議会での質問・討論(詳細)
2012年3月23日

■「予算反対討論」 古谷やすひこ議員(2012.03.23)

 私は、日本共産党を代表して、2012年度横浜市一般会計ほか17件の会計予算および12件中3件の予算関連議案について反対を表明し、討論いたします。

予算でもっとも重視されるべきは市民の「いのち、くらし、福祉の向上」

 新年度予算でもっとも重視されるべきものは、何でしょうか。私たち日本共産党市会議員団は昨年8月に、3・11大震災を受けて、新年度予算編成にむけて市政運営の方向性を「防災の観点をあらゆる施策に貫くこと」「自然エネルギーの本格的導入に踏み出すこと」におき、市民の「いのち、くらし、福祉の向上」を最優先させる立場から、中学校給食実施、小児医療無料化年齢引き上げ、住宅リフォーム助成制度、放射線対策など9項目を重点要望として予算に反映するように林市長に申し入れをして参りました。
 今回林市長が提案された予算案は、部分的には市民目線で前進面もみられます。しかし、「ダイナミックな投資を行うのは今だ」として、高速横浜環状道路建設や国際コンテナ戦略港湾整備など大型開発推進を優先させる一方、中学校給食の実施など市民が実現を切望している要求については投資しておられません。また、市民の関心の強い自然エネルギーへの転換の分野でも、積極性は見られず従来の域を出ていません。
 以下、順次、反対理由を述べていきます。

防災・減災の観点が不十分

 理由の1つ目は、防災・減災の観点が不十分なことであります。
 公共建築物等の耐震化として104億円を計上し、保育所、個人住宅など民間耐震化への支援も拡充しています。しかしその一方で、密集住宅地の対策などは想定されております直下型地震に対応するレベルとは到底言えません。多くの震災対策は、国の提示の域を超えておらず、本市の主体的な判断での対応がほとんどなされていません。
 密集住宅市街地の防災対策として、国の指定を受けて8年前にスタートした「いえ・みち・まち」改善事業について、対象の660ヘクタールのうち、住民合意の協議会ができているのはたった3割程度にとどまっており、住民の自主性任せになっている現状が明らかになりました。もっと市がイニシアチブを発揮して直下型地震に対応する密集住宅市街地の防災対策をテンポを上げて進めるべきときではないでしょうか。
 横浜駅地下街の防災対策については、本市の防災計画には地下街の防災対策の記載が一切なく想定もされていません。また、大地震等発生時、地下街滞在者全員に事態を緊急伝達できる警報システムもなく、海抜標示もつけられていません。今日明日にも地震が発生したらどうするのか、そういう切迫感をもった対応を求めます。
 道路局審査では、発災時に道路復旧の主体となる地元建設業者が減り続けており、中小業者が請け負う地域道路の整備や維持管理予算を増やすべきなのに、実際は高速道路予算だけが伸びている現状が浮き彫りとなりました。中小企業振興基本条例にも従って現状を正すとともに、中小の地元建設業者の振興に力を注ぐように求めます。
 取り返しのつかない福島第一原発事故から、この横浜市にも放射性物質が降り注ぎ、放射能汚染対策が余儀なくされており、今回も22億円が計上され、市民要望も受け、一定の前進は認められます。しかし、文科省の放射線副読本は原発事故で放出された放射性物質による危険性についてはほとんど触れられておらず、放射線はどこにでもあって、あたかも心配する必要がないかのように描かれています。そもそも、なぜ放射線の教育をしなくてはいけなくなったか、そして福島の子どもたちはなぜ避難しなくてはいけなくなったのか、このことを教えることから出発するのがスジではないでしょうか。昨日の毎日新聞によれば、副読本を作成した文科省は「この副読本を使うも使わないも自治体教育委員会の自由だ」と言っています。この際、本市の判断として副読本の使用はやめるべきです。

林市長の言う「子育て安心社会の実現」を

 理由の2つ目は、市民のいのち、くらし、福祉の向上を最優先させるという視点が貫かれていないことです。林市長は子育て施策について、「子どもが健やかに生まれ育つための環境整備については最重要課題として取り組みます」とおっしゃっていますが、この環境整備というのは保育園の施設整備しかないのでしょうか。保育園整備費用を捻出するために保育料を平均8.4%も値上げするのは、子育て環境を悪化させる施策だとはお考えにはならないのでしょうか。そもそも保育料は保育そのものにかかる費用をもとに算出すべきもので、施設整備費は含むべきではありません。保育料の値上げは直ちにやめるべきです。日頃林市長は「子育て安心社会の実現」とおっしゃっていますが、言っていることとやっていることが全く違うと、厳しく指摘しておきます。
 教育の分野では、林市長は「先生がもっと子どもたちに向き合う時間をとれるように」といいながら、その一番の打開策である少人数学級には一歩も踏み出しておらず、国の施策の域を超えていません。横浜の子どもたちのために教員を増やすという真正面からの打開策を取るべきです。
 市民のいのちを守るという分野では、今年になって相次いで孤立死が発覚しています。その特徴は、介護者が病で倒れ、自分ひとりで生きることができない要介護者が後を追って亡くなるといったケースで、とうとう横浜市内の旭区でも孤立死が発生しました。今は公的なサービスが次々と打ち切られ、貧弱な福祉制度を家族への過大な負担を強いて「自立」や「自助」といった言葉でごまかされています。そして、家族が支え切れなくなれば、今回のケースのように家族もろとも亡くなってしまう。障害者が生きるために必要な支援までも「受益」として負担を強いているのが、今の現状です。林市長は「生活に困窮し、周囲から孤立した方々を支えるために、行政の責務として、セーフティネットを確保」するとおっしゃっていますが、その具体的な施策には踏み出してはいません。それどころか、生活保護行政で警察官OBの配置などは、最後のセーフティネットのハードルをさらに上げることにもつながりかねません。そもそも生活保護受給者が増えているのは、不正受給のためではありません。国による社会保障水準の低さ、年金水準の低さが、結果として最後のセーフティネットである生活保護でカバーしているといういびつな構造が今の状況ではないでしょうか。
 さらに、本市による国民健康保険料の大幅値上げ、介護保険料の値上げに加えて、後期高齢者医療制度の保険料の値上げ、年金給付の引き下げなど、お年寄りの財布から次々とお金をうばってしまうようなやり方がいま進められようとしています。こういう施策が次々と進められていくというのは、その結果として、市民生活がどうなるのかという想像力が欠如しているとしかいいようがありません。

大型公共事業にメスを入れよ

 理由の3つ目は、厳しい財政状況だと言いながら、大型の公共事業の見直しには一切、手を付けていないことです。林市長は、予算案の考え方の中で、「現役労働世代が減少し、活力を維持することが困難な時代に突入しています」としています。厳しい財政だといいながら、高速横浜環状道路建設に125億円、国際コンテナ戦略港湾推進に155億円、「エキサイトよこはま22」に2億円と、大規模開発は加速しています。その一方で、生活関連公共事業は軒並み削減しています。2011年度と2012年度の予算を比べると、主要地方道整備は71億円が69億円に、公園整備は153億円が139億円に、河川整備は42億円が39億円に、下水道整備は373億円が363億円にと、軒並み縮減しています。生産人口が減る社会、高齢者が増える社会の中で、一体どんな未来の横浜を描いているのでしょうか。これらを見ても、公共事業についてのお金の使い方が間違っているとしか言いようがありません。3・11の東日本大震災から、社会の有り様が問われ、価値観もゆらぎ、社会全体が大きく動いています。こういう中で一旦立ち止まって、これからの社会の有り様についてもっと深い分析が必要ではないでしょうか。
 これからの社会の有り様という点では、市長は新たな大都市制度の実現を述べており、来年度には体制も補強し、横浜版特別実施大綱を作成しようとしております。しかし、現状では市民への周知もほとんどされていない、また議会での議論も成熟したとはいえない状況の中で、大阪の議論に乗り遅れるなとばかりに、かたちばかり先行させるのはあまりにも拙速です。

土地開発事業失敗の責任の所在を明らかにして再発防止を

 理由の4つ目は、本市事業の明らかな失敗のツケを子どもの世代まで押しつけることであります。2013年には、土地開発公社の解散に向けて今まで公社が所有していた土地を本市がすべて買い取る予定で、その市債の総額は1300億円にものぼります。今まで、財政の厳しさから、市民利用施設の有料化やサービスの切り捨てなど市民に押し付けてきましたが、今度は桁の違う借金を市民に押し付けようしております。さらに、買い取ったMM21地区は、時価との差が既に400億円もの含み損になっています。この責任をだれも問われないというのは、なぜでしょうか。少なくとも責任の所在、明らかにして、同じ失敗を繰り返さないために、積極的に再発防止に取り組むべきではないでしょうか。

問題多い現行の海外視察はやめるべき

 理由の5つ目は、海外視察のあり方の問題です。
 私たち日本共産党は、海外視察は行くべきではないという立場ではありません。海外の先進事例にも大いに学ぶべきだと考えます。適切な料金で、適切な目的で行く海外視察は、行くべきだと思います。その際、全行程と領収書を公開し、報告書も早期に提出するのは当然です。
 私たちが、今の横浜市議会の海外視察のあり方で問題にしているのは3点です。
1つは、決められ方の問題。なぜ、本会議場だけでの机上配布のみなのか。必要な視察であればどうどうと審議すべきであります。
2つ目は、お金の出し方の問題。なぜ海外視察費という別枠で出すのか。必要な海外視察は、政務調査費で行くべきであります。
3つ目は、1期目で60万円、2期目以降は120万円という金額の枠の問題です。必要な視察であれば、1期生であろうとベテランの方であろうと、金額は変わらないはずです。過去5年の海外視察の報告をみても、2007年のアメリカ・ドイツ・シンガポール16日間で、1人当たりぴったり120万円。2008年には、ノルウェー・スウェーデン・ルーマニア・デンマーク12日間で1人当たり118万円。2011年、ドイツ・ガーナ・南アフリカ・ブラジル・アメリカ15日間で1人当たり119万円となっています。訪問する場所や日程が違うのに、1人当たり120万円の上限にほぼ近くなるというのはおかしくはないでしょうか。これでは、本市が各局で進めている使いきり予算を是正しようとメリットシステムで日々節減に取り組んでおられる当局の方々と対比して自らの襟を正すべきではないでしょうか。
 厳しい財政状態というのであれば、議員のみなさんも口をそろえておっしゃっています、そうであれば現行の公費による海外視察はやめるべきであります。

市民のくらしとしごとを支える施策で横浜経済を好循環に

 最後に、これからの横浜は、誰も経験をしたことのないような高齢化社会を迎えます。その備えをする際に、本市を支えている現役世代を痛めつけるような施策ばかりでは、社会の活力を奪ってしまいます。中小企業振興基本条例によって本市発注事業を市内中小企業へと循環させていく流れだけではまだまだ不十分です。私たち日本共産党は、横浜市民や地元中小業者の生活と生業を支える施策をさらに積極的に展開していくことで、市税収入を増やし、横浜経済を好循環へとつなげていくべきだと考えます。
 横浜市政が370万市民の期待と未来を背負って、前進し続けていくことを願って日本共産党を代表しての予算案に対する反対の討論を終えます。


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