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自由社版歴史教科書使用の是正と副読本「わかるヨコハマ」再改訂に関する申し入れ

2012年11月29日

教育長 山田 巧 様

日本共産党横浜市会議員団
団 長  大貫 憲夫

 現在、市内8区(港北、緑、都筑、青葉、旭、港南、金沢、瀬谷)の市立中学2・3年生が学んでいる歴史教科書は、自由社版です。
 自由社は、2010年度教科用図書検定に際しても2008年度に続いて中学歴史を申請、文科省は、審査のなかで明らかになり、「不正確である」「誤解する表現」「理解しがたい表現」、「誤解するおそれのある表現」「誤りである」「表記の基準によっていない」という検定意見を付した欠陥部分が適切に修正されたとして合格としています。修正されたとしている欠陥部分10か所のうち、8区で使用中の2008年度検定合格の教科書と同一の記述が9か所、もう1か所がほぼ同じ記述です。
 教科用図書検定規則では、「誤記等発見した時は、発行者は、大臣の承認をうけ、必要な訂正を行わなければならない、また、学習を進める上で支障となる記載等を発見したときは、発行者は、大臣の承認を受け、必要な訂正を行うことができる」とされています。また、供給を完了している図書の訂正内容は使用している学校長に通知しなければならないと定めています。
 ところが自由社は、今に至っても、この現在使用中の教科書の訂正手続きを怠っています。市教委もこの規則を盾にして、動きようがないとして、放置しています。文部科学省が欠陥として訂正を求め、自由社も応じた記述部分を、8区の2・3年生は正しいとして学んでいるのです。被害者はこの生徒たちです。
 本年6月、神奈川県教育委員会は、発行者に訂正の勧告ができる文科省にたいし、「発行者の社会的責任と自覚をあらためて促すよう」その権限行使を求める要望書を提出しています。県教委は、教科書について、学校における児童生徒の学習を保証する重要な要素のひとつとし、文科省の検定基準が記述の正確性に言及していることに照らし、教科書会社は、最新の情報に更新し正確性の確保に努めるべきであり、それが児童生徒の学習を支える発行者としての責任と自覚であると論じています。
 横浜市教育委員会においても、「平成24年度横浜市教科書採択の基本方針」で、「教科書は教科の主たる教材として、学校において使用が義務づけられており、学校教育において極めて重要な役割を果たしている」と、県教委と同じ位置づけです。
 文科省は、学校教育上重要な役割を有する教科書に結果として誤りが判明したのに、それを検定合格させた責任を問われることになる修正是正の勧告を回避しています。教科書会社と文科省が是正措置をしないとしたら、子どもたちを救うのは市教委しかありません。法は、教科書等の取扱いに関することを教育委員会の職務権限としています(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条)。市教委が事態の解決のために文科省や教科書会社の対応を待つのではなく、知恵を尽くして対応することが求められています。

 次に、中学生用副読本「わかるヨコハマ」についてです。今年度改訂された内容のうち、関東大震災と朝鮮人虐殺の記述が「誤解を招きかねない」として、「虐殺」を「殺害」に再改訂して2013年度版とし、今年度版は回収する、誤解を招く部分を正さず、改訂の決済を怠ったとして担当課長等の処分という一連の市教委の対応には、重大な過誤があり、懲戒処分は、いわれのない不当なものと言わざるをえません。
 「政府は、・・・東京に戒厳令を適用。デマを信じた軍隊、警察、在郷軍人会や・・・自警団などは朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い、また中国人を殺傷した。横浜でも各地で自警団が組織され、異常な緊張状態のもとで、朝鮮人や中国人が虐殺される事件が起きた。」この記述が、横浜でも東京と同じように軍隊、警察が関与したと読まれ、「誤解を招きかねない」というものです。しかし、横浜ではだれがやったかは特定されておらず、誤解を招く表現ではありません。
 また、副読本の改訂について従来は文書での伺いや決済はなかった経過からいって、改訂作業にかかわった関係職員が決済を求めなかったのは当然の成り行きです。
 以上を踏まえ、以下の申し入れを行うものです。

1.自由社版歴史教科書にかかわって
1)国には訂正勧告を行うよう、自由社には訂正を自主的に行うよう、強く求めること。
2)市教委として正誤表など配布し、子どもたちが間違いを学ぶことがないようにすること。
3)学校に修正箇所を知らせるなど、適切な授業を教師が行えるようにすること。

2.副読本「わかるヨコハマ」にかかわって
1)2012年度版は当該部分を再訂正せず、継続して使用すること。
2)職員の処分は取り消すこと。

以上