議会での質問・討論(詳細)
2008年3月25日

【2008年第1回定例会】「予算反対討論」 関 美恵子

 私は、日本共産党を代表し、2008年度横浜市一般会計他16件の会計予算および7件の予算関連議案に反対し、討論を行います。 

150周年を市民全体で祝うことは意義あるが

 はじめに、新年度における都市経営の考え方とその手法についてです。
 市長は、所信表明で、開港150周年を契機に横浜を新たな段階に飛躍させる。この間の改革もそのためだと明言しています。横浜の新たな飛躍如何は150周年事業にかかっているわけです。
 150周年の主要事業として、ズーラシアでのヒルサイドと新港埠頭でのシーサイドのイベントに174億円、象の鼻地区整備55億円、マリンタワー再整備に31億円、日本丸メモリアルパーク再整備に7億円、赤レンガ倉庫バルコニー設置に1億円などで、総額約300億円が投入されますが、うち111億円は財政調整基金からの繰り出しです。
 この基金は、年度間の財源の不均衡の調整や災害緊急時の財源として使われるもので、市長は「時限的な事業で問題ない」とされましたが、基金の性格から使い方として適切ではありません。
 また、この基金が予算計上していた市民サービスを削り、市民の痛みを伴って生み出された「剰余金」です。一過性のイベントなどに投入するこれだけの予算があれば、市民サービスや切実な市民要望実現の予算にあてるべきではないでしょうか。
 わが党も、開港150周年を市民全体で祝うことは意義あることと思いますが、福祉を切り刻み、市民に我慢を強いている時、これほどの財政支出と基金の取り崩しは問題です。 

企業のいいなりの行政は自治体の変質を招く

 次に、市政運営の手法として新たに打ち出された「共創」です。
 市長は、「新しい公共」として、さまざまな民間との協働を進めてきました。
 ところが、「必ずしも企業の力が十分に発揮されていない」として、今度は3年間の「共創推進事業本部」を設置し、指定管理者制度、PFI、ネーミングライツ、広告事業、構造改革特区、市場化テストを本部に集中させ、企業が連携しやすいルールの策定、コスト減でも企業によるサービスを低下させない行政の支援、企業提案の相談窓口の役割、企業との新たな連携手法の研究等を行うとしています。
 市長は、「行政の『これまで』の方法論は通用しない。今回は、特に企業との連携強化により企業の斬新な発想で活路を切り拓く。それが『共創』という手法だ」とおっしゃっているわけですが、これは、いいかえれば企業のいいなりに行政をかえ活路を開くということで、そうなれば、自治体の変質を招くことは必至です。
 また、本部設置の背景に、例えば指定管理者制度で福祉施設の指定管理者を受けた企業の契約途中の変更問題が続いたこと、企業指定したことによるコストメリットは出ているのか。市民サービスの向上でも企業任せでは困難といった理由もあると聞いています。
 これまでの企業との連携がどうだったのか、その検証もなく、企業との連携ありきで進めるのはあまりに無謀といわなくてはなりません。 

福祉・くらしに冷たい予算

 次に、新年度予算について反対の理由を述べてまいります。
 第一は、受益者負担の見直し等で、福祉・くらしへの冷たさは変わらないことです。
 わずかな年金がたよりの高齢者にとって、敬老パスは当面現行制度を維持したものの約3割の負担増の痛みとともに、後期高齢者医療制度の導入への市独自の支援策もないなかで、保険証を受け取った高齢者は「年寄りを厄介者扱いにし、早く死ねと言われたようだ」という怒りの声を寄せています。
 「市立病院等の分べん介助料」の値上げによる負担増の一方で、小児医療費の年齢引き上げは見送りです。福祉施設等への上・下水道料の減免は全廃となり、運営を圧迫します。
 国保の保険料滞納者は07年度11万1231世帯、うち年収200万以下が50%を占め、所得不明を加えると70%になります。医療費の全額払いとなる資格証明書発行は、窓口に来てもらうことで滞納者を減らし、改善に繋がると市は説明してきましたが、07年度も3万5740世帯に発行されています。滞納率も改善されないまま、医療が受けられないという深刻な事態を招いています。名古屋市は数名にとどめていますが、本市でも資格証明書の発行は見直すべきです。 

30人以下学級、中学校給食など切実な要求に背をむけたまま

 第二は、教育の問題です。
 横浜版学習指導要領が示され、具体的取り組みとして掲げられているのが「横浜の時間」で、各教科における道徳の重視、次に「小中英語教育」とあって、その後が基礎・基本の知識の習得や特別支援教育、不登校予防などとなっています。推進の具体化は9年間小中一貫カリキュラムで行うというものです。道徳の重視も驚きですが、義務教育で求められる基礎・基本の知識の習得の位置付けの低さに疑問を持たざるを得ません。
 一人ひとりの子どもたちに行き届く30人以下学級の実施もなく、教育の一環としての中学校給食も業者弁当の域を出ず、関係者の切実な要望から全く背をむけたままです。暑さ対策では扇風機の設置などわずかな前進はありましたが、耐震補強以外では学校特別営繕費は削減され、総じて子どもたちの教育環境・教育条件は悪く、予算を増額すべきです。
 市立図書館は、専門職の配置で、様々な分野の市民からの情報の提供要請にも素早く応えられると聞いています。あり方検討では、管理・運営を指定管理者に委ねることが示され、経費削減から専門職の配置が薄くなるなど、サービスの低下を招きかねません。直営で市民の期待に応えるべきです。 

水道料金滞納整理業務、区役所窓口戸籍電算化業務まで民営化

 第三は、公共サービスを株式会社に開放する民営化路線の問題です。
 新年度は公立保育所4園が民間移管され、09年度も移管4園の対策費が計上されていますが、株式会社の参入が社会福祉法人を上回る勢いです。学校給食調理業務、家庭ごみ収集業務、水道メーター検針業務の民間委託、新年度は滞納整理業務、区役所窓口戸籍電算化業務にも民間を参入させます。
 わが党は、福祉・教育の分野は、子どもやお年寄りを対象とした事業であり、採算を最優先する株式会社の管理運営には馴染まないとの考えから、その参入に反対してきましたが、保育園の外部評価などをみても、ますますその観を強めています。この間、訪問介護の最大手である株式会社コムスンが報酬不正請求事件を契機に撤退に追い込まれたことや、最近も東京都でも「株式会社日本保育支援協会」が開設した認証保育園が、職員を水増しし補助金を不正に受給したことで、都で初の認証取り消しになったということが報道されました。いずれも株式会社の参入のリスクの高さを示した事件といえます。
 水道料金の滞納から水道を止める場合でも、「命の水」として慎重な対応が求められるものです。市民のくらしに責任をもって市が直接関わる業務であり、滞納整理業務を民間に任せるべきではありません。また、区役所の窓口業務を民間従事者にモデル実施をさせていますが、職員が仕事の指示をしなくてはならず、かえって大変のようです。また、個人情報を扱う点では、その保護について市民の理解が得られたとは思えません。窓口戸籍電算化業務への民間参入はやめるべきです。

横浜駅周辺大改造で市がゼネコンや大手不動産などと二人三脚?

 第四は、ゼネコン・大企業の大型開発中心の公共事業に予算の配分を重点化していることです。
 京浜臨海部、みなとみらい21地区などへ進出企業などに助成金を交付する事業は、2億5000万円増の12億円をあてています。施設等整備費は前年度比3.2%減としたものの、高速横浜環状道路等整備に68億円、スーパー中枢港湾関連に94億円と突出させ、いろいろ動きはありますが、国が負担すべき羽田空港の再拡張事業に19億円を無利子貸付です。
 一方、公営住宅整備費はこの間、117億円、94億円、67億円と3年間で激減させ、市民要望の強い公営住宅新規建設はゼロのままです。公園、河川、下水道の各整備事業も前年比1割カットし、総額で72億円も削減しています。中小企業の仕事おこしにも繋がる「生活密着型」の公共事業は増額すべきです。
 横浜駅周辺大改造に44億円を計上していますが、この間明らかになってきたその計画は、中期計画の事業範囲をはるかに超えたものだということです。横浜駅大改造計画・計画づくり委員会の「中間報告」の完成イメージ図には、駅の東西連絡デッキや、駅東西地区に二つの巨大タワービルの建設が盛り込まれています。鹿島建設など大手ゼネコン5社と三井不動産、三菱地所などがつくった横浜都市再生推進協議会顧問に市長が、副会長に都市整備局長、理事に市の複数の局長が名を連ねています。今年2月に横浜駅周辺都心部再生ビジョンをまとめ、ビジョン「骨子」は市の「中間報告」を具体的内容で示すだけでなく、新たに首都高速道路の地下化なども提案しています。これでは、市がゼネコンや大手不動産、金融などと二人三脚で巨大プロジェクトをやるようなもので、そのために巨額の市費を投入することは問題です。
 横浜駅大改造計画、みなとみらい21事業と一体として進められる新市庁舎・関内地区等整備も新年度も33億円が計上されていますが、市民合意が得られているとは考えられず、反対です。 

“市民主体”を理由に本来市が進めるべき事業を市民に肩代わり

 最後は、市民主体の地域運営と区における地域自治の問題です。
 横浜市は、もともと市民運動の大変活発なところと聞いています。「自治」の精神をもち、市民が主体的に地域で活動でき、そのことが地域の活性化に結びつき、地域が発展していくことは誰しも願うところです。少子高齢化の進展に伴い、地域の新たな課題も発生し、課題解決に向けた取り組みが待たれているのも確かです。
 市も、地域運営と名づけて災害時の要援護者対策など、市民主体で「身近な地域・元気づくりモデル事業」を実施しているところですが、問題は課題の内容と行政の関わり方です。モデル事業に中心的に関わっている方から、「モデル事業を抱えて大変です。行政が手を引いたあとが心配です」と話を聞きました。市民主体を理由に、本来市が進めるべき事業を市民に肩代わりさせてはいないか。市民が自発的に決めた課題なのかどうか、疑問を感ぜざるを得ません。
 区における地域自治については、「協働」の成果をさらに「創造的改革」で展開させるとしていますが、市長の言う「創造的改革」は、特に企業の斬新な発想を地域自治に活かすということが考えられ、本来住民の発想で成り立つ地域自治の発展につながるとは思えません。

 わが党は、不要不急の大型開発事業を見直し、市民の切実な要望を実現するため「予算等の組み替えを求める動議」を提出しました。議員各位の真摯な検討を心からお願いし、動議に基づく予算に編成し直すことを強く求めて、私の反対討論を終わります。


新着情報

過去記事一覧

PAGE TOP