- 日本共産党 横浜市会議員団 - http://www.jcp-yokohama.com -

「横浜市防災計画」(震災対策編)の修正にあたっての申し入れ

2012年8月28日

横浜市長 林 文子 様

日本共産党横浜市会議員団
団 長  大 貫 憲 夫

はじめに

 「横浜市防災計画」(震災対策編)の見直し・修正が行われています。
 3・11は、地震にかかわる新しい重要な事実と知見を私たちにもたらしました。それに加え、災害リスク世界一といわれる横浜・東京圏は、直下型地震、南海トラフ大連動地震等が切迫しているといわれており、対応が急がれます。このような状況下で行われる本市「防災計画」(震災対策編)の見直し・修正の事業は、きわめて重要な意義を持っています。
 「防災計画」は災害対策基本法に基づくものであり、法第1条は「国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災に関し、国、地方公共団体及びその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするとともに、防災計画の作成、災害予防、災害応急対策、災害復旧及び防災に関する財政金融措置その他必要な災害対策の基本を定めることにより、総合的かつ計画的な防災行政の整備及び推進を図り、もつて社会の秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的とする。」と定めています。 しかし、法に基づく国の「防災基本計画」は、災害対策の目的を「災害応急対策、災害復旧、その他等」に偏重し、「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する」ことや「災害予防」という最も肝心な視点を軽視しています。
 本市「防災計画」では、「市域における震災の予防、応急対策及び復旧・復興対策を実施することにより、市民の生命、身体及び財産を保護することを目的とし、被害を出さない地域・社会の実現を目標」と明記しています。しかし、内容は国の「防災基本計画」の欠陥をそのまま踏襲しているといわざるを得ません。そのため、現「横浜市防災計画」は、様々な修正・見直しが必要となります。
 「計画」の修正・見直しについては、「国及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として国土ならびに国民の生命、身体及び財産の災害をなくすることに寄与することとなるように意を用いなければならない。」とする災害対策基本法第8条(施策における防災上の配慮等)を活用し、新しい知見及び横浜市の特性を考慮した、真に「市民の生命、身体及び財産を保護」できる横浜市独自の「防災計画」とするべきであります。
 そのためには、従来の「防災の考え方」から発想の大転換が必要となります。
 そこで、日本共産党横浜市会議員団は、「横浜市防災計画」の修正にあたって、以下のとおり申し入れます。

「防災計画」の修正にあたっての申し入れ事項

1.「計画」の目的・目標は、「人命被害ゼロ」とする
 「横浜市防災計画」(震災対策編)は、「市民の生命、身体及び財産を保護する」ことを目的とし、「被害を出さない地域・社会の実現」を目標としています。(「計画」第1章第2節 横浜市防災計画「震災対策編」の方針 1計画の目的と目標)
 「生命、身体及び財産を保護する」「災害を出さない地域・社会の実現」とは、「一人の人命も失わない」、「地震は止められないが、災害は最小限に食い止める」ことであり、防災対策の原点と見るべきです。
 ところが、防災計画(震災対策編)の修正にあたっての「基本的な考え方」では、「災害の発生を完全に防ぐことは不可能である」、また、国・県の防災会議が減災目標に設定した「人的被害:50%削減」を<参考>として明示し、本市もこれに倣おうとしています。
 「災害の発生を完全に防ぐことは不可能である」との認識、及び国・県の防災会議が減災目標に設定した「人的被害:50%削減」は明らかに誤りです。
 特に、人命被害を半減できればよしとする「考え方」については、保護すべき市民の「命」に差をつけることになり、絶対に容認してはなりません。
 本市は、人命被害ゼロ=「ひとりの命も失わない」、「災害を出さない地域・社会の実現」を目標とすべきです。

2.被害想定は全面的に改定する
 「被害想定」は、「防災計画」の前提条件となるきわめて重要なテーマであります。新しい知見及び横浜市の特性(「横浜市防災計画」(震災対策編)第1部第2章 本市の概況・第1節 自然的条件・第2節 社会的条件)をふまえた横浜市独自の「被害想定」を策定しなければなりません。
 現計画は、直下型地震の震源域の深さが約10km浅く想定されること、本市沿岸部への津波の到達高さが従来想定の1m未満をはるかに上回ること、地震動や地盤変動が建築物におよぼす影響など、最新の知見が当然のことながら反映されていません。
 現計画の被害想定は、新しい知見と横浜の特性にもとづいて全面的に見直し、横浜市独自の被害想定として改定すべきです。

3.災害の未然防止対策を最優先に位置付ける
 災害予防にとって、何より重要なことが災害の未然防止対策であることは明確です。ところが、現計画は、第2部に災害予防計画を設けていますが、現況を追認した上で市街地再開発や高速道路整備などハード面の強化対策と応急対処計画等を中心に構成されており、災害の未然防止でもっとも肝心な「災害を出さないまちづくり」の視点、対策がほとんどありません。
 災害の未然防止対策では、市街地の耐震化・不燃化等の喫緊の課題や土地利用計画等の50年100年さらにもっと先を見通したまちづくり計画が不可欠です。このような災害の未然防止対策を「計画」の最優先に位置付け、長期的視点から推進する必要があります。

4.現場に役立つ内容・構成とする
 発災現場は市民の日常生活の場であり、発災時の対処は現場から始まります。そのため、「防災計画」は、市民の生活現場で有効かつ役立つ「計画」でなければなりません。
1)小学校区規模の地域防災計画を策定する
 災害に強いまちづくりの基盤は、市民の日常生活の現場=「地域コミュニティ」にあります。「災害に強いコミュニティ」を構築するために、それぞれの地域・施設等における災害危険箇所を明確にして、その危険要因を取り除く対策・計画が必要であります。また、地域住民を災害から保護するための住民それぞれの実情に即した応急対策等の計画が不可欠です。こうしたきめ細かい「地域防災計画」づくりを行政と市民の協働で、小学校区規模で全市的に展開する必要があります。
 さらに、防災マップは区段階にとどめず、小学校区単位の「地域防災マップ」を作成し、身近ですぐに役立つものにする必要があります。
2)全市民対象の防災意識の啓発・訓練
 すべての市民が「自分の身は自分で守る」という防災意識を持つことが、防災対策の基本となります。命を守るために市民自身が、住宅の耐震・耐火化、家具転倒防止措置など災害防止活動を自発的に行える、「防災意識」の啓発・徹底が決定的に重要です。その際、「自己責任論」の立場から、行政の責任(公助)を後退させてはなりません。防災意識の啓発、訓練を「計画」のなかに高く位置付け、行政の責任で全市民的にやりぬく必要があります。

5.目標と達成期日を明確にした「実行計画」とする
 横浜駅周辺地域(地下街含む)、木造住宅密集地域、不安定地盤地域(埋立・盛土等造成地域、崖・急斜面地域等)、危険物大量取り扱い施設集中地域(コンビナート地域等)など、横浜全市域を検証して災害危険地域・エリア・施設等を明確にし、個別の防災対策・計画を緊急に具体化する必要があります。
 なお、「計画」にもり込むべきより具体的な事項は、別途提出する日本共産党横浜市会議員団の「2013年度予算要望書」に記載します。

おわりに

  「防災計画」(震災対策編)は、大地震から370万横浜市民の「生命・財産」を保護するための「計画」です。その「計画」の修正・見直しの事業は、行政はもちろん、議会、全市民が立場の違いをこえて協働し、推進すべき最重要、緊急の課題です。

 日本共産党横浜市会議員団は、災害に強い安心・安全の横浜のまちづくりをめざし、全力をあげることを表明し、「防災計画」(震災対策編)の修正にあたっての申し入れとします。

以 上