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■「議案関連質問」 白井まさ子議員(2012.12.6)

◎実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われましたが、わかりやすいように対応する質疑と答弁を交互に記載しました。

白井議員:私は、日本共産党を代表して3件の議案について質問します。

保育所の保育士配置と保育室面積は国基準を上回る市独自の基準を

 はじめに、市第55号議案についてです。
 条例案では、保育士の配置と保育室の面積はこれまでの国基準とほぼ同じです。乳幼児ひとりにつき、乳児室1.65平米、ほふく室3.3平米、2歳児以上1.98平米という国基準は1948年に、6畳一間で食事、寝起きを共にする庶民の生活実態を踏まえ制定されたものです。その後、国民の住環境は改善されましたが、保育所の面積基準は制定後一度も改善されていません。そのため、世界のなかで日本の立ち遅れは深刻です。0歳児一人あたりの面積を比較すると、日本は1.65平米、ドイツ3.5平米、フランス5.5平米、スウェ-デン7.5平米です。また、国基準は保育士配置についても低く、諸外国では保育士一人当たり3歳未満児で最大6名、3歳以上児で最大15名です。3歳児で20名、4.5歳児で30名もの集団で保育しているのは、日本だけです。日本の子どもがいかに劣悪な条件のもとにおかれているか、国が果たすべき公的責任を放棄してきたのかは、歴然としています。改善は急務です。これまで市長は、国基準についてどのように考え、本市の保育所を運営してきたのか、伺います。
 今回、本市独自に条例制定するにあたっては、より質の高い保育を目指して基準を引き上げる絶好のチャンスです。京都市や栃木県佐野市では、保育室の面積、保育士配置、園庭の面積基準も国基準に上乗せがあります。2009年、厚労省は、保育所基準について全国社会福祉協議会に調査委託し、その報告書は、食事と午睡のスペースで2歳未満児4.11平米以上、2歳以上児2.43平米以上が最低限必要で、これに遊びの面積を確保すべきとしています。保育士の配置基準も改善を迫っています。市長は、かねがね保育の質に言及され、議会で「子どもの健やかな成長につながる質の良い保育に取り組んでいく」と答弁されています。保育の質の確保には、保育室面積、保育士配置基準の引き上げが必須です。これまでの考え方にとどまらず、更なる上を目指すのか、どのような考え方に基づいて条例制定しようとしているのか、うかがいます。
 本市の民間園の保育士配置は、これまでは国基準に上乗せがあり、条例制定後もこの上乗せは続けたいとの説明を受けています。しかし、条例案では国基準通りの規定となっており、条例の施行を機に民間園で保育士の削減、運営費の縮減という事態が起きるのではないかと心配する声が寄せられています。
 子どもたちが心身とも健やかに成長発達できる環境づくりに直接責任を負うことになったわけですから、これまで裁量で行ってきた上乗せ施策を条例に反映することは当然の措置ではないでしょうか。そこで、これまで市独自に引き上げて実施している民間園での保育士配置について、条例に規定すべきと考えます。見解を伺います。

林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
 市第55号議案について、ご質問いただきました。
 国の基準に対する考え方および本市の保育所運営についてですが、児童福祉施設の設備および運営に関する基準は、児童福祉法の規定の基づき、国の省令で定められており、児童福祉施設の最低基準として保育所入所児童の福祉を確実に保証するための基準であると考えています。また、本市としては、保育の質を図る観点から、設備や職員配置に関して国の基準に上乗せし、保育所の運営を行っています。
 条例の制定に対する考え方についてですが、保育所の円滑な運営の継続のため、これまでの施設基準や運営の状況等も勘案し、条例案の内容を検討してきました。本条例案においては、国基準を原則として尊重しながらも、現行の保育の質の維持・向上を図ることができるよう、本市独自の基準として保育室や園庭の面積基準、第三者評価等の義務化の規定を盛り込みました。
 市独自の職員配置基準を条例で規定すべきということについてですが、本市では保育の質を向上させるため、予算上の措置として要綱に基づき、国基準に上乗せして保育士の配置を行っています。しかし、今回の条例は最低基準を定めるものであり、国基準通りの規定としたものです。なお、条例案では、最低基準を超えて設備を有し、または運営をしている児童施設においては、最低基準を理由としてその設備または運営を低下させてはならないと規定していますので、保育の質を確実に担保するよう努めていきます。

コスト削減目的の福祉パス有料化のどこが福祉の増進か

白井議員:次に、市第93号議は福祉特別乗車券条例の制定についてです。
 2009年度いっぱいで廃止された在宅心身障害者手当は、当時の説明では、制度の役割は終わった、「将来にわたるあんしん施策」へ転換するとされ、移動支援の再構築も重点課題として位置付けられました。親なきあとの生活の安心のためなら、障害者の高齢化、重度化に対応する施策拡充にまわるなら、と手当廃止を泣く泣く受け入れたと、何人もの障害者から伺いました。当然、移動支援策の拡充も期待されていたところです。それなのに、無料だった福祉パスが今回有料化です。手当廃止に続いての福祉サービスの切り下げ、負担増の押しつけです。これでは、手当廃止の理由がその場しのぎの言い逃れにすぎなかったという批判があがるのも当然です。結果として当時の説明と食い違い、相反するものであり、手当廃止の理由が成り立ちません。理解ができませんが、どう障害者に説明責任を果たすのか伺います。
 4月の常任委員会配布資料では、福祉パスの課題と見直し案が示されています。 事業費の毎年1億円増大が課題だとして、その課題解決策のひとつとして利用者負担金導入に矢印を記しています。扶助費増額を抑止したい意図が明白です。当局は、有料化の直接的理由を利用頻度の低い方に遠慮してもらうためとしていますが、あまりのも乱暴で稚拙なやり方です。意向調査を繰り返すなどしっかり説明すれば、不必要な人は交付を断ります。利用実態にあわせて事業者の協力を得れば、事業費の圧縮は可能です。
 今回の有料化提案は根拠があまりにも見当違いです。さらに、条例提案理由も到底理解不能です。今回の条例提案理由は、「福祉特別乗車券を交付することにより、障害者の外出を支援し、もって障害者等の福祉の増進を図るため」としています。対象を愛の手帳B2所持者へ広げるとはいえ、利用者負担金が導入され有料化される、これが福祉の増進とされていますが、どこが福祉の増進なのか、福祉の増進にどうつながるのか、伺います。
 対象者を拡充するための財源を既存の利用者に求めているのではないという説明を受けていますが、条例制定により結果として利用者に年間1800円という負担を求めています。市長の予算編成方針では、新規・拡充事業を行う場合、既存事業の見直しをすることをルールとしています。地方自治体の使命は、福祉増進であることは言うまでもありません。少なくても、このルールは福祉の分野においては除外されるべきですが、今回ルール通りの対応となっています。あまりにも福祉への無理解としか思えません。福祉にこそ選択と集中を行っていただきたいのです。せめて、福祉の分野においては、事業の拡充を図る際に既存利用者に新たな負担を求めるような手法については、方針の転換を強く求めるものですが、市長、どうでしょうか。

林市長:市第93号議案について、ご質問いただきました。
 有料化が在宅心身障害者手当廃止時の説明と相違するとのことですが、手当の財源を活用して将来にわたるあんしん施策の様々な事業を展開しています。現に、24年度予算は手当の額を上回っており、サービスの拡充も着実に進んでいると考えています。個々の事業の拡充については、事業の性質、将来のあり方などを判断し、最も適切な事業手法を選択しています。
 福祉パス負担金導入が条例制定理由である福祉の充実とつながる理由についてですが、今回の見直しにより、これまで交付できなかった軽度の知的障害者も新たに対象とすることができます。実際にご利用になる方にきちんとお渡しする仕組みができ、本制度を活用している方たちに対し、今後も安定してサービスが提供できることで、福祉の充実につながると考えています。
 既存利用者に負担を求め、事業の拡充を図るような手法は方針転換すべきとのことですが、厳しい財政状況でも支援を必要とする人は増加しております。今回の見直しでは対象者を拡大する一方で、負担金導入により真に必要な人への交付を図り、制度拡大と同時に、市費負担の抑制も図ります。金額については、負担感に配慮し、低く設定しています。それぞれの事業に応じた最適な施策を実施することで、サービスの拡充を図ってまいります。

小規模連続開発の抑止につながる開発調整条例に

白井議員:市第105号議案は、横浜市開発事業の調整等に関する条例の一部改正です。
 事業者が行う開発行為や宅地造成において、事業区域を分割して、開発許可を要さない小規模の事業を連続して行い、本来必要な公園・緑地や遊水池などの公共用地の提供等をのがれるやり方、いわゆる脱法的行為により、住環境が良好に確保されないケースが多発しています。わが党はこの間、大貫憲夫団長を中心に議会で取り上げ、解消を求めてきました。従来の条例の運用では、いわゆる脱法的行為に歯止めをかけるところまでは有効に働かなかったわけですが、市長は従来の条例の問題点をどう認識され、どう対応してきたのか、伺います。
 私の住む港北区内で新横浜駅に近いところで、現在急斜面に小規模ずつ連続して進行中の宅地造成現場があり、訪ねてみるとすでに十数軒分譲された所は公園がなく道路上で子どもたちが遊んでいました。住民の話では、5年前に90件規模になると説明を受けているとのことです。現地では、ショベルカーで道路を作っていました。その場所は、2008年の図面では宅地となる計画でした。小規模連続開発が繰り返されているため、本来ならば設置されてしかるべき公園も遊水池もありません。急斜面の下の住民から、豪雨の際、新設された擁壁の内側に雨水がたまり、流れ出た水が側溝から溢れ、道路を流れて大変不安だったと聞いています。
 これまでの条例では、宅地の造成が完了する時点までが条例適用期間でした。造成が完了した後は条例が及ばないため、造成した宅地の一部を壊して、道路を延長して、連続して宅地を造成することが問題となっていました。今回、条例適用期間を、造成した宅地に建築物がすべて立ち並ぶまでと定めます。これにより道路をさらに延長して宅地を造成しようと思ったら、建てた家を壊さなくてはなりません。これで、港北区内の例も含めて、脱法的な分割連続開発に歯止めをかけるものと思われます。
 そこで、今回の条例改正はどのような効果を期待しているのか、伺います。
 より効果を上げるためには、今回の改正内容にとどまらず、鎌倉市のように一体的利用がされていた土地を定義することや、事業区域の隣接地で行う事業は原則一つの事業として扱うことをルール化することを提案しますが、どうでしょうか。
 今回の改定内容には、開発事業者、住民及び横浜市が協働して良好な都市環境を目指すという条例の趣旨に沿った運用を徹底するために、より早い段階で開発構想を住民に示し、住民意見を計画に反映しやすくすることも盛り込まれています。地域住民は、開発事業についてはしろうとであり、事業者に丸め込まれて泣き寝入りとならないためにも、行政による市民啓発やサポートが不可欠です。住民が身近な区役所で相談できる窓口を設置するなど体制強化が必要ですが、そのお考えはないのか、伺います。

林市長:市第105号議案について、ご質問いただきました。
 従来の条例の問題についての認識と対応ですが、一体の土地を分割して開発する場合、小規模な開発事業は条例の対象としていないため、手続きを経ないで連続して開発を進めるケースがありました。このようなケースの中には、緑地などの設置基準の適用を免れる計画もあったと認識しております。今回の条例改正に向けた検討を行ってまいりました。
 改正により期待される効果ですが、市街化区域における開発区域の面積が500平方メートル未満の小規模な開発事業を条例の対象に加えました。さらに条例の適用期間を宅地の造成工事の完了から、予定されている建築物の建築工事がすべて完了する時点まで延長しました。そのことで、緑地などの設置基準の適用を免れる計画の抑止になると考えています。
 鎌倉市のような手法についてですが、どういった手法が効果的であるかについては、地域の実情を踏まえて検証することが大切であると考えています。今回の改正は、小規模な連続開発の抑止という視点では、鎌倉市と同等の効果があると考えています。
 区役所での相談体制の強化ですが、開発事業に関する意見や相談は建築物や工事に関するものまで様々であるため、具体的な相談は実際に開発事業者との協議など条例の手続きを行う建築局が対応することが適切であると考えます。一方で、地域にふさわしい開発事業を進めるためには、住民の方々の意見を聞く場をしっかり確保し、開発計画に反映しやすくなることが重要であるため、区局が緊密に連携し、きめ細かな対応を図っていきます。
 以上、白井議員のご質問にご答弁申し上げました。