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■「現年度議案関連質問」 古谷やすひこ議員(2013.02.15)

古谷議員:日本共産党を代表して、第一回定例議会に提案されている議案及び補正予算案について、林市長に順次質問してまいります。
はじめに、補正予算議案についてであります。

大型公共事業で市内経済と雇用創出にどれほどの効果があるか

今回の補正予算案は、「国の緊急経済対策を踏まえ、国費を最大限活用する」とされておりますが、国費ももちろん入りますが、市債を経済・市民生活対策補正として152億5300万円増やすこととなります。結果、2012年度の決算ではプライマリーバランスは完全に崩れてしまい、市税も37億円投入されることとなります。
そもそも、今回の国の大型補正予算は、安倍自公政権が進めようとしております国土強靭化の方針として、不急不要の大型公共事業に突出させております。その方針どおり、もっとも忠実に施策を進めているのが今回の横浜市の補正予算であるといえます。しかも、今回の10兆円を超える国の補正予算の財源の半分以上は国債であります。
仮に、経済・市民生活対策として367億円もの補正予算を執行することで、市内経済や雇用環境が確実に前進し、その経済波及効果や雇用創出効果が153億円の市債発行のマイナスを補って余りあるものであれば、まだ納得ができます。国では、実質GDPの押し上げ効果は2%、雇用創出効果は60万人と、補正予算の経済効果を概算しております。市長は、1月15日の定例記者会見の中で安倍内閣の経済政策について、こうおっしゃっています。「それだけ借金を多くしてやろうというのですから、間違いなく経済成長につながらなくてはいけません。経済がまわるようになるのかということはしっかり考えていただきたいですし、国民の前でここまでやるからにはしっかりと説明をしていかないといけないのではないかと思います」と、こう答えられております。横浜市も同じであります。市民のみなさんにこれだけの借金を背負わせるわけですから、しっかりと説明責任を果たすべきだと考えます。
今回の補正予算で、どれほどの市内経済と雇用創出に効果があると推計されているのでしょうか。また、中小企業振興基本条例に基づいて市内中小企業への経済効果はどのくらいだとお考えなのか、伺います。

林市長:古谷議員のご質問にお答えいたします。
市第181号議案についてご質問いただきました。
今回の補正による市内経済への波及効果などについてですが、国の緊急経済対策補正を踏まえ、国費を最大限活用しながら、防災対策や老朽化対策など必要な施策を進めるとともに、25年度の事業量を一部前倒しして実施することで、年度当初から切れ目なく事業を実施することが可能となり、施策の効果を早期に発揮させることができます。また、国の補助事業に合わせて、公園整備事業や学校特別営繕費など市単独事業を追加することで、さらなる事業量の確保を図り、市内中小企業への発注量の増加など、市内経済の活性化につなげていきます。

なぜ医療・子育てメニューは実施しないのか

古谷議員:今回の国の緊急経済対策の中では、「暮らしの安心・地域活性化」として在宅医療やあるいは地域の医師確保の推進など医療・子育て分野のメニューがありますが、なぜ本市の補正予算の中にはそのようなメニューがないのでしょうか。例えば、保育士の人材確保など子育て支援の充実こそ、これだけ待機児童を解消しようと尽力をされていた市長が前倒をしてでも実施すべきメニューだと考えますが、市長のお考えを伺います。

林市長:保育の人材確保についてですが、保育士の育成や人材確保は保育の質の向上において重要ですので、すでに職員研修や就職説明会などを実施しています。国の緊急経済対策は現在国会で審議中ですが、待機児童解消のための保育士の確保の項目もあげられています。しかし、現時点では具体的な実施方法等について示されていませんので、今後の国からの通知を踏まえ、検討していきます。

大型事業から小規模・生活密着型公共事業に抜本的転換を

古谷議員:今回の補正予算案の中でダントツに多いのが、高速道路整備中心の街路整備費・道路費負担金、あるいは国際コンテナ戦略港湾関連であります。その額は171億円にもなり、全体の半分近くを占めております。私も高速道路を使わないわけではありませんし、高速道路網の整備が進み、素早く短時間でどこにでも行けるようになれば、それは便利だとおもいます。
しかし、厳しい財政状況のもとで、人口減少社会が進む中で、高速道路整備よりももっと優先されるべきことは他にもあるのではないでしょうか。さらに、既存の道路や橋、トンネルなどの公共構造物の維持管理補修に莫大な予算がかかることが問題になっています。例えば橋梁でいえば、道路局が所管している1700橋のうち、対策がまだ未実施な一般橋梁が1093橋。対策が必要な橋梁を選定の上、長寿命化を行えば、今後50年間で約3700億円の維持管理費が必要と、道路局では試算しております。これを単純に50年で割りかえすと、年間で約74億円もの費用が必要になります。一般道路やトンネルなどを加えると、どれほど莫大な金額になるのでしょうか。
市長、横浜市も人口減少の社会にまもなく入ります。この老朽化問題を契機に、高速道路や国際港湾など大型公共事業のあり方は見直すべき時が来ているのではないでしょうか。何十年も前に策定した道路計画を忠実に進めていくことで、本当に次の世代を担う子どもたちは恩恵を得ることができると言い切れるでしょうか。膨大なメンテナンス費用の捻出だけでも大変なのに、新たなインフラを造れば将来その維持や管理が新たに必要になり、さらに横浜市の負担を産み、市財政を圧迫することは必至です。そこで、公共投資をしても経済効果は一時的で、将来の借金返済まで考えれば、乗数効果としてはマイナスだと考えますが、市長のお考えを伺います。
いま日本は、東日本大震災の復興や首都圏直下型地震等への備えの問題、また長期デフレ不況に見舞われているなど、様々な重大な問題を抱えています。そういった時代背景の中で、従来通りではなく、時代に適応した新しい公共事業のあり方が求められていると思います。当面は、新規事業は抑制し維持更新へ、そして大型事業から小規模・生活密着型公共事業に抜本的に転換することで、市民のみなさんの命と暮らしをしっかりと守り、地域経済の再生に役立つ公共事業を進めなければならないと私たちは考えています。これについての市長のお考え、伺います。

林市長:ハード整備に重きをおいた公共投資はマイナス効果が大きいとのことですが、補正予算に計上した学校耐震などの防災対策をはじめ、橋梁や港湾施設などの老朽化対策、さらには遅れている道路ネットワークの整備促進はいずれも本市として進めていかなければならない事業です。こうした事業について、国が特別に措置した臨時交付金などを最大限に活用し、かつ財政規律もしっかりと守りながら、積極的に推進することで市民生活の安心安全を確保します。
当面、公共事業は、小規模・生活密着型公共事業に抜本的に転換すべきとのことですが、横浜環状道路や港湾施設などの本市の骨格的な都市施設については、将来にわたり市内経済の活性化を支えるとともに、災害時の広域的な救急救命活動などに不可欠でありまして、防災上も重要な施策であると考えています。また、市民生活の安全安心につながる建物の耐震化や道路改良や公園の改修など身近な施設についても優先度の高い施策として位置づけています。厳しい財政状況にあっても、選択と集中により積極的に投資すべきところには投資していくことが大切であると考えています。

「誰ひとり亡くならない街を目指す」を震災対策条例の基本理念に

古谷議員:続いて、市第162号議案「横浜市震災対策条例の全部改正」についてです。
この条例は、「市民の生命、身体及び財産の安全を確保する」ことを目的として平成10年に施行されましたが、今回防災計画「震災対策編」の修正および震災対策の見直しの検討結果等を踏まえ、改正されるものであります。本条例に基づいて定められた修正前の防災計画でも、震災への備えの課題いくつも列挙されていましたが、なかなか具体化が進まない項目もいくつも見受けられます。いくら条例改正をして、防災計画のアクションプランを策定したとしても、その財源、どうやって裏付けしていくのか、また行政区単位での防災計画の具体化・実行を進める人員体制の強化が必要だと考えますが、市長の考え、伺います。
区域の6割が木造密集市街地で占められております東京の荒川区では先日、新年度予算案の発表の中で、「誰ひとり亡くならない街を目指す」と区長が強調されておりました。昨年の決算特別委員会の総合審査で、我が団の岩崎議員への質問に対して市長は、「現行計画でも人命被害を含めて被害を出さない地域・社会の実現を目標としています」と、答弁されております。今回の条例全部改正を契機に、「市民の命を守りきる、誰ひとり亡くならない横浜市を目指す」とことを基本理念に掲げることを提案しますが、市長のお考えを伺います。

林市長:市第162号議案について、ご質問いただきました。
アクションプランの財源確保ですが、防災減災の取り組みは、常日頃からの備えが重要であり、市民生活や経済を守るため、厳しい財政状況にあってもスピード感をもって着実に取り組む必要があります。そのために、国費等の積極的な活用はもとより、不断の行政改革、財政の健全性維持を踏まえた市債の活用、公有財産の棚おろし・活用などによる財源確保に取り組んでいきます。
また、各区の人員体制強化の考え方ですが、25年度は危機管理室を中心に、地震・防災戦略の推進体制を強化しますが、各区では新たに兼務体制を敷く地域防災支援担当が要となって、地域のみなさま方との調整を進めます。これを危機管理室が支え、区と連携することで、全庁一丸となって取り組んでいきます。
「誰ひとり亡くならない街」を条例の基本理念とすべきとのことですが、今回提案させていただいた条例案におきましても、市民の生命、身体および財産の安全を確保することを目的としており、目指すところは同じだと考えています。なお、防災計画では、被害を出さない地域、社会の実現を目標としています。

新施設開設前になぜ「いそごハイム」を閉鎖するのか

古谷議員:最後に、市第166号議案「横浜市母子生活支援施設条例の一部改正」についてであります。
これは、磯子区にある「横浜市いそごハイム」を3月いっぱいで廃止するに伴う条例の一部改正です。現在横浜市には、本施設を含めて8か所155世帯の定員で、母子生活支援施設が運営されております。今回廃止される「いそごハイム」をはじめ、どの母子生活支援施設も稼働率は極めて高く、いつも定員いっぱいの状態です。計画では、この「いそごハイム」廃止と同時に同規模の施設が港南区にオープンする予定でしたが、民間事業者の事情で新施設のオープンが1か月のびてしまいました。
私が先日「いそごハイム」を視察した際には、入居世帯はゼロであります。それまで入居していた19世帯のうち、他の母子生活支援施設に移動した世帯はたった1世帯、その他はほとんどが民間アパートへと転居することになったそうであります。母子生活支援施設は、精神不調やDV被害を受けて支援が必要な母子世帯の自立を支える施設ですから、本来であれば、自立のほか引き続き施設で暮らすことも選択できることが望ましいと思います。しかし、民間業者の事情で新施設のオープンがずれてしまったわけですから、公的施設の役割として廃止を延長するなど入居者に配慮して柔軟な対応が必要だったと思いますが、市長の考え、伺います。
今後、「いそごハイム」の土地建物の利活用を検討すると聞いていますが、今の厳しい社会状況の中、精神不調を訴える人が増え、支援の必要な母子世帯も増えております。それは現施設の入居率の高さからも伺えます。市長は折に触れ、女性への支援をおっしゃっているわけですから、ぜひこの「いそごハイム」の土地建物を利活用して、同じ機能の施設を作ることを要望しますが、市長の考え、伺います。
最後に、市内にある8つの母子生活支援施設のうち、今回の「いそごハイム」がなくなれば、横浜市の直営施設は唯一「みどりハイム」だけとなります。民間施設の質を担保する上でも、横浜市が直接運営する施設が範を示すことが必要です。特に、人を相手とする福祉サービスでは、直接サービスを提供する相手と行政が接する機会がなくなれば適切な施策展開もできません。母子生活支援施設としてのパイロット機能を果たすためにも、「みどりハイム」は引き続き公設で運営していくことを主張して、質問を終えます。

林市長:市第166号議案について、ご質問いただきました。
「いそごハイム」の廃止時期の延長についてですが、新たに港南区に移転・再整備する新施設は、開所時期が1か月遅れて5月となりました。しかし、「いそごハイム」の入居者のみなさまは民間のアパート等へ退所し、現在利用者はいらっしゃらないので、廃止時期の延長はいたしません。
「いそごハイム」の跡利用についてですが、現在の「いそごハイム」は居室が狭く、浴室も共同であるなどの理由から、建て替えます。現有地での再整備は住環境の向上等に必要な施設面積の十分な確保が困難なため、港南区に移転・再整備することにしました。廃止後の「いそごハイム」の跡利用については、25年度に現行建物の調査を行い、様々な利用方法の可能性について検討してまいります。
以上、古谷議員のご質問にお答え申し上げました。