・検討の域を出ていません。
 公契約条例は、市発注の工事や業務委託で、仕事の中身に応じた適正な賃金を設定し、受注業者が労働者にその金額以上を支払うよう義務づける仕組みです。「官製ワーキングプア」の防止を狙いに、千葉県野田市が2009年に初めて制定し、川崎、相模原、多摩の各市が続き、札幌市では今議会に条例案が提出されています。
 報道によれば、昨年12月に同条例を制定した相模原市の加山俊夫市長は、こういうふうに言っています。「景気の低迷で公共事業や委託事業の受注競争が激化している。業者の疲弊、労働者へのしわ寄せが生じており、歯止めをかけることは喫緊の課題」であり、「賃金の下限を保障することで労働意欲が維持され、事業の安全安心が確保される」「長期的に見れば、市内の賃金水準の上昇、地域経済の活性化につながる」と述べています。
  「人」あってこその「経済」です。何としても、横浜市でもできる限り早く公契約条例を制定させなくてはならないと考えますが、市長の見解を伺います。

林市長:市民の雇用等を確保し、消費に回すことによる内需の押し上げが必要とのご意見についてですが、横浜経済を支えてきた市内中小企業の成長・発展への支援と、横浜に新たな活力や消費を呼び込む企業誘致や観光誘客を推進しています。今後とも、このような取り組みを通じて、企業収益が増加し、市民の雇用が創出されることで、市内の需要を押し上げる良い循環が生まれ、横浜の町も経済も活性化していくと考えています。
 公契約条例の制定についてですが、条例の目的である労働者の賃金確保は重要だと考えていますので、本市では、賃金へのしわよせが懸念される、行き過ぎた低価格での入札の防止を重視し、その対策を徹底しています。
 公契約条例については様々なご意見や課題がありますので、関係する事業者団体や労働者団体のみなさまからご意見を伺うとともに、国の労働政策等の動向や、他の自治体の動き、特に昨年4月に実施した川崎市における実施状況を調査するなど、引き続き研究をしていきます。

いまこそ林市長の決断で非核平和都市宣言を

大貫議員:最後は、平和問題です。
 市長は、昨年アメリカが行った臨界前核実験に対しオバマ大統領に抗議するなど、核兵器の廃絶、平和を求める市民の思いに沿った取り組みをされています。現在、世界では2万3000発を超える核兵器が存在し、北朝鮮やイランなどの核兵器開発が取りざたされ、イスラエルは5月にもイランへ核ミサイル攻撃を行う可能性があると報道されています。
 林市長も加盟している平和市長会議では1月、会長の松井広島市長らが外務省を訪問し、第1回国内加盟都市会議の決議に基づき、「核兵器禁止条約」の早期実現に向けた取り組みの推進を求める要望書を野田総理大臣宛てに提出しました。
 この動きを後押し、現実に起きようとしている核使用を阻止するためにも、横浜市が非核平和都市宣言を行い、関係国と世界にアピールすることは、ピースメッセンジャー都市としての大切な役割です。
 本市議会は、1970年と1984年の2度、非核平和都市宣言に関する決議を行っています。しかし、これまでの歴代の市長は明確な理由も示さず、非核平和都市宣言を行おうとはしませんでした。いまこそ、林市長の決断によって、横浜市として非核平和都市宣言を行うことを求めます。市長の見解を伺って、私の質問とします。

林市長:平和都市宣言についてご質問をいただきました。
 本市は米国が昨年夏に実施した実験も含め、あらゆる核実験に対する中止要請、抗議を行っています。引き続き、ピースメッセンジャー都市として、平和市長会議の一員として、平和啓発事業、都市間交流や国際協力を通じ、国際平和の実現に向けた取り組みを行い、世界にアピールしていきます。
 以上、大貫議員のご質問にお答え申し上げました。