議会での質問・討論(詳細)
2013年3月5日

■2013年度予算特別委員会「消防局」岩崎ひろし議員(2013.03.05)

地勢的・社会的条件から見た本市の災害特性は

岩崎議員:はじめに、市民の安心安全のために日夜尽力されている消防局のみなさんに、敬意を表しておきたいと思います。ご苦労さまです。
はじめに、横浜市防災計画「震災対策編」の見直しに関連して、消防局長に伺います。
横浜にとっては、3・11の教訓とともに関東大震災の教訓をくみ取ることが重要です。修正中の「計画」と現「計画」との違いは何で、どのように反映されているのか、伺います。

荒井消防局長:被害地域につきましては、被害の中心が金沢区などの南部地域から西区や中区などの中心市街地周辺に変わりました。その理由ですが、想定地震を前回の大正型関東地震の2倍のエネルギーを発する元禄型関東地震に変更したことや、地盤調査の精度が高まったことなどによります。被害量につきましては、火災による建物被害や死者数が大幅に増加しておりまして、その理由は発災時の気象条件のうち風速を平常から強風に変更したこと、強い揺れが木造住宅の多い地域に生ずることとなったこと、火災延焼の分析方法を阪神・淡路大震災の実績を踏まえたより厳しい手法に変更したこと等によるものでございます。

岩崎議員:それでは、横浜の地勢的・社会的条件から見た本市の災害特性はどのように捉えているか、伺います。

荒井消防局長:地勢的な特性としましては、沿岸部では埋立地をはじめ、標高が低く地盤が軟弱な区域もあるため、震度7の強い揺れが生じたり、液状化と津波による浸水の危険があります。
また、市内には多くの急傾斜地や崖地があり、強い揺れによる土砂崩壊の恐れがありまして、さらには内陸部でも川沿いなどの地域では液状化による建物被害の恐れがあります。
一方、社会的な特性として、高度成長期に住宅建設が行われ、現在の耐震基準を満たさない昭和55年以前の木造建物の密集地が市内各地にあります。そのため、強い揺れなどによる倒壊の恐れのあるほか、大規模な延焼火災となる危険がございます。

住民参加で「わがまちの防災計画」の策定を

岩崎議員:防災の効果を上げるためには、「計画」を災害特性に応じて具体化する必要があると考えます。地域別には区ごとに作るとしても、合わせてコミュニティー単位で、より現場に近いかたちで、「わがまちの防災計画」のようなものが、住民参加で策定されるとよいと思いますけれども、局長の見解を伺います。

荒井消防局長:町内会や自治会などのいわゆるコミュニティー単位で計画などをつくることは大変意義のあることだとは考えています。または、そうしたことは地域のみなさまが自主的に取り組むことが重要であると、一方では考えておりまして、25年度から地域の計画やハザードマップづくり、まち歩きによる避難経路の確認など、地域の様々な取り組みを支援するため、各区に新たな予算を配置することといたしました。こうした施策によりまして、地域による自主的な取り組みを積極的に支援してまいりたいというふうに考えております。

災害特性ごとに対策・計画が必要

岩崎議員:次に、災害特性に関連してですけれども、コンビナート災害対策編のように、埋立地・盛り土造成地・崖地など不安定地盤の地域対策、それから臨海部市街地が広範囲に及んでいること、これへの対策、木密地区等の広がりなど、こうした横浜の災害特性ごとに対策・計画が必要ではないかと思いますが、この点でも見解を伺います。

荒井消防局長:防災計画では、木造住宅密集地区における火災の延焼や、津波などの個別の災害への対応について規定をしてございます。また、区別の防災計画では、市の計画を基本としつつも、区の実情や地域性を踏まえまして、それぞれ区域の地形などの自然条件や都市構造など社会的な条件などにつきましても考慮した上で作成をしております。たとえば西区では、横浜駅周辺の防災対策としまして、多数の滞留者対策や帰宅困難者対策について規定をしてございます。
コンビナートの関係でございますと、石油コンビナート対策としましては、法定計画である神奈川県コンビナート等防災計画のほか、本市も独自の計画を策定しておりまして、県と連携を図りながら本市の特性にあった予防対策・応急対策などを行うこととしております。

岩崎議員:お答えがなかったんですけど、不安定地盤をどうするかとか、臨海部の対策をどうするとかという、そういう横浜の災害特性に見合った計画っていうのは、やっぱり考えておかなきゃいけないんじゃないかというふうに思いますので、これは意見として申し上げておきます。

地震・津波に弱い横浜駅周辺地下街

次に、横浜駅周辺地区の防災対策について、伺います。
横浜駅周辺地区は、本市の災害特性をいくつも併せ持っている特別な地区だと考えますが、防災対策の上でどのように捉えてられているのか、伺います。

山隈危機管理室長:横浜駅周辺地区につきましては、横浜駅に鉄道6社9路線が乗り入れておりまして、乗降客も1日200万人と多く、また東西に大きな地下街や商業施設などもあることから、常に多くの就業者や来街者がいらっしゃいます。また、先の東日本大震災では、横浜駅周辺地区に約6万人の方が滞留したとの警察発表もありました。こうしたことからも混乱防止対策をはじめとした震災対策、大変重要であると認識をしております。

岩崎議員:横浜駅周辺地区というのは、津波があった場合浸水するということが想定されています。そしてまた、震源が東京湾内の場合の津波の到達は3分と、これも想定されています。これでは避難も困難になります。また、横浜駅周辺の地下街は海水面下にあり、何らかの原因で床や外周の壁に穴があけば、一気に海水が流入するリスクを常に持っています。
そういったところで、防災上の観点から、百年二百年の長いスパンで将来を見た場合、将来の横浜駅周辺地下街の「あり方」をどのようにイメージされているか、局長の見解を伺います。

荒井消防局長:地下街につきまして都市施設の一貫としまして非常に利用者にとっても天候に左右されず都市空間として非常にメリットもございます。ただ一方で、ご指摘のような安全性の確保といった点につきましても、まだ取り組まなければいけない課題もあろうかと思いますけども、その辺につきましてはまちづくり全体の中で総合的に検討してまいりたいというふうに考えております。

横浜駅周辺地区の防災対策

岩崎議員:じゃ、次に今日お願いしてますので、危機管理監に伺います。
私が、2011年度決算・連合審査で、「横浜駅周辺地下街に海抜標示を設置すべきではないか」と質問した際に、危機管理監は「深さが何メートルの地下の場所にいるかということは、さほど問題ではない」と答弁されています。
地下の深いほど災害時の危険性、避難の困難性が増すのは自明のことであります。危機管理のトップである危機管理監の答弁としては、適切でないと考えます。先の答弁の真意がどこにあるのか、改めて伺います。

立花危機管理監:それでは少し丁寧に説明をさせていただきたいと思うんですが。基本的に、地下街というのは揺れについては強いというふうに言われているんですね。しかも地下へ深く行けば行くほど揺れが少なくなる。地面と一緒に揺れるから吸収されるんだと思いますけども。たとえば今回の3・11の仙台の駅は、駅舎は相当やられましたけれども、地下通路ていうのはあんがい無事たったとか、阪神淡路の時も同じようなことがありました。
ただし、安全かというと弱点がやっぱりあります。その弱点のひとつが水ですね。もう一つは火災だと思います。水は、ご承知のとおり横浜駅西口でも体験しておりますし。火災は地下街に飲食店なんかがあれば、そこから火が出るという可能性もありますね。そうすると、地下街が煙で充満するという心配があります。
ただ、私はそれ以上に重要な問題があると思うんですね。危険性が地下街にある。それは何かといいますと、パニックだと思います。大きな地震が来て、電気が消えちゃうかもしれませんね。予備電源があってもつかないこともある。そうすると真っ暗闇の中でみんないっせいに出口を目指して殺到すると。そういうことになると、将棋倒しになって死者が多数出るということも想定されると思うんですね。その方がむしろ怖い。
で、対策としてはどうしたことが必要かといえば、やはりこれは日頃からの訓練で、よく地下街を知った人が誘導して、速やかに出口へ誘導して、そこから高いところにまた誘導すると、こういうことが大事で、そういう訓練を現に事業者ですとかその駅とか一緒に訓練をしてるんですね。そのことの重要さを申し上げたいということで、この間の発言になったんですけれども、地下にいる方は自分が地下にいるということは承知しているわけですから、それが3メートルであれ5メートルであれ10メートルであれとにかくパニックを起こさず冷静に誘導に従って出口へ出ると、このことが大事だというふうに申し上げました。

岩崎議員:はい、よくわかりました。
続いて、危機管理監に伺いますが、先日、国土交通省が鉄道事業者に海抜表示設置を通知しました。これにより、JR、市営地下鉄、みなとみらい線の横浜駅には設置されることになります。
そこで、横浜駅周辺地下街の市が管理する「通路等の空間」、ダイヤモンド地下街をはじめとする「商業等の空間」にも設置する必要があると考えますが、どう対応するのか伺います。

立花危機管理監:国土交通省から各鉄道事業者に通知が出されたということは私も承知をしております。その通知は、民間の鉄道事業者とそれから国交省と協議会をつくって、ここ1年位検討してきた内容がありまして、それの報告書、協議会報告書というのがありまして、それを参考にして、たとえば避難誘導のあり方ですとか、それから避難施設までの略図ですとか、そういうものを掲げろとか、それから浸水の区間を指定して、そこで場合によっては標高表示をするとか、そういうことを、報告書を参考にして検討してくださいという通知が来ております。それは通常の表へ出ている鉄道の駅の区間で、3・11の時もそうでしたけども、表へ出ているだなんていってそこが標高が低ければ浸水するわけですね。ですからそういう表示をしたほうがいいでしょうという反省からでたわけですけれども。地下鉄なんかでも必要があればやっぱり検討しなきゃいけないのかなというふうには思います。
鉄道事業者も、いまいろいろ鉄道事業者とも話してますけれども、すでにそういうことを検討し始めておりますので、横浜市も地下空間管理しているところもありますので、鉄道事業者と一緒にその辺は検討すべきことがあれば検討していきたいと。まあ、いろんな意見を聞いていきたいというふうに考えております。

岩崎議員:よくちょっとわからない面があるんだけど、先ほど管理監、答弁されたように、あそこにいる人は地下にいるってことを知って地下にいるっておっしゃいましたけど、実際は違いますよ。自分がどの位置にいるかっていうのはあんまり自覚しないで地下にいますよ。だから、そういう説明をするとみんな驚きますから。あそこは地下なんですよというふうに言うと、みんな驚きます。だから、標示というのは非常に大事な意味を持っていると思います。そういう点で、今の答弁は前向きに検討するというふうに受け止めていいんですか。これちょっと確認しておきます。

立花危機管理監:もうひとつ付け加えておきますと、地下街の事業者は標示することについて、地下何メートルですよと標示することについて、地下っていうのは危険なところじゃないかというイメージ持たれちゃうという恐れもあるんですね。ですから、それについては反対する意見も結構あるっていうことをひとつ申し上げておきたいんですが。しかし、そうばかりも言っていられませんので、必要があれば検討しなきゃいけないと思います。
これは鉄道事業者に出された通知で、基本的には鉄道事業者がやるんですけれども、先ほどいいましたように横浜も地下空間を管理しているところがありますので、それを一体でやらなきゃいけなんですね。ですから、鉄道事業者と調整しながら、何が必要かどうかということも含めて検討したいというふうに思います。

岩崎議員:ぜひ、よろしくお願いします。大変大事なことだと私は思ってますので、繰り返しお願いしておきます。

「人命被害ゼロ」を掲げて力強いメッセージの発信を

次は、副市長に伺います。「人命被害ゼロ」ということについてです。
私は、防災の目的は、第一義的に「人命を守ること」にあると一貫して主張してきました。なぜ「人命被害ゼロ」なのかということですが、二つの例をちょっと紹介します。
昨年8月、神奈川県教育委員会主催の防災教育推進フォーラムありました。講師の釜石市教育長、川崎一弘氏は、こう言いました。「小・中学生の命を守れたことを釜石の奇跡と言われているが、決して成功例ではない。一人の子どもの命も落としてならないのに、学校外ではあったが、数名の児童生徒が命を落としている。」と、反省の言葉を語られました。ここに、「一人の子どもの命も失わない」との基本方針が非常に明確に示されています。
もうひとつの例。ハリケーンの通り道にあるキューバは、毎年何回も直撃を受け甚大な経済被害がでています。しかし、人命被害はほぼゼロです。1959年に政権が変わって以来、政府が「ハリケーンで人命被害は出さない」ことを決意し、数年後、人命被害ゼロを基本的に達成し、今日までやり抜いています。それまでは、そのたびに数千の命を失っていました。
2005年のカトリーナの直撃で死者・行方不明者合わせて2500人以上の人命被害を出しているアメリカは、国交断絶しているキューバに対し、防災対策の調査団をたびたび派遣して勉強しています。また、国連はキューバを「防災モデル」と評価しています。
「釜石と横浜」、「ハリケーンと大地震」、災害特性がまったく異なります。ここで私達が学ぶ必要があるのは、「一人の命も失わない」という政治、そして行政側の確固たる姿勢、考え方ではないでしょうか。
近く制定される「よこはま地震防災市民憲章」のサブタイトルは、「私たちの命は私たちで守る」と聞いています。市民の英知が結集されたすばらしい「憲章」になると評価しています。
一方、本市は防災計画の目標を、「被害を出さない地域社会をつくる」としていますが、防災対策の実行具体化で腰が引けているように受け止められます。これでは本市の姿勢・考え方が伝わらないと思います。「人命被害ゼロをめざす」と、市民が掲げたこの姿勢に応えて、力強いメッセージを発信する必要があるのではないでしょうか。このことは副市長の所感で伺いたいと思います。

大場副市長:いま岩崎議員おっしゃっていただいたとおり、本市の防災計画においては、被害を出さない地域社会の実現、これを目標に掲げてございます。また、現在策定中の地震防災戦略の中でも、基本の姿勢ということで被災数を限りなくゼロに近づけることを目指すということを明記してございます。従って、現在パンフレット等において同様の目標を掲げて、達成に向けて最大限努力をしていきたいと考えております。

岩崎議員:やっぱり防災っていった場合に、人命を守ると、人命を失わないと、いうことが何といっても大事な事柄だと思いますので、重ねて本市の防災対策の基本姿勢をはっきり市民に示していただくことをお願いして、質問を終わります。


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