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■「決算議案反対討論」 大貫憲夫議員(2010.10.30)

 私は日本共産党を代表して、2011年度横浜市一般会計決算の認定に反対し、討論を行います。

放射線の危険性について誤った情報提供

 2011年度の市政運営は、3.11東日本大震災を受けて、震災対策のための緊急的課題にどのように対処したのかが問われるものでした。この問題では、補正予算で津波対策、災害救助用資機材の充実、市立保育所耐震化が計上されるなど、その規模や内容はまだまだ不十分であるものの、本市の耐震・防災の取り組みの姿勢が現れ、評価するものです。
 放射線対策では、強い市民要求に押され、小中学校の空間線量測定、小学校の給食食材、市内産農産物や流通食品などの放射性物質検査など、結果的に他都市をリードしました。しかし、8月に配布された「広報よこはま 震災対策特別号放射線特集」や、小中学校の児童・生徒の副教材に使われたリーフレット「放射線について学ぼう」は、これまでの国の原子力安全神話に基づき作成されたものであり、市民や児童・生徒に放射線の危険性について誤った情報を提供したことは、放射線対策での汚点と言わざるを得ません。

構造改革路線と同じ立場の「選択と集中」

 一般会計決算全体については、市長のいう「選択と集中」が前中田市長の新自由主義に基づく構造改革路線と同じ立場で行われており、市民の目線とは大きくかけ離れたものと言わざるを得ません。以下、評価すべきものは正当に評価し、批判するものは市民生活を守る立場から指摘します。

待機児解消とともに保育の質の保持を

 市長は2011年度予算で、その基本政策の第一に「子育て安心社会の実現」を掲げ、なかでも保育所待機児童対策を重視されました。
 その結果、2012年4月1日現在で待機児童数は179人となり、対前年比で約82%減少したとのことです。横浜保育室の保育料の軽減助成などについては評価しますが、定員外入所などの詰め込み、これは保育環境を悪化するものであり、さらには算出基準を変えてまで減少率を大きく見せかけたことについては市民を欺いたことになります。待機児童解消のために引き続き認可保育所を増設するとともに、保育の質を高く保つことが求められ、その観点からも市立保育所の民営化を進めたことは問題です。

遅れている子育て施策

 子育てについては、教育条件整備として市立小中学校の教室のエアコン設置を進めたことは、大いに評価するものです。しかし、中学校給食の未実施、小学一年生にとどまった35人数学級、正規教員不足による「臨任」雇用の常態化、小児医療費の無料化などの遅れは、子育て全体に予算を「選択と集中」したとはとてもいえません。

敬老パスの値上げ、強権的な滞納整理、3年連続の国保値上げ

 基本政策の2では「市民生活の安心・充実」を掲げましたが、実際にはそれとは全く逆のことが実施されました。いっせい地方選挙後、担当局長を定年延長させてまで市長が最初に手がけたのは、平均11%の値上げとなる敬老パスの利用者負担増の押し付けでした。
 さらに生活に苦しむ市民を追い詰めたのは、住民税や国民健康保険料などの滞納者に対する強権的な債権滞納処分です。もちろん支払う資力がありながら故意に滞納する場合などについては厳しい対応は当然です。問題なのは、納付の意思はありながら様々な理由で納付が困難な場合です。私が相談を受けた方の例では、住民税の滞納処分として給与が入金されている銀行の通帳を差し押さえられ、全額換金され、食べるものを買うお金もないというものでした。調べてみますと、滞納処分の執行でその生活を窮迫させる恐れがあるとき滞納処分の執行を停止することができるという国税徴収法153条、地方税法15条に該当することが分かり、区役所に滞納の残額についての処分を停止させました。このように、滞納者の話や事情もよく聞かず、有無も言わせず機械的に滞納処分をしているということが本市の強権的な滞納整理の実態です。
 国保料は3年連続しての値上げです。決算額では、ひとりあたり9368円、10%も増加しています。国保料自体が高すぎるのです。国保料を収めるのが困難な時には、積極的に分納や救済制度を適用することが必要です。
 債権管理を扱った監査報告書でも、未収金の回収は公平性を確保するためにも努力が必要とした上で、「様々な理由で納付が困難な方への配慮は欠かせず、このために、徴収猶予や減免等の救済制度が準備され、分かりやすく親切な説明と広報をするように」と記載されています。監査報告が指摘しているように、その説明が市民の立場にたって、親切・丁寧にされていなことが最大の問題です。

コスト削減ありきの公共施設のあり方検討委員会の設置

 市民サービスの点では、公園プール、野外活動施設などについて横浜市公共施設のあり方検討委員会が設置されましたが、これはコスト削減の観点のみから施設の集約や廃止、利用料の見直しを検討する目的で設置されたものといわざるを得ません。まず、コスト削減ありきではなく、それぞれの施設の設置目的に沿って市民利用を促した上で、市民の声をよく聞いて今後どうするかを検討すべきです。

企業誘致政策は必ずしも横浜経済の内発的発展に寄与していない

 次に、横浜経済の活性化についてです。
 2011年9月、中小企業振興基本条例に基づいて2010年度の取組状況報告書が始めて議会に提出されました。これは画期的なことです。経済局をはじめ各区局の努力を高く評価します。さらに、精度を高め、本市の中小企業の発展に寄与することを期待します。
 今年3月、本市の経済を大都市型として発展させるためには、市内中小企業による内発的発展を積極的に行い、循環型経済の振興を進めることが一層求められているという「横浜経済の内発的発展」実態基礎調査報告書が経済局から出されました。その視点からみれば、現在行っている企業誘致政策は必ずしも横浜経済の内発的発展に寄与していません。2011年度決算での企業立地促進条例認定企業に対する助成額は22億8000万円にのぼっています。2011年1月、それまで事業を開始している認定企業54社を対象に経済局が行ったアンケート調査では、「市内発注を増やせる分野があるか」という問いに対し、立地企業の54%はノーと答えています。これでは、この条例は求められる横浜経済の内発的発展には機能していないことになります。中小企業振興基本条例の立場から、条例認定企業に対し市内発注の分野を大幅に増やすよう強力に要求すべきです。企業誘致について発想の転換が必要です。市内中小企業の振興による市場の拡大が市外から大企業を呼び込むという方向性を確立することが必要です。内発的発展に寄与の低い現在の企業立地促進条例は廃止すべきです。

中小企業振興基本条例の具体化として、各区に経済振興課の設置を

 決算審査でわが党は、各区に経済振興課を設置するよう要求しました。横浜経済発展の基礎は、各区を中心に地域の産業振興が基本です。金沢区から経済局に対し、区の産業振興のために係長と予算をつけてほしいとの要求がだされたと聞いています。中小企業振興基本条例の具体化として、少なくともものづくりの中小企業が数多く立地している都筑区、港北区や鶴見区、金沢区、さらには港南区、戸塚区、旭区など本市の副都心が位置する区には、モデルケースとして経済課を早急に設置すべきです。

大都市制度の検討ではなく住民自治を高める取り組みを

 次は、庁内体制の整備についてです。
 大都市の能力にふさわしい権限と財源を備え、日本全体の活力につながる取り組みを生み出し、市民サービスを向上させていく大都市制度を実現するとして、大都市制度推進室を13人の体制でスタートさせました。しかし、市民目線で考えた時、横浜に内在する大都市問題とは何かという視点が欠落しています。最大の問題は、行政が遠すぎて身近な問題が解決しないということです。2004年に改正された地方自治法に基づいて区自治協議会を設置するなど住民自治を高め、市民との協働を発展させていくことが重要です。橋下大阪都構想や黒岩神奈川県独立構想などに右往左往するのではなく、しっかりとした市民自治を定着することが今求められています。

自主性のない消極的なエネルギー対策を改めよ

 次は、温暖化対策統括本部の設置についてです。
 2011年度は、地球温暖化対策の事業本部を統括本部に昇格させました。地球温暖化対策は地球上の全ての生物の問題であり、本市は日本最大の政令指定都市としてわが国の地球温暖化対策をリードしていく責務があります。決算審議で明らかになったのは、本市の温暖化対策は、スマートシティプロジェクトなど個々の先進的な施策は散見されるものの、おおもとのエネルギー政策は国の動向に左右されるという、いたって自主性のない消極的なものだということです。圧倒的に多くの国民が原発ゼロを望んでいます。積極的に電力エネルギー源を原発ゼロと設定し、そのため増加する温室効果ガス排出を凌駕する節電運動を大展開し、同時に太陽光発電など再生可能エネルギーの設置目標を定めて積極的に進めるべきです。そのためにも脱温暖化条例を制定し、本市の決意を内外に示すことが必要です。

問題多い自由社・育鵬社版教科書

 最後に、教科書問題です。
 2011年8月に育鵬社版の公民と歴史教科書が採択されました。これらの教科書は教科書取扱審議会で評価が低かったにもかかわらず、この両科目に限って、6人の教育委員中4人が多数決で押し切ったことは、到底、市民の理解を得られるのものではありません。
 2011年度に入って自由社版歴史教科書に掲載されている年表の盗作問題や記述の間違いが発覚しました。それにも関わらず市教育委員会として、何ら訂正もせず放置してきたことは、教育としてあってはならないことです。神奈川県教育委員会は今年6月、文部科学省に対し「教科書記述の正確性を確保し、生徒の学習を質的に保障するため、教科書発行者に対する訂正申請の勧告を行い、現に使用している学校への訂正通知を促すこと」という要望書を提出しています。何よりも自由社版歴史教科書を使っている子どもたちが不幸であり、即刻回収し、別の教科書を配布すべきです。
 以上で、私の討論を終わります。

◎白井議員の質問と答弁は次の通りです。