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■「人事議案反対討論」 白井まさ子議員(2013.3.26)

今田氏は教育委員としてふさわしいか

私は日本共産党を代表して、市第198号議案、横浜市教育委員会委員の任命について、今田忠彦委員の任命には同意できない立場から討論します。

市長は、教育委員に3期10年、うち教育委員長として6年8か月就任した今田忠彦委員を再度、任命するとしておられます。教育委員会制度では、教育委員は、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関して識見を有するもののうちから市会の同意を得て、市長が任命するとなっています。この基準に照らしてみると、なぜ今田教育委員長が要件を満たしているのか、大いに疑問です。

間違いだらけの自由社版歴史教科書をそのまま使用
教育に関して識見を有するものという要件で見ると、自由社版歴史教科書の間違いを正すことなく放置していることは、問題です。
市内8区で2010年度・2011年度入学の中学生に配布された、自由社版歴史教科書は、多くの間違いが指摘されています。今田教育委員長は、教科書の修正は検定を行う文部科学省と発行者との問題であり、教育委員会が関与するものではないと答弁されています。真理の探求を行う学校教育でしかも公教育の場で、使用する教科書に間違いがわかっていながら、放置する事自体あってはならないことです。
市教育委員会のこうした事態を見かねて、県教育委員会は昨年6月文部科学省に対し、「教科書記述の正確性を確保し、生徒の学習を質的に保障するため、教科書発行者に対する訂正申請の勧告を行い、現に使用している学校への訂正通知を促すこと」という要望書を提出しています。県教育委員会がここまで行動したにもかかわらず、当事者である市教育委員会が教科書会社に訂正勧告を求める国への要望すら拒否することは、大変恥ずかしいことです。
事実に反することを事実誤認のまま、3年生は卒業しました。私の息子もそうです。義務教育を終えて社会に出る生徒もいる中で、知識の土台が違えば、考え方に影響します。もはや、誤認を消すことはできません。新3年生は、新年度も引き続き自由社版の歴史教科書を使用しますが、正誤表の配布さえもありません。これだけの悪影響を与えることとなった重大問題に、教育委員長としての役割が果たされていません。

教科書の全市1採択地区化は採択地区小規模化に逆行
また、これまで教科書採択は、市内で18採択地区ごとに行われていましたが、市教育委員会は2009年6月に、小中一貫ブロック内で採択教科書が違うと不都合が起こるという理由で1地区に統合することを決め、県教育委員会に報告したところ、疑問や異議が呈された上で同意されました。1地区化で、教科書選びに現場の教員の声や児童生徒の学習実態がますます反映されにくくなりました。巨大採択地区となったことは、「ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告」にある採択地区の小規模化を目指す世界標準からも、国の「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」や、文科省の通知、2009年3月閣議決定の「規制改革推進3か年計画」に示された、採択地区小規模化の方向にも逆行するものです。これらの事実を直視すれば、教育に識見を有するものの態度とはとうてい思えません。

「わかるヨコハマ」の再改訂は歴史認識の到達点に背く
問題は教科書に限ったことだけではありません。横浜の教育行政全体が多くの点で歪んでいることも多方面から指摘されています。
まず、中学生用副読本「わかるヨコハマ」の記述問題です。2012年度に改訂された内容のうち、関東大震災と朝鮮人虐殺の記述が「誤解を招きかねない」として、2013年度版では「虐殺」を「殺害」に再改訂し、12年度版は回収されます。関東大震災時に東京・神奈川をはじめ関東各地で朝鮮人や中国人、社会主義者や労働運動指導者などが虐殺されたことは膨大な証言と研究で明らかになっており、歴史認識の到達点です。国の中央防災会議の文書には「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった」と記述されていることからも、関東大震災と朝鮮人虐殺の記述の書き換えは必要ありません。虐殺という表現は、中学生という発達段階からも十分理解できると、教員からの指摘もあります。
放射線はあまり心配しなくて大丈夫?
2つ目は、放射線リーフレット作成と活用問題です。福島第一原発事故を踏まえ、2011年度に行われた放射線教育により、放射線は身の回りにあってあまり心配しなくていいんだと思った子が出て、大問題となりました。
使用された小・中学生向けリーフレットは、文部科学省作成の放射線副読本を要約したもので、放射線の危険についてはほとんど触れず、あたかも心配する必要がないかのようなタッチで描かれたものだったためです。文科省では2012年度から使用するとして作成した副読本ですが、それに先んじて要約版まで作り、原発の安全神話助長のお先棒まで担いだ市教育委員会です。誤った情報を提供したことは放射線対策での汚点と言わざるを得ません。

深刻な正規教員定員割れ
3つ目は、教員の定数割れが深刻なことです。その数が5月1日時点で2011年度が529人、2012年度が466人となっています。この不足をカバーしているのが非正規の臨時任用教員です。臨任教員は原則1年ごとの採用であり、正規教員のような研修制度も保証されていないなかで担任を受け持っています。こうしたことが常態化していますが、さらに問題なのは、正規教員が産前産後休暇、育児休暇、病気療養休暇の際に代替として臨任教員が配置されますが、定数割れのカバーに配置される分、登録者が少なくなり、本来、代替の必要が発生時に配置されるべき臨任教員が配置されない学校が、2010年度は10件、2011年度は8件、2012年度途中までで3件あり、毎年、繰り返していることも重大問題です。
これらの歪みには、当然、委員長の責任が伴うものです。市長は、任命の考え方で、「本市における教育施策を推進していくためには、今田氏の豊かな実績と実行力が必要である」とお考えですが、このような多くの歪みが豊かな実績と言えるのでしょうか。

市関連団体の「渡り」経験者は高潔か
最後に、退職時の地位を利用して、市幹部職員が本市外郭団体や関連団体を次々転々としていく「渡り」が、市民の大きな批判を浴びています。今田委員は教育委員在任中、横浜市リハビリテーション事業団理事長、横浜市土地開発公社理事長、横浜川崎曳舟株式会社顧問、代表取締役社長、取締役相談役を歴任してきました。これで、人格が高潔と言えるでしょうか。とうてい言えません。

以上の理由から、市長が今田委員を再任とされることに同意できないことを表明して、討論を終わります。